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2012年2月 4日 (土)

ジャーナリズムは変えられずとも、ネットはさらに身近なものに

先日BLOGOSでネットメディアに関する座談会があり、その内容を興味深く拝見していたのですが部分的に抜粋させていただきましょう。
ちなみに当日の参加者はこちらですが、どこにでも出かけるフリーの立場を標榜しているとは言え既存メディア専属の人間は参加していないという点には留意ください。

司会:大谷広太(BLOGOS編集長)
アナウンサー:小口絵理子
コメンテイター:須田慎一郎(経済ジャーナリスト)
ゲスト:岩上安身(IWJ代表・ジャーナリスト)
    畠山理仁(フリーランスライター・自由報道協会広報)
    亀松太郎(ニコニコニュース編集長)

さて、冒頭でまず司会の大谷氏から3.11を境に既存マスメディアの位置づけが変わってきたのではないかという問題提起があり、これに対して岩上氏がネットメディアにおいて速報性や即時性は当たり前のことであって、何よりネットメディアには情報量に制約がない、その気になれば24時間ずっと生情報を発信することも出来るのが最大の優位性であると主張します。
これに対して須田氏がジャーナリズムの役割とは素材そのままの提供にとどまるのではなく検証作業が必要であるはずだが、それではネットメディアの検証作業とはどのように行われているのか?という問いかけを行った場面がこちらです。

ネットメディアはジャーナリズムを変えられていない(2012年1月20日BLOGOS)より抜粋

岩上:今までの既存のジャーナリズムっていうのは。例えば、文字にするとかね。そうすると、須田さんが「○○が△△という場所でこんなことを言った」という取材をされた時に、その裏(証拠)をとれているのか…という話になるわけですよ。ところが、そういったワンクッション置いた、間接的な話ではなくて、取材先の発言をそのまま出してしまっているわけです。早い話が、既存メディアで文字を書いていた時の“裏どり”に当たるものが、最初から丸出しになっている。そういう状況にあるわけですね。

須田:ということは“検証していない”というわけですね。

岩上:いや、検証していないわけじゃなくて。例えば、このように中継で流れてるわけじゃない?それで、須田さんがこの番組でこんな発言したという検証は、この放送で成立するわけですよ。

須田:いや、つまりね。内容に対する事実かどうかという検証作業は?

岩上:内容に対する事実かどうかというんじゃなくて。発言が事実かどうかの検証は可能。今度はその発言の内容が、もっと深掘りできるかというテーマは残っていると思います。つまり、これまでの検証というものは、事実確認というもの。それを深めていく時にどうすればいいのか。調査報道も必要でしょう。

須田:だからね、これはお二方にもぜひ伺いたいんですけれども。インタビューをとりましたと。その発言が事実かどうなのか。要するに、事実じゃないことを伝えるとなると、さきほどから批判されているように“デマを拡散している”というところにもつながっているんだけども。その事実の確認作業というのは、どんな風に受け止められていますか?ちょっと挑発的な物の言い方をしてますけども。

亀松:そこに関していうとですね。検証した上で情報を伝えていくというジャーナリズムでいうと、我々ニコニコ動画だったり、ニコニコニュースは、いわゆる既存メディアの報道局に比べれば、人数にしても、ノウハウにしても、個人の資質という面でも、まだまだ及ぶものではないと思っているんですね。

そういう意味で行くと、我々は“プラットホーム”っていうことに、重点を置いていこうと、今のところは考えていて。例えば、官僚が発言している内容が正しいかどうかを突きつめて検証することをすることを我々自身がやることは難しい。そこまで力がないかもしれないとは思っているんです。ただ一方で、僕らがやったこととしては。例えば、放射能の専門家だったり、色々な大学の先生。原発に対するスタンスも反原発の人もいれば、肯定的な人も呼んで。その専門家の話を伝えていく。議論させていくという形を作るということで、そういった検証作業に寄与できればなと思ってます。

須田:そのプラットホームの中で、伝えながら検証作業をやっていく

亀松:そうですね。それは別にネットメディアというわけでなく、ニコニコ動画に関してですね。元々がプラットホームという位置づけがありますんで。もちろん、中には自分たちが検証できるものもあったりはする。そういったものはね、やったりはしますけれども。ただすべてに渡って、我々自身が検証できるかというと、そこまでのリソースはないと思っています。
(略)
須田:私はね、既存メディアの最大の問題点というのは、その検証作業が見ることができないブラックボックスになっていることだと思うんです。それに対して、ネットメディアの検証作業は非常に透明性が高い。見ることができる。あるいは参加することができる。 だから、その検証作業についての検証といったらいいのかな。可能になっているというのは、ネットメディアの強みになるんではないかなと思うんですよね。

畠山:報道過程の可視化ということですよね。だから、私が取材しているところも丸々見えてしまって、その結果、私が書いた記事っていうのが「くだらねえなあ」という風にバレてしまうものでもあるかもしれない。ただ、今までの既存メディアでは、記者会見だってオープンになっていなかったから、どんな質問をして、それがどのような形で報じられるかっていうのが全く分からなかったのが、先ほど須田さんがおっしゃったように、見ている方々にとってもわかるようになったという意味では大きな変化だと思います。

須田:そういった意味で言うと、よく(雑誌などにある)“関係者によれば”とか“事情通によると”といったことが許されないのがネットメディアなんじゃないかなと。

かねて言われている通り、情報ソースそのものをそのままの形で提供する(できる)というスタイルが現状のネットメディアの強みでもあり、弱みでもあるのかなという気がします。
特定の属性に染まった個人や集団が編集作業を行うのではなく、その部分は全て情報の受け手に委ねてしまう、バイアスのかかっていない生情報から各人各様の意義なり結論なりを導き出せるというのがネットメディアの強みでもあり、既存メディアによる情報操作に憤るユーザーにもっとも支持されてきた部分ですよね。
一方で分散型処理と言えば聞こえはいいですが、このやり方ですと下手をすれば何が一番の情報のポイントであるのかという部分が伝わりにくい事に加えて情報密度が低くなりすぎる、例えば最近では国会の様子なども地上波、ネット双方で流れていますけれども、あれを延々とチェックしていられるというのはよほどに非生産的な生活を送っている人しかいないのではないでしょうか?
となると、ネット上の量だけは圧倒的に多い情報をどこかで整理していく必要があるということで、例えば自分と意見の近い人間の多く集まる掲示板やブログ、ツイッターなどである程度整理された情報をチェックするといったやり方をしている人も多いでしょう。

こうした事から言えるのはネットメディアの利用が一般的になるにつれて、かつてテレビや新聞といったマスメディアだけが情報発信の主体であった時代に見られたような「クラス中のみんなが昨夜のドリフのネタを知っている」という現象はなくなってしまい、各人の持つ情報の内容がてんでバラバラになっていくだろうということですよね。
また単に方向性が異なるだけでなく質的にも量的にも、どの程度の手間暇や情熱をかけて情報を収集するかということが情報格差を拡大させていくだろうとも予想されますが、そういう世の中になってきますと昨今平易なニュース解説を行う人々がマスメディア上でも人気を博しているのと同様に、簡単に分かりやすくネット上の情報を提示してくれるサービスに大きなビジネスチャンスがありそうです。
近頃ではお気に入りのサイトやネットメディアの情報を自動で巡回して新聞や雑誌のように閲覧できるアプリなども普及してきていますが、しばしば「情弱」などと言われてきたエンドユーザーにおいてもこうした需要はやはり大きかったのだなと再認識させられるのがこちらの記事です。

スマホ普及で2chまとめ一般化か(2012年2月2日livedoorニュース)

J-CASTニュースで、『スマホのアプリで「2ちゃんねる」にハマってしまった』という記事が掲載された。この記事では、それまでは無縁だったものの、スマホにアプリを入れたことで2ちゃんねるを読むようになり、面白がっている40代男性がいることを紹介している。これを受け、2ちゃんねるに「【ネット】40代男性「スマホアプリで2ちゃんねるにハマってしまった。『自分の人生に必要ないもの』だと思っていたが、暇つぶしにいい」というスレッドが立った。

このスレッドには、「ようこそw」「2chはネット界に置ける悪の巣窟みたいに言われてたけどなんだかんだ有りながらちょいちょい活躍してるんだよねw」(原文ママ)という感想が書き込まれており、やや自虐的ながらも、少し誇らしい気持ちを抱いた2ちゃんねるユーザーもいるようだ。

しかし、記事内でコメントした40代男性が見ているのは「泣ける話 2ちゃんねる」「笑える話 2ちゃんねる」などの、2ちゃんねるのなかで語られた話をまとめたアプリであり、2ちゃんねるの本スレッドではないため、「2ch本体を見ないと意味がないだろ」との指摘も。

スマホにしてから2ちゃんねるのまとめサイトを見るようになった人は女性にも多く、筆者の周囲の女性からも

「ヤバい、スマホ買ってから暇さえあれば2ちゃんねるのまとめサイトばかり見るようになりました。こんな面白いもの、なんで今までみなかったんだろう」(リース業・28歳女性)
「最近、仕事と飲み以外の生活が2ちゃんねるのまとめサイトをアプリで見ることだけになってもうた」(広告・23歳女性)

という声が聞こえてくる。

事実、2ちゃんねるのまとめサイトをさらに“まとめ”たスマホアプリは多数存在し、人気の高いものも少なくない。アンドロイドアプリ紹介サイトAppmaxは、同サイトのアプリを通してダウンロードされた数と、実際にアプリを使用した時間や回数などを独自に収集・解析したデータを元に、【今週の人気アプリランキングTOP10】を毎週発表している。1月28日のランキングのトップ10には、グリーやモバゲー、ツイッター、無料通話可能な「LINE」などにまじり、2ちゃんねるのまとめアプリ2本と2ちゃんねる専用ビューワー1本がランクイン。スマートフォンとアプリの普及により、2ちゃんねるで語られた内容が、あちこちに拡散しているようだ。
(R25編集部)

こうしたまとめサイトと言えばアフィ問題といったものとの絡みもあって、しばしばコアな層からは「自分では何も生まず他人の書いたコンテンツを切り貼りするだけで商売しているケシカラン連中だ」とやっかまれるようなところもありますが、あまりその方向を突き詰めると報道というもの自体が事実に忠実であろうとするほど何らの新しいものも生み出せない商売だということにもなりかねません。
例えば以前にも主婦層向けにスーパーの安売り情報をまとめて比較できるサイトが人気だと言う話もありましたが、ネット時代に至り激増し発散し続ける一方の情報を整理し分かりやすくまとめるという作業そのものも立派にお金の取れる「仕事」と言えるのではないかなという気がします。
ただしそこにはかならず取捨択一という作業が欠かせないだけに、何をもって有益あるいは無益だと判断するかという当事者のバイアスが必ずかかってくるということは利用者も理解しておかなければならないですし、また場合によってはこうした特性を利用して積極的な情報操作をすることも出来るということですが、そうしたリスクをどう評価していくかです。

2chを始めネット上ではいかにもその他大勢の中の一人のような顔をしながら、特定の立場から議論の流れを作っていくという作業を商売として請け負っている「工作員」の存在が噂され、実際にたびたび工作員の正体が特定されたという話も上がってきますが、考えて見れば「我々が世論を正しく導かなければ!(キリッ!」と使命感に燃える大手新聞を始めとして、既存マスメディアとは元々そうした性質を持っていたものです。
昨今彼らが「ネットの情報は嘘ばかり!」と宣伝する道具に重宝しているステマ問題なども元を正せばテレビなどがもっとも得意としてきた手法であって、要するにこうした問題は別にネット上に情報源が移行したが故に出現したものでもないし、言ってみれば元から存在し誰もが許容してきた既知のリスクに過ぎないとも言えるでしょう。
ただしそれら既存のリスクとの最大の違いはテレビにしろ新聞・雑誌にしろ全国レベルで影響力を発揮していたのはわずかに数社であり、言い方を変えればごく僅かな一部を支配するだけで国中の言論を支配できたのに対して、ネット上では誰でも好き放題に情報発信を行えるという性質から、ありとあらゆる立場の情報操作が飛び交った結果として全体としては偏りも平均化されていくだろうと言うことでしょうか。

そう考えると急伸するネットの危険性を過度に煽り立てるのもまた偏っているのかなという気がしますし、ネットの利点と欠点を知った上での正しい利用を心得ていくことは、情報に対するリテラシー向上にも役立つのではないかなと言う気がします。
しかし朝日と産経が社説を介して激論するような状況がネット上では年中どこかで当たり前に起こっていると考えれば、世の中に数多いるだろう野次馬根性の強い人間には「こんな面白いもの、なんで今までみなかったんだろう」とハマってしまうのも当然でしょうが、何事にも節度というものは必要でしょうかね(苦笑)。

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コメント

>須田:いや、つまりね。内容に対する事実かどうかという検証作業は?

「テレビでは内容が事実かどうか後から検証することはありますか?」と

現神奈川知事に以前に質問したことがありますが、

「そんなことはしない、そんな時間はない」で終了でした。

投稿: 匿名 | 2012年2月 4日 (土) 10時02分

やれやれ、フジTVと大熊由紀子の国際医療福祉大学大学院ですね。
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/chiji/p25771.html
神奈川県知事 黒岩 祐治 (くろいわ ゆうじ)
昭和55年 3月  早稲田大学政経学部卒業
昭和55年 4月  (株)フジテレビジョン入社
平成21年 9月  同退社
平成21年10月  国際医療福祉大学大学院教授
平成23年 3月  同退職
平成23年 4月  神奈川県知事に就任

フジテレビジョンでは3年間の営業部勤務を経て報道記者となり、政治部、社会部、さらに番組ディレクターを経て昭和63年より「FNNスーパータイム」キャスターに。その後、日曜朝の「報道2001」キャスターを5年間務めた後、平成9年4月よりワシントン駐在。
平成11年より再び「(新)報道2001」キャスターに復帰。
自ら企画・取材・編集まで手がけた救急医療キャンペーン(89年~91年)が救急救命士誕生に結びつき、第16回放送文化基金賞、平成2年度民間放送連盟賞を受賞。
その他、人気ドキュメンタリーシリーズ「感動の看護婦最前線」「奇跡の生還者」のプロデュースキャスターを務める。「感動の看護婦最前線」も平成5年度、14年度、2度にわたって民間放送連盟賞を受賞。さらに、日野原重明氏原案のミュージカル「葉っぱのフレディ」のプロデュースも手がける。
平成21年9月、キャスター生活21年半、「(新)報道2001」15年あまりの歴史に幕を閉じ、フジテレビジョン退社。国際医療福祉大学大学院教授に転身するが、神奈川県知事選立候補のため、辞職。

投稿: 勝手に追加 | 2012年2月 5日 (日) 06時54分

ほう、黒岩氏のことは以前にも取り上げさせていただいたことがありますが、いつの間にか県知事になっていたのですね。
自らが責任を持って事を行う立場になってどういう仕事をしてくれるのか興味深く拝見させていただきたいと思います。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月 6日 (月) 08時56分

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