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2012年4月11日 (水)

福島からまた新たな火種が

ネット上での噂話をどの程度信用するかは非常に難しいところですが、公的な地位にある人が公的な場でソースの怪しい噂を信じてうかつな発言すると時として責任問題にもなりかねないのは当然のことですよね。

うわさ話を信じ「福島市長が避難」神戸大教授、誤った発言を謝罪/兵庫(2012年4月9日産経ニュース)

 神戸大の山内知也教授(放射線計測学)は9日、2月の講演会で「福島市長は山形市に避難した」などと発言し、福島市から謝罪を求められていたことを受け、福島市役所を訪れて瀬戸孝則市長に「放射能に苦しむ市民の皆さまと市長との信頼関係を損なったことを深くおわび申し上げます」と謝罪した。

 瀬戸市長は「今回の震災では流言飛語のたぐいが多く蔓延(まんえん)したが、市職員の業務への悪影響を考え、謝罪を求めた」と説明、山内教授の謝罪を受け入れた。

 市長との面会後、山内教授は「今から考えると非常にうかつで、うわさ話を信じ込んでしまい、本当に申し訳ない」と釈明した。

 市によると、山内教授は2月に大阪市内で行った講演会で「福島市の市長は山形市に住んで、毎日公用車で通っている」などと発言した。

思いがけず身に覚えのない言いがかりをつけられた形の瀬戸市長としては心身ともに多忙な中で背後から刺されたようなものですけれども、今回の震災においても信憑性の怪しい流言飛語の類は幾らでも散見されたのは阪神大震災と同様で、むしろ福島などにおいては事後においても現在進行形であらぬ噂が誕生しているという点でより深刻かも知れません。
先日も紹介しました福島のSAで大量の福島産食品が捨てられていたという週刊誌報道もマスコミによる捏造報道なのではないかという話もあって、もはやマスコミがソースだからと信頼できるものではないという困った時代なのですが、そんな中で最近世間で少しずつ広まってきているのが現地当事者の方々の証言という形での「被災地では保証金を手に毎日パチンコばかりやって遊び暮らしている」という噂です。
現金収入の乏しい地域の方々が一気に巨額の現金を手にした結果、毎日タクシーでパチンコ、居酒屋、カラオケ通いだなどと言う証言があったと言うのですが、今度は同じ福島県内から公式にその現状を認めるかのような市長発言が飛び出してきたというのですから信憑性も一気に高まりますよね。

「原発避難者、働かずパチンコ」 いわき市長が発言/福島(2012年4月10日河北新報)

 福島県いわき市の渡辺敬夫市長は9日、福島第1原発事故で同市に避難している福島県双葉郡の住民について、「東京電力から賠償金を受け、多くの人が働いていない。パチンコ店も全て満員だ」と述べた。復興協議で市役所を訪れた平野達男復興相との会談後、記者団に語った。
 同市には市民から「避難者は仕事もせずにパチンコばかりしている」という声が寄せられているといい、市長が感情的な行き違いなどを憂慮した形だ。
 渡辺市長はまた、「避難者は医療費が(窓口負担免除で)無料なので市内の医療機関は大変な患者数だ。1年後にどうなっているか心配だ」と指摘。避難者の流入に伴う診療増で市民の受診機会に支障が出ることに懸念を示した。
 いわき市は約2万5000人の避難者を受け入れ、市民との間で摩擦が起きている。双葉郡の自治体が集団移転する「仮の町」の候補地に同市が挙がっていることについて、渡辺市長は文化、歴史的背景から理解を示しながら「市の将来計画や地域コミュニティーに大きな影響がある」と指摘した。
 渡辺市長は3日の記者会見で「仮の町について国や県、同郡の自治体から説明がない」と不快感を示していた。

冒頭の記事にもありますように、何しろ福島と言えば震災以後数々の根拠無き噂や風評被害によって大きな影響を被り続けている地域であって、特に自治体首長ともなればその対策に連日頭が痛い思いをしているだろう中での発言ですから、どうもこれは「うわさ話を信じ込んで」しまったなどという類のものではなく、少なくとも一部においてそうした事実はあるのだろうなと思わされますよね。
実のところ福島の汚染地域では巨額の経費をかけて地域一帯を除染するくらいなら、そのお金を各世帯に分配して別な地域で生活を再建させてくれた方がよほどいいのでは…といった意見の相違が住民間にも発生しているという話もあるくらいで、ましてひとたび個人の懐に入ったお金を生活再建のために有効活用していくか、一時の歓楽に消費してしまうかは個人の自由というものではないかとは思います。
ただここで注目していただきたいのは市長発言が必ずしも「避難者は遊んでばかりでケシカランじゃないか!」といった倫理的見地から出てきているわけではなく、そうした避難者を受け入れた側の自治体のトップとして自分達市民の生活への悪影響を心配しているということで、それも単に「あいつらなんだ」といった感情的反発に留まらない実害があると言っている点ですよね。

特に渡辺市長の発言で注目されるのは避難者によって地域医療に深刻な影響が出てくるのではないかという懸念を表明していることで、何しろ大都会というわけでもない地方都市に市人口の1割近くになる大人数の避難者が一気に押し寄せてきた、そして場合によってはこのまま定住するかも知れないともなれば、元々医療過疎地域に挙げられていた福島であるだけに大変な影響があるはずですよね。
とりわけ市長自身も言及しているように警戒区域からの避難者は未だ医療費自己負担が全額免除されている、そして仕事もせずにパチンコばかりしているというくらいですから暇は十分にあるとなれば医療機関に通いたくもなろうと言うもので、しかもテレビでも新聞でも今後は避難者の健康被害が心配されるなんてことを連日報道してきたわけですから、何かあればすわ!ついに自分にも健康被害が来たか!と昼夜を問わず病院に駆け込みたくもなるでしょう。
例えば海外でも時折古い地域コミュニティーの中に海外移民が大量に流入して新たなコミュニティーを形成してしまい、元々の地元住民との間に深刻なトラブルに発展するというケースがままありますが、こうした新規流入者は多くの場合たいした資産もなく貧しい生活をしている人々が多く、地元住民から見れば物質的・心理的な面では多少なりとも優越感のようなものを持ってはいられるでしょう。
ところが今回のケースでは流入してきた避難者は地域住民の多くが生涯手にすることもないような大金を手にして日々遊び暮らしていられる、そんな避難者がようやく少ない人員で回してきた地元病院を占拠して「さっさと診察しろ。どうせ俺たちゃタダなんだろ」と毎日大きな顔をしている(ように見える)というのでは、これは感情的にも非常におもしろくないことにならざるを得ないですよね。

すでにこの避難者問題は各地で様々な問題を呼んでいて、一方では避難者が不当な差別にさらされているという話もあれば、他方では避難者自身が新たな差別を産んでいるというケースもあって難しいところですが、特にいわき市のように住民に対して無視出来ないほどの比率で避難者が流入してきたケースではより面倒な問題が出てくるということですね。
今後もし同市に「仮の町」が出来れば地元住民と避難者との感情的分断が行政的区分によって固定化されかねないだけに、「市の将来計画や地域コミュニティーに大きな影響がある」とは当然の判断でしょうし、現時点ですでにこうした問題点の所在に気づいているのであれば市長としてもすんなり仮の町にオーケーを出す訳にもいかないところでしょう。
自己負担免除に関しては警戒区域以外からの避難者についてはこの3月から縮小されてきていて、今後警戒区域からの避難者も段階的に終了していくとされていますが、定住が決まった場合の地域医療などインフラをどう整備するのかといった問題は後々まで残るだけに、まだまだ現地医療現場の混乱は続きそうですね。

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コメント

いわき市長のパチンコ店発言 賛否渦巻く
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/04/20120411t61008.htm
原発避難民「働かず、パチンコ店満員」 福島県いわき市長の「正直発言」が波紋
http://www.j-cast.com/2012/04/10128429.html

市長の正直発言は潰されそうだな~

投稿: | 2012年4月11日 (水) 07時28分

被災地に支援物資として酒を送った結果、アルコール依存症患者を増やしたとの情報は今回の東日本大震災でも以前の阪神淡路大震災でもあります。
大災害の被災地で依存性の高いものは禁止にしないと、今後も同じことを繰り返してしまうと思われます。

投稿: クマ | 2012年4月11日 (水) 11時14分

雇用がないから働いてないというのももっともらしいんですが、パチンコ三昧で非難されてるような人たちってたいがい就職する意志がないらしいですしね(就労すると手当が打ち切られる)。
努力しようとする人なら最初からお金を大事に使うはずなので、新聞などでもっともらしい意見を出せるような人たちばかりインタビューしても本質には迫れないんじゃないかなって気がしますけど。
このままじゃ遠からず追加支援をなんて声が出てくるんでしょうけどねえ…

投稿: ぽん太 | 2012年4月11日 (水) 13時01分

議員などからもコメントが出ているくらいですから、よほど目に余る人々が少なくとも一部にはいるということでしょうね。
いっそ彼らをパチンコ店従業員に採用しろと言う声もありますが(苦笑)。
依存症と言えばもはや援助依存症になっている人は今後どうなっていくのか、アリとキリギリスという話を今から噛みしめておくべきなんですけどね。

投稿: 管理人nobu | 2012年4月11日 (水) 14時25分

民度が低い
これに尽きる

投稿: カヘキチン | 2012年4月11日 (水) 17時03分

このままだと被災地の人々が地中海民俗化(ギリシャ、イタリア、スペインなど)しそうですね。
生活保護者多数で大阪化しそうな気もします。医療機関によってはカルテの半分以上が生保も十分ありえます。
失業者多数でも被災地だから仕方ないみたいな堕落ムードが蔓延するほうが怖いですね。
真面目に働こうとしている人が馬鹿馬鹿しいみたいなムードが。
日本人は自分で考えて行動するタイプは少なくて周りのムードに影響を受けやすい国民だと思うので。

投稿: 元神経内科 | 2012年4月11日 (水) 17時55分

また近々取り上げますが、とにかく世論全般が既得権益ということに非常に神経質になっていますしね。
すでにネットでは本当か嘘か様々な噂話が幾らでも流通しているだけに、ああいう話を一般マスコミが取り上げ始めるとそこらのおじさんおばさんの間にも一気に被災者の悪いイメージが定着しています。
まだ震災の記憶が新しいうちはともかく、いつまでたっても「俺は被害者様だぞ!お前ら援助させてやる!」みたいな態度をとる人が残るようだと世論も手のひら返すでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2012年4月12日 (木) 09時14分

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