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2011年12月28日 (水)

生保患者の診療は現状で万全!と思っている医師も少ないのでは?

以前から出ては消えるということを繰り返していた話が、今年もまた出てきたというニュースがありました。

後発医薬品の利用を働きかけへ(2011年12月25日NHK)

生活保護の受給者が206万人を超えて過去最多となるなか、厚生労働省は、増え続ける生活保護費の半分近くを占める医療費の削減を図ろうと、受給者に対して価格の安い後発医薬品の利用を働きかけていくことになりました。

高齢化や厳しい雇用情勢を背景に生活保護の受給者は増え続け、ことし9月時点の受給者は206万5000人余りと過去最多になっています。今年度の生活保護費は、およそ3兆5000億円に上る見込みで、このうち半分近くの1兆6000億円余りは医療費が占めています。先月行われた政府の行政刷新会議の政策仕分けでも、医療費の適正化を図るべきだという意見が相次いだことから、厚生労働省は、生活保護の受給者に対して価格の安い後発医薬品の利用を働きかけ、医療費の削減を図っていくことになりました。

具体的には、全国の自治体に薬剤師など専門の相談員を配置して受給者に後発医薬品の効果を説明し、利用を働きかけていくほか、医療機関や薬局にも後発医薬品を処方するよう協力を求めるとしています。

厚生労働省は、後発医薬品の利用促進で来年度の医療費を106億円程度削減できると見込んでいて、「国の財政が厳しいなか、受給者に十分理解してもらったうえで利用を促していきたい」と話しています。

生活保護:受給者に後発薬 厚労省、来年度から促す方針(2011年12月25日毎日新聞)

 厚生労働省は24日、生活保護費の抑制策として、12年度から福祉事務所に「医療扶助相談・指導員」(仮称)を配置し、診察を受ける生活保護受給者に安価な後発医薬品(ジェネリック)の服用を促す方針を明らかにした。これにより、保護費を141億円(国費ベース106億円)削減するという。ただ、後発薬には不信感を抱く医師もいる。同省は「本人の意向を尊重する。強制ではない」と説明しているが、額面通りには受け止められない可能性もある。

 生活保護受給者が医療機関にかかる時は原則、事前に福祉事務所から医療券の発行を受ける。その際、12年度以降は薬剤師や看護師の資格を持つ相談員が受給者と面談し、後発薬の使用を促すことにした。本人の了解が得られれば、薬局で後発薬を選んでもらう。

 厚労省は日本医師会や日本薬剤師会にも、理解を求める文書を出す。一度後発薬を使用した受給者の6割程度は、先発薬へ切り替えずに後発薬の服用を続けるとみて、生活保護費のうち医療費に充てる医療扶助を国・地方分で計141億円削減できるとしている。

 12年度予算案の生活保護費(国、地方分)は3兆7232億円で、うち1兆7077億円が医療扶助。同扶助には患者の自己負担がなく、抑制が難しいため、安価な後発薬を勧めることにした

 しかし、生活保護受給者の後発薬使用を巡っては、厚労省が08年4月に使用を義務づける通知を出しながら、「差別的だ」と批判を受け、撤回した経緯がある。【石川隆宣】

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 ■ことば
 ◇後発医薬品(ジェネリック)

 先発薬(新薬)の特許が切れた後、別メーカーが発売する当該先発薬と同じ成分、効能の薬。先発薬の2~7割程度の価格で、政府は医療費抑制策の切り札として、現在2割強の普及率を12年度に30%へ引き上げる目標を立てている。だが、一部に「新薬とは効能が違う」との不安もあり、政府の意図ほどは普及していない。

すでに数年前から出てはマスコミらの総バッシングに遭い立ち消えていた話で、今年の初めにも指導を強化するなどという通達が出たばかりなんですが、医療費無料の生活保護受給者にとって先発品だろうが後発品だろうが金銭的な差異は全くないわけですから、受給者に対して後発品利用を働きかけていくというのも意味がなさそうな話ですよね。
受給者対策という形でこの方針を推進しようと本気で考えているのであれば、例えば今回も先送りになってしまった医療費自己負担制の導入を行うであるとか、少なくとも先発品を使った場合には差額に対して一定額の自己負担をしていただくといったことをやっていかなければ何の意味もない呼びかけに終わるでしょう。
もちろん、その種の話はことごとく先送りにしていく現政権がそんなことを言い出すはずもありませんから、実際には受給者にではなく処方をする医師に対して指導を強化していくということになるのでしょうが、これまたジェネリック使用の押しつけに関して以前から医師の間には根強い反発があることに留意せざるを得ないでしょうね。

ジェネリックに関しては単に主成分が同じということが保証されているだけで、実際の薬効や副作用が同じであると保証されているわけではないことは以前から指摘されている通りで、「同じ成分、同じ薬」などという詐欺まがいの売り方さえしなければそれなりに有用なものであることは言うまでもありません。
効き方が違うと言っても全く効かないわけではありませんから、用法用量を工夫しながら使う分にはほぼ問題がないはずですが、結局のところは「より良いものがあるのに、わざわざ劣るものを使うのは嫌だ」という医師のポリシーの問題でもあって、本気でやるなら例えばゾロ使用率一定以下の医療機関は生保診療から外すとかいった強制力を発揮しなければ実効性が低そうに思います。
ただ生保と言えばしばしば憲法の保障する健康で文化的な最低限度の生活とは何かと裁判沙汰になったりしますが、言葉の定義がどうあれ最低限度が最善とイコールであるはずはありませんから、国が同じ薬であると主張しその使用を促進しているものを真っ先に使用するべきなのは一般患者よりもまず生保受給者であるはずだという考え方も成立するはずなのですね。
こちらの方が効くと感じているなら医師としてはそちらの道をすすめたくなるのが素朴な人情というものですが、乏しい収入から一生懸命保険料や医療費も支払っている一般患者はジェネリックを使わざるを得ない、それに対して医療費無料の生保受給者だけは何でも一番高くて良いものを使い放題というのでは、今の時代さすがに素朴な庶民感情にそぐわないという自覚は持っておくべきでしょう。

また生保受給者の医療と言えば未だにこうした生保患者を対象に不正診療を行って逮捕される医師がいますが、不正診療とまでは言わずとも親方日の丸で医療費無料の生保相手にコスト度外視の医療を行ってしまうということはしばしばある現象ですし、そうでなくともジェネリック以上に余計な国費支出を強いているのが生保入院患者の保護費二重取り問題ですよね。
医療費は無料なのだから入院していれば何一つ支出がいらない、それなのに生活保護費は出続けているのもおかしな話で、「パチンコで負けて金がなくなったからそろそろ入院させてくれ」なんてことを言ってくる方々はどこの病院にもいるものだと思いますが、空きベッドを作ると経営が回らないよう診療報酬が設定されている今の医療機関にとっては患者数調節のための良い顧客であったという事情もあるでしょう。
このあたりは空きベッドがなくて救急が受け入れ出来ないという当たり前の現象にもつながっている問題で診療報酬設定の不備と言うしかありませんが、経営的な観点から生保受給者と医療機関とが持ちつ持たれつで医療費を無駄遣いするということが今の時代に許されるかと言うことです。
ジェネリック使用促進などという小さな話に限らず生保患者の診療に関しては幾らでも問題が指摘され、現場のスタッフも釈然としないものを感じながら前例踏襲でやってきたところが多々あるでしょうが、そうした観点からするとむしろお上がどんどん厳しい通達を出してくることは渡りに船でウェルカムであると考えている人も少なからず、なのかも知れませんね。

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コメント

生活保護を受給している患者が「金が無くなったから入院させてくれ」と言ってくるのは実際にありますが、年金受給者からも同様の訴えはあります。生活保護だけの問題ではありません。
年金が少ない人の場合、自宅で生活しているときは生活保護、入院になると生活保護が外れるというケースもあります。
日本の保険診療が「長期入院すると患者さんが経済的に楽になる」システムになっているのも問題の一因ではないかと思います。

投稿: クマ | 2011年12月28日 (水) 18時57分

だんだんとそういう患者の引受先は減って行くんじゃないかな
そして残った引受先はブラック病院として監視されると

投稿: kan | 2011年12月28日 (水) 20時43分

老人の場合は社会的入院に関しては施設へどうぞという流れが今後加速しそうに思いますね。
社会的にもそういう流れですし、そこまで面倒見ていられるほど現場も心身のゆとりがなくなってきていますから。
それをまた何も知らないマスコミがたたくんでしょうかねえ…

投稿: 管理人nobu | 2011年12月29日 (木) 08時52分

管理人様へ
一時期は施設不足が問題になっていましたが、最近は徐々に改善されており、私が勤務する病院でも、社会的入院は徐々に減少しております。
社会的入院が無くならない一番の原因は「家族」です。
未成年ならともかく、成人の治療同意を本人だけで無く家族にまで求める今のやり方はやめてもらったほうがありがたいです。

逆に、天涯孤独の方の処遇は、非常に楽にです。

投稿: クマ | 2011年12月29日 (木) 14時02分

天涯孤独と思っていたら実は遠い親戚がと言うパターンもあるなw

投稿: aaa | 2011年12月29日 (木) 14時31分

>>老人の場合は社会的入院に関しては施設へどうぞという流れが今後加速しそうに思いますね。

問題は、受け入れてくれる施設の絶対数が不足しているのと、いわゆる「やっかいな」患者さんは
なかなか受け入れてもらえないということですね。(インスリン注射が必要だけど自己注射が出来ない糖尿病患者さんとか
頻回な喀痰吸入の必要な脳梗塞後の患者さんとか胃瘻とかほぼコントロールされているけどてんかんってだけで拒否されますね。)

投稿: 浪速の勤務医 | 2011年12月29日 (木) 19時57分

こういう状態になるともう行き場がないというのは一種の淘汰の圧力になりますからね。
その状態に対してどれだけ原理原則的対応を貫けるかが家族の意識を変えていくことにつながるのかなとも思っています。
この時期になると動物が増えて飢えているというニュースがよく出ますが、餌を与えるのがいいのか与えないのがいいのかという議論にも通じるかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2011年12月30日 (金) 08時43分

結局また、現場でナマポと応対する医師や薬局に義務をなすり付けてお茶を濁すんでしょうね。
「社会的入院は儲け主義の病院が悪い。だから長期入院患者の入院基本料を削る。」と、
ろくすっぽ受け入れ先の整備もせず言ってのけた/やってのけた行政の事ですから。
ああ、得意の"民間活力"の利用でしたっけ(笑)「社会的入院者の受け入れ先が増えないのは、
活力を出し惜しみしている民間が悪い」とか言い出しそうですけど(失笑)

投稿: kawashima | 2011年12月31日 (土) 11時23分

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