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2012年2月10日 (金)

被災地に最初の復興特区を承認

震災からの復興ということに関して、すでに皆さんご存知のようにこの二月9日から宮城、岩手の両被災県から申請されていた復興特区が国によって認定されました。
まずは第一弾ということで今後さらに様々な特区の申請があるものと思われますが、何事も規制が厳しい今の日本にあって新しいやり方にチャレンジする場としても活用できそうな話だと注目しています。

復興特区1号は宮城と岩手、9日に認定(2012年2月7日読売新聞)

 平野復興相は7日午前の閣議後の記者会見で、東日本大震災被災地に規制や税制などの特例を設ける復興特別区域(復興特区)の第1号として、宮城県が申請した「民間投資促進特区」と、岩手県が申請した「保健・医療・福祉特区」を9日に認定すると発表した。

 即日適用する。

 民間投資促進特区は、被災地に進出する企業の法人税を5年間免除する内容。宮城県が県内34市町村と共同で申請していた。

 保健・医療・福祉特区は、医師や看護師の配置基準緩和などが柱で、岩手県と県内の全33市町村が申請した。

 復興特区は、企業進出に税制上の特例措置を設ける「あおもり生業(なりわい)づくり復興特区」(青森県)、税制優遇措置を認める「産業再生特区」(岩手県)も申請中で、政府が検討を進めている。

医師配置基準など緩和、初の復興特区認定へ- 岩手と宮城が対象(2012年2月8日CBニュース)

 東日本大震災の被災地における規制緩和などを認める「復興特区」の第1弾として、政府は9日、岩手県と宮城県が申請した特区を認定する。岩手の特区は、医療者の配置基準を県全域で緩和し、患者の受け入れや医師の確保が困難な病院の運営を支援することが柱で、期限は同日から2017年3月まで。一方、宮城の特区では、医療機器を含む製造業を後押しするため、県内の34市町村の工業用地を「復興産業集積区域」に指定し、進出企業に対して税制の優遇措置を認める内容だ。

 岩手の特区では、病院に配置する医療者数を算出する際の基準となっている患者と処方せんの数について、「前年度の平均値」とする現行の基準に代わって、震災発生から半年以上経過後の「直近3か月の平均値」に改めるほか、医師の配置基準を通常の90%相当に緩和し、これらは県全域で適用する。
 また、調剤薬局やドラッグストアなどを整備するため、国が定める構造設備基準のうち、▽薬局の面積が概ね19.8平方メートル以上▽調剤室の面積が6.6平方メートル以上▽一般用医薬品の店舗販売業の店舗面積が概ね13.2平方メートル以上―とする面積要件について、陸前高田市や大船渡市など沿岸部の12市町村で適用除外とし、用地確保が困難となっている現状に配慮する。
 さらに、介護老人保健施設(老健)と特別養護老人ホーム(特養)の医師配置基準を弾力化。具体的には、老健の医師配置基準を算出した際の小数点以下を対象外とするほか、特養に関しては、医師の配置を義務化しない。また、指定訪問・介護予防訪問リハビリテーション事業所の開設者要件を緩和し、病院や老健などを運営する法人以外の開設を許可。いずれの措置も、沿岸部の12市町村に限って適用される。

 一方、宮城の特区に関しては、進出企業による設備投資や被災者の雇用などで税の特例を認める。全集積区域(389か所)のうち、石巻市や南三陸町など、沿岸部の15市町(188か所)については、法人税も免除される。期限は16年3月末まで。それまでに指定されれば、その後5年間、税制の特例措置が受けられる。

記事にもあるように宮城あたりでは五年間法人税負担をゼロにするなど企業誘致も盛んに行う予定だそうですが、医療の面で見ると岩手県による医師配置基準の緩和など人材確保難に配慮した諸内容が何より注目されますよね。
岩手県と言えば県立病院再編計画を立ち上げたことで当「ぐり研」でも久しくその行方を追ってきましたが、元々が広い県土に住民が散在している中を多数の県立病院が地域医療を支えているという状況で、当然ながら国が想定している通常の医療環境とはいささか異なった状況にあったということです。
お約束の医師不足などもあって各地の病院を診療所に「格下げ」するなどの対応によって必要医師数を削減し、その分を基幹病院に集中するといった大胆な再編を行ってきたわけですが、老健なども含めて医師配置基準が緩和されれば今までよりもさらに弾力的な施設運用が可能になりますよね。
基本的には震災からの復興を目的としたものですから、例えば老健等への基準緩和は沿岸部市町村に限るという制限があるとは言え、県内の人材面でのやりくりを考えると実質的には全県的な影響が及ばずにはいられないでしょうし、当然ながらかねて問題となっていた県下の医療再編ということとも絡めての話になってくるはずです。

ただ計画を拝見していて気になるのは基本的には現在のシステムを少し運用しやすくするというマイナーチェンジの範疇にとどまっていることで、これは現在の県内における医療リソースをより効率的に使っていこうという守りの姿勢に他なりませんよね。
以前にも「被災地を医療特区に」ということを書きましたが、言葉は悪いですが震災を名目として大胆な規制緩和も許される空気であるわけですから、単に内向きの緩和ではなく例えば県下に限って医療機関の経営要件を緩和し営利的な参入も含めて認めていくだとか、あるいは混合診療もありにしてみるだとか、復興のみならず全国のモデルケースになるようなことにも挑戦してもらいたいですね。
政治の世界では大阪や名古屋といった地方からの改革が最近トレンドになっていますけれども、まずは小さな地域で特例として新しいことにチャレンジしてみて、それがうまく行くようであるなら全国的に広げていくというやり方の方が、何でもお国が旗を振って全国一律でやるよりはローリスクかつ柔軟なアイデアも出やすいんじゃないかという気がします。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

今までも 配置基準ギリギリで回っていた=重症患者は少ない、ということならいいですが、
医師の配置基準を90%にするということは、医師に対して今までより10%増しの患者を診ろ、ということですよね。
これって、どうなんでしょう?

投稿: JSJ | 2012年2月10日 (金) 08時25分

当然のことながら、期限付きの緩和だと思うのですが、期限が切れた時までに
医師が確保できるようにも思えないのですが その時はどうするんだろう。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年2月10日 (金) 09時19分

>これって、どうなんでしょう?

とっとと逃げろって事ですよw。言わせんな恥ずかしいww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年2月10日 (金) 10時13分

もとより非常勤で回していたような施設が主な対象になるんじゃないでしょうか。
ただ名目医師数よりも当直などの実業務がどれくらいあるかが負担感に直結しますからね。
医師数が少なくて済むとなると当直も今まで以上に増えてしまいます。
いっそ田舎の小病院は診療所並みに当直医を置かなくていいようにしたらどうかな。

投稿: ぽん太 | 2012年2月10日 (金) 10時17分

>とっとと逃げろって事ですよw。言わせんな恥ずかしいww
でも妹さんには ちゃんと言ってあげてくださいね♡
家族といえど、口に出さなきゃ伝わらないってこと ありますよ♡♡

投稿: JSJ | 2012年2月10日 (金) 10時42分

どうせ最初から医師不足だったのですから、実態に即してルールの方を改めただけとも取れますね。
現状追認で終わっても改善にはなりませんから、もう一段階アイデアが必要になるはずです。
ただある程度確実に効果が見込めて即効性もあるとなるとなかなか…

当座確実な手としては個々の医師よりも、法人など経営側に対して働きかける方が話が早いかも知れません。
昔の医局全盛期に地域医療が何とか維持出来ていたのも、行くだけでなく帰りが担保されていたからこそですし。
それこそ亀田や徳洲会といった大手組織のサテライトをあの手この手で誘致するのもありですか。
民間が入った分は公立をさらに整理しなければ意味がありませんが。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月10日 (金) 10時58分

いや、この規制緩和の内容は、他ならぬ経営者にとってのアメだと思います。
あとは 緩和した分、医療レベルを下げるのか、それとも現場が余計に働いて医療レベルを保つのか、ということだと思います。

投稿: JSJ | 2012年2月10日 (金) 11時12分

>>いや、この規制緩和の内容は、他ならぬ経営者にとってのアメだと思います。

勤務医にとってのメリットってありませんし、それどころか少ない人数で医療の質を
維持しようとしたら逆に労働強化ですからね。ちゃんと時間外分の割増賃金を払うとか
思い切って住民税免除くらいしないと。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年2月10日 (金) 11時21分

震災前を復元しようとするから、こういう政策になるのでしょう。
でも「医師不足」も まんま復元されるわけです。

ここはむしろ、基準を強化して、施設の統廃合を促進してこそ、百年の大計と呼べるかと思います。
そして、スタッフを沢山かかえても経営が成り立つようにする方向にこそ、規制緩和なり、財政支援なり行えばいいと思います。

投稿: JSJ | 2012年2月10日 (金) 12時01分

>家族といえど、口に出さなきゃ伝わらないってこと ありますよ♡♡

散々口に出したんですけど伝わらなくてですね、これが…。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年2月10日 (金) 12時25分

結局は医師にとってその土地が魅力的だと見えるかどうか、これにつきるのでは
これから福島が特区申請した場合に比較すればおもしろいかな

投稿: kan | 2012年2月10日 (金) 13時09分

医師の基準を下げるよりも、一時的でいいので被災地医療機関の診療報酬を増やせば(患者の自己負担は据え置きで)、医療機関の復旧が幾分早くなるような気がしますけれど・・・

投稿: クマ | 2012年2月10日 (金) 13時28分

診療報酬に関しては行政と言うより保険者の意向が強く反映されるので、同意を得ないことには難しいんじゃないですかね。
ただ指定した病院の医師には県からボーナスを出すという形ならば可能だと思います。

投稿: ぽん太 | 2012年2月10日 (金) 14時27分

田舎の小さな病院に行くほど医師よりもコメディカルがどれほどしっかりしているかが働きやすさに大きく影響します。
医師その人への対策だけでなく周囲にも配慮してもらわなければ仕事が回らないと思うのですけど。

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年2月10日 (金) 16時11分

田舎ではコメディカルの能力が意思の働きやすさに影響するというのは大いに同意します。
医師も一日の時間は24時間だし働ける時間は限られているので、周りがどれだけ「自立的に」サポートしてくれるかでその病院の医療レベルは大きく変わってきます。

規制緩和や行政からの援助もいいのですが、おそらくその分書類が大幅に増えます。
今でも患者さんのところに行く時間や診療計画のための考察時間などは足りない(というより全くない)状態なのに、書類の提出が遅いなどの苦情が行政や保健所あたりから来ることになるでしょう。

ふぅ。

投稿: 現僻地内科医 | 2012年2月12日 (日) 09時17分

そこで噂のNP導入ですよ
まずはろくに医師もいない僻地でお試しってことで

投稿: たっちゃん | 2012年2月12日 (日) 18時31分

福島では亀田ら有名どころ総掛かりで医師集めを行うそうです。
しかしこれは医局の肩代わりとも言えますが、見方によっては医局から人事権を奪い取ろうという動きでもあるわけですよね?

被災地医療でキャリア積もう 南相馬 若手医師募る
http://megalodon.jp/2012-0212-1520-02/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012021290145440.html
 このため、震災後の南相馬市の医療を支援している民間の亀田総合病院(千葉県鴨川市)が医師の全国公募を提案し、南相馬市の桜井勝延市長も賛同。市立病院の金沢幸夫院長(58)は「医療で被災地の復興に直接貢献できる喜びがある。未来の医療を担う優れた人材を育てたい」と意気込む。

 今回は、徹底した患者目線の病院経営で知られる医療法人鉄蕉(てっしょう)会の亀田隆明理事長や、日本を代表するゲノム(全遺伝情報)研究者で東大医科学研究所の中村祐輔教授ら、臨床と研究の第一人者となる医師十三人が協力。現在の職場から被災地に飛び込む医師の最大の悩みともいえる「将来の転職」を支援する。

 亀田総合病院の小松秀樹副院長は「(勤務医の人事や育成を担ってきた)医局を離れても、能力次第で立派なキャリア形成ができることを理解してほしい」と訴えている。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月12日 (日) 20時04分

なぜ、昔の医局が僻地に医師を送り込めたのか その理由のひとつは「片道切符」でなくて帰ってからのポストが
保証されていたからだと思います。 僻地勤務も何年間と期間を限って、そのかわり帰ってからのポストを保証
してもらえたから 辛抱出来たと思います。 それに変わるシステムを亀田さんらがされるというのなら興味深いですね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年2月13日 (月) 10時57分

都道府県の医学部定員が決まっているのだから、全国横断的に大学から離れた医師派遣システムが出来れば地域にメリットはある
ただ亀田側にも思惑があるだろうから、それがどんなものか見えてくるまでは判断は保留かな

投稿: kan | 2012年2月13日 (月) 11時07分

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