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2012年1月 6日 (金)

これも新年の望まれざる風物詩でしょうか?

お正月と言えば毎年恒例とも言えることですが、あの食品の事故が今年も相次いでいるというニュースが各地で出ていますよね。

高齢者 餅詰まらせ搬送相次ぐ/東京(2012年1月1日NHK)

東京都内では去年の暮れから1日の元日までに餅をのどに詰まらせて13人のお年寄りが病院に運ばれ、このうち2人が死亡しました。東京消防庁は特に高齢者が餅を食べる際は小さく切るなど、十分注意するよう呼びかけています。

東京消防庁によりますと、都内では、去年暮れの先月26日から1日の元日までの1週間に餅をのどに詰まらせて、いずれも70代以上のお年寄り13人が病院に運ばれました。このうち、先月28日には練馬区の82歳の男性が自宅で草餅をのどに詰まらせて死亡したほか、30日には日野市の101歳の男性が自宅で餅をのどに詰まらせて死亡したということです。東京消防庁は、特に高齢者が餅を食べる際は、小さく切って食べることや飲み込む前に水分を取りのどを湿らせること、それにゆっくりとかむようにするなど十分注意するよう呼びかけています。

餅という食品はこれだけ長い歴史があって誰しも若年の頃から食べ慣れているだけに、いまさら高齢者に食べ方を変えろと言っても習慣が変わるものでもないように思うのですが、そうなると今後も一定の割合でこうした事故が発生することは避けられないということになりますよね。
しかし毎年おもしろいなと思うのは昨今では日本もすっかり訴訟社会で、特に医療や介護の施設入所者が食事を喉に詰めたなどと言えば割合に裁判沙汰になることもままあるのですが、こうした施設入所者の餅による窒息死も今年も含めて毎年のように発生しているにも関わらず、ざっと調べた範囲で一件も裁判になったと引っかかってこないというくらいに訴訟沙汰になるのが稀であるらしいのですね。
この時期になると毎年話題になるところですが、高齢化を反映してか食べ物による窒息死は年間4000人を超える水準にまで増加しその増加の大部分が高齢者であることが知られ、中でも餅という食品は一口食べるごとに窒息事故が起こる確率で見れば他の食品と比べて群を抜いて高いというありがたくない評価をされており、実際の死亡事故件数で見ても首位を独走していることが明らかになっています。
となると、そんな危険な食品を野放しにしておいていいの?という疑問も出るでしょうし、一番危険なものはスルーして他の食品ばかり目の敵にするのはおかしいんじゃない?という声が出るのも当たり前のことですよね。

【きょうの名言】今年も猛威をふるう「餅容疑者」(2012年1月3日ゆかしメディア)

 正月になると毎年のことのように、餅をノドに詰まらせて窒息死する人が後を絶たない。また、死亡しなくとも、病院送りとなる人も多数出る。ここで、懐かしいが「蒟蒻ゼリー」の存在がまた気になる

 @sabu_mikawayaさんがツイートする。

 「本日現在までに二人ほど殺し10名以上病院送りにしている餅容疑者 蒟蒻ゼリーよりはるかに悪質なのに規制されない まるでオリンパスとライブドアの処遇の違いのようだ

 蒟蒻ゼリーはご存じのように、消費者庁が該当する7社に今年を期限に改善を求めてきた

 ただし、「食品による窒息の現状把握と原因分析研究」という調査が平成20年に昭和大学で行われた。それでは、食べ物による窒息など傷病の432例について調査。その結果、穀類が211例で最多。そのうち餅は77例、米は61例、あとはパン、粥となった。カップ入りゼリーは8例だった。

 基準はすべて、「お上」が決めるのだ。

こんにゃくゼリー問題に関しては死亡事故発生当時に当「ぐり研」でも取り上げたことがありますが、遺族が製造会社に対して訴訟を起こしたり国に対して強硬に規制を主張するなどした結果社会的注目を浴びるようにもなり、またそうした声に押され国の指導も強化されメーカー側も積極的に事故防止対策を行うといった、目に見える形での動きもあるわけですね。
一方で毎年多大な犠牲者を出している餅に関しては味や食感の改善は日夜研究されているのでしょうが、死亡事故防止のための研究や工夫と言う話も聞かないですし、こんにゃくゼリー事故を受けた咽頭モデルでの研究によっても「食品の弾力性が大きく破断されにくいほど砕けにくく、喉頭閉塞を起こす傾向がある」等々、まさに言うところの「よい餅」ほど本質的に危険なのだと示唆する結果が出ているわけです。
これほど危険な餅とこんにゃくゼリーとの扱いに何故こんな大きな差が出たのかについては、餅は古来食されてきてすっかり食文化として定着しているという背景事情の違いもあるでしょうし、市場規模や関連企業数、自家生産分も多いという事情からして規制による影響が全く異なるということもあるのだろうと、すでに各方面でさんざんに言われていますよね。
そうした前提の違いも踏まえた上で注目すべきなのは、全国に餅訴訟が頻発したり餅会社に製造販売禁止を求める声が上がらないのは結局のところ、社会的にも「餅を喉に詰めて死ぬのは自己責任」という認識が定着していて、言ってみれば「餅が詰まったからと他人を訴える人間なんて普通じゃない」という周囲の認識こそが最大の抑止力になっているという点ではないかと思いますね。

一般に国が重い腰を上げて規制に動くと言えば世論に押されてと言う場合がほとんどですが、それではその世論なる無形のものが何によって作られ認知されるかと言えば一つにはマスコミというものが作り上げる、そしてもう一つは直接の当事者など声が大きい人が作り上げるといってよさそうです。
要するに世論と呼ばれていても別に世間の多数派がそう考えているという保障は全く無いわけですから、場合によっては一部の方々が大騒ぎすることによって国民大多数の求めているものとは全く逆方向の「世論」が存在することにされてしまい、それに基づいて社会が動くということもあり得るということですよね。
こんにゃくゼリー問題と言えばかねて「ゼロリスク症候群」に絡めて議論されることが多かった話ですが、こんにゃくゼリーに限らず賛否両論ある問題で少数派意見の方に沿ってどんどん話が進んでいってしまうケースを思い出す時、昨今話題になるクレーマーやモンスター顧客などと同様の事情が背景にありそうだなとも言えそうですよね。
一部の声が大きい人々の不当な要求に黙って従ってきたことがモンスターを増殖させ社会問題化するまでに至らせたという歴史的経緯を思い出す時、「いやそれは言わなくても常識レベルだろう?」と思えることであってもきちんと声を出していかないと、社会全体に思わぬ歪みが飛び火し延焼することにもなりかねないということでしょうか。

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コメント

御高齢の方が入院されると、食事箋に「もち禁止」(白玉団子等も含む)とデフォルトで付け加えるように
しています。年末には、持ち込み食 特に 餅禁止を病棟にも徹底させています。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年1月 6日 (金) 08時50分

ホームなどでは半ばとろけたようなうまくない餅を食べさせるところもありますが、窒息防止を考えると粘性も弾性もない状態が望ましいということなんでしょうか。
ただ餅に限らず糖質ゼロだとかタール1mgだとか、嗜好品であるはずのものが健康のためにとわざわざまずくして出されているのを見ると、そうまでして食べなければならないものなのかな?とも思ってしまいます。

ところで引用にあったこんにゃくゼリー訴訟の和解内容で、

>同社との和解条項には、「他社の同種製品も含め、事故の発生等によって、安全性の疑問が判明した場合、製造販売を中止する」との条項が盛り込まれており

こういう訴訟当事者以外も対象にして縛りを加えるような条項ってありなんでしょうか?
和解だからお互いが納得していればそれでもいいのかも知れませんけど、ものすごく恣意的に解釈出来そうですよね?

投稿: ぽん太 | 2012年1月 6日 (金) 09時55分

商売として売っていく気があるのなら弁護士が止めそうな条項なのですが、どういう経緯でそんなことになったのかが判らないので何とも。
そもそも「危険の証明」ではなく「安全性の”疑問”」ですから、誰かが「だが待って欲しい。それは本当の安全だと言い切れるだろうか」なんてことを言い出せば即疑問にはなってしまいますからねえ。

投稿: 管理人nobu | 2012年1月 6日 (金) 10時55分

こんにゃくゼリー訴訟一審敗訴をうけて弁護士のコメント:
◇窒息事実を軽視--日弁連消費者問題対策委員会で幹事を務める中村忠史弁護士(東京弁護士会) 問題のある判決で肯定できない。設計上の欠陥はないとしているが、窒息事故が発生した事実を軽視しており、こんにゃくゼリーに大きな危険性が内包されている点を過小評価している。食品は子どもも高齢者も安心して食べられるべきもの。警告表示を付けただけで安全安心が確保されるというのは大きな誤りだ。

なら警告表示もつけないで餅売ってる連中を先に訴えろやw

投稿: aaa | 2012年1月 6日 (金) 15時52分

>なら警告表示もつけないで餅売ってる連中を先に訴えろやw

どこを訴えるか、は原告サマの自由ですからw、と一瞬思ったんですが、警告表示もつけないで餅売ってる連中をこんにゃくゼリーで窒息した方のご遺族が訴えたらさすがにそれは濫訴っすねえ…。
*消費者庁サマは警告とか指導とかの「フリ」くらいはしといた方がいいのでは、とは老婆心ながら思いますww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年1月 7日 (土) 09時39分

窒息事故が起こった=危険性があるというなら、世の中たいていのものは危険性があることになる
そもそもこの事故はわざわざやってはならないとされているゼリーの冷凍を行った上で子供に食べさせた祖母?の責任だろう?
訴えるならそちらを訴えるのが筋と言うものではないのか

投稿: kan | 2012年1月 7日 (土) 12時05分

割り箸事故などもそうですが、この種の訴訟はある種の代償行為であるとも言われていますよね。
嫁の立場で姑が悪い!とも言えないでしょうから、誰かが悪いとなればそれは家族の外にあって公憤として転嫁できる対象ということになるのでしょう。
無論、裁判になったからにはその過程でどこを相手にすれば一番勝ち目があるかといった判断もなされていると思われます。

投稿: 管理人nobu | 2012年1月 8日 (日) 09時06分

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