« 思いつきでひょいと変わるほどたやすいものじゃありません | トップページ | また問題発言!?と叩く前に »

2012年2月 7日 (火)

判っちゃいるけどやめられないこと

誰でも経験的にそれは判っているという話でも、きちんとした学術的裏付けがあればそれはそれでありがたみがあるものですよね。
何となく重症化する例が多い印象のある飲酒後の頭部外傷について、動物実験からその危険性が裏付けられたという報告が出たということです。

頭部外傷:飲酒後は死の危険高まる 札幌医科大チーム解明(2012年2月5日毎日新聞)

 飲酒後に頭にけがをすると、脳がむくみやすくなって死の危険が高まるメカニズムを松本博志・札幌医科大教授(法医学)の研究チームが動物実験で解明した。米病理学会誌に掲載された。

 松本教授によると、飲酒後に転倒や交通事故で頭部外傷を負うと、直後の検査では異常がないのに、半日~2日後に急死するケースがあることが知られていた。脳がむくんだり腫れたりする「脳浮腫」の悪化が一因とみられるが、因果関係の解明は容易でなかった。

 研究チームは大人の雄のラットを2群に分け、それぞれ(1)生理食塩水(2)エタノール(体重1キロ当たり3グラム)を投与した。(1)はしらふ、(2)は酩酊(めいてい)状態に相当する。1時間後に脳に損傷を与え、MRI(磁気共鳴画像化装置)などで脳の変化を調べた。

 「しらふラット」は24時間たってもほとんど変化がなく、酩酊状態でも頭に損傷を与えなかったラットには、脳浮腫は出なかった。一方、「飲酒」したうえで頭を損傷したラットは6時間後まで異常がなかったが、24時間後に脳浮腫が確認された。脳浮腫の原因の一つとされるたんぱく質「アクアポリン4」も大幅に増加し、約半数のラットが死んだ。

 また、「飲酒ラット」にアクアポリン4の働きを抑える薬を12時間後に投与したところ、脳浮腫は改善し、死んだ例もなかった。【大場あい】

社会的に見れば飲酒者の場合は意識障害などを来しても酩酊によるものなのか泥酔によるものなのか判りにくい場合があり初期対応の遅れにつながりがちですし、常習的大量飲酒者の場合は肝障害からくる出血傾向なども来しやすいといったリスクもあるでしょうが、飲酒そのものが脳浮腫のリスク要因となるというのは分かりやすいデータだと思います。
ちなみにちょいと調べて見たところではむくみをとる効用があるとされてきたある種の漢方薬にもアクアポリン阻害作用があると判明してきているようですが、長年の経験医療に基づく漢方というものの科学的背景が次第に解明されつつあるということは興味深いですよね。
いずれにしてもやはり飲酒者の外傷は要注意ということなんですが、これまたたぶんそうなんだろうなと予想した通りの結果が出たとも言える結果ではあるとして、ではその対策は?と言われると少しばかり困ってしまうのがこちらの調査結果です。

所得低い人ほど朝食抜きがち 厚労省調査(2012年1月31日日刊スポーツ)

 所得が低い人ほど朝食抜きが多く野菜が不足しがち、喫煙率も高い-。厚生労働省は、31日公表した「国民健康・栄養調査」で、所得と生活習慣1 件の関連を探る調査を初めて実施。所得によって生活習慣に違いがある実態が浮き彫りになった。

 厚労省は「低所得者ほど、所得の低さそのものや仕事の忙しさなどから、バランスの良い食事を取ったり、医療にアクセスしたりすることが難しいのではないか」と分析している。

 3189世帯の回答を、世帯の年間所得で「200万円未満(A)」「200万~600万円未満(B)」「600万円以上(C)」の3グループに分けて分析した。

 習慣的な喫煙者の割合は、男性が(A)37・3%(B)33・6%(C)27・0%、女性は(A)11・7%(B)8・8%(C)6・4%で、男女とも所得が低いほど喫煙率が高かった。

 朝食を食べない人の割合は、男性が(A)20・7%(B)18・6%(C)15・1%、女性は(A)17・6%(B)11・7%(C)10・5%。

 1日当たりの野菜摂取量は「600万円以上」の方が「200万円未満」に比べ男性で37グラム、女性で35グラム多かった。運動習慣のない人の割合も、男女とも年収が低い層の方が高かった。(共同)

所得低いほど生活習慣に問題あり 国民健康・栄養調査 喫煙率は初めて2割切る(2012年2月1日産経新聞)

 世帯所得が低いほど、朝食を欠かしたり、運動習慣がなかったりするなど、生活習慣に問題がある人の割合が高くなる傾向があることが31日、厚生労働省の平成22年国民健康・栄養調査で分かった。

 生活習慣に問題があると、脳卒中や高血圧症、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まる。厚労省は「所得が低いほどバランスのいい食事がとれず、健康への配慮ができていないのでは」と分析しており、25年度から始まる「次期健康づくり計画」で格差縮小を図る施策を打ち出す方針。

 調査は22年11月に実施。生活習慣と所得の関係は、世帯所得を200万円未満▽200万円以上600万円未満▽600万円以上に分けて調べた。

 それによると、成人の習慣的な喫煙者の割合は男女ともに世帯所得が低いほど高く、肥満(BMI=体格指数25以上)の人や運動習慣がない人の割合は女性で、習慣的に朝食を食べない人の割合は男性で、それぞれ高くなった。野菜の摂取量も、男女とも世帯所得が低いほど少なかった。

 一方、全体の習慣的喫煙者の割合は前年比3.9ポイント減の19.5%で、初めて2割を切った。喫煙者のうち禁煙希望者は同比3.4ポイント増の37.6%で過去最高。

 これを受け、厚労省は次期健康づくり計画に、禁煙希望者全員が禁煙に成功した場合の喫煙率「12.2%」を34年度までの目標値として明記する方針。次期がん対策推進基本計画にも同じ目標値を盛り込む。

厚労所の言う「所得が低いほどバランスのいい食事がとれず、健康への配慮ができていないのでは」という解釈が正しいのか、あるいは以前から議論のある「一流大学学生の親にはお金持ちが多い」という話と同様に原因と結果が逆である可能性はないのかと、色々と考えさせられるデータではあるかなと思います。
以前から富裕層ほど健康状態が良好であるということは知られていましたが、例えば食生活に関しても今どきの日本でお金持ちでなければ常に空きっ腹を抱えているとか、卵が御馳走で肉なんて見たことないといった状況であるはずもなく、その気になればきちんと必要な栄養を摂取出来るはずですから、やはり運動などと同様に生活習慣改善への意欲が乏しいことが原因だということになるのでしょうか。
人間誰しも健康で長生きしたいという欲望は持っているものですが、それに対してある程度解明されてきた長生きのための方法論をきちんと学んだ上で、なおかつ継続的に実践していくということはかなりの自律が要求されるでしょうし、一般論としてそうした強い意志を持った人間なら社会的にも相応に評価され、高年収にも結びつくだろうという気はしますよね。

これとは別の考えで昔から「貧乏暇なし」というくらいですから、低所得者層は仕事に忙しくて健康にいい生活を考えるようなゆとりはないのだという意見もあるでしょうけれども、とある調査によれば高所得層に比べて低所得層の方が労働時間が短く余暇が長いという結果が出ていると言いますから、決して暇がないわけではないと言えそうです。
となると恐らく、その時間をどう適切に使い生活習慣の改善に結びつけるかというノウハウの滲透度が問われそうなのですが、やはり努力して節制し健康を目指したところで特にメリットもないし…と考えられてしまうと、国がどんなに旗を振ったところで国民はついてこないということでしょう。
どこの国でも国民の生活習慣改善がなかなか進まない中で、日本ではメタボ検診によって企業にペナルティーを課すという形で労働者への改善圧力を試みていますが、これまた企業採用の(暗黙の)条件に健診で引っかからないことが要求されるようになってきているくらいで必ずしもいい事ばかりとも言い切れない状況とはいえ、こうした外圧も健康への無関心層にとっては一つの動機付けにはなりますよね。

鞭ばかりでなく飴もということでは保険なども近頃ではリスク毎に保険料を変えるという仕組みが一般化してきましたが、いずれにしても医療においてもきちんと健康を目指して努力してきた人間には目に見えるご褒美なりも用意していかないと、単に目標の数字を設定しているだけでは多くの国民はスルーして終わることでしょう。
その結果ますます医療費がかさみ、これでは財政が破綻してしまうとばかりに医療費支出がさらに切り下げられるということになれば、結局は回り回って国民の不幸として返ってくるだけですからね。

|

« 思いつきでひょいと変わるほどたやすいものじゃありません | トップページ | また問題発言!?と叩く前に »

心と体」カテゴリの記事

コメント

そうかー、俺は粒栗経営者だから、朝も食べないし、タバコもやめれないんだな。うんうん。

投稿: | 2012年2月 7日 (火) 11時20分

親の年収ではなく親の学歴を調べた方がきれいな相関がでそうな気がするが>一流大学学生の親ステータス
単に親子代々優秀で収入も地位もある職に就くケースが多いってだけのことだろう
頭の良さに遺伝的素因は無視できんよ

投稿: kan | 2012年2月 7日 (火) 11時21分

実際にそういうデータを取り上げる人は必ずといっていいくらい「学歴もお金次第!社会階層の固定化だ!」って話にしちゃうんですけどね…

それはともかく、その日暮らしに近い生活をしている人々にどうモチベーションを高めていくべきか、末端臨床家であれば誰しも悩ましいところじゃないかと思います。
低所得者への金銭的な優遇は基本的に正しいと思いますが、経済面にシビアな人々ほど金銭面での差別化がモチベーションに結びつくのも確かですので難しいですね。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月 7日 (火) 13時10分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/53917227

この記事へのトラックバック一覧です: 判っちゃいるけどやめられないこと:

« 思いつきでひょいと変わるほどたやすいものじゃありません | トップページ | また問題発言!?と叩く前に »