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2011年12月22日 (木)

改革への抵抗勢力が改革の一番の原動力に?

診療報酬を巡る議論は未だ決着しないようで、いずれ話がまとまったところで改めて取り上げてみたいと思っていますけれども、医療に限らず社会保障費を聖域として温存できるという時代ではなくなっていることは誰しも感じているところでしょう。
ところが社会保障の給付面はそのまま据え置きということに相次いで決まってしまったというのですから、痛みを伴う改革をどこまで先送りにすれば気が済むのかと言う声が出てきそうですよね。

社会保障改革案 高齢者優遇 若年層にツケ(2011年12月17日産経ニュース)

 民主党がまとめた社会保障分野の改革案は、次期衆院選の足音が近づく中、高齢者の給付カットにつながる施策を相次ぎ先送りにした。逆に基礎年金加算などにより、社会保障費の拡大には拍車がかかる。財源に当て込む消費税増税の見通しはたっておらず、このままでは若年世代の将来負担を増大させるだけの結果に終わりかねない。

 改革案は医療機関受診時の100円定額負担を見送った結果、6月の成案より0・1兆円の切り込み不足が生じた。医療機関を受診するすべての患者が負担するが、受診機会が多い高齢者に特に痛みが大きいとされる制度だ。

 社会保障改革では、選挙のたびに高齢者負担増の先送りが繰り返されてきた。政府・民主党が見送った70~74歳の医療費窓口負担の2割への引き上げは、平成18年に成立した医療制度改革法に盛られたが、自公政権が翌年の参院選に敗北したため、凍結のまま1割維持が続く。

 有権者総数に占める65歳以上の割合は4分の1を占め、今後とも拡大する。年金不安に乗じる形で21年の衆院選マニフェスト(政権公約)で「7万円の最低保障年金」を打ち出し、政権交代を実現させた民主党だけに、高齢者への配慮がより色濃くにじむ。

 だが、制度の支え手である勤労世代は今後激減していく。6月の一体改革成案では、勤労世代の人口減少にあわせ、高齢者が受け取る年金額を減額する「マクロ経済スライド」のデフレ下での発動も盛り込んでいたが、「年金のみで生活する受給者への負担が大きい」として、来年の法案提出を見送った

 現在は2・5人の勤労世代で1人の高齢者を支えているが、少子高齢化の進展で37年には1・8人で1人、62年には1人で1人を支える完全な「肩車型」へと変貌する。高齢者向けサービスを今から削っていかなければ、そのツケは過重な負担となって若者世代を直撃することになる。

 にもかかわらず、成案にはなく、新たに改革案に盛り込まれたのは75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の廃止という逆張りの政策だ。

 民主党は20年度に導入されたこの政策を「高齢者切り捨て」と批判し、政権交代の原動力の一つとなったが、完全実施には約1兆円が必要となる。2・7兆円の改革財源の大枠をはみ出し、社会保障費の膨張をさらに広げる危険すらある。(赤地真志帆)

医療費窓口負担「13年度に2割に」 厚労相(2011年12月18日朝日新聞)

 野田政権が据え置きを決めた70~74歳の医療費の窓口負担割合について、小宮山洋子厚生労働相は18日、出演したテレビ番組で「再来年度にはきちんとやるべきだ」と述べ、2013年度に今の1割から2割に引き上げる考えを示した。パート従業員の処遇改善をするパート労働法の改正案についても「来年の通常国会に出したい」と述べた。

 70~74歳の窓口負担は法律で2割と定められているが、年約2千億円の予算を使って1割に据え置かれている。政権は「税と社会保障の一体改革」で、2割への引き上げを検討したが、民主党内に反対が強く、見送った

「再来年度にはきちんとやるべきだ」なんていまさらなことを言っていますが、その頃になったらまた時の政権が同じ事を言っていそうな気もするのですけれどもね(苦笑)。
産経の記事にも書いています通り何しろ高齢者は今や巨大な票田であり、医療にしろ年金にしろ社会保障のほとんどの領域で若年者が納付した分を高齢者が消費するという構図になっているわけですから、それは世代間格差が取りざたされるのは当然でしょう。
とりわけ昨今の流れでは現在重い負担に苦しんでいる現役世代が老後を迎える頃には給付は削減されていくことだけは決まっている気配ですから、ワープア化著しい現役世代は「俺たちは若いときは搾り取られ老後の蓄えも作れないのに、なぜ今の金を持った年寄りだけがそこまで優遇されなければならないのか」と不満も貯まるでしょう。
何より財源面でもはや待ったなしの改革が必須とされているのは明らかで、税と社会保障の一体改革という話も本来その辺りの積年の懸案を抜本的になんとかしなければならない危機感からスタートした話だったはずですが、変革への大きな期待を担って登場したはずの民主党政権が何も変えずにただ先送りするだけでは期待はずれもいいところですよね。
おもしろいのは民主党は何をやっているんだと感じているのが国民だけではないらしいということで、昨今野田内閣とセットで語られることの多い財務省からもこんな不満が出ているということです。

財務省も困惑する野田内閣「霞が関贔屓の引き倒し」。公務員優遇で国民の怒りが爆発すれば増税シナリオは破綻する。/磯山 友幸(2011年12月21日現代ビジネス)

ここで公務員優遇だという国民の不満が爆発したら、消費増税などすっ飛んでしまう。民主党はいったい何を考えているんだ

 財務省の中堅幹部はそう言って語気を荒げた。

 財政再建に向けた消費税率の引き上げが財務省の悲願であることは周知の通りだ。豪腕と言われる勝栄二郎事務次官の政治力もあって、着々と増税に向けた布石が打たれてきた。野田佳彦内閣は「財務省傀儡」と揶揄されるほど、財務省の財政再建路線に乗っている。ところがここへ来て、その財務省のシナリオから大きく外れる「悪手」を、野田内閣は打ち続けているのだ。

 言うまでもなく増税には国民の理解が必要だ。国民の多数が諸手を挙げて賛成することなどないにせよ、ある種の納得感の醸成は不可欠であることを、財務官僚は熟知している。だからこそ、増え続ける社会保障費を賄うには、もはや消費税率の引き上げしかない、という認識を国民の間に広げるために「社会保障・税の一体改革」を仕掛けてきたのだ。

 それでも簡単には納得しない国民に訴えるには、政府もギリギリまでムダを削っているという姿勢を示さなければならない。公務員給与の削減や、行政組織のスリム化など、国民に見える"成果"を上げることが不可欠だ、という認識を十分に持っていた。

 財務省のシナリオどおりならば、来年度の予算編成が本格化する十二月には、社会保障・税の一体改革のプランを固めて、消費税論議を盛り上げる一方、自ら身を切るスリム化策を次々に打ち出すはずだった。「そこまで政府がやるのなら、増税もやむを得ない」というムードが国民の間に広がっていなければならない時期だったのだ。

 ところが、野田内閣は次々と「悪手」を打つ

 最大の失策が「公務員給与削減法案」を成立させられなかったことだ。東日本大震災後の4月に当時の菅直人内閣が公務員給与を10%、3年間削減する方針を打ち出し、復興財源に当てるとした。その後、平均7・8%引き下げる「公務員給与削減法案」が閣議決定されたが、菅内閣での通常国会でも、その後を引き継いだ野田内閣の特別国会、臨時国会でも、成立させることができなかった

 民主党はねじれ国会による自民党など野党の非協力のせいにしているが、現実にはそれだけの理由ではない。民主党の支持母体である連合は傘下に公務員労組を抱えており、人事院勧告に基づかない給与の引き下げには反対の姿勢だった。

 民主党は「脱官僚依存」や「公務員人件費の2割削減」を掲げて政権を奪取した。ところが、政権交代後は自民党政権時代の公務員制度改革すら事実上棚上げし、霞が関寄りの政策を取り続けている。その最たるものが、公務員給与削減法案の不成立だったと言っていいだろう。

 夏には人事院が公務員給与を平均0・23%引き下げるべきという勧告を行った。ところが野田内閣は、削減法案の7・8%に0・23%は内包される、という論理を展開。人事院勧告の実施も見送った。その結果、年末までに公務員給与は引き下げられず、期末のボーナスが一般行政職の平均で4・1%増えることとなったのである。

総選挙に向けて連合の支持を失いたくないとはいえ、露骨な「霞が関贔屓」である。そんな霞が関贔屓が国民感情を逆なでしていることは言うまでもない。国民の理解を得て増税に持っていきたい財務省にとっては、ありがた迷惑もはなはだしく、まさに贔屓の引き倒れだった。

 もう一つの失策が厚生労働省が示した年金改革方針だ。現在60歳から支給されている厚生年金は、今後段階的に65歳まで引き上げられることが決まっているが、厚労省がさらに68歳~70歳に引き上げることを検討していると表明したのだ。社会保障・税の一体改革で年金制度を維持するために消費税増税が必要、という議論を始めようという矢先、年金の支給開始をさらに引き上げるという話が出れば、財務省のシナリオは瓦解してしまう。

 小宮山厚労相は「現在の課題と中長期的な課題をきちんと分けずにお話してしまった」と申し開きをしたが、時すでに遅し。また、物価下落にもかかわらず年金額を据え置いたことで「払い過ぎ」になっている支給額を引き下げる、という話も加わったため、年金受給者の間から「年金削減反対」の声が上がった。

 もう一つ。年内には明らかにされる予定で作業が進んできた行政刷新の公表も、年明けに先送りになった。独立行政法人など行政機関のムダに切り込むことなどが柱と見られるが、これも霞が関の抵抗にあっている。財務省としてはムダに切り込みたい意向だが、連合をバックとする民主党の腰が浮いている

「いくら勝さんが豪腕でも、国民全体を敵に回して消費税を上げるのは難しいだろう」

 野田内閣の官邸周辺からは、すでに弱気な発言が漏れ聞こえてくる。選挙が近づけば近づくほど、民主党内の「増税反対派」が増えていき、内閣や党執行部でもまとめきれなくなりつつある。国際的な金融危機が静かに広がりつつある中で、「ここで増税に失敗すれば、国債市場の動揺も十分あり得る」だけに、財務省の幹部も焦燥感を募らせている。

先にやれるだけの努力をやりました、それでもどうにもなりませんから申し訳ありませんがと増税話に持って行くのは当たり前の話で、現政権は詰めの手順を誤っているようにしか見えないんですが、世間的にはその旗振りをしているように見られている(本音はもちろんそうでしょうが)財務省筋からもこうまで言われてしまうというのはどうなんでしょうね。
どちらを向いても今や敵だらけという状況も結局は自分で蒔いた種だろうと言うものですが、考えて見れば政治的に何らの実績も持たなかった民主党が衆院選で圧勝できたのもあくまでも期待感に対して票が集まった結果だと考えれば、唯一最大の売りである支持勢力の期待を裏切るような痛みを伴う改革など最初から難しかったのかも知れません。
選挙当時のマニフェストにしても小沢氏が主導権を握っていた時代にしてもともすれば単なるバラマキ政策だとの批判はあったものですが、公務員改革の先送りにしても政策運営上の必要や支持母体である連合対策などでいい顔をしたいという思いの表れであったとすれば、全方位にいい顔を続けた結果全方位から嫌われるようになってしまったというのも何とも皮肉な話だとは言えそうですね。

民主党に限らず既存政党はともすれば支持母体の顔色をうかがいながらの政策運営を強いられるのは仕方のないところなのかも知れませんが、そう考えると改革を進めなければ国が保たなくなっている時代にあって、関連諸団体の同意を得ながらじっくり話を進める従来のやり方ではもはや何も出来なくなってきたということなのでしょうか。
特に目立ったアイデアを提示しているわけでもないのにただ既得権益を破壊し現状を変えると主張し続けた橋下氏ら維新の会が、既成政党やマスコミを含めた各種業界から全方位のバッシングを受けながら圧倒的な民意の支持を取り付けたことは示唆的な現象なのでしょうし、党内外から批判されながら「私が自民党をぶっ潰します!」と叫んで高い支持率を保った小泉総理と同類であるという批判はある意味で的を射ているのでしょうね。
旧権力の一つの象徴のようなマスコミらは相も変わらず橋本批判を続けていますが、彼ら既存の諸勢力が橋本独裁だ!強権反対!と反発し距離を置こうとするほど橋下氏の改革へのフリーハンドは広がり、結果としてさらなる大衆の支持を集めてしまうという興味深い現象がこれから見られるようになるのかも知れません。

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コメント

野田の頑固さもいい方向に転がればよかったんだが、増税こそ我がライフワークと錯覚してしまったらしい
いまごろもくろみ違いの財務省も頭をかかえているだろうな

投稿: aaa | 2011年12月22日 (木) 11時59分

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