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2011年12月15日 (木)

モンスターとプロ弱者 その距離は決して遠くない?

モンスター問題はどこでも共通なのだなと感じさせられる記事が、先日はお隣韓国で出ていました。

地下鉄が乗客の抗議受け逆走 /ソウル(2011年12月12日朝鮮日報)

「ドアが開かず、降りられなかった」と抗議、前の駅に引き返す

 11日午後、ソウル市内の地下鉄で、電車から降りられなかったという1人の乗客の抗議を受け、電車が前の駅に引き返すという事態が起こった。

 地下鉄を運営している都市鉄道公社は、非常事態でないにもかかわらず、後続列車の運行を遅らせてまで「逆走」を認めていたことが分かり、論議を呼んでいる。

 ソウル都市鉄道公社(地下鉄5-8号線を運行)によると、この日午後3時45分ごろ、地下鉄7号線下渓駅を発車し、中渓駅に向かっていた7186番列車で、60-70代とみられる男性の乗客が、車内に設置された「非常通話装置」を通じて「下渓駅で降りられなかった」と運転士に抗議した。

 これを受け、同列車は170メートルほど逆走し、下渓駅に引き返した。乗客を乗せて運行中の列車が逆走したケースは今回が初めてで、この区間の列車の運行に3分ほどの遅れが生じた。

 都市鉄道公社の関係者は「ある乗客が『下渓駅で降りたかったのに、ドアが開かなかった』と、暴言や悪口を浴びせながら1分ほど運転士に抗議した。これを受けて運転士が管制センターに報告し、許可を得て下渓駅に引き返した」と当時の状況を説明した。

後に確認したところ実際にはドアは正常に開閉していたと判明したこともあって、もともとが日本人の感覚からすれば相当に声の大きい印象がある韓国においても「乗客1人が駄々をこねたからといって、数百人の乗客の生命を危険にさらし、逆走する地下鉄が世界のどこにあるだろうか」と言う声が上がっているように、とにかく理ではなく声が大きい者が勝つという昨今の風潮を問題視するようにもなっているようです。
モンスター問題とは単に一部個人の我が儘が鬱陶しいというレベルの話ではなく、それが社会にとっての大きな損失になるからこそ問題なのだということがよく判る事例だと思いますが、逆に言えば社会にとってその主張がどのような意味を持つのかと言う視点を見失った瞬間、人は誰であれ容易にモンスターになり得る可能性があると言う考え方も出来るのではないかと思います。
先日も相変わらず迷走していると言う件を少しばかり取り上げた聖地・舞鶴市民病院の話題なども、個々の声だけを取り上げてみればなるほど、地域住民はそういう要求を持っているのだなで済んだ話かも知れませんが、ひとたび視点を京都府全体、あるいは日本全国に転じてみればそれはいささか無理があるのでは?と思わないではいられない状況になっているようです。

舞鶴市長は市民の思いにこたえた地域医療を実現せよ 市民の会がアンケート/京都(2011年12月12日京都民報)

 舞鶴市の住民でつくる「市民病院と地域医療を考える市民の会」は6日、このほど実施した地域医療問題に関する市民アンケートの中間集計を発表しました。アンケートでは、医師・看護師不足など医療体制への不安の声が多数を占め、11月に示された市の医療整備計画(中丹地域医療再生計画)にも批判の声が相次ぎました

 同アンケートは178人から回答があり、地域医療について「不安」が77.5%を占め、「充実を望むもの」は「救急医療」が76.4%でトップでした。
 また、舞鶴市長が示している医療整備計画について「知っている」と「だいたい知っている」が合わせて77%を占め、「市民病院の一般病棟廃止は反対」「誰のための医療再編計画なのか」「医師確保の具体策がなくてやっていけるのか」など、批判の声が多数上がりました。

 同日記者会見した同会事務局代表の瀬尾純爾さんは、「アンケート結果から、多くの市民が地域医療へ不安を感じていることが分かりました。市民の声にこたえ、市長は医師確保や診療科目の維持・復活、医療体制の整備に全力をあげるべき」と語りました。

 また同会は、舞鶴市民病院の療養型への特化や医療機関の「選択と集中」などを示している同市の医療整備計画について見解を発表しました。「地域医療再生の要である医師確保に展望が見えない」「経営中心主義、自治体の責任を放棄している」と批判し、医師確保対策を強化し、アンケートで示された住民の不安にこたえる医療体制の整備を求めています。

ちなみに人口あたり医師数で京都府は全国トップクラスと言われますが、その中でも歴史的経緯もあってか舞鶴市は中小地方都市にも関わらず各指標とも上位を占め、全国的に見てもこと医療資源という点に関しては相当に恵まれた土地柄だと言われています。
実際に公的四病院体制などという非常に贅沢な医療環境を備えてきた同地だけに、今や公務員雇用のための場としての意義しかないとも言われる市民病院を漫然と一般病床として維持することの意味がどれだけあるのか、ましてや医師確保と言えば聞こえはいいですが要するに余所から引き抜いてこいということだけに、持てる者がさらに人材を抱え込むのかと言う批判も覚悟しなければならないでしょう。
病院に限らず巨額の赤字を税金を投入して補填しつつ公務員雇用を維持するだけの施設では今の時代自治体財政が成立しませんが、舞鶴市民が本当に市政全体の情勢を見極めた上でコメントしているのか、それとも単に「そりゃ医者は余るほどいた方がいいよね」程度のつもりで気楽に言っているだけなのかの見極めもなしに、これを政策決定の根拠に据えるというのはどうなんでしょうか。
舞鶴などに比べると今回の震災被災地などは復興のための計画に待ったなしという緊急性が高いのは理解出来ますが、よくよく見ていきますとこちらでも相当に疑問符がつかざるを得ないような話が出てきているようです。

「双葉郡にミニ新幹線を」/福島(2011年12月13日朝日新聞)

●地元町村会・議長会が要望

 県が今月中にまとめる県復興計画は「インパクトに欠ける」などとして、双葉地方町村会(会長・井戸川克隆双葉町長)と同町村議会議長会(会長・松本幸英楢葉町議会議長)が12日、佐藤雄平知事に連名で要望書を渡した。ミニ新幹線の整備などを要求している。

 県は復興計画の素案を市町村や経済団体などに説明中で、年内に決定する方針。しかし、両会は「双葉郡の復興なくして県の復興はない、との言葉とは裏腹に、(素案に書かれた)双葉と他地域の取り組みに大きな差はない」と指摘。交通インフラについては復旧にとどまらず、発展させるべきだとし、JR常磐線をミニ新幹線にするよう求めた。国際的な大型娯楽施設や、放射線の研究機関の誘致も必要とした

はあ、TDL以外全国テーマパーク総負けとも言われるこのご時世に、福島の片田舎に新幹線を引いて国際的な大型娯楽施設ですか…もちろんその巨額にのぼるだろうと誰でも容易に想像出来る運用赤字は他地域の税金に頼るのではなく、地元自治体の負担でやっていただけるのですよね?
双葉郡と言えば県当局の捏造発表を受けた一方的な報道によりバッシングに遭った双葉病院を始めとして様々な風評被害には事欠かないことは理解出来ますが、それでは冷静になってどういう地域なのかということを考え直して見れば「原発が建っているほどの田舎」であるわけですから、今回の被害がなかったとしても到底こうした夢見がちな計画がペイするような土地柄とは思えませんし、復興資金の使い道として正しいとも思えません。
ただでさえ国を挙げてお金が足りない、復興費用をどう捻出するかと頭を痛めているこの時期に、まさかこんな夢想的な要望をまともに取り上げる人間もいないとは思いますけれども、今後「我々は大きな被害を受けたのだからより大きな取り分を要求する権利がある!」という声が高まってくるのであれば、さすがにそれは空気読めという批判も噴出せざるを得ないでしょう。
福島と言えば今回の震災被害を契機に医師流出が一層進んでいると国家権力による医療資源の囲い込みを求めているかのような報道すらありましたけれども、お隣岩手では復興に尽力したいと研修医が増えてきているという一方で聖地とも呼ばれた福島からは一層逃散が進んでいると言う現実が単に放射能汚染だけに起因するものなのかどうか、一度冷静に我が身を振り返ってみることも必要なのかも知れませんね。

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コメント

舞鶴にしろ福島にしろ心の聖地だったということが確認出来るような香ばしい話ばかりw
舞鶴市民が崩壊した時は少しばかり惜しい気がしたが、結果として多くの若者が犠牲にならずにすんで良かったといえる

投稿: aaa | 2011年12月15日 (木) 11時23分

うちの地元でも自治体病院は崩壊しつつありますね。
内科・外科医が全部大学に引き上げていなくなり統廃合とか(笑)救急も崩壊して。
今時コ・メディカルや事務と大差ない安い給与しか与えられないような病院でリスクを構わず働く医者などいるわけないでしょ。
いつ崩壊するかわからない自治体病院しかないような地域など恐ろしくて住めないですよ。
そういう自治体はいずれ限界集落化するのではないかと思いますね。

投稿: 元神経内科 | 2011年12月15日 (木) 15時06分

今どき求められる医療水準を常時提供しようと思えば、一人医長ばかりの小病院ではもはや無理でしょう。
土建行政で道路をさんざん整備したのですから、田舎の中小病院は統合して広域化するのが筋だと思います。

投稿: 管理人nobu | 2011年12月16日 (金) 07時23分

舞鶴の問題は、8年前の副医院長と市長の対立で副医院辞任に伴う13人の研修医集団辞職以来研修医が舞鶴に来なくなった事による問題。集団辞職した13人は各病院の部長、医長になっており、代表的なのが、現諏訪中央病院 総合診察部部長 佐藤泰吾氏で、諏訪中央病院は副医院の研修医が教育回診と言って教えに行っている。当時の市長が研修医の教育に理解がなく集団辞職に発展して、現市長の後ろ盾は当時の市長だから医師が来ない事が分かっているのに逃げまくっている。

投稿: 自滅 | 2012年3月 4日 (日) 13時55分

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