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2012年3月28日 (水)

医系国家資格職に関わる最近の話題

年度末と言えば各種試験の結果が気になる時期ですが、今年の医師国家試験の合格率は三年ぶりに9割を超えたそうで、近年はひと頃と比べると比較的高い合格率で推移しているのは学生達が頑張っているからなのか、それとも合否判定の基準に関して何らかの思惑があるのか、年々低下傾向が顕著になってきた歯科医師国家試験合格率と対照的ではありますよね。
いずれにしても医学部定員増と相まって医師数は着実に増加傾向を示しているとは言えそうですが、そんな中で先日は厚労省のワーキンググループでこんな発言が出ていたことが注目されます。

臨床実習充実に「医師国試の見直し必要」-厚労省WGで相次ぐ(2012年3月16日CBニュース)より抜粋

厚生労働省の「臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ」(座長=堀田知光・国立病院機構名古屋医療センター院長)は14日、医学教育の現状について文部科学省高等教育局医学教育課の村田善則課長から説明を受けた。村田課長は、見学や模擬診療にとどまらない診療参加型の臨床実習の充実が「大きなテーマ」だとした上で、臨床実習の成果を測るよう医師国家試験の改善を厚労省に要望。委員からも、国家試験の在り方を見直すべきだとの意見が相次いだ

村田課長が示したデータによると、診療実習の実施週数(1週35時間で計算)は、過半数の大学で50週に満たず、欧米に比べて少ない。文科省では、診療参加型臨床実習を充実させるため、優れた取り組みを行う大学を支援する事業を2012年度予算案に盛り込んでおり、村田課長は国家試験について、「臨床実習の成果を測る方向により重点を置いていただきたい」と訴えた。
これを受け、委員からも「国家試験の問題数が多く、(臨床実習よりも)試験対策に時間が割かざるを得ない」(大滝純司・北大教授)など、見直しを求める声が相次いだ。
(略)

かねて医師国家試験は座学的知識に偏っているとか批判は出ていましたが、入試から学内での進級試験まで徐々に総合的な選抜方法に変わっていっていることに加えて教育内容自体も年々高度化、過密化してきた結果、かつてのように「どうせ卒業したら一生馬車馬暮らしなんだから、学生のうちは遊んでおけ」なんてことが通用しなくなったという声もありますよね。
もともと医師国家試験においては現役に比べて浪人組の合格率が極端に低いことは知られていましたが、度重なる内容の変化でますます浪人組にはハードルが高くなるでしょうし、現役組も医学部に入れば医師になれるという時代ではなくなって、いずれはある程度医師数が充足してくる時期を見計らって有り余る医学部定員の中から優秀な上澄みだけを合格させていく歯科医師方式へと移行していくことになるのでしょうか。
ただ臨床実習重視の方針に関しては医師免許も持っていない医学生にどれだけのことが出来るのかという疑問の声はかねて出ているところで、すでに一部の大学で学内資格として導入しているように実習に参加する資格を何らかのライセンスという形で公認するべきではないかという提案も日医などから出ていますよね。
国試対策についてはしょせん9割が合格する国試などに入念な対策が必要なようではどうせろくな医者にはなれないという声もあれば、いくら試験を厳しくしても実際の臨床の場に出て責任を持って手を動かしてみなければ医療の実際は判らないという声もありますが、あまり極端な教育内容の変更は世代間ギャップとなって原則マンツーマンに近い卒後教育に支障を来すかも知れない危惧は感じます。

さて、医師と同様かねてその不足が言われているのが看護師ですが、こちらは以前から言われているEPA組からの合格者が徐々に増え始めてきているようです。

看護師国家試験:EPA看護師47人合格 前年比3倍、受験者の11%止まり(2012年3月27日毎日新聞)

 厚生労働省は26日、経済連携協定(EPA)に基づきインドネシアとフィリピンから受け入れた看護師候補者47人が国家試験に合格したと発表した。昨年の16人に比べ31人増えたものの、言葉の難しさなどから合格率は11・3%と日本人を含む全体の平均(90・1%)を大きく下回った

 EPAに基づく受け入れは08年に始まった。本国で看護師資格を持つインドネシア人とフィリピン人が計572人来日し、病院で看護補助業務をしながら試験勉強しているが、1回目の09年は合格者ゼロ、10年が3人(1%)、11年が16人(4%)と合格率は低迷している。

 候補者は3年の滞在期間中に合格しないと帰国しなければならないが、政府は昨年、08~09年に来日した候補者には試験で一定の点数を得たことなどを条件に滞在期間の1年延長を認めた。昨年の試験から難しい漢字にふりがなを振り、来年からは試験時間を延長することも決めたが、既に合格をあきらめ約120人が帰国している。

 ◇4年越し桜咲く

 「うれしくて、言葉が出なかった」。横浜市港北区の菊名記念病院で働くインドネシア人のダマヤンティ・デシィさん(29)は、看護部長の高橋由美子さん(51)から合格を知らされ、涙を流して喜んだ。08年に第1陣で来日したが、3年の滞在期間中に合格できず、特例で滞在延長したインドネシア人27人のうちの1人。4度目の挑戦で夢をつかみ「患者に優しく接する看護師になりたい」と抱負を話した。

 デシィさんは「日本の高い医療技術を学びたい」と来日。英語は少しできたが、最初は日本語がほとんど分からなかった。英語が得意な職員の付き添いを受け、午前は仕事をこなし、午後に看護学校の聴講をしながら勉強に励んだ。昨年11月以降は1日8時間以上、机に向かった。

 同病院ではデシィさんの他に4人のインドネシア人候補者を受け入れた。昨年、1人が合格し、3人は帰国した。高橋さんは「合格に向けた学習プログラムもなく、受け入れ施設に丸投げされているのが実情。国がもっと支援を強化してほしい」と訴える。

 候補者を支援する民間団体「ガルーダ・サポーターズ」共同代表の星さとるさんも、学習支援の不十分さが合格率低迷の原因と指摘。「少子高齢化で看護職員が不足するのは明らかなのに、国がどう対処しようとしているのか見えない。外国人を教える人材の養成やカリキュラムの整備に本気になって取り組むべきだ」と注文した。【佐々木洋】

あまりに合格率が低いことから昨年から試験問題を英文表記を併用するなど外国人対策を取るようになったと言いますから一応の効果が認められたという形ですが、合格率自体は相変わらずであることに加えて滞在期限の問題もありますから効率は非常に良くないと言える中で制度が続いていると言うのは、結局受け入れる側がそれだけ切実に外国人看護師を求めているということの反映なのでしょう。
その点で現状では各施設で助手等として働きながら試験対策の勉強もしていくという、言ってみればマスコミ各社がよってたかってバッシングした看護師養成と御礼奉公の問題とも似たような構図になっているはずなのですが、なぜかこちらについては施設に丸投げの国への批判か美談じみた話が報道されるばかりで、しかも合格率からすれば御礼奉公問題よりもはるかに過酷な話であるはずなのにあまり問題提起されていませんよね。
もともとは貿易摩擦解消の一環として形ばかり導入しただけで、厚労省としては外国人看護師など受け入れるつもりはなかったのだという声がありますが、自分達の側の都合だけで海外諸国の医療リソースを使い潰すようなことを続けているとより大きな国際問題にもなりかねませんから、結局何をどうしたいのかというビジョンを早く明確にして実効性ある対策を講じる必要がありそうです。
その意味でまずは現状での来日者の待遇に加えて、合格したスタッフがどのような場所でどのような勤務に従事していくのかといったデータをそろえていく必要がありそうですね。

さて、一部で大学入学定員削減の動きがあるなどそろそろ過剰になってきたか?とも噂されている薬剤師も国家試験があったわけですが、こちらでも少しばかり面白い動きが見られているようで、先日出ました薬事日報の「薬学部の変化に見る新卒薬剤師輩出数と「薬剤師過剰時代」という幻想」という記事からまずあらましを引用したいと思います。
ちなみにご存知のように薬学部は2006年からの6年制移行に伴い28の薬学部が新設されるなど定員が大幅に増加していますが、現在6年制(薬学科)と4年制(薬科学科)が混在している中で薬剤師試験受験資格として臨床実習を伴う6年制教育が必須とされるようになり、一方で国試受験資格のない4年制卒業生は原則として薬学研究などに従事していくことになります。
今年は6年制導入後初の国試実施として注目されたのですが、興味深いのは私立薬学部が軒並み6年制にほぼ特化しているのに対して国公立は4年制が過半数を占め、中でも難関と言われる旧帝大系では6年制の比率が10%~30%代と低くなっているというのは、薬学においては臨床業務に携わる薬剤師よりも薬学研究職の方が上位に位置すると認識されていることを示しているとも言え興味深いですよね。
そして昨今話題の定員割れを起こしている薬学部というのはこの薬剤師を目指す私立6年制薬学部に集中していて(およそ私立の4分の1)、またすでに2008年~2010年にかけて国試の結果が出る以前から6年制薬学部の定員削減が行われているということで、実際には薬学部が増えたほどには薬剤師は増えていかないのではないかとも言われているわけです。
それに加えて6年制移行に伴う過去2年間の空白期間による人材難もあって今年の薬剤師就職戦線は超売り手市場になっていると言い、大手ドラッグストアが新卒に600万の年俸を提示したなんてこのご時世にうらやましい話も出ているようですが、どうも業界内ではさらに鼻息が荒いようなんですね。

薬局レポートNo.431 10年後の薬剤師は年収1200万円?―若手意見(2012年2月24日ココヤク)

先ほど開催された日薬主催の「全国職能対策実務担当者会議」の中で、「薬剤師は年収1200万円を目指すべき」という将来像が示された。もっとも、「大きな目標を掲げていったらこうなった」という気楽な目標値で、明確な根拠や具体的な道筋といったものは提示されなかった。ただ、6年制薬剤師が社会に出て10年後のキャリアを想定すると、この金額も異常な高値とは言えず、本音と建前が見え隠れする設定とも言えそうだ。このほかにも「テクニシャン(調剤助手)の導入」や「薬剤師による予防接種の実施」など、諸外国で導入されている範囲の職能獲得なども意欲として掲げられていた。

同会議には都道府県薬剤師会の若手担当者約90人が一堂に会し、「10年後の薬局・薬剤師を考える」をテーマにスモールグループディスカッションが行われ、その後に各グループによる発表と討議が行なわれた。

発表の中で多く述べられたのが『テクニシャン(調剤助手)の導入』だ。その背景については「調剤室で薬を数えるだけの薬剤師は必要ないのでは」、「今回の改定で在宅進出が促されているが、現状の1人薬剤師の店舗では厳しい」といったことがあげられており、皮肉的なピッキングマシーン化への不満や1人薬剤師への対策としてのテクニシャン待望論だった。しかしながら、現状を打破するための制度導入には、少なからず抵抗感も示された。「OTC薬の販売制度に象徴されているように、新資格者に乗っ取られてしまうかもしれない」、「これから薬剤師が余ってくるとも言われる時代を前にして助手は本当に必要か」、「自動分包機が発達すれば数えるだけの薬剤師はいずれ必要性が低下する」など、調剤助手が必ずしも薬剤師に有利に働くとは限らないといった警鐘も鳴らされた。・・・

ま、ご存知のように医薬分業の推進ということで調剤が院外に移行して以来薬剤師の独立性も高まっていますから、別に薬剤師が何をしようが仕事をきちんとしている分には構わないのですが、そもそも医薬分業の話が進んでいた背景には薬剤師らの業界団体による「調剤や服薬管理には薬剤師の専門的知識が必要だよね?」という(少なくとも表向きの)主張があったはずです。
それがいつの間にか面倒な薬詰め作業は安く使える素人さん(失礼)に任せます、自分たちは管理職として高年収をひたすら追求しますではおいおい待ってくれよという話で、以前なら医師の指示が看護師を経て院内薬剤師から患者の手に渡っていたものが、これでは医師から看護師、さらに素人事務員を経て院外の調剤助手を間に挟んで薬剤師の手から患者へと、いかにも煩雑で人為的ミスの介在する余地が増えそうになっていくのも気になります。
しかしまがりなりにも表向き国民のためという態度を装い、現場の医師虐め的な主張ばかりを続けている日医(苦笑)などと比べると、日薬さんという団体はずいぶんとストレートだなあと言う気がするのですが、考えて見ると本来業界団体というのはそういうものだったんじゃないかなという気もしますね。
薬剤師の需給動向の変化と将来的な待遇の変化などはもう少し新制度下の状況も見ていなければ判りませんけれども、当然ながら医療費というものは医科も薬科もセットで増えた減ったと論じられているわけですから、増えていく薬剤師の待遇がこれだけ向上し助手まで雇い入れるようになるとはどういうことを意味するのか、ですよね。

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コメント

今年は制度移行の端境期でたまたま相場が高騰しているだけで、いずれ薬剤師過剰になる可能性の方が高いと思います。
医師は万一増えすぎても自分で仕事を作れますが、医師の指示を受けて仕事をするコメディカルには将来職にあぶれることへの危機感があるんじゃないですか。
だから医師とは独立して仕事ができるドラッグストアは薬剤師にとって重要で、いずれ過剰になった薬剤師がドラッグストアに流れてOTC薬を使いこなすプチドクター化していく可能性もあります。
24時間のドラッグストアが補助的医療を担えば需要はあるだろうし医療費の削減にも有効でしょうけど、そうなったら助産師の問題と同じで医師からはクレームが来るでしょうね。

ところで今の薬学部では注射のテクニックも学んでいるのでしょうか?なぜ予防接種実施の話が出たのかわからないんですが…

投稿: ぽん太 | 2012年3月28日 (水) 09時12分

注射のテクニックなんて医学部でも学んでないのでは?
*昨今の医学教育がどうなってるのかよくは知りませんが。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年3月28日 (水) 09時29分

うちはポリクリで一応ちょっとは時間とってやったかな
学生同士で刺しっこする程度のおままごとだが厳密に言えばあれは違法行為なのか?
看護の方がもうちょっといろいろやるらしいが

投稿: kan | 2012年3月28日 (水) 10時15分

どんなテクニックを学んだのかは詳しく聞きませんが、学生から聞く限り実際に針を刺したりはしているらしいですね。
一回二回やった程度で身につくとも思えませんから、学生時代には神経損傷のリスク回避などの知識をしっかり学んでおくのがいいように思います。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月28日 (水) 11時21分

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