« 尊厳死法案、妙な形で表に出る | トップページ | 医系国家資格職に関わる最近の話題 »

2012年3月27日 (火)

日大光が丘病院問題 タイムリミット迫る

年度末と言うことでどこの職場でも最後の帳尻合わせなどに追われて多忙極まるという状況ではないかと推察いたしますが、忙しくてもうっかりミスで余計に仕事を増やしてしまったということのないようくれぐれもご注意いただきたいものだと思います。
さて、以前に日大の撤退について当「ぐり研」でも取り上げてからも断続的に報道が続いている練馬光が丘病院問題ですが、年度末になっても相変わらずバタバタしているようで四月からの運営母体の交代後の体制が危ぶまれているようなのですね。
まずは最終段階に入った引き継ぎの状況を取り上げた東京新聞の記事を引用してみましょう。

練馬光が丘病院 28日から診療体制縮小(2012年3月24日東京新聞)

 今月末で日本大学が運営から撤退する練馬区の医学部付属練馬光が丘病院が二十八日から診療体制を縮小する。二十三日に同区役所で開かれた同病院運営協議会で区側が明らかにした。後継の公益社団法人「地域医療振興協会」との、患者の安全な引き継ぎを行うためとしている。 (柏崎智子)

 同病院によると、二十八日は土曜日と同じで外来受け付けは午前八時四十五分から同十時半まで。二十九日から三十一日までは休日診療体制で救急外来のみ。運営を協会と交代するのは四月一日午前零時だが、区によると、三十一日のうちに協会の医師らが病院に入り、日大医師らと引き継ぎを行うという。

 運営協議会には増田英樹病院長も出席。委員から、協会との引き継ぎを行った中で四月からの体制に不足があると感じるかなどと質問を受けたが「感想のレベルでは述べられない」とし、「光が丘の大多数の職員が(日大)本院の板橋病院に移る。同じ二次医療圏なので、本院からさまざまな形で貢献したい」と答えるにとどまった

 また、昨年七月に運営の終了が公表されてからの経緯を振り返り「患者、区民に心配をかけ、当院の教職員も複雑な思いで過ごしたが、地域医療をなるべく乱さないようやってこられた。それ以前の二十一年間のわれわれの地域医療にかけた思いや貢献を忘れないでほしい」と述べた。

 さらに、同病院が赤字体質になったのは「地域のニーズにこたえ、これだけ(多くの)小児救急や周産期医療をこなしながら高い専門性を持たせた結果」とし「医療政策の見直しにつながってほしい」と語った。

しかし最後の最後に敢えて過去の貢献を強調するあたり、裏を返せば色々と言われるところはあったのでしょうね…
さて、すでに取り上げましたように撤退問題の背景には赤字運営が続くのに自治体が十分な支援を行ってくれないだとか、逆に経営努力で赤字は解消しつつあったのに大学の上の方が勝手に話を決めたとか、関係者それぞれに言い分はあるのでしょうけれども、いずれにしてもここまで話が進んでしまえば済んだことを言っていても仕方ないというもので、うまく運営が引き継がれ診療の継続性が保たれていくのかどうかが問題ですよね。
ところがこの年度末も押し迫った時期になってまだこれだけバタバタしているのですから大丈夫なのか?と誰でも思うのですが、どうも実際には作業の手際が悪いというレベルに留まらないようで、必要な手続きすら滞っているらしいというのですから関係者はやきもきするどころではないでしょうね。
この新体制での医師確保、特に小児科医確保の苦労というものは(今どき当然ですが)並々ならぬものがあったようで、この辺りの事情を「新小児科医のつぶやき」さんがまとめていらっしゃるので参照していただければと思いますが、この小児科医不足のご時世にちょっと裏技?的な手法を駆使してまでも何とか小児科医をかき集めてきた努力については認めない訳にはいかないでしょう。
それだけのことをしても診療体制の縮小はほぼ確定的だと言う話ですが、もともと同等の医療水準を担保するという条件で新たな運営母体を募集していたという話のはずが、いつの間にか縮小は避けられないという話になっているのですから特に小児科診療への影響が懸念されるところですが、ちょうど週刊ダイヤモンドにそうした状況に関わる記事が掲載されていたので引用させていただきましょう。

手続きの遅れと医療水準の未達 迷走が続く新練馬光が丘病院(2012年3月22日週刊ダイヤモンド)

 累積赤字90億円を理由に撤退を決めた日本大学医学部付属練馬光が丘病院(342床)の後継問題が迷走している。4月1日からは、地域医療振興協会(以下、協会)が後継機関として運営を開始する予定だが、いまだ遅々として進んでいないのだ。

 協会は、病院の開設許可証を得るための第1歩となる事前相談計画書を、3月13日になってようやく東京都に提出。予定は11月だったのだが、医師の引き継ぎ作業などの停滞によって大幅に遅れた。

 通常なら提出を受けた後に都が審査、その結果通知書が出てから開設許可証が降りるまでに少なくても3週間はかかる。とうにタイムリミットは越えた格好だ。

 しかも計画書を出す際には、本来、病院の土地・建物を無償で提供する練馬区と同協会の契約書か、協定書が必須。ところが、その大前提となる同区と日大側の契約の解消すら、いまだに決着の目途はたっていない

 3月14日に開かれた練馬区議会の医療・高齢者等特別委員会。「何を根拠に、どう契約を解除するのか」(池尻成二区議)との追及に、区の地域医療課は「日大とは、今後、協議していく」と語るに止まった

 なにより、日大が区に預けている50億円の保証金の返還問題もいまだ話し合いがつかず、平行線のままだ。 

 こうした状況に対し、東京都は医療の空白期間を是が非でも避けたいとして、今後の対応に必死の様相だ。

「計画書の確実性を見た上で、急いで内部決済を取る。契約書については、期日の関係でそれに代わる書面でもかまわない。これまで地域の医療を支えてきたこの病院がなくなっては困る」(東京都医療安全課)

 同病院の外来患者は、年間に約22万人。小児救急では、約9000人を受け入れ、近隣の区市にとっても要となる医療機関だった。

 ただ、今回、都が新病院を認めたとしても、課題は山積している。志村豊志郎区長が明言してきた「現在と同等の医療機能や規模を引き継ぐ」という約束が、果たされていないからだ。

 日大練馬光が丘病院には、常勤医師が122人、看護師290人が働く(今年2月)。これに対して、新病院の計画数は、4月1日時点で常勤医師70人、看護師が180人と約4割も減少する。外来診療は、8科で予定を組めない事態に陥っている。

 そもそも区は、協会の選定理由の一つに「小児医療や周産期医療を維持するために必要な医師数が提案されている」ことを挙げていた。昨年12月7日の住民説明会でも、区は常勤医師数について現病院の「小児科15人、産婦人科5人と同程度を予定」としたが、現状は同9人と2人にすぎない

 都は「入院と救急を縮小しても、より早い段階で元の稼動状況に戻していただく」と説明するが、その実現は至難の業といえる。

 すでに近隣の病院からは、今後の「小児救急の崩壊」を危惧する声が上がっている。4月以降、試されるのは協会の運営能力だけではない。練馬区と都の指導力も、大きく問われることになりそうだ。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)

週刊ダイヤモンドの記事を見る限りではどうも新たな運営母体となる「地域医療振興協会」側の不手際ばかりではなく、円滑な引き継ぎを支援しなければならないはずの練馬区側にも大きな過失がありそうな雰囲気なのですが、日大と区との間での交渉がこうまで遅れているのは最後まで日大が残るという可能性を期待していたのか、それとも突然の撤退宣言に対する意趣返しのようなものもあったのか何とも言えません。
ただ幾ら(少なくとも額面の)医師数は多い東京都下だとは言っても、いきなり100人単位の常勤医師を引っ張ってこれると考える方が無理があるというものですから当然診療体制の縮小は予想されていたことであって、後はどこまで関係各位が現実を受け入れ歩み寄ることが出来るかということになってきそうな気がします。
そうなると同病院が地域の小児科診療で大きな役割を果たしてきたことに注目せずにはいられないのですが、折り悪くというべきなのか近年の東京都下では自治体による小児医療の無料化が相次いでいて、ただでさえ全国的に不足しがちな小児診療のリソースにさらなる需要増加が追い打ちをかけそうだとも言われている背景事情があるのですね。

東京は小児科医も含めて地方から脱出してきた医師の受け皿になっているという声もありますが、すでに数年前から東京においてもこと救急医療に携わる小児科医は不足してきているという話が出ていましたから、最後の砦となるはずのこうした公的大病院が破綻すると連鎖的に影響が波及してくる可能性もなしとせず、同病院のみならず地域医療全体の今後の行方が大いに注目されるところです。
しかし日大と言えば先頃東大のエリートを差し置いて天皇陛下の執刀を担当したのが日大の医師だったと話題になっていましたが、あちらこちらと妙なところで取り上げられ話題になるものですね。

|

« 尊厳死法案、妙な形で表に出る | トップページ | 医系国家資格職に関わる最近の話題 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

今さら過ぎる結論ですが、
練馬区が日大をあれほど嫌ったかは謎です。
日大も嫌ったのでしょうが、
逃げられて本当に困るのは練馬区だろうにです。

たぶん真相は表には出にくいとは思いますが、
交渉担当者・責任者の感情のもつれが今回の騒動の大元だったと考えています。

地域医療振興協会については、
練馬区の建前と協会の本音の折り合いにトコトン苦労させられたのだと思っています。
ここも、それでも光が丘が欲しかったはあるとは思っていますが・・・。

投稿: Yosyan | 2012年3月27日 (火) 08時32分

原発事故で電力会社の社会的責任が厳しく言われてますが、医療にも同じように責任を求めるなら東電並みに好きに料金決めさせてくれてもいいんじゃあ…

投稿: ぽん太 | 2012年3月27日 (火) 09時02分

救急や基幹病院は各種名目で自由に上乗せしていい、ってしちゃえばいいのにね。医療費の公共負担分も圧迫しないし。
*産科は元々自由診療なので除外w勝手に労働ダンピングして自滅しるwwww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年3月27日 (火) 09時29分

しかし東京23区なんて出生率が日本一低いところなのに(1.1とかそんな)

世の中わからんものですな

投稿: A | 2012年3月27日 (火) 10時21分

かつては交通事故外傷など自由診療で引く手あまただったと言いますが、近ごろは外傷と聞くと断られるケースも多いようですし、お金だけで解決しない問題もあるのは確かでしょう。
だからといってお金を出す側がその論理を振りかざして自己正当化してしまうのも違うだろうという気はしますけど。
今回のケースも巨額の累積赤字問題がなければまた違った経過になっていたのかなとも思いますが、どうもそういう反省も改善もなさそうなのが気になりますね。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月27日 (火) 11時32分

お金だけで解決しない問題もあるのは確かでしょうが、お金なしで解決する問題は人間社会においてほぼ皆無かとw
とくに(心の)僻地医療系のトラブルは、ほぼすべて最低限の金すらケチったせいですよねww

あと交通事故は保険使えるそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%BF%9D%E9%99%BA
交通事故と健康保険 [編集]
交通事故の場合も労働災害等に該当しない限りは健康保険の対象になる(労災等の対象になる場合は、労災等の扱いが優先され、健康保険は適用されない)。この場合、加害者がある場合(下記参照)は市町村の国民健康保険課・国民健康保険組合・企業健康保険組合や全国健康保険協会などの保険者に第三者行為による傷病届を遅滞なく提出しなくてはならない。用紙は、各保険者窓口で用意されている。また、医療機関窓口では普通の健康保険と同様に本人負担金分をいったん支払わなければならない。

…オレがチャリで車に撥ねられた時は全額自費(加害者の保険会社が負担)だったけどなあ。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年3月27日 (火) 15時44分

そのあたり、ひところはかなり話題になってましたよね。
どうせ保険屋が払うんだからと1点15円以上で計算して儲けてたところもあったって言いますけど、健保が使えると知られるようになってからは自粛してるんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2012年3月27日 (火) 16時30分

よく判っていないんですけど、交通事故にあったときには

①本来は普段と同じ保険診療扱いが正しい
②でも中には自費診療にして高くふっかける病院がある

ということですか?

投稿: 通りすがりのただの人 | 2012年3月27日 (火) 16時44分

事故と保険の関係は各所で解説がありますが、一例としてこちらを参照ください。

http://money.derica.jp/md/node/1010105186

投稿: ぽん太 | 2012年3月28日 (水) 08時39分

健保の保険者側にすれば誰かが起こした事故によって健保財政が圧迫されるのではたまらないという考えはあっておかしくないとは思います。
健保に査定されるリスクが保険会社から支払いを渋られるリスクより大きいといった事情があるなら、医療機関としては保険診療扱いを回避する動機にはなるでしょうね。
むろん、自由診療にした方が儲かるという判断もあるでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月28日 (水) 11時18分

ありがとうございました。

投稿: 通りすがりのただの人 | 2012年3月28日 (水) 18時52分

もうわけがわからん・・・・
これで契約違反だからと練馬区が50億懐にいれたらどうなるんだ?

練馬区が日大に契約解除を通告 病院撤退問題
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120327/tky12032723010022-n1.htm

 日大医学部付属練馬光が丘病院の撤退を31日に控え、東京都練馬区は27日、日大と結んでいる同病院の設置運営に関する基本協定と
土地・建物の貸し付け契約を一方的に解除する通告文を日大に送った。日大の撤退に伴い地域の救急医療への深刻な影響が危惧されるが、
区側は日大との話し合いをしないで破棄に踏み切る形となった。
 協定と契約の中途解除は本来、日大と区による合意が前提となるが、区側は「日大の撤退は契約違反にあたる。撤退表明や明け渡し確認の文書をもって
解除できると判断した」と説明。通告した上で、ただちに新病院を開設する地域医療振興協会との基本協定締結に向けた手続きを始める方針という。
 これに対し日大側は「撤退について理事長による最終決定は下されていない状態だ」とし、区側との話し合いに余地を残し、
4月以降の病院存続に含みを残すスタンスを取っていた。
 日大理事会関係者は「中途解除について事前の話し合いはなく、無理に解除した場合、入院患者はどうなるのか」と区側の対応を批判している。
 日大と練馬区の間がこじれたのはもともと、日大が区に預けた保証金50億円の返還問題が発端。日大が21年に返還を求めたのに対し、区は
「保証金の返還は平成33年の契約満了時で、契約が更新されればそのまま預かる」と返還を拒否。日大が態度を硬化したことが撤退問題に発展した。
 病院の後継法人が十分な医師数を確保できず、救急医療や災害時医療などの弱体化が危ぶまれる状況となり、日大側では50億円問題などで
区側の対応に進展があれば病院存続の方向で検討すると示唆する声も出ていた。

投稿: | 2012年3月29日 (木) 09時01分

日大も駄々をこねて譲歩を引き出そうとしたのでしょうけど、わざわざ最後までトラブルに発展させようとするかのような区側も区側で、本当にお金を返したくないから無理矢理に事件化したのなら批判されるべきでしょう。

投稿: ぽん太 | 2012年3月29日 (木) 10時26分

産経の記事ですからちょっと微妙なんですが、一方的に日大が悪者のようにも書かれていないのがポイントですかね。
昨年には寄稿記事とは言え日大批判を載せていたわけですから、少し風向きが変わったということでしょうか。

練馬区、日大共に歩み寄りを
http://www.izai2.net/ayumi.html

投稿: 管理人nobu | 2012年3月29日 (木) 11時49分

練馬光が丘病院 受診してきました。
http://ameblo.jp/premama-shien/entry-11220197608.html
初診料は、2100円かかるのですが、

3ケ月以内に日大光が丘病院で受診履歴があれば、初診料は無料になるそうです。

日大光が丘病院のカルテの引き継ぎはないので、

口頭での自己申告制でO,K,だそうです。

初め、小児科で次女のヘルペスを診ていただきました。

日大光が丘病院ノカルテがないだけに、過去の病歴などをすべて話しました。

投稿: 大丈夫か? | 2012年4月26日 (木) 09時44分

これってカルテ保管義務の上ではどうなんでしょうね?
経営母体が変わると別組織で問題ないということなんでしょうか。
しかし日大側がカルテ全部引き上げたんでしょうか?

投稿: 管理人nobu | 2012年4月26日 (木) 10時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/54313389

この記事へのトラックバック一覧です: 日大光が丘病院問題 タイムリミット迫る:

« 尊厳死法案、妙な形で表に出る | トップページ | 医系国家資格職に関わる最近の話題 »