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2012年1月 4日 (水)

厚労省の生保対策はさらに勢いを増しているようです

昨年11月2日に厚労省から「開業医は儲けすぎだ!」と言う発表があった後で診療報酬改定作業が始まり、結局総額は据え置いた上で開業医の分を勤務医へと回すという配分の工夫(?)で決着したことは記憶に新しいところですが、そうしますと昨年暮れに厚労省から発表されたこちらのニュースもその背後に大いなる意図が秘められているということでしょうか。

生活保護者、公費負担で高頻度通院…厚労省調査(2011年12月31日読売新聞)

 医療費が全額公費負担される生活保護受給者について、2009年度の受診状況を厚生労働省が調査したところ、2日に1回以上の高頻度で3か月以上続けて通院した「頻回通院者」が全国で1万8217人に上ることがわかった。

 うち3874人については、自治体が必要以上の受診にあたる「過剰受診」と判断。通院頻度を抑えるよう受給者を指導したが、改善はその約3割の1279人にとどまっているという。

 同省によると、全国の一般外来患者の月平均通院日数は約1日で、65歳以上の高齢者でも3日程度にとどまっている。

 しかし、同省が同じ傷病名で同一診療科(歯科を除く)を月15日以上、3か月以上連続で受診した人について、09年度分の診療報酬明細書(レセプト)の分析を各自治体に依頼、データを集計したところ、生活保護受給者の多くに整形外科や内科の診療所に頻回通院したケースがあったことが判明。自治体はさらに該当受給者の診療内容などを点検し、全体の約2割の3874人を「過剰」と判定した。都道府県別では、大阪府が6025人(過剰受診者856人)と最多で、以下、東京都が1920人(同478人)、福岡県が1374人(同469人)など。

しかし厚労省に限らず中央官庁からの重大発表は金曜日など必ず休み前に入るのは突っ込まれないためであるという説がありますが、そうなりますと年末年始の休みを目前に控えたこの時期に発表されたこちらはよほどに重大な発表であったと言うことですよね。
内容自体はまあそんなものだろうなと言う程度のもので、むしろ生保受給者診療の実態を考えれば今頃になって何を言っているの?とでも言うべき話なんですが、先日も取り上げましたような生保受給者へのジェネリック使用促進などとも絡めて今後指導を強化していくという方針は確定であるとして、ではそうした指導を行って是正すべき対象とは何だと同省が考えているのかが問題ですよね。
世間の方の見方がどうであるかということを考える上では、同日に同じく読売新聞から出されましたこちらの解説記事を見ていただくとよく判るのではないかと思いますが、仮に同省のスタンスも同様であるのだとすれば「それなら最初から応召義務なんて馬鹿げたことを押しつけるんじゃないよ」とぼやきたくなる医師も少なくないのではないでしょうか。

生活保護受給者囲い込みの病院「彼らは上客」(2011年12月31日読売新聞)

 全額が公費から支出される生活保護受給者の医療費を巡り、日課のように受診を繰り返す「頻回通院者」の存在が明らかになった。

「暇だから」「親切にしてもらえる」。病院通いを続ける理由を、彼らはそんな風に漏らす。そして医療機関側も、車での送迎など手厚いサービスで、取りはぐれのない“上客”の囲い込みに懸命だ。

 ◆5年前から毎日

 12月中旬の朝、大阪市西成区の診療所。玄関のシャッターが開くと同時に、中年男性たちが次々と吸い込まれていった。診察を終えた十数人に聞くと、全員が受給者半数以上は週4日以上通っているという。

 「5年前から毎日、点滴とマッサージに来ている」という男性の病名は、「腰痛」。「足の関節が痛む」と連日、電気マッサージに通う別の60歳代の男性は「先生が優しいし、マッサージも気持ちいい。どうせタダやし」と満足そうに言う。

 厚生労働省の調査で判明した同市の頻回通院者は、全国最多の4179人で、全体の2割以上を占める。

 診療所の患者は高齢者が多いが、一見健康そうな働き盛り世代の姿も目立つ

 40歳代の男性は腰の持病のため連日、「簡単なリハビリ」に通っているという。本来はケースワーカーから働き口を探すよう求められる年齢だが、「医者が書類に『就労不能』と書いてくれるから何も言われない」。男性はそう話し、「元気そうに見えるやろけど病人やで」と付け加えると、自転車で勢いよく走り去った。

 ◆「はやってナンボ」

同区内の別の診療所前では、男性受給者たちが次々とワゴン車から降りてきた。診療所側が早朝から自宅を回り、診察後は送ってくれるサービス。ロビーからはニシキゴイが泳ぐ庭園が望め、院内にはリクライニングシートが並ぶ点滴ルームや多数の運動器具を備えたリハビリルームがそろう

 その近くに最近開院した診療所は年中無休の触れ込み。開院当初、「生活保護取扱」と書いたのぼりを立て、芸能人の名を使ったビラやカイロを通行人に配る客引きを展開し、市保健所から注意を受けたという。

 「受給者をターゲットにした診療所が、ここ数年増えている」。同区の医療関係者はそう話す。

 「彼らは主要顧客」。ある診療所を経営する男性医師は、こう言い切った。数年前の開院当初は患者が集まらず、知人のブローカーに受給者の紹介を依頼。以後、頻回通院者が増え、赤字経営を脱却したという。

 「治療より経営優先。はやってナンボ」。医師はそう言う一方、こんな表現で過剰診療を否定した。「患者が自主的に来るから診ているだけ。『毎日来い』とは言っていない

よく記事を見ていただければ判るように、非常に特殊な地域における極めて例外的な診療所内での出来事であると判断すべき面も多々あるのですけれども、そうした激レアな事例を事情を知らない一般国民に向かって特に注釈も無しに取り上げる読売新聞の意図だけは明瞭ということですよね。
むろんのこと、昔から生保受給者などを上顧客に不適切診療を行いお上のご厄介になるケシカラン医療機関は絶えることがありませんけれども、医療関係者の間でも「ブラック病院」と認識されているその種の施設がどれだけの比率として存在するのかを考えると、逆に言えばわざわざこんな極端な特殊例を一般的事例のように取り上げざるを得ないという事情もあるのでしょう。
そして当然ながらマスコミにこうした情報を出した厚労省にしてもこうやってマスコミの手で世論を盛り上げてもらうことを期待していたのでしょうが、恐らく全国多くの医師達が「なんじゃそりゃ」と感じるだろうこの記事、考えようによってはかねて撤廃しろと言われている応召義務問題の抜本的解決を厚労省とマスコミが是認しているとも言えそうですよね。
まさかここまでの記事を書いていながら「どうせタダやし」と「自主的に来ている」患者を医療の側で拒否することも認めないとは彼らも言い出しにくいんじゃないかと思うのですが、そう考えると全国の善良な医療関係者とマスコミ、厚労省とでこの問題に関しては良き共闘関係を結べるということでしょうか(笑)。

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コメント

生保の医療費も査定されて、「過剰」や「不適切」とされたら 支払いを拒否されるようになるという、ツマラん(ある意味当然の)オチのような気がします…

投稿: JSJ | 2012年1月 4日 (水) 08時50分

ほんとにこんな診療やってたら普通は査定が入りそうですけどね。
ま、今後は大阪であってもアンタッチャブルに手が入っていくようになるかも知れませんけど。

投稿: 管理人nobu | 2012年1月 4日 (水) 09時26分

あけましておめでとうございます。
読売はこれ、どういう意図で記事にしたんでしょうね。
生保利権で儲けている医師がいると言ってた橋下市長にすり寄るための記事なんでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2012年1月 4日 (水) 11時42分

外来を断られたら、救急車を自分で呼んで救急外来に来る、という無限ループに
なりそうですね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年1月 4日 (水) 12時20分

>「治療より経営優先。はやってナンボ」

と、自分で自分を騙しつつ拳握り締る私、な先生も多いんじゃないかなあ…。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年1月 5日 (木) 10時22分

いや、もちろん経営者としてはそれが当然の本音でしょうけど、いまどきマスコミ相手にそれを言っちゃったらあまりに脇が甘いと言うものかと。
そういう意味でもこのケースはちょっとどうなのよと感じてしまうわけです。

投稿: 管理人nobu | 2012年1月 5日 (木) 11時44分

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