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2012年1月 5日 (木)

病気持ちには生きづらい世の中が求められている?

メタボというものが社会の目の敵にされるようになったこの時代、医療費抑制のためにも企業など保険者へのペナルティーを伴う特定健診というものが厳しく推進されているのは周知の通りです。
そんな中で先日こういう記事が出ていましたが、一見するとよく言われるような生活水準の高い人ほど一般に健康水準も高いという話を思い起こさせる結果ですよね。

糖尿病:患者の割合高い中小企業、検査・指導も少なく(2011年12月31日毎日新聞)

従業員300人未満の中小企業に勤める人ほど、糖尿病患者の割合が高く、企業側から従業員に対する検査や指導などの働きかけも少ないことが、独立行政法人労働者健康福祉機構の研究班(班長=佐野隆久・中部労災病院副院長)の調査で分かった。企業の規模や取り組みによって、有病率に差があることが判明したのは初めて。研究班は「勤務と治療の両立を後押しする仕組みが必要」と話す。

 調査は、昨年から今年にかけて愛知県内の企業323社に実施した。従業員が50人未満の小企業、50~299人の中企業、300人以上の大企業に分けて解析した結果、1000人あたりの糖尿病の従業員の割合は、大企業39.4人、中企業47.0人、小企業63.0人と企業規模が小さいほど高かった。また、大企業の約6割は、定期健診で経過観察が必要になった従業員に定期的な検査や指導をすると答えたものの、中小企業の約7割は「何もしない」との回答だった。

 労働安全衛生法に基づき、大企業の多くは産業医が常勤する一方、中小企業の大半は、非常勤か不在だ。中小企業では、平日は受診しにくいなど治療継続が難しく、勤務と治療の両立に苦労する人が多いとみられる。【永山悦子】

無論スタート時点での条件が同じということであればともかく、従業員のバックグラウンドが規模の異なる企業間で共通しているわけではありませんから、ただちに「中小企業勤務は体に悪い」なんて結論にいたるデータではないとしても、「企業側から従業員に対する検査や指導などの働きかけも少ない」というのは問題で、これを見ると中小企業ケシカランとも言いたくなるデータです。
一方でご存知のように特定健診では受診率、保健指導実施率、目標到達度が基準を下回った場合に保険者(企業や自治体)にペナルティが課されますけれども、この結果特に大企業においてはメタボのハイリスクあるいはその予備軍に対して雇用時に非常に厳しいチェックが(実質的な雇用の拒否も含めて)入るようになってきています。
要するに病気持ちの人、将来病気になりそうな人はまともな会社に入れなくなる時代が来ているということですが、そうは言っても人手は必要だという場合には下請けの中小企業に引き受けさせるという形で人材を確保しておけば、大企業側はペナルティーを回避できる上に従業員に何かあって労災かどうか?などと頭を悩ませるリスクも低減できるわけです。
特定健診の制度の是非はここでは大きく踏み込みませんけれども、国にしてもこうした背景事情も承知した上で対策をやっていかなければ中小企業より大企業、従業員より雇用者と、ますます強い者だけが得をするといういびつな構造に拍車がかかってしまう危険性もあるということですね。

さて、基礎疾患持ちは雇用の面で苦労するというだけではないらしいというのがこちらの話なのですが、まずは記事をご覧いただきましょう。

合併症のがん患者 受け入れ制限(2012年1月3日NHK)

卵巣がんや子宮けいがんなどの治療で中心的な役割を果たす病院の40%以上で、患者に糖尿病や統合失調症といったほかの病気がある場合、受け入れを制限していることが、分かりました。

日本産科婦人科学会は、卵巣がんや子宮けいがんなどの治療で中心的な役割を果たす全国の大学病院やがん専門病院などに診療態勢について尋ね、65%に当たる483施設から回答を得ました。その結果、がん患者に糖尿病や統合失調症といったほかの病気がある場合、44%に当たる209施設が「受け入れを制限している」と答えました。特に各地のがんセンターを中心としたがん専門病院では、13施設のうち11施設が「制限している」としていました。受け入れを制限する病気について複数回答で尋ねたところ、透析が必要な患者で56%に上ったのをはじめ、薬を服用している統合失調症の患者で52%、インスリン治療をしている糖尿病の患者で14%となっていました。

調査を担当した東京慈恵会医科大学の高倉聡講師は「合併症のある患者はより体調が悪いにも関わらず、手術可能な病院を求めて遠くに行かざるをえない実態があると考えられる。婦人科に限らず、ほかのがんでも同じような問題が生じているおそれがあるので、患者に合併症がある場合の診療態勢を整備していく必要がある」と指摘しています。

漠然と記事を読んでいるのでは少し判りにくい話で、また医者がいい加減なことをやって!と言う人も出てきそうですけれども、こうした話が出てくるということの背景に近年医療に対して国民から求められているものは何かということが密接に関係しています。
例えば俗にDPCなどと言われる疾患毎の定額払い制度が普及したのは、出来高払いでは医者が無駄な検査や治療を行うほど儲かることになる、ケシカラン!という国民の声に押された結果ですけれども、その結果各施設ともいかに患者の治療期間を短縮するかが収入を左右する最重要因子になってきています。
よく「元通りに治っていないのに転院を迫られた」などという話がありますが、国が医療政策上そうすることを求めているのですから当然の結果であって、特に糖尿病などのようにあらゆる疾患の治療において悪影響を及ぼすような基礎疾患を持つ患者というのはあからさまに余計な手がかかる患者であり、そうした余計な支出ばかり増えて収益に結びつかない患者は引き受けると経営が難しくなりますよというのが国の政策誘導であるえわけですよね。
またそうした経営上の話は別としても、手のかからない患者より手のかからない患者の診療を優先した方が、現在の限りある医療リソースでより多くの患者の診療をこなせるのは当たり前の理屈ですから、医療崩壊だ、患者のたらい回しだなどと言われる時代にあって一人でも多くの患者を引き受けるためには当然の判断と言えるでしょう。

また近年ではマスコミなどを始めとして治療成績を公表しろ、成績の悪い医者や施設は淘汰しろという声がどんどん高まった結果、全国あちこちの施設でこうした数字を公表するようになってきていますけれども、実際の患者や近隣の医療関係者の目から見た実感と異なる数字が独り歩きしている局面も多いですよね。
かねてから癌センターなどでは治療成績を落とす可能性のある合併症持ちの患者は嫌がられる、元気が良くて体力もある患者ばかり相手にしているから成績がよいんだなんて声がありましたが、これまた数字のいい施設ほどよい施設であり、そうした施設を増やすことこそ正義という国民の声が高まってきた以上はあたりまえに起こってくる結果ですよね。
「患者に合併症がある場合の診療態勢を整備していく必要がある」などと簡単に言いますけれども、医療に限らずどこの業界でも余計に手がかかることが明らかで収入上も損になる、しかも何かあって後日トラブルになる確率も高い顧客を優先的に引き受けるなんてことはよほどのブラック企業でもなければあり得ないことで、どうやってそのインセンティブを用意するかを示さない限りは机上の空論と言われて終わりでしょう。

これが医療費は実質的に使い放題、高い志に基づいて非効率な医療をやっていても経営が成り立っていた時代であれば「いや、うちはそういう患者さんこそ来ていただきたい」なんて奇特な医者もいたかも知れませんが、今や国と国民の求めるところに従って医療は儲けてはならない、お上の求めるやり方でやっていかなければ一切経営は立ちゆかせないという状況を強いられて久しいわけです。
どんなに腕のある料理人であっても材料が特定のレシピに従って作るのに最低限のものしか用意されていなければそれ以上のものは作れないわけで、ネタも合わせ酢の用意もなく米一合にカップ一杯の水、小さじ一杯の塩しかないのに特上握り寿司一人前をつくって見せろと言うのは無茶というもので、そこは握り飯の二つ、三つで勘弁してもらうしかないのは当たり前のことでしょう。
医療に限らず不景気とデフレの時代でどこの業界でも効率化だ、無駄の排除だということを最優先に話を進める傾向がありますが、その結果何がどうなっていくのかということも合わせて知っておかないと、あれれ?こんなはずではなかったのに…と感じてしまう方も増えていきそうですね。

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コメント

仕事量が少なくて客捜しに必死ならまだしもだが、客が多すぎて過労死しかねないんだから優先順位を決めて対応するのは当然
そもそも透析導入した糖尿病患者など喜んでみたい医者はいるか?w

投稿: aaa | 2012年1月 5日 (木) 10時15分

>そもそも透析導入した糖尿病患者など喜んでみたい医者はいるか?w

高確率で糞ですからねえ…。
*DM患者が糞なのは病気のせいで血糖コントロールがつくと別人のようにイイ人になる場合もあるそうですがww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年1月 5日 (木) 10時26分

その昔糖尿の専門家の先生が「俗説にあるような糖尿病に特有の人格など存在しない!」と妙に力説していたのが印象に残っているのですが、そうまでして否定する理由でもあるのでしょうかねえ…

投稿: 管理人nobu | 2012年1月 5日 (木) 11時46分

>その昔糖尿の専門家の先生が

私も上記はその昔糖尿の専門家の先生に聞いたんですがががww

>そうまでして否定する理由

つか、語るに落ちてませんw?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年1月 5日 (木) 12時20分

そういう先生は自身もDM持ちかと思われ

投稿: kan | 2012年1月 5日 (木) 16時25分

商売道具に身を染めちゃいけませんや(苦笑)

投稿: 管理人nobu | 2012年1月 6日 (金) 10時52分

くそwwwこんなんでwwwwコーヒー返せwwwww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年1月 7日 (土) 09時44分

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