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2012年2月22日 (水)

モンスターはここにも

少し前のニュースですが、ちょっとそれはどうなのよと誰しも感じるだろう話がこちらのニュースです。

「自宅前にヘビ…」「漢字の読み方?」、110番の半数は緊急性なし…/神奈川県警(2012年1月11日神奈川新聞)

県警が2011年に受理した110番通報の半数が、いたずらや運転免許証の更新の問い合わせなど緊急対応の必要がない通報だったことが10日、県警のまとめで分かった。

県警によると、昨年1年間の110番通報は約98万件(前年比約4万3千件増)。そのうち、免許の手続きの問い合わせや地理案内、相談など出動不要の通報は約28万件(同比約200件増)、いたずら・間違い・無応答の無効通報は約22万件(同比約4万7千件増)だった。

「鍵を落とした」「自宅前にヘビがいて怖くて家に入れない」「漢字の読みが分からない」「コインパーキングで隣の車とぶつかりそうで車が出せない」といった通報もあるという。

県警は「110番の日」の10日に、横浜駅東口でキャンペーンを実施。一日通信指令官を務めた女優の伊藤かずえさんらが適切な利用を呼び掛けた。県警通信指令課は「急を要さない要望や相談などは『#9110』(警察総合相談室)に問い合わせてほしい」としている。

ま、蛇云々に関しては110番通報が適当なのかどうかはともかくとして、誰かなんとかしてくれよという気持ちは判らないでもないですが、漢字の読みだとかネタのような話が本当に上がってくる、そしてその結果本来警察が行うべき業務も阻害されてしまうというのであれば、これは世に言うモンスター、クレーマー問題と何ら変わるところがありません。
アメリカなどではクレーマーは一定数存在するのが当たり前、それに対して余計な時間を使うことこそ無駄なコストであるという考え方のようで、例えば商品の返品ということに関しても日本では考えられないくらい寛容であるとはよく言われますが、当然ながらそれを悪用して季節品などを実質無料で使っている剛の者もいるようですね。
クレーマー対策の費用対効果ということを考えて見ると、社会的少数にとどまっている限り返品常習者であっても余計な手間暇かけずにさっさと返品を受けた方が安上がりなのだろうし、一方では返品交換以上の要求をしてくるクレーマーに対しては途端に強面のクレーム担当者が出てきて徹底的に対応するという仕組みにもなっているようですから、ある意味では非常に合理的です。
日本ではまだそこまで割り切ってはいませんけれども、個々に見ればそれほど悪質とまでは言えずとも増えてくればどうなるか、とりわけサービスの提供に一定の量的制限がある場合に過剰要求によってサービスそのものの提供が破綻してしまう場合にはどうかということが問われているのが、特に医療や救急搬送を始めとする社会資本的側面の強い領域ですよね。

かつては医療の世界においては「患者さまは病を抱えていらっしゃる弱者なのです!単なるわがままのように見えても誠心誠意お仕えしなければなりません!」式の自己犠牲的教育が特に看護領域などにおいては主導的であったようですが、さすがに院内でスタッフに対する暴言暴行が日常化し離職や逃散、果ては医療崩壊につながるというのであれば、大多数の真面目な患者さんにとってこそいい迷惑ですよね。
そんなわけで昨今ではこうした業界でも積極的にモンスター対策が取られつつあるということがしばしばニュースなどでも取り上げられ、そのための方法論も様々に研究されつつあるところですが、そんな中で先日は被災地からもこんな話題が出てきたことに注目しています。

暴言吐く被災者は警察へ通報 東松島市が震災1年を機に/宮城(2012年2月20日産経新聞)

 宮城県東松島市の阿部秀保市長は20日、被災者から理不尽とも言える苦情が相次いでいるとした上で、震災1年を機に威圧的な言動については警察に通報するとの方針を明らかにした。

 同市によると、一部の被災者が電話で長時間不満を述べ、酒に酔って市役所を訪れて「はたく(たたく)ぞ」などと職員に暴言を吐く人もいるという。

 東松島市は警察に対応を相談する一方、威圧的な言動や不当要求行為があれば警察に通報することを決めた。会話の内容を録音することも検討している。

 阿部市長は「職員は長時間の電話にも我慢して対応していた」と説明。対応策を練ってきた市幹部職員は「仕事がない仮設住宅暮らしの人もいる」と被災者の事情に理解を示しつつ「職員にも家族を亡くしたり家が流されたりした人もおり、これ以上負担をかけられない」としている。

この時期まで堪え忍んだ上でとうとう公表したというくらいですからよほどに耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだ末の決断であったことでしょうけれども、もちろん一方では「被災で物心両面に大きなダメージを負った被災者の方々に何と心ない仕打ちをするのか!」と批判する人々もあるかも知れません。
そうした批判の声も予想した結果が一年という猶予期間だったということでしょうし、当然ながらその間に業務に対する影響なども十分にデータが蓄積されているでしょうから、一部良心的報道機関などから「だがちょっと待って欲しい」式のクレームがついても幾らでも反論材料はそろっているのでしょうね。
公的対応を取るまでにこれだけの長い猶予期間を必要としたことが未だ日本社会がモンスター、クレーマーといったものへの対応に発展途上であることを示してもいるのだと思いますが、地方の役所という昨今もっともバッシングを受ける機会の多い部署から、被災者という世間的には弱者の最たるものと見なされている方々にこうした警告が出たことの意味は小さくないように思います。
日本ではまだまだ「弱者は多少理不尽なことを言っても許されるし、社会もそれを受け入れるべき」という表向きの雰囲気が残っていて、それが故に弱者であることを殊更に主張して利益を得る「プロ弱者」などという言葉が生まれているくらいですが、弱者に対する強者だったはずの大衆自体が長引く不況とワープア化等でむしろ弱者化している以上、弱者ならぬプロ弱者への社会の目線は今後ますます厳しくなっていくのかも知れません。

被災地のプロ弱者化ということに関しては先日も当の被災者からの内部告発というものが話題になっていましたが、もちろんマスコミなどは大っぴらに取り上げることはないにしても、今の時代ネットなどを通じてこうした生情報が全国に駆け巡ってしまう以上は被害の存在自体をごまかしきれるものではありませんよね。
ちょうどこの一月、二月頃が被災地で失業手当が切れる最盛期で、多数の失業者が今も就職先が決まっていないと話題になっていますが、一方では需要が急増している土建業界などでは人不足に苦しんでいるという受給ミスマッチも深刻化していると言います。
そうした不測の事態に対処するためにも世界各国から送られた支援金や支援物資などはしっかりと確保した上で生活設計を行っていかなければならなかったはずなのですが、一時の支援金バブルにおぼれて料亭通い、パチンコ通いに身を染めていた方々は今、「アリとキリギリス」という寓話をこれ以上ないほど身近に感じているのでしょうか。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

直接役場に行かせるのではなく、町内会の自治組織がまず第一対応をするようにすべきだろう
田舎者ほど赤の他人には偉そうに出来ても、町内でハブられるのは嫌がるものだw

投稿: aaa | 2012年2月22日 (水) 10時32分

ただ単に寂しくて話し相手になって欲しいって理由で、いろいろといちゃもんつけてくる
患者っていますな。特に暇な生保が圧倒的に多い。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年2月22日 (水) 10時53分

漁師町の住民はもともと気が荒いというのもあると思います。
このあたりでも港のある海岸部と数キロ内陸部の商業地帯とで顕著に住民気質が変わりますから。
コミュニティーに溶け込んでみればまんざら悪い人たちでもないんですが…

投稿: ぽん太 | 2012年2月22日 (水) 11時03分

トラウマだとかメンタルケアだとか色々被災地特有の事情もあるとして、それらも全部ふまえた上でこうした布告が出たことを重視したいです。
以前であれば叩かれるからと躊躇していたでしょうが、今はむしろ対策を取らずに放置した方が叩かれるという意識が広まってきたのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月22日 (水) 11時23分

先日ウチの近所の狭い三叉路を消防車がハザード焚いて(赤色灯は点けてなかった)塞いでて、右折出来なくて往生しました。

   消防車
    T→ウチ
    オ
    レ

こんな感じ?

Uターンもままならない狭い生活道路な上、火事が起こってる様子もないのでクラクション鳴らすも誰も出てこない。ブチ切れ寸前で119番して「消防車が邪魔で通れない!」とクレーム入れようとしたところで通報したと思しきご老人登場。なんでも、急病人が出たが救急車が出払ってて、やむを得ず消防車で来たとかなんとか。結局そのご老人が誘導してくれて、一旦左折してUターン後直進。帰宅出来ました。

…119番してたらオレもクレーマー?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年2月22日 (水) 11時29分

他所でもこの件をコメントのネタにしたのですが、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120221-00000109-jij-soci 「雪遊びイベント中止に=「放射性物質心配」の声―青森の630キロ無駄に・沖縄」
これ、記事中で中止を求めたのが「東日本大震災後に自主避難してきた人たち」と書いてあるんですね。
去年福岡で「ふくしま応援ショップ」が抗議を受けて中止になった時も、抗議をしたのは主に被災地から福岡に避難してきた人達だったという噂がありましたが、大手マスコミでそれに触れたところはなかったと思います。
マスコミ報道も噂も事実かどうか確かめようがないことですが、世間の風向きが変わってきたように感じます。

投稿: JSJ | 2012年2月22日 (水) 12時04分

はるか沖縄まで逃げるくらいのチキンだからさもありなん
いつまでもDQNがやりたい放題やれるようではいかんよ

投稿: kan | 2012年2月22日 (水) 12時27分

避難所で首相に大声で詰め寄る連中がテレビに出ていましたが、沖縄でも雪のことに限らず基地問題などで大騒ぎしているのは県外移住者だとも聞きます。
神奈川でもこういう記事も出ていましたが、一部の人たちの言うことだけが通るのはたしかにおかしいと思います。
それを普通の市民の声のように取り上げるマスコミも共犯ですけど。

○「がれき」番組、県HPから削除/神奈川

県は21日、がれき受け入れ問題をテーマに制作されたテレビ番組を
県ホームページ(HP)から削除した。面会した吉田雄人横須賀市長から
「反対の大きな声を上げているのは一部の活動家とみられる人たちであり、
地元には誤解されると困るという人もいる」と伝えられ、黒岩祐治知事が
削除を指示した。

番組は県の企画・提供でtvkが制作した「復興2012かながわの苦悩~
震災がれき受け入れを考える」。知事が被災地を視察した際の映像のほか、
県最終処分場がある横須賀市で開催した対話集会の様子などを収録。
会場で受け入れ反対を大声で叫ぶ参加者の姿などが映っていた。
12日に放映された後、県HPで視聴可能だった。

知事は「どの人が地元の人なのか分からないが、誤解を与えるようなら、
ただちにHPから降ろすという決断をした」と述べた。

□ソース:神奈川新聞
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1202210016/

△関連ニュース:NHK
横須賀“がれき焼却灰受け入れ困難”
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120221/t10013173481000.html

投稿: ぽん太 | 2012年2月22日 (水) 12時38分

受け入れる予定なのは放射能汚染されてない宮古の一般瓦礫で、福島原発からの距離は宮古と横須賀でほぼ同じ。
ちなみに風向きの関係で距離が同じなら東北よりも関東の方が汚染度は高いからね。
そもそも瓦礫の80%は地元で処理してて、どうしても作業が追いつかない一部だけを他県で受け入れてくれないかって話なんだが。
狂牛病騒動で懲りたと思ってたのに同じ事繰り返すなんて、なんでも危ない危ないと大騒ぎする前に科学的リテラシー身につけようよ。

投稿: | 2012年2月22日 (水) 12時54分

ただがれきの受け入れは下手すると健康被害だ、生涯補償しろと言い出す連中が出るんじゃないか
放射線被害を受ける”かもしれない”と心配のあまり心身症を発症したなんて言われると対処が難しそうだが

投稿: kan | 2012年2月22日 (水) 17時05分

東北の雪を断ったと聞くとなんじゃそりゃ?!と皆憤慨しますが、東北のがれきを受け入れるかと言われるとなんだかんだ理由をつけて断ろうとする。
放射性物質のリスクという観点からすれば大差ないはずなんですけど、人間心理というのはおもしろいなと思いますね。
ただ飽きやすく醒めやすい日本人の特性から考えて、いずれこうしたリスクともほどほどに折り合いをつけていくんじゃないかとも思ってます。

投稿: 管理人nobu | 2012年2月23日 (木) 08時02分

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