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2011年12月30日 (金)

インフルエンザに関わる話題を二つばかり

そろそろインフルエンザもシーズン真っ盛りという感じになっていますが、先日出ていたのがこちらの記事です。

タミフル使用中止、NPOが厚労相に要望(2011年12月22日読売新聞)

 インフルエンザ治療薬「タミフル」は、処方直後に患者の容体が急変し死亡する危険性が高いとして、薬害を調査研究するNPO法人「医薬ビジランスセンター」(代表・浜六郎医師)が21日、タミフルの使用中止などを求める要望書を小宮山厚生労働相に提出した。

 要望書は、厚労省のデータに基づき、浜代表らが2009~10年に流行した新型インフルエンザで死亡した全患者198人の病状の変化を独自に分析した結果を紹介。タミフル処方後に119人が死亡し、このうち38人は処方後12時間以内に容体が急変していたが、別の治療薬「リレンザ」では、投薬後に容体が急変した例はなかったと指摘し、厚労省にタミフルの副作用の評価を見直すよう求めた。

ちなみに浜六郎先生というと薬害などに関する著作も数多く各方面に多大な影響力を発揮されていることでも有名なお方ですが、それだけに毀誉褒貶もなかなかに激しいご様子ですよねえ…
その浜六郎代表の主催する「医療ビジランスセンター」の主張はこちら「死亡はタミフルでは防げない」なる一文をご参照いただければと思いますが、その主張の眼目は脳症など重症化する症例の病態は過剰なサイトカイン放出(サイトカインストーム)にあり、細胞からのウイルス放出を抑えるだけのタミフルでは防げないということのようです。
ご存知のようにインフルエンザウイルスには細胞へ侵入する際に働くヘムアグルチニン(HA)スパイクと、細胞内で増殖後外へと出て行く際に働くノイラミニダーゼ(NA)スパイクという二種類の糖蛋白が存在していて、この糖蛋白のタイプによって「今年のインフルエンザはH3N2のA香港型で」などと区別されているわけですね。
タミフルを始めとするノイラミニダーゼ阻害剤と言われる薬では、このノイラミニダーゼの働きをブロックすることでウイルスが細胞外に出て行かなくなる、結果としてそれ以上感染細胞が広がらないという理屈で効果を発揮しているのですが、感染してしまった細胞自体には当然ながら効果はありません。
ただ素朴な疑問としてそうした理屈で重症化の抑制できる、出来ないが決まるというのであれば、同じノイラミニダーゼ阻害剤でしかも吸入薬のため呼吸器系でしか働かないリレンザではさらに重症例が頻発しそうなのですが、そちらでは容体急変が見られなかったというのですから話がややこしいですよね。

例の小児異常行動なども含めてこのタミフル問題は以前から何度も取り上げられていて、単純にタミフルがリレンザに比べて圧倒的に使用例が多いからこそ重傷例も目立つのだとか、単にタミフルを使っても重症化を防げなかっただけではないかと言う声もありますが、今のところ公式には有害と認められてはいません。
ただ世界的に見てもタミフル耐性株が急速に増えてきていると問題視されていて、しかもどうやらタミフルはリレンザよりも耐性化しやすいという話もあるようですから、抗生物質と耐性菌の関係と同様にインフルエンザと言えば何も考えずにタミフル出しておけで済ませておくわけにはいかないのは当然でしょう。
幸いにもこのところ抗インフルエンザ薬の選択肢も増えてきてはいるのですが、簡便な内服薬の選択肢が今のところタミフルくらいしかない(麻○湯…というのもいいのですけれどもねえ)のが臨床応用上の課題で、中外さんの独走を防ぐ意味でも他製薬会社の一層の開発努力を期待したいところですよね。

さて、一部(大部分?)のマスコミの方々にとっては非常に残念な話ということになるのかも知れませんが、長年そうだと言われてきながら先日とうとうエヴィデンスが出たかと思ったのがこちらのレポートです。

インフル集団接種に効果か…高齢者死亡を抑制(2011年12月26日読売新聞)

 かつて小学校などで行っていたインフルエンザワクチンの集団接種が、高齢者の死亡を半分以下に抑える効果があったとする分析を、けいゆう病院(横浜市)小児科の菅谷憲夫医師らがまとめた。米科学誌プロスワンに掲載された。

 菅谷医師らは日米両国の1978~2006年の人口統計を基に、インフルエンザによるとみられる死者の数を分析。日本の65歳以上の死者は、小学校などでの集団接種が行われていた94年まで10万人あたり6・8人だったが、95年以降は同14・5人に倍増した。

 集団接種がない米国では、高齢者のワクチン接種率が大幅に増えたにもかかわらず、両期間とも同16~18人でほとんど変化がなかった。

集団接種による社会全体への感染予防効果が高齢者の感染を抑えたとみられる。結果として、集団接種が65歳以上の死亡率を減少させ、年間約1000人の死亡を抑えていたと、菅谷医師らは推定している。

元論文を読んでいないので、迅速キットなど診断技術が進歩して正しくインフルエンザと診断され治療される例が増えただけ、なんて可能性もあるのかなとも思ったのですが、そうした診断上の問題点は別としても「インフルエンザを死因とする死者数」に関しては順調に漸減していたものが、確かに90年代半ば頃を底にして急に増加に転じているようにも見えますよね。
しかも実は高齢者だけではなく幼児においても同様の傾向がすでに以前から認められていて、それまで横ばいであったインフルエンザによる幼児死亡数が90年代に入ってワクチン生産量が減少するのと相前後して増加に転じ、2000年代に入ってワクチン生産量が再び増えるに伴って死亡数が減少に転じるという見事な相関関係がすでに2005年に示されています。
むろん万能ではないにしろそれなりに効果はあると認識されているわけですし、相対的に見て副作用もたいしたことがないのですから使っておいた方がお得じゃないの?と言われながら、相変わらず日本での接種率は諸外国と比べても低率にとどまっているのも事実ですよね(一方で日本のインフルエンザ診療はタミフル漬けとも言われる状況と比べて見ると大変に興味深いのですが)。
過去の諸々の事情は水に流したとしても、先年の新型インフルエンザ騒動の際にもマスコミ各社は相変わらずワクチン=副作用が怖い!という図式での報道を繰り返していたことは記憶に新しいところですが、羮に懲りて膾を吹くというくらいならまだしも場合によっては命に関わるともなればリスクとベネフィットの比較はきちんと行っていかなければ、これはまたお得意のゼロリスク症候群発動か?と言われてしまうでしょう。

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コメント

年配の方や呼吸器疾患持ちの皆さんにはしておいた方がいいですよとおすすめしていますが、時になにか怖いという人はいらっしゃいますね。
日本がワクチン後進国になってしまっている責任をマスコミはどう考えているのでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2011年12月30日 (金) 12時02分

さよならマンボウ…夫人「したいことをした」
読売新聞 10月26日(水)13時53分配信
 “どくとるマンボウ”の愛称で親しまれた作家の北杜夫さんの死去が伝えられた26日午前、関係者の間に悲しみが広がった。
 22日にインフルエンザの予防接種を受けた後、体調を崩して23日に入院。24日に容体が急変し午前6時2分、都内の病院で腸閉塞のため死去した。

投稿: | 2011年12月31日 (土) 17時26分

あけましておめでとうございます。
マンボウ氏の場合は何なんでしょうねこれ?アナフィラキシーでもなさそうな書き方ですが。

投稿: 管理人nobu | 2012年1月 4日 (水) 09時23分

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タミフル、インフルエンザ治療効果に疑問 医学研究の信頼性を検証する国際研究グループ「コクラン共同計画」(本部・英国)は17日、インフルエンザ治療薬タミフルが重症化を防ぐ効果を疑問視する報告書を発表した。タミフルは世界で広く使われ、特に日本は世界の約7割を消費している。各国が将来の新型インフルエンザの大流行を防ぐため備蓄を進めており、その有効性を巡り議論を呼びそうだ。報告書は、製薬会社に有利な結果に偏る傾向がある学術論文ではなく、日米欧の規制当局が公開した臨床試験結果など1万6000ページの資料を分析... [続きを読む]

受信: 2012年1月18日 (水) 19時56分

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