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2012年2月18日 (土)

知らなかったはいつまでも通用しません?!

本題に入る前に、先日ウォール・ストリート・ジャーナル日本版から「ブログ転載システム」のアナウンスが出ていましたが、このシステムでは登録したブログに転載を認める代わりに「コンテンツの転載後も利用状況を把握することが可能、規約に反した利用があった場合は、転載部分を削除できる仕組み」という、なかなか良くできた仕組みになっています。
ブログなどの引用問題は著作権との絡みで裁判でもしばしば揉めていますが、ニュースメディアに関してはこうした一定のルールを定めた上で二次利用を認めていった方が自社サイトの活性化にもつながると言う考えで、2~3年前くらいからあちらこちらで二次利用と折り合いをつける制度の整備が進んできているようですね。
一部既存メディアは未だにネットというものに対して敵対的な姿勢を崩していませんけれども、世論もネットを介して動くような時代にいつまでも抗っていても仕方がないのは当然で、今後どのように新たなソーシャルメディアと折り合いをつけていくかが彼らにとっての大きな課題なのでしょうし、それはメディア業界のみならず一般企業においても全く同じであるということです。

ネットの「炎上」対策に本腰=企業の担当者らが情報共有(2012年2月13日時事ドットコム)

 インターネット上で特定の企業や従業員が一斉に批判を浴びる「炎上」が相次いでいることを受け、防止策を研究するニューメディアリスク協会(東京)が13日、発足した。企業の広報担当者らから参加を募り、ネット上のトラブルについて情報を共有、今後の対応策に役立てる
 簡易ブログ「ツイッター」などの交流サイト(SNS)では、企業の従業員の失言にネットユーザーの批判が殺到し、企業側が謝罪に追い込まれるケースが増加。同協会は「ひとたび炎上が起きれば、企業のイメージが傷つけられる」と、対策を急ぐ必要性を強調している。
 同協会では、トラブルの発生理由などを詳しく分析し、ネットを使った企業の情報発信の在り方を研究する。成果は社員研修の充実にも生かす方針で、今後1年間に60社程度の参加を目指すという。

炎上ということに関して言えば、何しろネットを介して個人と個人が直接結びつき情報を共有できるようになったということが大きいですよね。
かつてであれば何かトラブルがあったとしても情報の流通経路は指折り数えられる程度の既存メディアに限定されていて、当然ながらよほど一般性がなければマイナートラブルなどニュースに取り上げられることもありませんでしたが、今の時代比率としては社会の中で小さなものであってもネットを介して数としては決して小さくない対象の興味を引くことがあり得るということです。
これが良い方に転がればいわゆるオタク文化と言われたようなニッチな流行が思わぬ地域活性化に結びついたりといった面もありますが、かつてであれば一顧客とのトラブルで済んでいたものが全国大勢を相手にしたトラブルにいつ発展するかも知れないと思えば、企業の方でも一瞬たりとも気が抜けないのは当然でしょう。
別にこうした話は日本だけのことではなく、先日アメリカで人種間の対立騒動にまで発展したガソリンスタンドでの顧客トラブルなどもネット上で炎上したことが事態拡大の大きな要因となったと言いますし、目の前の誰かの背後には大勢の人間がついているのだという視点をもって対応していかなければ思いがけない事態になりかねないというのがこれからの常識になっていくのでしょう。

さて、そうしたネット時代の利用者特性を逆用しているとも言えるのが先日以来当「ぐり研」でも取り上げているステマ問題ですが、ネット上だけでなくたとえ既存メディアを介して行われたものだとしても顧客相互の横の連携が発生したからこそ炎上したという点では、まさしくこれはネット時代の特性を反映した事件であると言えそうですよね。
過去も現在も散々ステマまがいの行為を得意にしてきた既存メディアが口を拭って一斉に食べログ批判に回っているのもおもしろいですが、いずれにしてもこうした行為が商売として成立するのはそれを利用しようと考える広告主が存在するからという理屈だけは不変であるということです。

「ステマ」を助長する“やらせ投稿事業”が成り立つ理由を考えた(2012年2月17日日経ビジネス)より抜粋

(略)
食べログには倫理は存在しない?

 マスマーケティングの時代においては、メディアの数がそもそも限られていました。もし悪質な広告代理店や事業者が、やらせ行為を代行しようとしても、メディア側が拒否すれば広告が掲載されることはなかったわけです。メディアである食べログが、襟を正していれば今回のような、やらせ騒動は起こるはずがないではないか、というのがマスメディアの記者の方々の印象でしょう。

 ただ、残念ながら食べログのようなクチコミサイトや、ソーシャルメディアの世界においては、情報発信者であるメディアの数や、そこに書き込める人の数が無限に増えてしまっていますから、記者倫理やジャーナリズム精神のようなものが最初から存在し得ません

 誰でもメディアを作れて、誰でも情報発信できるという、このいわゆるメディアのロングテール化こそが、クチコミサイトやソーシャルメディアの魅力。残念ながらこのやらせ投稿の問題は、メディア側だけで解決できる問題ではなくなってしまっているのです。

 電子メールのスパム問題が根本的に解決されないように、やらせ行為が低コストで実施できるようになっている以上、クチコミサイトとやらせ投稿代行事業者の戦いはいたちごっこになるのは目に見えています。

 象徴と言えるのは、先日放映されたワールドビジネスサテライトに出演していた、やらせ投稿代行事業者の「ニーズがある限り、やらせ投稿ビジネスを続けます」という趣旨の発言でしょう。オレオレ詐欺がなかなか減らないように、こうした姿勢の事業者がいる限り、やらせ行為もまたなかなかなくなりません。

やらせやステルスマーケティングの問題を減らすためのヒント

 ただ、逆にこのやらせやステルスマーケティングの問題を減らすためのヒントがあります。「ニーズがある限り」、であればニーズそのものがなくなればやらないということ。

 オレオレ詐欺やスパムメールにおいては、詐欺行為を働く人間自体がだます相手から直接利益を得ようとします。しかし、やらせ投稿代行事業者の利益の源泉となるのは、実は宣伝活動する企業です。つまり企業がこうしたやらせやステルスマーケティング行為に手を出さなければ、やらせ投稿代行事業者のニーズは減り、やらせやステルスマーケティングが減る可能性が高くなるわけです。

 問題は、どうすれば企業がこうしたやらせやステルスマーケティング行為に手を出さないようになるか、という点です。シンプルに考えるなら、対策としては以下の2つでしょう。

■やらせ行為がソーシャルメディアの普及により、以前よりもばれやすくなっていることを理解してもらう

■やらせ行為がばれてしまったときのリスクがソーシャルメディアの普及で大きくなっていることを理解してもらう

 やらせ行為を確信犯的に実施している企業は、当然やらせをやってもばれないし、ばれても大した罪に問われないと思って実施しています。実際、本質的な詐欺に比べ、今回の食べログのやらせ投稿のような行為は、一つひとつの書き込みを現行法上で法律的に違法と認定するのが非常に難しく、やらせ投稿代行事業者も見つかっても大した処罰を受けないとタカをくくっているのが現状です。

企業側のニーズがなくなれば、代行業者もいなくなる

 ただ、ソーシャルメディアの普及によってやらせがやりやすくなった一方で、利用者によって発見されやすくなったのも事実。こうした行為そのものがメディアにニュースとして取り上げられやすくなっています。インターネットの登場以前は、企業がステルスマーケティングを実施しても、利用者側が入手できる情報が圧倒的に少なく、そもそもやらせかどうかを判別すること自体が困難でした。

 しかし、過去、インターネットを舞台に数々の企業の炎上事例が発生しているように、ソーシャルメディアの普及によって利用者同士が知識や情報を寄せ合うことで、企業のやらせ行為が簡単に暴かれてしまうことが増えています。

 さらに、やらせがばれた後の利用者の怒りもソーシャルメディアにより加熱しやすくなっているのです。従来であれば、企業のやらせ行為を利用者が仮に知ったとしても、せいぜいコールセンターに怒りの電話をかける程度で終わるのが普通でしたが、今では誰もがソーシャルメディア上で怒りを表明することにより、周りの人間にやらせやステルスマーケティングの事実を伝えられます。

 その上、インターネット上での炎上が大きければ、その話題をニュースサイトやマスメディアが取り上げるケースも増えているわけです。実は、やらせやステルスマーケティングはメリットよりデメリットの方が徐々に大きくなりつつあります

 冷静にやらせの効果を考えれば、企業が手を染めるべきか否かは歴然。企業側のニーズがなくなれば、やらせ投稿代行業者もまたいなくなります。ソーシャルメディアの台頭で、ステマの寿命は極めて短くなっているのです。

流行語になったこともあって世間の注目も集まっているのでしょう、今やあれもステマだ、これもステマだと世の中ステマの告発合戦のような様相を呈していて、一部にはどうも少し過剰反応のようなところもありますけれども、企業のマーケッティング担当にとってはステマという行為がこうまでネガティブなイメージとともに定着してしまったのは思わぬ誤算だったでしょうか。
留意すべきはこうした告発をしている主体が従来のような週刊誌のすっぱ抜き記事などではなく、当のステマがターゲットとしている顧客自体が行っているということで、ステマはステマとネタバレしてしまった時点で意味がなくなるというのはこういうことを言うのでしょうが、それだけで留まらないのが双方向性を基盤とするネット時代の怖さです。
マスコミなどで取り上げられる著名人の本などがネット上でとんでもない低評価がついたと時折記事になりますが、先日のロンドンオリンピックのオープニング曲に関わる騒動でも現れているように、今の時代の大衆は日本に限らずこうした「外圧」に対しては一致団結して反撃していくのが当たり前になっていて、広告どころかネガキャンとして作用するリスクの方が大きいということを企業側も学んでいい頃でしょう。
ネズミ講や振り込め詐欺など昔から社会問題化した悪徳商法は数多くあり初期には被害者に同情が集まりましたが、社会にそのリスクが滲透するにつれて「今どきそれに引っかかる方もどうよ…」と情報リテラシーの欠如も疑問視されるようになった歴史的経緯を考えると、確信犯は元より単なる無知から悪徳ステマ業者に引っかかった広告主の方にも今後は厳しい視線が向けられていくことになるのでしょうね。

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コメント

すき家のアルバイトを名乗るツイッターユーザーが、11日にツイートした内容が拡散し、
17日現在、ツイッターやネット掲示板で炎上状態となっている。

その内容とは、「頭痛と吐き気がやばくて動けないんだけど疑われて
無理やりシフト入れと言われ たので肉鍋にゲロ吐いてきます」
「お客様の食べている牛丼は私の胃液が入っているかもしれませんね」というもの。

ツイッターやネット掲示板では「これはジョークでもきつい」「今日牛丼食ったんだけど…」
「しゃれにならんな」など、ユーザに動揺が広がった。

一方で「え、いやいくらなんでもこれは冗談だろ。これだけでここまで叩かれるの」
「こいつもアホだけど、この程度で叩くのは流石に可哀想」と、異物混入をツイートしたユーザーに同情する人も。

一部には「同業他社の工作活動では?」など深読みするユーザーも現れた。
「嘔吐物を入れた」と告白したツイッターユーザーのアカウントは、現在非公開。

誰にでも確認出来るプロフィール欄には「皆様の食に対する不快感を与えてしまったことを深くお詫び申し上げます。
飲食店に勤めている意識を持ち、異物混入の件ですか無論本当の事ではございません」と
「嘔吐物混入」を否定し謝罪する一文が添えられている。
http://n.m.livedoor.com/f/c/6288236

投稿: バカ発見器健在 | 2012年2月18日 (土) 08時41分

ノロも流行して皆神経質になってる中でこれは洒落にならんぞ
その後嘘だったと告白したらしいが、こういうことを言うだけでアウトだとはわからんのだろうな

投稿: kan | 2012年2月18日 (土) 17時10分

会社の方からは当日は出勤していないことを確認した旨の発表があったようですね。
どんな処分になるのか明らかになっていませんが、軽率な行動にどの程度のペナルティーが妥当なのか、社会も本人も学んでいく過渡期なんだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月20日 (月) 12時06分

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