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2012年2月 1日 (水)

金曜入院は御法度になるんだそうです

来年度の診療報酬改定に向けた具体的な話が日々進んでいるのですが、よく見ていますと「これは一体何だ?」と思うような話も混じっているようですね。

金曜入院と月曜退院が多い病院、診療報酬減 厚労省方針(2012年1月25日朝日新聞)

 厚生労働省は、入院期間が長くなりがちな「金曜入院」や「月曜退院」などの割合が高い病院について、病院側が受け取る入院基本料を減額する方針を固めた。不必要な医療費を抑制するねらい。診療報酬改定を議論している中央社会保険医療協議会で了承されれば、4月から実施する。

 厚労省によると、金曜日に入院した患者の平均入院日数は18.14日で、曜日別で最長。最も短い水曜日の入院患者より3日余り長い。一方、退院の曜日別では、月曜日が17.79日と最も長く、最も短い土曜日退院とは3日近い差があった。

 金曜日の入院は全体の14%、月曜日の退院は11%で、曜日別で見ると少なめ。ただ、厚労省は、治療を行わないことが多い土日を挟んで入退院させることが、入院日数を長くして医療費を押し上げる一因になっていると判断。高齢化で医療費が年々増えるなか、効率化のために見直すことにした。

「金曜入院」「月曜退院」→診療報酬減額へ(2012年1月28日読売新聞)

 厚生労働省は、入院期間が他の曜日より長くなりがちな金曜の入院患者と、月曜の退院の患者の割合が高い医療機関に対しては、2012年度から診療報酬の入院基本料を減額する方針を固めた。

 27日の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)に案を提示した。不要・不急の入院をなくすことで、患者の自己負担を軽減し、医療費抑制につなげる狙いがある。

 入院基本料は、医療機関に対し、患者1人あたり1日9340~1万5550円が支払われる(一般病棟の場合。看護師の配置数などによる)。だが、多くの医療機関は土日が休診で、本来なら土日に入退院すべき患者でも金曜に入院させたり、月曜に退院させたりするケースが少なくない

 平均の入院期間は、金曜入院が18・14日と水曜入院より約3日長く、月曜退院が17・79日と土曜退院より約3日長い。このため、厚労省は、土日に高度な手術を行う医療機関を除き、土日の入院基本料を減らすことにした。

診療報酬改定めぐるパブコメ締め切り- 入院日による減額、「そこまでやるか」 (2012年1月26日CBニュース)

 厚生労働省は25日、2012年度診療報酬改定の中間整理案(現時点の骨子)へのパブリックコメント(意見公募)を締め切った。10年度改定の前と同じ形式で、応募件数や主な内容などをまとめ、中央社会保険医療協議会(中医協)に2月上旬までに報告する方針だ。全国自治体病院協議会(全自病)では、入院期間が長引く傾向があるとして、検討が続いている金曜入院などの患者の入院基本料の減額に疑問を呈するなど、13の意見を提出した。

 同省の担当者は、「集計は業者に依頼している。件数や内容はまだ把握していない」と話している。
 全自病は、▽入院患者の他医療機関受診▽同日複数科受診▽難度が中程度以下の外科手術▽悪性腫瘍患者のターミナルケア▽内科系の高度検査や植え込み型医療機器の調整▽チームで糖尿病患者の透析移行を防止する医学管理▽医療観察法が適応される患者の長期入院-の評価などを求めた。このほか、「チーム医療が前回に続き評価されたのは良い」としたが、金曜入院や月曜退院などの減額には「国がそこまでやるか」と疑問視した。

 日本医療法人協会や全日本病院協会では、組織としての意見は提出せず、会員らに意見提出を呼び掛けた。

また妙な事を言い出したなあという感想は置いておいて、まずは基本的なところですけれども病院が週末休みなのは外来診療だけで、入院業務は365日24時間やっておりますので念のため(例えば病棟で点滴をしていたりとか、翌週の検査や手術のための説明をしたりということは週末にも行われています)。
それにしてもこの話、良い方に考えれば週末に空きベッドを作りやすくするという効果もあるやも知れずで、今までであれば週末はベッドを動かすのも難しく紹介患者も受け入れ困難だったところを受け入れる余地が出来るといった可能性もないことはないでしょうね。
しかし勤務医にしてもわざわざ週末に患者を入れたくて入れるわけではないのは当然で、どういう経路や理由で入院しているかを考えなければ意味がないわけですが、例えば休日前、それもゴールデンウィークや年末年始などのような長い休みの前になると開業医からの入院要請が急に増えるという経験はどこの病院の先生も持っていることだと思います(苦笑)。
開業医側の要因ばかりではなく、例えば家族にしても休日前になると入院させてくれと言い出す例が特に高齢患者において見られますけれども、いずれにしても勤務医にとっては診療報酬の動向も睨んだ診療態度が求められる一方で、そもそもこんなことまで国が決めるべきなのかというパブコメの声ももっともでしょうね。

基本的なところとして診療報酬による患者動向の誘導ということに関して言えば、以前にも大きな病院に外来患者が集まるのは無駄な検査ばかり増えてよろしくない、まずは開業医にかかるようにするべきだと病院側の診察料を安くし、開業医側は高くするという設定をした結果、患者は安くて検査設備もそろっている大病院にますます集中するようになったという実例がありました。
患者側からすれば安くなったのだからもっと利用すべきだという判断は当たり前なのですが、相変わらずこの方式で患者誘導が出来ると国が考えているということは、すなわち病院側が悪者になって「あんたは儲からない患者なんだから、さっさと出て行ってくれないと迷惑なの」と患者を追い出すことを期待されているということですよね(「患者の自己負担を軽減し」とはよく言ったものですが)。
もちろん病院の経営陣からすれば「金曜にはなるべく患者を入院させるな」という指示を出したくなる話でしょうが、別に金曜入院や月曜退院が数字の上で多いというわけでもなく、どこからどう見ても医療のあるべき論などとは縁遠い単なる数字あわせの議論であるだけに、診療報酬決定のあり方についての迷走ぶりがかえって浮き彫りになってきたようにも感じてしまいます。

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コメント

愚かとしか言いようがない愚策
中医協がこれをどうもっともらしく議論するかが楽しみだw

投稿: aaa | 2012年2月 1日 (水) 11時19分

金曜日の夜の救急端末を午後10時くらいまで「受け入れ不可」にしておいて
救急外来で、レントゲンやらCTやら採血結果出るのを待って、実際に
入院は、日付が土曜日にかわってからにすれば いいんじゃないの。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年2月 1日 (水) 12時50分

愚策の一言に尽きますね。厚労省って暇なんですかね。他にすることないのでしょうか。

投稿: あぽ | 2012年2月 1日 (水) 13時57分

>入院は、日付が土曜日にかわってからにすれば いいんじゃないの。

ただ病院としては前日からの入院扱いにしておいた方が余計にコストがとれるという事情もあるわけですから。
もっともこんなことまで言ってくるのなら遠からず「夜になってからの入院なのに一日分の料金をとるのはおかしい」とクレームがつきそうですが。
とにもかくにもここまで来ると「国がそこまでやるか」と言うしかないです。

投稿: ぽん太 | 2012年2月 1日 (水) 14時42分

完治していなくても金曜日が来ればなかば強制的に退院させて容態悪化とか...
金曜日は病院上層部の方針でどこの病院も救急患者断りまくりで搬送先がなくて患者死亡とか...
いろいろ問題が起こりそうで、ますますこれまで以上に急性期病院が火だるま状態になりそうで...
日本では急性期病院で働く勤務医をリスクから守るものは何もなく丸腰状態なわけで...
これ以上急性期病院からの勤務医離れが進まなければいいですが...まあ無理でしょうね...

投稿: 元神経内科 | 2012年2月 1日 (水) 14時50分

別に金月の入退院が多いわけではなくむしろ少ないと言っているのに、これをどう正当化するつもりなんだろうか?
金月入退院と在院日数に相関関係が認められたとしても両者に因果関係があると立証されたわけでもないし、ましてや診療報酬を削って何がよくなると言う根拠もないのだが

投稿: kan | 2012年2月 1日 (水) 16時08分

結局は現場がどの程度これに対応するかでしょう。
意味のない入退院はもちろん避けるべきですが、曜日別に見るとむしろ金曜入院や月曜退院は少ないくらいだと言うのですから、すでに無駄な入退院は抑制されていたと見るべきでは。
そこからさらに削れと言われれば必要な入退院を削除していくしかないでしょう。
どうせやるなら曜日によってカルテナンバーの偶数番、奇数番を規制するようにしてみてはどうですか?(苦笑)

投稿: 管理人nobu | 2012年2月 2日 (木) 08時51分

データそのものに疑問をもちます。
DPCデータ(約460万)から、この曜日別に解析したデータ(約80万)を使用したかの理由がないです。
さらに、ハッピイマンデー法があり、日本では月曜日
は他の平日(火曜日~金曜日)よりも休日が多いです。
これをどう調整されたのかの記載がありません。


投稿: 京都の小児科医 | 2012年2月 4日 (土) 07時04分

全くおっしゃるとおりだとは思うのですけれども、この場合はデータそのものはあくまでも目的のための手段でしょうから、そうした検証にはあまり意味がないかも知れません。
ヤ○ザが因縁をつけるのに当日の通行量がどの程度で、通常程度の注意を払って歩いていれば通行人同士の接触が起こらない状況であったか否かの立証は全く必要なく、単に肩が触れたという事実のみが重要なのと同じです。
そう考えると誰もそんなことは考えもしていなかった中で、膨大な情報の中からこのデータを見つけ出してきた担当者は給料分のいい仕事をしたと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月 4日 (土) 07時49分

管理人様
ありがとうごさいます。
もしかしたら実は医療関係者の間では管理人様のような考え方が一般的のような気もしてきました。

厚生労働省御担当者様 たいへんよくできました。


下記、蛇足

BMJ 1998
http://www.bmj.com/content/317/7174/1680.full?view=full&pmid=9857123
Influence of superstition on the date of hospital discharge and medical cost in Japan: retrospective and descriptive study
というのがあります。
これは、
「一部の患者で大安の日に退院する傾向にあることを示し、迷信や縁起のようなものが臨床上の意思決定に影響を与え、在院日数や医療費に少なからず影響しうること」を示した。 日本からの発表です。

投稿: 京都の小児科医 | 2012年2月 5日 (日) 20時01分

大安の件はわりあいに有名ですけれども、それを受け入れてきたのも医療の側であったという事実からは目をそらすわけにはいかないと思います。
医療の中に今も存在する何となくの根拠のない部分を見直す契機になるという意味では、今回一つの問題提起にはなったとも捉えられるのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月 6日 (月) 08時51分

宗教上の理由で輸血を拒否するのは(例外はあれど)否定されないのに、六曜や風水などで特定の退院日などを希望されるのは問題、というのも個人的には変に思います。
非科学的なものを信じると言う点では似ているような気がするのですが、なぜこうも扱われ方が違うのでしょうか?

投稿: クマ | 2012年2月 6日 (月) 09時03分

確かに差別的ですけど、その点はやはり希望する数の問題が大きいのでは。
輸血拒否がごく稀なのと比べて大安吉日での退院を希望するとか、最近は減りましたが保険の関係で入院をもう少し伸ばして欲しいという希望は圧倒的に数が多いですから。
ごく一部の人間であれば特例として認められても、多くの人間がそういう理由で退院延期を希望すると急性期病床はベッドが回らなくなってしまいます。
ただ、そう言う希望がある方は有料特室にかわってもらってある程度の金額を負担してもらうetc…の妥協点は探せるかも知れないですね。

投稿: ぽん太 | 2012年2月 6日 (月) 10時20分

もう一つは、輸血の方は何度も裁判になったくらいで、医療従事者の方も関わったらヤバイという認識があるんだと思います(苦笑)。
しかし「仏滅に退院を強要されて精神的苦痛を被った」なんて訴訟も理屈の上ではありなんでしょうが、実際に訴えてみると勝ち目はあるもんでしょうかね?
実際に田舎病院では今でも仏滅退院は避けられている場合もあるわけですから、下手すると「社会通念上仏滅の退院は避けることになっているという考えには一定の蓋然性が認められ」なんて言われるかも知れませんけど。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月 6日 (月) 14時43分

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