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2012年3月14日 (水)

専門外は診るべきではない?!

医療業界では専門医制度というものが久しく以前から改革の必要性が言われていて、どのように改革すべきなのかという議論が総合医というものの位置づけとも絡めて続いていることは当「ぐり研」でも何度か取り上げてきたところです。
一方で医師免許さえ持っていれば何科を名乗っても自由という「自由標榜制」も何かおかしいんじゃないかとこちらはもっぱら利用者である患者側から声が上がっていたところですが、このたび両者を結びつけて議論しようという動きが公の場でも出てきたようです。

自治医大・高久氏、自由標榜制見直しに言及(2012年3月10日CBニュース)

専門医認定の見直しを検討している厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」は8日、関係団体からヒアリングを行った。その後の意見交換で高久史麿座長(自治医科大学長)は、医師免許を取得すればどの診療科も標榜できるとする「自由標榜制」の見直しを検討すべきだとの見解を示した

この日ヒアリングしたのは、八木聰明参考人(日本専門医制評価・認定機構理事)、藤本晴枝委員(NPO法人「地域医療を育てる会」理事長)の2人。

八木参考人は、海外の専門医制度について説明。専門医を医療法で明確に規定している韓国の制度や、国や州政府から完全に独立した連邦医師会と州医師会が運営・管理しているドイツの制度などを紹介した。
これを受け高久座長は、「将来的には諸外国と同じように、トレーニングを受けないと専門の看板を出せない方向に行かざるを得ないだろう」と述べ、自由標榜制の見直しを検討課題に挙げた。池田康夫委員(日本専門医制評価・認定機構理事長)もこれに同調し、「基本領域のどれかの専門医(資格)を取って、それが標榜科とリンクする分かりやすい仕組みにできればいい」との認識を示した。

■高齢者は「診療所をかかりつけ医にできない」―藤本委員

一方、藤本委員は、患者・市民の立場から専門医制度について見解を述べた。
「地域医療を育てる会」は、千葉県東金市、山武市など2市4町で活動。情報紙を発行し、“コンビニ受診“を控えたり、かかりつけ医を持ったりするよう呼び掛けているという。

ヒアリングで藤本委員は、義父のかかりつけ医を診療所にすると、▽複数の医療機関への送迎が必要になり、本人にも家族にも負担が大きい▽入院、看取りに無床診療所では対応できない―などの問題があり、病院をかかりつけ医にしていると説明。地域の医療を守るには、医療機能の分担と連携が必要で、義父のかかりつけ医は診療所が望ましいことを理解していながらも、病院をかかりつけ医にせざるを得ないことを踏まえ、「自分に矛盾を感じている」と述べた。

その上で、「市民が知りたいこと」として、▽「高齢者を総合的に診療し、看取りまでできる医師」の将来的な必要数▽こうした医師を地域に偏りなく配置する仕組み―などを挙げた。

厚労省の専門医についての検討会、自由標榜制の見直しに言及(2012年3月9日日経メディカル)

 厚生労働省は3月8日、「専門医の在り方に関する検討会」の6回目の会合を開催し、海外の専門医制度の現状や地域医療の問題について、関係団体からヒアリングを行った。この日、参考人として意見を述べたのは、日本専門医制評価・認定機構理事の八木聰明氏と、「NPO法人地域医療を育てる会」理事長の藤本晴枝氏。

 八木氏は、米国・英国・韓国・ドイツ・フランスの専門医制度について紹介。韓国では専門医を国家が認定していることや、ドイツでは連邦医師会と各州の医師会が専門医制度の規約を策定し、資格の認定などの運営・管理を行っていることなどを報告した。また、どの国でも医師が偏在する問題点を抱え、なかなか良い解決策がないのが現状だと述べた。

 海外の制度との比較を踏まえ、八木氏は「現在日本では診療科を自由に標榜できるが、将来は専門医を取得した人のみが標榜できるような形にすべきではないか」と指摘。座長の高久史麿氏(自治医科大学長)も同調し、今後検討すべき課題だとした。また、八木氏の報告に対して、委員からは「海外の専門医制度は参考になると思うが、日本では現在の大学教育と連動した制度にすべきではないか」といった意見が出た。

 続いて藤本氏が、患者の立場から見た地域医療の問題点について発表した。藤本氏は2005年に「地域医療を育てる会」を発足させ、千葉県の山武地域で地域医療の現状を紹介する情報誌の発行、地域医療を学ぶ懇談会の開催、東金病院との協働によるレジデント研修などの活動を行っている。

 藤本氏は同会の活動を通して、「コンビニ受診を控えること」「診療所のかかりつけ医を持つこと」を呼びかけてきた。しかし現実には、高齢者が患者の場合、診療科目の少なさや入院・看取りなどの受け入れ体制の弱さなどがネックになり、診療所をかかりつけ医にするのが難しいと訴えた。

 その上で藤本氏は、「今後、高齢者を総合的に診療し、看取りまでできる医師がどれくらい必要なのか、そして医師をまんべんなく配置するにはどうしたらよいかについて知りたい」と述べた。藤本氏が提示した問題に対して、委員からは「患者から見て、医師の専門が何であるか、分かりやすい制度にするのがまず第一だ」などの意見があった。

 次回は、基礎医学や医学教育の専門家などからヒアリングを実施する予定。2012年夏には、これまでの議論の中間取りまとめを行い、2012年度末には報告書を発表する意向だ。

医師同士の間でも知っている先生ならあの先生は何が専門だと判るでしょうが、知らない先生に紹介する時に専門医を持っているから大丈夫だろうと送ってみたら全くの素人で対応出来ないと言われた、なんてことはままあるもので(本来はそういうことがあるということ自体も問題なのですが…)、とりあえず学会に上納金を納めれば取れるというなんちゃって専門医資格は今後NGになっていくのは確かでしょう。
ただ他ならぬ自治医大の学長が標榜診療科の専門医必須化に同調したというのがどういうことなのかと困惑しているのですが、もっぱら僻地診療を担当する自治医大卒業生にとって都市部の基幹病院での研修歴だとか、定期的な学会参加が必須の専門医というシステムは相性が悪く、せっかく後期研修で取得した専門医資格も更新できずに手放したという方々も多いと言いますよね。
特に前述のような問題点が指摘されるようになって以来、専門医試験の受験資格も年々厳しくなっていますから、どんなに経験を積んで知識や技能があってもただ学会認定施設での勤務年数が足りないばかりに専門医が取れないというケースが多くなっていますが、そうなるとただでさえ最新医療に乗り遅れると敬遠されやすい田舎の医療機関は今後ますます忌避されるということになりかねませんよね。
まして地域の開業医の先生が今までは何科であっても手広く初期診療を担当してくれていたものを今後は標榜診療科も制限されるとなると、藤本委員の言うように複数の疾患を抱える患者さんはそれぞれの専門医を抱える大きな施設でしか診てもらえないということにもなりかねず、「病院ではなく診療所をかかりつけ医にしましょう」などという従来の政策との整合性が問われかねません。

中医協などもそうですが、当然ながらこうした会合で呼ばれる人たちというのは国の意向を反映した思想を持っている人たちばかりなのは常識ですから、国民なり現場なりの声を聞くといっても実態は国の意向を聞かされていると考えておくべきでしょう。
そうした中で矛盾数多を抱える話が出てくる背景を深読みすると、かねて国としては医師の動向をコントロールすることに苦心してきたのは周知の事実ですが、どうやら総数管理と診療報酬による誘導だけでは地域性や診療科毎の医師数を管理することが出来ないと自覚しているらしい、となれば次に出てくるのは診療科毎の定員制という昔ながらの議論ということになりますよね。
この地域の○○科は何人までと言ったところで、好き勝手に診療科を名乗れるのであれば何の意味もないことは当然ですから、まずは医者の属性をいずれかの診療科所属に固定させる、そして次の段階では専門医資格の実質的な国家資格化なりで定数コントロールを試みてくるというシナリオも見えてきます。
将来的には実質的な医師配置強制化として、現在の病床数のように地域ごとに各専門医の定数を設定しておいて管理するということも考えているのかも知れませんが、ただでさえ下がりがちな医師のモチベーションを考えるとあれをするな、これはダメではなくて、例えば専門医なら資格を取ることでドクターフィーが加算されるなり何らかのメリットがあるという方向に誘導した方がいいんじゃないかなとも思いますけどね。
役人さんも賢いのでしょうが医者だって馬鹿ばっかりってわけでもありませんから、医師なら何でも診られなければとローテート研修を必須化したり近ごろ総合医をやたらヨイショしている一方で、まるで専門外の患者は断れと言わんばかりの話が飛び出してくる矛盾は感じないはずもないんですが…

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コメント

専門医の見直しも標榜科の規制も、個別に見ればそんなにおかしな話じゃないんですけどね。
本当に厚労省が裏で糸を引いて点を線に結びつけようとしているのなら手腕を見直しますけど。

投稿: ぽん太 | 2012年3月14日 (水) 08時56分

答えを解く鍵は「総合診療医」だと思います。
日本専門医制評価・認定機構の構想は、「私は眼科医です」「内科医です」と「私は総合診療医です」という言葉を等価にしようとしているわけですし、高久氏の発言は、自治医の卒業生も「総合診療専門医」が取得できるように制度設計の調整がついたということではないでしょうか。
藤本氏の話は、だから今から総合診療医を育てるんです、という話の枕ですね。

投稿: JSJ | 2012年3月14日 (水) 09時12分

総合医ってそんなに数がいるものかな
忙しそうな救急専門医も結局は単なるゲートキーパーだって言われてるし診断がついたら専門医がみるだろうに
それとも自治医が逝く田舎は全部総合医だけで回すつもりなのか?

投稿: 柊 | 2012年3月14日 (水) 10時01分

>総合医ってそんなに数がいるものかな
遠大な計画ですよ。(仮称)総合診療医=在宅医の一期生が誕生するのが今のところ2018年の予定です。
日本専門医制評価・認定機構はその総合診療医を内科や小児科、眼科等と並ぶ専門医資格にしようとしています。

>それとも自治医が逝く田舎は全部総合医だけで回すつもりなのか?
たぶん厚労省はそのつもりだと思います。

ちなみに私のスタンスは ”生暖かく見守っていく” です。

投稿: JSJ | 2012年3月14日 (水) 10時50分

藤本委員の発言はかかりつけ医について理解せず発言をしているのか、理解してあえてああいう発言をしているのかが気になります。

投稿: クマ | 2012年3月14日 (水) 10時54分

総合医へと話がつながっているのは妥当な解釈ですし、八木氏ら日本専門医制評価・認定機構のスタンスも理解できます。
良い悪いは別としてうまく話を組んだなと言うのでしょうか、正直こういう搦め手があったかと目から鱗ではあるので、シナリオを書いた人には率直に称讚を送りたいです。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月14日 (水) 11時05分

まず日本は学会が多すぎ。で後から後から続々と学会が出来てそれぞれ専門医制度が出来るわけで、きりがないですね。集金目的でしょうが。
例えば日本●○学会専門医しか●○は診れないなんてルールができれば、ただでさえ稀少な学会専門医への患者集中がますます増幅され、専門医たちが過労死するなんて笑えないことになりかねないですね。学会によってはまず入会自体が学会コネクションや会員紹介などが必須であり一般医師には非常にハードルが高いものになっています。昔からの爺開業医・町医者さまがたで学会認定医など取得していないなど大多数なわけですから、彼らは本当に風邪しか診れない医者になってしまいます。さらにその風邪受診すら抑制しようという動きもあるわけで。
現行開業医の儲けをさらに抑制して潰すのが狙いかもしれませんが、そうなると益々病院だけに患者が殺到して混乱と医療崩壊が促進されそうで
同じく総合診療医資格なるものについても60~70にもなってわざわざ金を払って新たに学会に入会して資格を取得しようなんて開業医はそれほど多くないと思われます。今のOECD加盟国で絶対的に少なすぎる医師不足の日本において、資格で診療科を縛るというのは自殺行為ですね。
老開業医であれば今までの貯金も十分おありでしょうから、自身のことだけ考えれば早めに引退して、税金の高く何かとリスクが多く暮らしにくい日本などサッサと脱出して東南アジアあたりでリタイヤ生活する人も今後続出するでしょう。

投稿: 元神経内科 | 2012年3月14日 (水) 14時02分

集金目的の学会もムカつくが、その金が天下り団体に行くようになるのもムカつく
どっちにしろムカつくな

投稿: kan | 2012年3月14日 (水) 15時46分

これが通るようでしたら、
看取りの専門医もできるでしょうね。

馬鹿ばかしい議論をしていることを理解してほしいものです。

投稿: 重 | 2012年3月14日 (水) 19時28分

皆さん懸念される通り、何も医師不足の時期に急いでやるべきことではないはずですけど。
やっぱり次のステップへの布石という意図があるんでしょうか。
まさか思いつきでやっているだけでグランドデザインを誰も考えていないってこともないですよね。

投稿: ぽん太 | 2012年3月15日 (木) 08時34分

>思いつきでやっているだけでグランドデザインを誰も考えていない

全くその通りで、そこが根本的な問題でしょう。
日本という国のお上は殆どそういう人ばかりではないかと感じます。

投稿: 元 | 2012年3月15日 (木) 10時17分

好意的に解釈すれば何を目指すかのコンセンサスもないから方針も決められないということなんでしょうけどね。
それじゃ真っ先に目指すところを決めようという話にならないのがこの国の不思議です。

投稿: 管理人nobu | 2012年3月15日 (木) 10時34分

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