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2012年1月20日 (金)

本格化する診療報酬改定作業 結論自体は予定調和となりそうですが

昨年末にお伝えしました通り、財務省と厚労省の綱引きの結果12年度の診療報酬改定は総額ベースで実質プラスマイナスゼロ、とりあえず減らさなかったという結論になったということですが、その中身の議論が次第に明らかになってきています。

2012年度診療報酬改定、現時点の骨子を公表(2012年1月14日日経メディカル)

 厚生労働省は1月13日、中央社会保険医療協議会総会を開催し、2012年度診療報酬改定に向けた「これまでの議論の整理」(案)を示した。

 この整理案は、昨年末までの中医協での議論の内容を、社会保障審議会医療保険部会・医療部会が定めた「平成24年度診療報酬改定の基本方針」の項目に沿ってまとめたもの。中医協では議論の俎上に載らなかったものの、学会や病院団体から強い要望があった事項も追記されている。

 同日の中医協では、この整理案を基に議論。診療側と支払い側委員との間では、主に、前回2010年度改定で引き下げられた診療所の再診料に関する項目について意見が対立した。

 今回公表された整理案には、これまでの中医協で議論されなかったこともあり、「診療所の再診料」については言及されていない。だが、診療側委員の安達秀樹氏(京都府医師会副会長)は、「日本の医療において診療所の貢献度は高いにも関わらず、前回は改定財源が不足しているという理由だけで再診料が引き下げられた」と批判した上で、診療所の再診料引き上げに関する今後の議論を求めた。診療側委員の鈴木邦彦氏(日本医師会常任理事)もこれに同意する形で、「診療所の役割を評価する上でも、再診料の点数をせめて2008年度改定まで戻すことが不可欠」と訴えた。

 一方、こうした意見に対し、支払い側委員は「医療経済実態調査の結果から診療所の経営状態は改善傾向にあるため、全体的な底上げの必要はないはず」(健康保険組合連合会専務理事の白川修二氏)などと真っ向から反発。今後、診療所再診料を改定論議の俎上に載せるかどうかの判断は、厚労省に委ねられることになった。

 再診料を巡っては、病院の複数科受診時の取り扱いについても、診療側と支払い側委員の間で意見の隔たりが大きい。現在、同一医療機関で複数診療科を同一日に受診した場合は、再診料は最初の1科目しか算定できない。だが、厚労省は今回の議論の整理案に、「同一日の2科目に限り再診料が算定できるよう見直す」旨を記した。これは診療側の要望に沿ったものだが、支払い側は、「患者の負担増につながる上、院内の診療科をどう分けるかは病院側の都合である部分も大きい。このあたりの整理がつかないまま、複数科受診時の再診料を算定できるようにするという議論には乗れない」(白川氏)と反対した。

 このほか、再診料の地域医療貢献加算についても議論された。同加算は、診療時間外にも患者からの電話に対応し、必要に応じて診察したり専門医を紹介する体制を敷く診療所を評価する点数だが、算定率が低く、加算の名称と内容が見合っていないことなどが問題視されてきた。そのため、今回の整理案では「再編成について検討する」と、見直す旨が明記された。ただし、曖昧な表現にとどまったことから、診療側・支払い側の双方から、厚労省に対して具体的な見直し内容を提示する要望が相次いだ。これを受け、次回の18日の会合では具体案が示される見込みだ。

 厚労省はこの「議論の整理案」に今回と次回(1月18日開催予定)の中医協で出された意見を反映し、「現時点の骨子」として取りまとめた上で、パブリックコメントを募集する。国民の声を直に聞くため、1月20日には愛知県で公聴会も開催する予定だ。その後、中医協では「骨子」をベースにさらなる議論・検討を重ね、2月中旬にも個々の診療行為ごとの報酬を決定する。

診療報酬改定案:勤務医、負担軽減へ 中医協骨子まとめる(2012年1月18日毎日新聞)

 診療報酬改定を議論する厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は18日、勤務医の負担軽減や医療・介護の連携強化などを図るための12年度改定案の骨子をまとめた。これに基づき、今後診療報酬の項目ごとの配分を決める。厚労省は同日から25日まで骨子に関する国民の意見を募る。

 12年度改定では、前回の10年度改定に引き続き、救急、産科、小児科、外科など医師不足が指摘される診療科の勤務医の負担軽減策に重点配分する。6年に1度の医療・介護同時改定となる点を踏まえ、医療と介護の役割分担や連携強化、在宅医療の充実なども推進する。手術料など本体部分のプラス改定で得られる約5500億円を充てる。

 勤務医の負担軽減策としては、開業医などの紹介状を持たない患者の受け入れ率が高い大規模病院の初診料(2700円)を一部保険適用外とする。

 紹介状のない患者がこうした大病院を訪れると自己負担が増えるようにすることで、軽症患者を中小医療機関に向かわせ、大病院の勤務医の負担を減らす。現在も200床以上の病院は紹介状のない患者から特別費用を徴収できるが、紹介率の低い大病院に行くとさらに自己負担が重くなるようにする。

 医療・介護の連携強化では、在宅復帰に重要な訪問看護の充実を目指す。スムーズな退院を促すため、退院日の訪問看護に加算する。また保険適用外の時間外の訪問看護を保険適用対象とし、患者の自己負担を軽くして利用増を図る。

 医療と介護で重複するリハビリテーションは、身体機能維持を目的としたリハビリを減算し、介護保険のリハビリに切り替えるよう促す。【山田夢留】

救急・在宅医療に重点 勤務医の負担軽減(2012年1月19日日本経済新聞)

 中央社会保険医療協議会(中医協)が18日まとめた2012年度の診療報酬改定の骨子は、救急や在宅医療に重点配分し、病院勤務医の負担軽減と医療の機能分化を進める方針を打ち出した。設備の整った大病院は救急など重症者の治療に集中し、症状の比較的安定した患者は診療所などが受け持つ考え方だ。ただ、医療機関側は基本料金である再診料の引き上げを引き続き要望している。2月半ばに確定する12年度の診療報酬はメリハリのきいた配分にならない可能性もなお残る。

 骨子は、救急や出産前後の周産期の医療を強化しつつ、病院勤務医の負担を軽減するための措置を盛り込んだ。子どもに特化した集中治療室を持つ病院を対象に「特定入院料」を新設するほか、症状の落ち着いた患者の転院を報酬面で支援し、満床で救急患者を受け入れられない事態を避ける。

 一方、紹介状なしに大病院を受診する患者の負担を重くし、病院勤務医が外来患者の対応に忙殺されないよう配慮した。夜間・休日対応の診療所への加算(地域医療貢献加算)を拡充し、病院への時間外受診を抑える

 在宅医療の充実では、拠点となる病院や診療所からの往診料を増やす方向だ。退院日の訪問看護も評価し、入院から在宅に患者が安心して移れるようにする。自宅で最期を迎える人への診療についても加算を手厚くし、体制を強化する。

 機能分化の方向を強く打ち出したのは、高齢化で医療費が膨張するなか、効率的な医療サービスを提供する体制が求められているためだ。骨子は、手術などを伴わない土日の入院基本料の削減や後発医薬品の利用促進などの効率化策も盛り込んだ。

 ただ、このままメリハリのきいた配分にできるかは不透明な面もある。医療機関側が強く求めている再診料の引き上げの扱いが決まっていないためだ。骨子には盛り込まれなかったが、骨子の参考資料に、再診料の引き上げが賛否両論の形で記された。厚労省は引き上げに消極的だが、結論は先送りした格好だ。

 再診料が10円上がると医療費は120億円膨らみ、その分だけ重点分野に回せる財源が少なくなる。再診料は診療の基本料金であるため、医療の機能分化への貢献にかかわらず、すべての診療所が潤うという事情がある。健康保険など報酬の支払い側は「24時間対応などに貢献した医療機関に厚く配分すべきだ」などと主張し、引き上げに強く反対している。

中医協に提出された厚労省まとめるところの「これまでの議論の整理」が日経メディカルに掲載されていますが、「急性期医療の適切な提供に向けた病院勤務医等の負担の大きな医療従事者の負担軽減」と「医療と介護の役割分担の明確化と地域における連携体制の強化の推進及び地域生活を支える在宅医療等の充実」の二点が特に重点課題として取り上げられています。
このうち前者に関してその詳細を見ると、救急医療が切迫している現状を指摘した上で急性期医療のスタッフを手厚くするだとか急性期を過ぎた患者を早急に転院させる等の地域内連携を推進する、あるいはセンターに患者が集中しないよう二次救急レベルでのトリアージを評価する等々といった話が並んでいます。
一方でこうした対策はほとんどが医療の供給側の充実、再編(要するに、さらに働けということ)に関することばかりであって、増え続ける医療の需要側への対策としては記事にもあるような初診料問題くらいしか採り上げられていない、むしろ支払い側委員などが何かと言えば「それでは患者負担(本当は保険者負担ですが)が増すじゃないか!」と反対に回っているという構図らしく、かなり片務的な内容という印象が拭えません。
以前から日本の患者は他国よりもずっと頻回に医療機関にかかっていることが知られ、また昨今ではなんでもかんでも救急車を足代わりに呼ぶなど増大する一方の需要側への対策がなければもはや医療は回らないと現場に少なからず危機感があるにも関わらず、中医協の場で全くそうした話が出てこないというのは奇異な印象を受けるのですが、そうした議論をしたくない人々ばかりを委員に任命していることの意図もあるのでしょうね。

一方で後者に関しては色々とアイデアは列挙されていますけれども、基本的な考え方としては頑張って人よりも余計にやった仕事には報酬をつけましょうというものであって、裏を返せば人並みにこなしているだけの方々に対する報酬を削って余分な仕事をした方々への報酬に回そうという話ですから、常識的に考えてもそれで過重労働改善になるのかどうかは疑問符ですよね。
この点で日医ら開業医側の主張を代弁する委員の間から診療所収入の基本となる再診料引き上げの要望が繰り返し出されているのは彼らの立場を考えれば当然なのですが、昨年の仕分けで素人さんの仕分け人が「同じ医師なのに勤務医と開業医でどうして収入が違うんですか!」と叫び、厚労省が「へい!全くおっしゃるとおりで!」と揉み手で迎合した経緯を思い出さなければなりませんよね。
要するに厚労省としては今後労働という応分の負担をしない医師には今以上に報いる意志はない、ましてや久しく以前から開業医は儲けすぎ、診療所の収支も改善していると盛んにマスコミに情報を流すといった仕込みを丹念にしてきたわけですから、間違っても今回の改定で診療所の開業医に代価も無しにいい話をということにはならないでしょう。
もちろん勤務医=激務薄給、開業医=楽で大儲けというのはケシカランという国民世論の後押しも受けての話ですから当然の流れでしょうが、問題はかねてこうした場で純然たる勤務医代表と言える存在をろくに議論に加えず、開業医の代弁者である日医や勤務医をこき使ってきた立場である病院経営者サイドばかりを委員として登用してきたこととの整合性はどうなのかでしょうね。

そもそも前述の医療需要側抑制策の欠如しかり、高齢者医療費の二割負担などもとっくに決まっているにも関わらず、相変わらず一割負担で当面継続しますと実施が延び延びになったままであることなどからも見られるように、いわば医療現場を切迫させた当事者である国民に対しては未だに積極的な対策一つ打ち出されず、散発的な「医療は適正に利用しましょう」キャンペーンが行われている程度ですよね。
民主党政権としては形骸化して久しいとは言え、一応医療を再建しますということを政策上の一つの目玉として公言してきたわけですから医療利用の利便性低下など受け入れ難い、一方で支払い側委員のみならず国や国民側としても医療供給体制が改善することは望んでも、そのために更なる追加の財政負担などは望んでいないのも確かでしょう。
となると、中医協など表向きの議論の場においても誰かを論破されるための物わかりの悪い馬鹿役ということにしてしまった方が国民向けにも言い訳がしやすいという面もあるのかな…とも想像するのですが、その点で十年一日のごとく医療費をひたすら増やせ、財政負担ももっと引き上げろと時代に沿わない事ばかりを口走っている方々こそ、まさに最適な配役であると言うことなのでしょうか。

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コメント

ドクターフィー等々働いた医師個人への報酬が考慮されていないんだから結局勤務医は働いたら負けという構図は不変ではないだろうか?
多少報酬上割り引かれたとしても自分でやった分は自分の収入に直結する開業医の方がまだましだと考えるだろう

投稿: kan | 2012年1月20日 (金) 10時18分

メリハリの利いたって言われても、結局全部ひとまとめに病院の収入になるだけなんですけどねえ…
しかし医師会は唯一注目されているのが再診料引き上げ要求だけみたいですけど、他の部分に関してはどう考えているんでしょうね?

投稿: ぽん太 | 2012年1月20日 (金) 12時24分

こちらが大変そうだから少し報酬に色をつける、こちらは楽して儲かっていそうだから報酬を削る。
十年一日どころか何十年もそうした作業をやってきて、この先も未来永劫この調子でやっていくのかなと思うとなんだかなあ…という感じですけど。
ちなみに外から医療業界を見ていてこういう意見もあるようです。

失業者と人手不足が併存するわけ
http://money.jp.msn.com/news/bizmakoto/article.aspx?cp-documentid=5756163

投稿: 管理人nobu | 2012年1月20日 (金) 14時58分

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