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2012年3月13日 (火)

吉本のお膝元なのに歌丸師匠より厳しいです…

かねて国政進出を目指していた橋下市長率いる「大阪維新の会」ですが、その社会保障政策の概要が明らかになってきたものの、これがなかなかに過激と言うのでしょうか、異論を呼ばずにはいられないだろうという内容なのですね。

競争社会へ“切り札” 維新の「最低生活保障」/大阪(2012年3月11日産経ニュース)

 大阪維新の会が10日、発表した「維新八策」の原案。中でも、新しい社会保障システムとして提示した「最低生活保障制度」は維新が目指す競争社会を実現する上で、持続可能な範囲でセーフティーネットも確保する“切り札”として力を込めた。しかし、現行の年金制度の「清算」が前提となる上、制度の見直しには強い反発も予想され、実現へのハードルは高い。

 最低生活保障制度について、維新は10日の全体会議で、維新八策の原案とは別にA4判用紙1枚の別添資料を用意して説明した。

 考え方のベースになったのは「負の所得税」の理念。低所得層は税を納めず、逆に一定の現金を受け取る仕組みを想定しており、年金と生活保護、失業対策の一本化につながるというアイデアだ。

 2月に提示した「たたき台」では、全国民に一定所得を支給するベーシックインカム制度の導入を盛り込んだが、「仮に全国民に月額7万円を支給すれば、年107兆円かかる。財源はどこにあるのか」といった批判が相次いだ

 維新内部でも「正直そこまで考慮していなかった」といった意見があり、維新幹部は「整理してより丁寧に説明する必要があった」と話す。

 維新は最低生活保障の額として月額6万~7万円を想定。就労が難しい高齢者らへのセーフティーネットとして、これに加えて現役時代に自ら納めた保険料を受け取る年金の積み立て方式を取り入れ、さらに資産家にはこの年金を支給しない掛け捨て制度の導入も想定している。

 「掛け捨てでは保険料を支払わなくなる」との批判に対しては、国税庁と日本年金機構を統合して税と社会保険の徴収を一本化する「歳入庁」を創設し、強制徴収とすることで対応すると説明。維新幹部は「努力を阻害するような保障にはしない」と強調する。

 現行の生活保護では、生活保護受給者に一定の収入があっても、その分保護費が減額されるため、就労意欲の減退につながっているとの指摘がある。今回の制度では、就労に基づく収入があれば生活保障に加算されるため「努力を評価する仕組み」というわけだ。

 ただ、現行の年金制度や生活保護に比べると、多くのケースで支給額の低下は不可避とみられ、反発も予想される。維新の新しいアイデアが、有効なセーフティーネットとしてどこまで機能するのか、未知数の部分も少なくない。

維新の会、遺産全額徴収も検討/大阪(2012年3月10日niftyニュース)

 橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会が事実上の次期衆院選公約「維新八策」で掲げる相続税強化策に関し、不動産を含む遺産の全額徴収を検討していることが9日分かった。資産を残さない「一生涯使い切り型人生モデル」を提唱、消費を促す税制に転換し、経済活性化を図る狙い。ただ内部に異論もあり、協議を継続する考えだ。国家元首は天皇と明示することも判明。

維新、日本をどう洗濯? 「船中八策」概要公表へ/大阪(2012年3月10日産経ニュース)より抜粋

(略)
 資産課税で相違

 社会保障では「一生使い切り型の人生モデル」との新機軸のもと、たたき台では年金制度での積み立て方式と富裕層の掛け捨て方式の併用、最低限所得保障を伴うベーシックインカムや「負の所得税」の導入検討を織り込んだが、さらに保険料の徴収強化を目的とした歳入庁の創設も掲げた。

 最低限所得保障は年金や生活保護、失業保険制度の廃止をにらんだ方策だが、一方でばらまきにつながるとの指摘もあり、維新内部でも異論があるようだ。

 同様に、たたき台に盛り込まれた資産課税についても意見が分かれる。相続税100%化につながる案が示され、所属議員から懸念の声が上がった。

 「資産課税をやると、富裕層が国外へ出ていく可能性がある」。維新幹事長の松井一郎府知事も5日、「(維新八策に入れるのは)厳しいんじゃないか」と述べた。

 一方、橋下氏や政策責任者の浅田均府議会議長は推進派だといわれる。維新は24日に開講する政治塾を通じて議論し、八策の詳細を詰める方針だ。
(略)

ベーシックインカムに関してはすでに民主党政権においてその導入が検討されながら、あまりに巨大な支出が予想されることから財源の担保をどうするのかというところで事実上話がストップして久しいのですが、今回は年金や生活保護なども含めて社会保障全般を統括するシステムを検討しているようです。
このキーワードになるのが「負の所得税」というもので、簡単に言えばある一定水準の所得を分水嶺としてそれより高所得の人は税金を納める一方、低所得の人々は逆にお金を受け取るという税制と社会保障とを一元化した方法なのですが、様々な社会保障制度の重複による無駄を省くと同時に、記事中にもあるように「働けばそれだけ確実に収入が増える」という勤労意欲維持の効果も期待されるものです。
実際上はこういう制度は既存の諸制度を極めて広汎かつ大々的に変更しなければ導入出来ないのが最大のハードルと言いますが、先日も話に出た「マイナンバー制(いわゆる国民総背番号制度)」の導入によって各人の所得がきちんと一元管理出来るようになれば、概念的には極めてシンプルなシステムで税と社会保障が片付いてしまい、当然ながら多忙な役人さんの手間も大幅に削減されるということになりますね。

導入に当たって必要なコストがかかりそうですが、現状で公的年金が年間50兆円強、生活保護が3兆円強で合わせておよそ55兆円程度とすると、月額7万円のベーシックインカムに必要な107兆円の半分以上はすでに現状でも支出に織り込み済みとして、ざっくり残り半分の財源としてどうやら相続税など資産課税の強化を目指しているらしいというのがポイントとなってきます。
そもそも日本の場合は地価が高騰したバブル期に基礎控除が引き上げられたこともあって、国民のわずか4%しか支払わないという現状は不労所得重課という税制の原則に反するという声も根強いものですが、年間80兆円にも上る相続資産のうち相続税として国庫に入るのがわずかに1兆円余りというのでは、社会階層固定化を避けるという本来の目的は全く果たしていないと言われても仕方がないところでしょう。
さすがに全財産没収というのは極端すぎるとも受け取られるでしょうが、そのかわりに全く資産がなくなっても最低限食べていくだけの生活費は面倒をみましょうと言うのですから一応筋は通っている話で、それが嫌であれば高い贈与税を払ってでも生前贈与をしておきなさいよという形になるんだろうと思います。

今のところはいきなりぽっと出の新党が口にするにはちょっと大がかり過ぎる話なんじゃないかという気もするのですが、ただちょうどこれから最も豊かさを享受してきた団塊世代が親世代から資産を引き継ぐ時期にあたっていて、この巨額の資産があたら団塊のポケットに死蔵されたまま彼らへの社会保障上の優遇だけが続けられるというのでは、現役世代としてはさすがにおもしろくないですよね。
国全体のお金回りが悪化している中、当「ぐり研」でもいかにしてこの高齢者層の抱え込んでいる資産を生きたお金として流通させるかという問題をたびたび取り上げていますけれども、今回出てきたのはその一つの究極的な考え方ということになるのでしょうか、いずれにしても政策として掲げる以上は国民の反応が待たれるところです。
しかし日本社会全体が妙な具合に落ち着いてしまった結果としてこの閉塞感が続いているのであれば、これくらいの派手なひっくり返しもなければ社会を動かすことは出来ないのかも知れません。

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コメント

>歌丸師匠より厳しい

「全部もっていきなさい」ってかw

投稿: aaa | 2012年3月13日 (火) 10時50分

外したら怖いのは民主党という近来の先例がありますし(苦笑)。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月13日 (火) 11時12分

個人資産を国有で没収って、共産主義的全体主義国家ですね。
あるいは、それ以上。
欧州の社会民主主義政党でも、そんな主張はしません。
維新の会の本質が見えました。

資本主義的自由国家の否定になりますので、維新の会は叩きつぶすべき政党グループ。
民主主義にとって危険なグループです。

投稿: とある内科医 | 2012年3月13日 (火) 11時16分

そこは守るべき立場の人と守るべきものを持たない人のどちらが優勢かで決まるんじゃないですか。
生まれた時から資産がある人にとっては悪法ですが、資産もない人にとっては国が人生の出発点をリセットする機会を与えてくれるってことですから。
このご時世で意外に維新の支持者が出そうな気もします。

投稿: ぽん太 | 2012年3月13日 (火) 11時59分

 相続税100%となれば自宅も相続できなくなり、相続放棄が続出する。放棄された自宅を競売すると不動産屋が買い占め賃貸に、、、賢い金持ち達は自分で法人を立ち上げ、自分たち家族はその役員となり、私有財産を減らして法人名義(自宅、別荘、ヨットなど)として相続税逃れ、相続は役員という地位を相続することになる。(アメリカの金持ちは既に財団をつくり、子孫に継がせている。)一般の庶民は一生働いても家も持てず賃貸暮らしでその日暮らしのキリギリス生活となる。(最近見た映画timeの世界のように)

投稿: | 2012年3月13日 (火) 17時52分

>生まれた時から資産がある人にとっては悪法ですが、資産もない人にとっては国が人生の出発点をリセットする機会

自分で努力して、社会的地位を築きあげた人の財産まで奪いことになります。
関心できませんね。

持てる者は生まれながらのこともあれば、持たざる家に生まれても個人の能力と努力で得られる資産もあります。
持たざる家に生まれても、自分が置かれた状況のなかで能力に応じて努力していけばよいわけで、努力せず、能力もなく、結果だけを求めることは、間違っています。

投稿: とある内科医 | 2012年3月13日 (火) 21時24分

ま、こんな感じで異論百出するのも当然だろうなと言う感じの話ですよね。
現実的に考えるとちょっと政策に掲げるには極端すぎて、失礼ながらどうせ公約も何もない零細政党であればまだしも、仮にも国政選の台風の目と言われる維新にしては違和感を覚えます。
ただ橋下氏の今までの手法を見ていると非常に計算高いところがあって、一見暴論のようにも見える政策に勝ち目があると考えているのであれば、その根拠は何なのかと気にはなりますね。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月14日 (水) 11時00分

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