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2012年3月 6日 (火)

少しは気にしてみましょうよ

先日は琉球新報にこんな社説が掲載されたことをご存知でしょうか。

【社説】救急医減 使命感だけには頼れない/沖縄(2012年3月1日琉球新報)

 県民の貴い命を守る医療の崩壊にもつながりかねない。
 南部地域の最重症患者を受け入れている県立南部医療センター・こども医療センターの救命救急センターで、救急医6人が3月末で退職し、4月から現在の9人から3人に減る
 3人の救急医で態勢維持は難しいため、4月以降は救急以外の診療科の応援、他病院からの応援でカバーする。救急の制限はしないというが、心もとない。これでは県民が安心して暮らせる社会とはいえない。
 救急医をはじめ、他科の医師の労働条件が悪化するのは避けられない。医師たちの使命感に頼り過ぎる医療態勢は健全とはいえず、抜本的な解決策が必要だろう。
 多くの医療関係者が指摘するように、県が県立病院の職員定数を長年変えず、臨任、嘱託という不安定な身分で雇って、医療態勢を維持してきたことが根本原因となっているのは否めない。
 同センターの場合、救急医定数は3人。果たして3人で24時間365日の救急を本当に担えるのか、そもそも疑問だ。
 県は、県立病院の職員定数を111人増員し、2606人とする条例改正を県議会2月定例会に提案している。
 だが、多くの医療関係者は、年々医療は高度専門化し、病院には多くの医療スタッフが必要で「手厚い人材配置で診療報酬の加算も得られ、収益は上がる」「定数で縛ること自体おかしい」と指摘、県案は十分ではないと主張している。
 定数の縛りが医師のスキルアップを図るための県外長期研修の足かせとなり、人材流出の要因になっているとの意見もある。
 適切な医療を安定的に提供するには、ゆとりある職員数を確保することが不可欠だ。県は医療現場の意見を十分聞き、県立病院の健全経営を念頭に置きながら、定数増を検討すべきだ。
 また、医療機関を利用する県民のモラル向上も重要な課題だ。軽症でも夜間に救急病院を受診する患者が後を絶たない。安易な利用は重症患者の命さえ奪いかねない行為であり、医療現場に過重な負担を強いていることを考えるべきだ。
 そのためにも普段からかかりつけ医を持ち、家族や自らの健康状態を把握し、相談することが重要だ。医療環境は県民自らの手で守っていくという自覚も求められる。

あれ?なにか琉球新報なのに真っ当なことを言っているように聞こえる…(失礼)というのは置いておくとして、先日も同県立八重山病院の産科休止の話題もあったように、新臨床研修制度発足以来どちらかというと勝ち組に近いとみられていた沖縄においてもやはりこうした問題は多発しているわけですよね。
これに対して様々な意見が各方面から寄せられているのは当然ですけれども、中でもかねて全国的に知られていた公立病院の定数問題というのが取り上げられているのはよいことで、例えば今までであれば実質常勤として勤務しているのに非常勤扱いで給与や保障面でも冷遇されている中堅医師達の不満があちこちの病院で渦巻いていたものでした。
特に臨床研修制度が変わってからは多くの病院で研修医はお客様として下にも置かない扱いになった結果、そのしわ寄せがこうした中堅への負担増となって押し寄せた部分も多々あって、結局のところ公立病院があちこちで崩壊していったと言うのも働いている人間にきちんと報いるという当たり前の人の道から外れたことを続けてきた結果だと言うことでしょうか。
その意味でいつもながらの国家権力による医師強制配置を求めて終わるだけの記事にならなかったのは良いことだと思いますし、「医師たちの使命感に頼り過ぎる医療態勢は健全とはいえ」ないというのは全くその通りであって、無茶な総動員でたとえ短期的には何とかなったとしても決して永続する体制にはなり得ないということを理解してもらわなければなりませんよね。

さて、結局のところ診療報酬がどのように改定されようと医師ら専門職スタッフをなるべく多く抱えることが皆保険制度下の勝ち組へとつながる一番確実な道だということが明らかになってきた昨今、病院崩壊などという差し迫った危機感に迫られずともどこの施設でも医師確保は生き残りに直結する死活問題となってきています。
となると、どうやればもっとも確実に医師を確保出来るかということは大変に重要な情報であるということになりますが、その情報発信ということに関連して先日中高年開業医を主な対象とした情報発信に関しての意識調査が行われていたので紹介しておきましょう。

医師が気にするのは「ネット上の評価」以上に「人づて口コミ」(2012年3月4日サーチナ)より抜粋

  医師・医療従事者向け情報サービスサイト「ケアネット」を運営するケアネットは2012年3月2日、医師会員に対する医療広告への規制やインターネット上の口コミ評価に関する意識調査結果を発表した。それによると調査母体の医師においては、病院の情報公知の手段として医療広告やウェブサイトを利用している人は、8割近くに達していることが分かった。掲載情報としては「専門資格」がもっとも多く5割強、次いで「施設・機器・設備」「専門診療の内容」の順となっている。また、インターネット上の書き込みや口コミ評価については、気になる人が約1/3に達していたが、気にしない医師は6割強と多数派であることも分かった(【ケアネット公式サイト】)。

今調査は2012年2月22日から24日にかけて、「ケアネット」医師会員のうち開業医に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。世代構成は20代0.2%・30代4.7%・40代34.3%・50代45.3%・60代11.7%・70代以上3.8%。
(略)
  医療広告やインターネット上での情報公開、特に後者を行うと、やはりネット上での口コミが気になるところだが、これについては「気になる」という意見を持つ医師は少数派で1/3程度でしかなかった。

  「ネット上の」書き込みの内容を気にする医師はそれなりに心惑わされるところもあるが、多くは「あんまり気にしない」「別にどうでもよい」的な思いを抱いているようである。

●「業者」は医師の元にも続々と

直上で「ネット上の」とわざわざカギカッコを用いたのは、具体的な数字こそ挙げられていないが、「ネット上の書き込み内容や口コミ」よりも「本当の(リアルの、という意味)口コミ」の強力さを身を持って体験しているとの意見が、回答医師から多数見受けられることによるもの。

  元々医療行為は最終的に患者自身が病院に来院しないと出来ないこともあり、医者・病院が対応できる患者は、基本的にその病院の周囲に限られる。当然地域性が強いものとなり、リアルな口コミが有効な手立てとなるのも理解はできる(コンビニやデパートのような「共通ブランド」が無く、品質が個々の病院・医師の個性によるところも大きい)。

  このような状況は賛否両論あるだろうが、「患者さんの口コミが何にも勝る宣伝になると思うので一人一人の診察を丁寧に大事にしたい」「広告より診療が評価されているかが大切だと思った」など、リアルな口コミを得るには結局「口コミされるだけの良いサービスを提供していく」「診療内容や接遇態度が集患に結びついているので、それらを大切にする」という、ある意味当たり前、そして商売の上では基本かつ大切な結論に導かれている点で、非常に心強いものがある(今件は「インターネット経由」での調査という点に注意すること)。

  一方、昨今話題に登った「ステマ」(ステルスマーケティング)や「やらせ」、「問題のある口コミを削除する」などの行為を有料で請け負うという勧誘があったとの意見も多数寄せられている。単なるスパムでたまたま着信したのか、それとも医療関係者であることを知った上での勧誘なのかまでは不明だが、概して回答医師からの反応は悪い。また、そのような業者の存在を自分達へのアプローチで知ったため、ネット上の口コミに対する不信感・価値の低さをますます募らせている雰囲気もある。

  医療行為の結果、それに伴う感想は患者本人の主観によるところが大きく、必然的に口コミも「アク」が強いものとなる。人から人への「リアル」な口コミは、話した人・聞いた人のバックボーンも大きく影響するので、内容への裏付けも確からさに「厚み」が増す。ところがネットの場合は概してその「厚み」が得られす、感情論に走りやすくなったり、上記にある「やらせ」的なものがはびこりやすい環境が出来上がる。

  医療行為は地域社会と密着性が高いという点も合わせ、リリース内でも言及されている「医療機関・医師のネット上の情報開示は、客観視できる情報、基本的項目のみで十分」という言葉も理解できるというものだ。(情報提供:Garbagenews.com)

調査対象が開業医かつ顧客対象の認識ということで勤務医相手とはまた違った視点であるとも思われますが、こうした中高年世代の医師は病院に残るにせよ開業するにせよ管理職としての立場が中心になってくるだけに、情報発信を行っていく立場にある施設の管理者としての意見とも言える点に留意いただきたいと思います。
さて、患者に対するアナウンスという点からすると、当然ながらほとんどの場合患者は医療機関周辺の地域住民であるわけですから住民同士の口コミの影響というものが極めて大きいのは当然であるし、病院サイドが勤務医に対しても平素から患者様からの苦情が云々といったように顧客満足度というものを指標に指示を出していくことは決して故無きことではありませんよね。
ただし病院の評判は当然ながら医師からも注目されているわけですが、こちらの場合全国に散らばっている以上地域の評判など聞けるはずもなく、ネット上での情報や先輩医師からの別な意味での口コミなどが主たる情報源になってしまうのもこれまた当然です。
そして施設の管理者側に立つ年代の人々がこのネット上での情報拡散ということに関して「多くは「あんまり気にしない」「別にどうでもよい」的な思いを抱いている」というのは実感としてもその通りなのでしょうが、仕事をするにもPC無しでは何も出来ない時代にこうした態度を取る人々が上に立つ組織というのは情報リテラシーが低そうだな…という予想は立つんじゃないかと言う気がします。

例えば医師の逃散が相次ぎ医師募集を行っている施設などは全国に幾らでもありますが、そうした病院サイトを見てもどのような勤務条件で医師募集をかけているのかもさっぱり判らない、そしてそうした施設は実際にいってみても基本的な契約条件の明示や36協定すら締結されることなく口約束だけで勤務態勢が決められるという、ちょっと今どきそれはどうなのよと言う施設が多いと指摘されていますよね。
どうせ医師と言えば医局から送られてくるもので、派遣される側も受け入れる側もそこで勤務する、しないで頭を悩ませることの少なかった時代ならこれも通用したのでしょうが、新臨床研修制度が導入されて以来医師も諸条件を情報収集し比較検討した上で勤務先を決めるということが当たり前になってきている時代に、それは完全に乗り遅れていませんかということです。
別に巨大掲示板に常駐してステマをしかけても仕方がないでしょうが、医療機関も地域内に留まらず全国を対象に比較されるようになった時代に、相変わらずローカルな口コミレベルでの評判だけを気にしているようでは「地元自治体住民様は満床でも絶対に受け入れよ」なんて無茶な指示が出る田舎自治体病院と同様、そこで雇われる側にとってはちょっとどうなのかなと思ってしまいます。
医療行為そのものは確かに地域密着型ですけれども、それを行う医師の方は昔から地域密着と縁遠い生活を送ってきたという現実をきちんと直視しない限り、医師集めもいつまでたっても「こんな田舎でも住めば都だよ」レベルの客観性のない勧誘に留まってしまうんじゃないかという気がしてきますね。

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コメント

>>琉球新報なのに真っ当なことを言っている

イデオロギーが絡まない問題ではごく普通の地方紙ですよ

投稿: | 2012年3月 6日 (火) 09時15分

気にするようなら医療過疎化しなかったかもなw

投稿: aaa | 2012年3月 6日 (火) 10時41分

とにかく病院のトップがネット時代の情報管理に対応しきれていないのが気になってます。
なまじネットに情報公開するのが流行だなんて耳学問してくるものだから、何でもかんでもHPに載せようとしてみたりとか。
逆にどうでもいいことばかりで欲しい情報はさっぱり載っていなかったりしてもストレスがたまりますけど。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月 6日 (火) 13時10分

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