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2012年2月24日 (金)

長生きするのもありがたくない時代?

近年は日本でも年金問題と言えばその財源をどうするのかと頭の痛いところですが、高福祉国家として知られるスウェーデンから先頃こんな話がありました。

67歳から一気に…「75歳定年」発言が波紋 90%以上が反対/スウェーデン(2012年2月8日スポニチ)

 高福祉や年金改革の成功で知られるスウェーデンで、ラインフェルト首相が地元紙に対し、年金財政の維持のため、定年退職の年齢を現行の67歳から75歳に引き上げることを示唆、国民から反発が巻き起こっている。

 同首相は7日付の地元紙のインタビューで「70歳、75歳の人がもっと働くように心理的な変化が必要だ」などと指摘。高齢化の進行で年金受給者が増え、財政を圧迫するとの問題意識から、福祉の水準を維持するため、75歳まで働き続けるよう国民に促した

 同国の法定退職年齢は67歳。年金の支給開始は61歳以降であれば自由に決められ、65歳での退職が一般的とされる。別の地元紙がインターネットで行った世論調査では、首相の提案に90%の人が反対した。

 欧州各国では、長寿化や歳出削減のため退職年齢を引き上げて、年金支給を60歳代後半に遅らせる動きが相次いでいるが、主要先進国で75歳に引き上げた例はない。(共同)

日本でも先日「年金支給開始を70歳まで引き上げよう」なんてことを厚労省が言い出して大騒ぎになりましたが、日本では老後の心配が一切ない夢のような高福祉国家だと喧伝されているスウェーデンにおいても全く同じ構図が見られるあたり、やはり人口高齢化に伴う社会福祉関連費用の高騰は先進国共通の課題になっているようですね。
昔からSFの世界では低重力環境の宇宙での生活が一般化してくれば身体的活動性の低下があまりハンデにならなくなり、老人の時代が来るんじゃないかという話がありますけれども、個人的には家庭用ゲーム機の一般化やPCの普及によって居ながらにして作業をすることに慣れた今の中年以下の世代が高齢化する頃には、高齢者の社会進出も今より物理的ハードルはある程度下がるんじゃないかと思っています。
逆に言えばそれ以上の体を使って働いてきた年代、とりわけ日本ではまさに眼前に迫った団塊世代の高齢化ということが喫緊の課題になっているわけですが、年金システムを積み立て方式にするにせよ税金で賄うにせよ、やはりどこかの団塊で給付の抑制ということにも手をつけざるを得ないのでしょうか。
高度成長やバブル全盛期を経験し優雅な老後をイメージしていた方々には思ったよりも厳しい老後が待っていると落胆するかも知れませんが、それでも今の若年世代のように生まれたときから一度としていい目をみたことがないという人々に比べればよほど幸せでもあったとは言えるのでしょう。
ところで欧州諸国と言いますと日本とは少しばかり異なる死生観を持っている国々も多いようですが、こうした世知辛い世相も反映してかこんなニュースも出ていますね。

昨年の安楽死、3割増450人=長寿化で末期がん患者増加-スイス紙(2012年2月19日時事ドットコム)

 【ジュネーブ時事】19日付スイス紙ゾンタークスツァイトゥングによると、2011年にチューリヒ州にある同国で代表的な二つの安楽死ほう助団体で命を絶った人は約450人に上った。正確な数は不明だが、10年よりも3割程度増えたとみられる。
 同紙が州警察の集計として報じたところによれば、「ディグニタス」のほう助で安楽死したのは前年より35%多い144人。スイス人は5人で残りは外国人だったという。スイス人だけを対象とするもう一つの団体「エグジット」で自ら死を選んだのは300人以上と約17%増えた。
 エグジットの関係者は同紙に対し、安楽死した患者の平均年齢が76歳だったと指摘。寿命が延びる一方で、がんなどを患う高齢者らが増え、安楽死を望む人が増えていると分析している。
 スイスでは末期がん患者らが自ら薬物を摂取することなどによる安楽死が認められている

安楽死幇助団体と言うとなんだ、スイスではそんなものがあるのかとびっくりしますけれども、実はスイスという国は公的に安楽死が認められているということから、国内のみならず他国からも安楽死を望む人々が流入してくると言う安楽死大国でもあるのですね。
ちなみに実際にどのようにやっているのかですけれども、記事にもある外国人オーケーの「ディグニタス」ではお金を払い診断書と死にたい理由を書いて送って会員となり、医師から許可が出ればカメラの前で薬を使うというやり方で、渡航費用込みでだいたい70万円程度で逝けるのだそうです。
さすがにそれはどうなのかと言う反対意見ももちろん根強くあるようなのですが、過去に行われた住民投票では安楽死を認めるべきだという意見の方が上回っていた事からも国民の間でのコンセンサスが一定程度成立していると言えそうですね。

スイス住民投票で安楽死の維持決定、「自殺ツーリズム」も継続へ(2011年5月16日ロイター)

 [チューリヒ 15日 ロイター] スイスのチューリヒで15日、安楽死の禁止および安楽死を求める外国人の受け入れ禁止の是非を問う住民投票が行われ、大多数が現状維持を選択し、両発議ともに否決された。

 安楽死の禁止に賛成票を投じたのはわずか15.5%。外国人の安楽死受け入れを禁止すべきとした人も約22%にとどまった。

 スイスでは1941年、医師以外で利害関係のない人の手による自殺ほう助を認めており、チューリヒでは毎年200人近くが自らの意思で命を絶っている。世界で最も進歩的とされるスイスの安楽死制度を利用するため、外国人の末期患者がスイスを訪れる「自殺ツーリズム」が多く行われている

 ただ、自殺ツーリズム参加者の増加や、末期患者以外で安楽死を求める人の数が増えていることが判明したことを受け、安楽死の是非を問う白熱した議論が行われていた。

 スイス政府はこれまで、自殺ほう助について、適用対象を末期患者のみに限定し、かつ自殺ツーリズムを制限することを目指し、法律の改正を検討していることを明らかにしている。

今のところは末期患者に限定された運用など厳しい制限の導入には世論は否定的であるということですが、高齢者に対する社会保障も制約され、もちろん仕事をして稼ぐことも出来ないという状況になれば生きていても仕方がないと考える人間も増えてくるでしょうし、国内外から「俺も死なせろ」と老人達が大勢押し寄せてくるようになればまた議論が再燃するのかもしれません。
もちろん日本の現状でそうした社会的要因による安楽死を直ちに受け入れる土壌にはないでしょうが、先日も胃ろう問題と絡めて「日本ではお年寄りを長く入院させるほど年金との差額でお金が貯まっていくのはどうか」という声がありましたけれども、逆に考えると年金給付の抑制であるとか、あるいは高齢者医療の優遇措置が撤廃されるなどしてこの差益が解消された場合、案外日本人の死生観も経済的理由であっさり変わってしまう可能性も否定は出来ませんね。
実際に皆保険制度なんてものが出来る以前は医療も贅沢品で、つい半世紀ほど前まではお年寄りが弱ってきたら放置、息が止まったのを確認してからお医者を呼びに行くなんてことが日本でも当たり前に行われてきたわけですから、今後の経済的な状況によっては楢山節考的な世界も再び復活してくるようなことがあるのでしょうか。

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コメント

こういう情報が広まるとますます自殺ツアーが盛んになりそうで心配

投稿: | 2012年2月24日 (金) 09時07分

ま、居ながらにして世界中の情報が集まる時代ですから、広まってしまうのは仕方ないかなと。
ただ日本に関して言えば、楽に死にたいからと手間と大金をかけてスイスまで出かけていく人と言うのは衝動的なタイプにはあまり多くないんじゃないでしょうか。
一般論としては死に方についても生き方と同様に選択肢が広がるのはよいことなのではないかなと思いますし、日本においても有りか無しかではなく条件闘争の段階だと認識しています。>安楽死

投稿: 管理人nobu | 2012年2月24日 (金) 12時30分

日本の高齢者は末期の看取り方に贅沢を言える程度には裕福であるとも言えるかな
ワープアと言われる今の現役世代が高齢化するころには医療の経済的制約ももっと問題化してくるかも知れないね

投稿: kan | 2012年2月24日 (金) 14時28分

日本も全く状況は同じみたいですよ。
働ける人には終生現役でかせいで欲しいのも本音でしょうけど、働きたいけど仕事のない若い人に仕事をまわすことも同じくらい大事なのでは。
これで世代間対立の火種がくすぶってくるならかなしいです。

65歳は「社会保障」支える側に…政府検討会
読売新聞 2月23日(木)20時5分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120223-00001015-yom-pol
 政府の「高齢社会対策の基本的あり方に関する検討会」(座長・清家(せいけ)篤慶応義塾長)は23日、一律に65歳以上を
高齢者と区分する現在の考え方を改め、意欲と能力のある高齢者には社会保障を支える側に回ってもらうことが必要だとした報告書案をまとめた。

 高齢者が社会保障による各サービスを受けるだけではなく、それらの支え手として活躍してもらえる制度設計を進める狙いがある。

 現在、基礎年金の支給は原則65歳以上で、政府の人口統計も65歳以上を「老年人口」としている。報告書案は、こうした現状について
「65歳以上の者を年齢で一律にくくる考え方には無理がある」と指摘した。社会保障の支え手となる若年・中年世代の人口減を踏まえ、
「意欲と能力のある65歳以上の者には支える側にまわってもらう意識改革が必要だ」と強調した。 最終更新:2月23日(木)20時5分

投稿: ぽん太 | 2012年2月24日 (金) 15時48分

昔と比べて年寄りも若くなっているのですから、働ける人は働けというのはその通りではあるんですけどね。
ただ現在のこの世代の問題はクレーマー予備軍とも言われる団塊に代表される世代的特性に起因する部分も多いようで、単純に年齢だけのことではすまない気もします。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月26日 (日) 17時53分

本当に、長生きしてお金もろくに使わないジジババ吃は、迷惑。それなのに、昔の栄光時代をいつまでも語ってる。早く逝ってくれれば、世の中安泰になる。

投稿: | 2013年1月 4日 (金) 17時49分

スペース失礼します

Change.orgにて安楽死に関する署名活動を行っています。賛同いただける方はご署名お願いします。

http://goo.gl/epuQJ

投稿: 匿名 | 2013年7月19日 (金) 05時49分

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