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2012年3月22日 (木)

意外な方向に拡散する放射能問題

原発事故から一年が経過していますが、放射能の影響は単に物理的、生物学的に発生するのみならず、心理的、社会的にも大きな影響を及ぼしているということが判るのがこちらの記事です。

放射能を避け母子のみで西日本に移住する夫婦に離婚増加中(2012年3月21日NEWSポストセブン)

 復興庁の統計によれば、2月23日現在、関西以西・以南の2府21県に避難した人の数は9998人にのぼっているという。被災者支援を続けている『NPO法人街づくり支援協会』の黒田俊司さんが移住・疎開の現状をこう話す。

関西方面に疎開してくるかたたちの7割が小学校低学年までのお子さんとその母親で、3割がご主人も一緒にいらっしゃるご家族です。理由は“食事でも放射能の心配がないものを食べられる”“安心して外で遊ばせられる”“安全で安心して育児ができるから”と。震災から1年経ちましたが、移住者や疎開者は問い合わせも含め増えています」

 新しい土地で新生活を送るにはそれなりの資金が必要で、移住・疎開はお金がある人の選択と思われがちだが、前出・黒田さんによれば、実際はパートをしながら、安い住宅を探し、そこをシェアするなど経済的負担を減らそうと工夫している母親も多いという。しかし、問題は経済的なことだけではない。夫婦関係に影響が及ぶケースも多いのだ。

 黒田さんはその現状についてこう語る。

夫と別居して子連れで移住・疎開していた人たちの中で離婚が増えてきています。震災から時間が経ったいま、夫婦で意見が違ってくるんですね。夫は“戻ってこい”というけど、妻は“いまはまだ戻れない”とか。

 母親の立場からすれば、夫が何をいおうと、国が安全といおうとも、やはり子供のことを考えれば、より安全で安心して生活できる場所で子育てをしたいという選択になりますから。経済的負担も大きくなり、そこでも夫婦間の対立を生むことにもなります。子供のためにと始めたことなのに、それで離婚となるのは子供にとっても悲しいことですよね」

先日も遠く東北から避難した人々が現地コミュニティーで独自の存在感を発揮していることを示唆する報道を紹介しましたが、人によっては客観的な状況はどうあれひとたびこうと決めればテコでも動かないということなのでしょうか、「いまはまだ」などと言ってはいても恐らく将来にわたって戻る意志はないのかも知れませんね。
放射線そのものの物理的な強さに対して生物側の影響の受けやすさを感受性と言いますが、一般に分裂の盛んな臓器ほど影響を受けやすいことから細胞分裂の盛んな小児では感受性が高く、逆に高齢者では低いとされていますが、この場合は心理的感受性が極めて高い人々であったということでしょうか。
福島絡みではしばしば話題になってきた食料品の他に観光など様々な面で風評被害ということが言われていて、汚染の状況なども地域ごとに複雑に入り組んでいるだけにどこまで注意すればいいのか部外者には判りにくいところがありますし、また一部からは「そういうリスクも込みで原発の地元には金が落ちて来たんだろ」という声もあるようです。
最終的には各人なりにリスクと利益の折り合いをつけながら程々のところに収束していくのだと思いますが、その収束の過程を少しでも早めようという気持ちは理解出来るものの、また思い切ったことを言い出したなとも感じさせられるのがこちらのニュースです。

食べよう、福島のコメ=都内グループ、高齢者に呼び掛け-「放射能の影響小さい」(2012年3月18日時事ドットコム)

 東京電力福島第1原発事故の風評被害で、売れ行きが落ち込む福島県産米を積極的に食べようと、東京の市民グループが高齢者に呼び掛けている。代表の平井秀和さん(68)=日野市=は「高齢者は放射能の健康への影響が小さい。賛同していただけたらありがたい」と話している。
 原発事故後、平井さんは何度も福島県に入り、津波に襲われたいわき市久ノ浜地区などで、被災家屋の片付けや側溝の除染を続けてきた。そのたびに、風評被害に苦しむ現地の窮状を見聞きし、福島のコメを県外の希望者に直接届けることを思い付いた。
 昨年秋、平井さんらは同県のボランティア仲間の紹介で、同県内のコメ販売業者を訪ねて協力を申し出た。初めは「この時期、どうしてわざわざ福島のコメを」とけげんな顔をされたが、「若い人の代わりに高齢者が福島のコメを食べることで消費の役に立ちたい」と趣旨を説明。平井さんらが希望者を募り、この販売業者がコメを送り届けることを決めた。
 宅配業者とも交渉し、通常よりも4割程度安い料金で配達できることに。扱うのは放射能測定証明書を添付した県産コシヒカリで、5キロ入りが2540円、30キロが1万845円(消費税・送料込み)。友人・知人のほか、インターネットで呼び掛けたところ、都内の高齢者デイサービス施設が仕入れ先をこの販売業者に変更し、これまでに700キロ購入。個人分でも計1000キロが売れた
 平井さんは「皆が福島のコメを敬遠すれば、産地表示が義務付けられないところに流れる。基準をクリアしているとはいえ、なるべく若者や子供の口に入らないようにするためには、高齢者が食べることが理にかなっている」と訴えている。
(略)

平井氏の論点自体は非常にクリアーで、特に高齢者が消費すべきかどうかは別としても「皆が福島のコメを敬遠すれば、産地表示が義務付けられないところに流れる」からこそ積極的に消費すべきであるという指摘は非常に重要だと思いますが、意外だったのはこうした動きに賛同して消費を図ろうという方々がきちんといらっしゃるということでしょうか。
何しろ言っていることはある意味身も蓋もない話だとも言えますから、報道によってこうした事例が公になってくると「うちのお爺ちゃんに変なもの食べさせないでください!」なんてクレームも増えてくるのかも知れませんが、きちんとしたインフォームドコンセントの元に継続的に続けられるというのであればこれはこれで福島問題に対する一つの長期的対案になってくるのかも知れません。
狂牛病対策のように、単に福島の米を国が引き取って処分するというよりも農家に配慮した話でもあるし、国や自治体にはこうした動きがあることに呼応して、例えば福島ブランドを明記して売る場合には補助金を出していくといった対応も期待したいところなんですが、いずれにしても試みそのものよりもそれに対する社会の反応の方が気になるニュースではありますね。

さて、こうした活動とは別方面から福島放射線問題に取り組んでいるのがあの一派だということなのですが、まずは記事をご紹介しましょう。

25時:放射線と砂糖玉 /宮崎(2012年3月19日毎日新聞)

 福島第1原発事故の放射線による健康被害への不安は、宮崎でも多くの家族が避難生活を送るように、特に小さな子供がいる保護者にとって深刻だ。

 ホメオパシーと呼ばれる民間療法がある。病気の原因物質を水で極度に希釈して服用すれば、自然治癒力が高まり病気が治るという理論に基づく。欧州発祥で約200年の歴史が強調されるが、医学の進歩でその有効性はほぼ否定され、治ったという体験談は暗示によるプラシーボ(偽薬)効果、自然軽快と一般的に評価される。

 しかし、この療法の推進団体「日本ホメオパシー医学協会」(東京都)は、東日本大震災の被災地で放射能を除去できるとPR。さらに、この団体代表が創業した健康食品会社「ホメオパシージャパン」(同)は昨年7月、フクシマの名前を冠した商品を発売。福島の土を水に溶かして染みこませたレメディーと呼ぶ砂糖玉だ。

 福島県放射線健康リスク管理アドバイザーの高村昇・長崎大教授(被ばく医療学)は「子供を持つ母親らの不安は切実だが、ホメオパシーの効果は医学的、科学的に証明されていない」と指摘。薬事法の承認を得た医薬品でもなく、都薬事監視課はこの団体と食品会社に、放射線への効能効果をうたわないよう警告した。

 両者は取材に、自らに好都合な論文を引き合いに「正しい理解を」というが、不安に便乗し、批判には「バッシングだ」と開き直る姿勢に、その本質が透けて見える。【石田宗久】

このホメオパシー問題に関しては当「ぐり研」でもそれこそ嫌になるほど取り上げてきたところですが、あれだけ社会的に非難囂々であってもまだ生き残っていると言う辺りにゴ○○○並みの生命力を感じると言うべきでしょうか、いずれにしても冒頭の記事に取り上げたような人々の不安につけ込んでここが儲けどころと奮闘努力していらっしゃる様子は想像に難くありません。
興味深いのは「ホメオパシージャパン」ご自慢の福島の土を使ったというレメディーは検索してみると確かに引っかかってくるのですが、同社のサイトから辿ろうとしても一向にこのページが見つけられないということで、「直接のクレームは弊社にはきておりません」とわざわざトップページにうたう割には随分と配慮の良いあたり、同社なりに思うところがあったのでしょうか。
この福島のレメディによる商売のやり方に関しては「NATROMの日記」さんが取り上げていますので参照いただければと思いますが、同社の母体である日本ホメオパシー医学協会の方では早くも昨年4月1日に会長自ら福島入りして特別講演を開いていたそうで、なるほど疲労と極限状態は正常な判断力を奪うという基本はしっかり抑えられているということなのでしょうね。
彼らに限らず不安につけ込んだ妙な商売をする人達は今後も尽きることはないでしょうが、健康もお金も失い何一つ得るものはなかったということのないよう気をつけていただきたいと思います。

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コメント

米は直接最終消費者に渡すようにしないと、途中で産地偽装などされたら大問題ですね。
補助金が出るようになると儲け目的の業者が参入しやすくなると思うのですが…

投稿: ぽん太 | 2012年3月22日 (木) 08時24分

東京の老人の福島県産米を食べる運動は評価できます。リスクを評価して、老人に対する影響は
軽微であるためどんどん食べて応援。良い事だと思います。
母子の福島避難後の離婚も、これもある意味経済的に母子家庭になることで保護されることになり
法的に母子家庭になることでの生残りをかけている面もあるんではないでしょうか。
以前にも書きましたが、大本営発表の放射性物質は安全だという流言はとても信用出来るものでは
ありません。外部被曝に際してさえ、CT1000回で癌が1人発症するといわれています。
小児頭部CTなどはもっとかなり危険です。内部被曝についてはとんでもなく危険です。
これについては様々なレポートが出ていますのでお探し下さい。
http://peacephilosophy.blogspot.ca/2011/04/blog-post_17.html
現在私としては、もうこれ以上内部被曝の恐ろしさを叫んでも、実害が明らかになるまではもう
どうしようもないだろうと。
以前の医療崩壊の時のように、なまあたたかく見守ってる次第であります。

ただ、当時からずっと貴殿のホームページを楽しみに見ていた立場としては、どうしてもここに
もう少し書いてみたいと思いました。
うるさければ、これで止めますね。

投稿: 温泉天国 | 2012年3月22日 (木) 09時01分

正直言えば福島の食品まで手を出すのは怖いです。放射能の高いものを低いものと混ぜて出荷するという話を聞いたことがあるからです。風評被害を避けたいのは判りますがまずこうした規制逃れの数字あわせはやめてもらいたいです。震災後東北の食品が特売品に出ていることが多くなりましたが割安に感じられるのか売れているようです。消費者に正しく判断する材料をいただきたい。

投稿: 関西在住一般人 | 2012年3月22日 (木) 09時50分

>母子の福島避難後の離婚も、これもある意味経済的に母子家庭になることで保護されることになり
>法的に母子家庭になることでの生残りをかけている面もあるんではないでしょうか。

ただ昨今全般的に社会保障も渋いいですし、客観的な根拠に基づかず主観的に嫌だからという理由での避難に対してどこまで保護するのが妥当なのか意見が分かれるでしょうね。
逆に危険を承知で残った人々に対する補償をどうするかも議論になりそうですが、日本で自己責任というものがどこまで根付くかの試金石になるかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月22日 (木) 11時37分

関西在住一般人様へ
正しく判断できないから割安なのであり、正しく判断できる情報で安全とわかれば割安にはならないでしょう。

投稿: クマ | 2012年3月22日 (木) 13時14分

ごもっとも
近所のスーパーでやたらと米沢牛を見かけるのもそのせいか

投稿: kan | 2012年3月22日 (木) 16時46分

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