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2011年12月 5日 (月)

仕分けを受けて進む診療報酬改定議論 その行方は

というわけで、診療報酬改定に関連して相次いでニュースが報道されていますが、見ていますとどうやって国庫支出を削減するかということに大きな情熱を注いでいるいるようですね。

【中医協】紹介ない大病院受診、初再診料減-厚労省が提案(2011年12月2日CBニュース)

厚生労働省は30日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=森田朗・東大大学院教授)の総会に、診療所などから紹介を受けずに特定機能病院や500床以上の大病院などを受診した患者について、紹介率の低い大病院では初診料・再診料(外来診療料)を2012年度診療報酬改定で引き下げる案を示した。

現在、200床以上の病院では、紹介状がない初診患者や、症状が安定したため診療所などを「逆紹介」したにもかかわらず再診した患者に対し、「選定療養」として費用を徴収できることになっており、これと併せて病院側の収入が減らない仕組みを想定している。
厚労省はまた、逆紹介を診療報酬で評価することを提案した。いずれも、大病院と診療所などの機能分化を推進し、病院勤務医の負担を軽減するのが狙い。

提案に対し委員から反対はなかったものの、「患者のフリーアクセスを阻害するのではないか」「大病院志向など患者の受診行動を変える取り組みがないと、実効性がない」などの懸念を示す意見が出た。

厚労省によると、初診患者に占める紹介患者の割合が高い特定機能病院ほど、医師一人当たりの初診患者数が少なく、負担が小さい。また、紹介患者の割合が高いほど逆紹介率も高く、機能分化が進んでいる。

■がん・認知症のセカンドオピニオン、一部保険適用へ
このほか、がん・認知症のセカンドオピニオン外来について、紹介を受けた拠点病院が確定診断を行う場合などに限って保険適用を認める案を厚労省が示した。
同省は、がん診療連携拠点病院や認知症疾患医療センターを整備し、これらを中心とした連携を推進している。ただ、セカンドオピニオン外来は一律に保険外の自由診療として取り扱うことになっており、連携を活用しにくい現状がある。

診療報酬改定:薬価1.3%引き下げへ--来年度(2011年12月2日毎日新聞)

 厚生労働省は2日、来年度の診療報酬改定を議論する厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)に医薬品価格調査結果(速報値)を報告した。来年度の薬の公定価格は、医療費全体に占める割合で1・3%(国費負担で約1300億円)程度引き下げる見通しとなった。

 薬価算定は、市場での実勢価格にそろえる仕組み。調査によると、現行の薬価の公定価格が市場の実勢価格に対して8・4%上回っていた。診療報酬の算定には、市場価格に2%加算する制度があり、来年度の是正幅は6・4%となる。

 これを医療費全体に占める割合に換算すると、薬価の改定率はマイナス1・3%程度で、薬価の圧縮額は約5400億円

 診療報酬は、医師の技術料など「本体」と薬の公定価格である「薬価」で構成されている。二つをあわせたものの増減率が診療報酬全体の増減率となる。小宮山洋子厚労相は全体の増減率を据え置く、「プラスマイナスゼロ」を容認する姿勢を見せており、その場合、「薬価」の圧縮分約5400億円は「本体」を増やすための財源に回すことができる。【山田夢留】

紹介状なしの大病院受診における初・再診料を減らすという話については、一見するとかつての病院から開業医へと患者を誘導しようと外来診療報酬に格差をつけた結果、全く逆に安くなった病院に患者が集中することになった失敗を繰り返すような話にも思えるのですが、どうやらこれは診療報酬を減らす代わりに選定療養でお金を徴収するということを考えているようです。
仮に患者側の支払い額増加が僅かばかりの値上げに収まるとしても、保険で7割以上が負担される診療報酬から全額患者の自己負担である選定療養費に切り替えれば保険者側の負担は大幅に減るという理屈ですし、実際に病院側の収入が減らないほどの自己負担を求めるということになれば患者側の支払い額が大幅増という計算になりますよね。
薬価部分の減額については実勢価格の下落分をそのまま反映するという形ですが、好意的に見れば薬価を引き下げた分本体部分をなるべく温存し外に向けては「医療費は増やしてませんよ。むしろ減らしていますよ」というポーズを取るつもりかとも思えるのですが、先日の仕分けに対する厚労省の対応などを見ている限り、少なくとも厚労省が医師のために骨を折るという心遣いだけはなさそうです。
実際に厚労相にしても本体部分引き上げはないということを言っているわけですから、素直に見れば今回は薬価引き下げ、本体部分据え置きで全体として減額というのが既定の方針らしいのですが、興味深いのは中医協では診療側にしろ支払い側にしろどちらも仕分け結果を受けての診療報酬改定には大いに不満を募らせているようなのですね。

【中医協】診療報酬の仕分けに不満続出- 診療・支払側とも (2011年12月2日CBニュース)

 2日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協、会長=森田朗・東大大学院教授)の総会では、政府の行政刷新会議が行った「提言型政策仕分け」の結果を厚生労働省が報告した。2012年度診療報酬改定での診療報酬本体部分の引き上げに反対する仕分け結果に対し、診療側・支払側の委員から不満が続出した。

 診療側の安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は、「診療報酬の議論をするために必要な資料が、圧倒的に不足しているというのが第一印象」とした上で、「わずかな時間の審議で、果たして政策提言ができるのか」と批判。西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、「腹を立てるよりも、無視したいくらいの思い。中医協としては、これを考慮して、あるいは考慮したふりをしてやらなければいけないのか」と疑問を呈した。
 支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会専務理事)も、「『年に何百時間もかけて(中医協では)何をやっているんだ』というような提言で、怒り狂っている」と不満を表明した。

 こうした意見を受けて森田会長は、小宮山洋子厚労相が仕分け結果を「重く受け止める」と発言していることに触れ、「中医協として、メッセージを発信していく必要がある」と指摘。厚労相に提出する12年度報酬改定に関する意見書に、仕分け結果に対する見解を盛り込む方針を示した。

仕分け結果による予算編成に反対- 日医、診療報酬ネットプラスを要望(2011年12月2日CBニュース)

 政府の行政刷新会議による「提言型政策仕分け」で、2012年度の診療報酬改定について本体部分の引き上げに反対する評価結果が出されたことに対し、日本医師会は2日の定例記者会見で、「決して、このままの形で予算編成すべきではない」と反論し、診療報酬全体での引き上げを求める見解を発表した。

 中川俊男副会長は会見で、12年度の予算編成と診療報酬改定に向けてまとめた見解を説明。この中で、▽診療報酬は全体で引き上げる▽改定率は、あらかじめ入院と外来に配分せず、中央社会保険医療協議会(中医協)の議論にゆだねる▽診療所と中小病院を中心に、(再診療の見直しなど)「不合理な診療報酬項目の是正」を行う―の3点を要望するとした。

 政策仕分けでは、診療報酬本体の引き上げ反対に加え、勤務医と開業医、診療科間の報酬配分の見直しや、勤務医と開業医の収入の平準化などが提言された。この結果について、中川副会長は「精緻なエビデンスのあるデータに基づいた議論が必要だ」と批判。退職金相当額を留保する必要がある開業医の年収は勤務医と比較できないといった点や、診療科間の年収比較の客体数不足など、議論に用いられたデータの不備を指摘し、「報酬配分を見直すという評価結果を誘導している」と強調した。

 また、11月28日の財政制度等審議会財政制度分科会でも、診療報酬引き上げを容認する意見がなかったことについては、地域医療が依然として厳しい経営環境にあることを当日のヒアリングで説明したとして、「必ず理解が得られると思っている」と述べた。

ま、日医の場合はお約束通りの抗議ということなのですが(苦笑)、結局のところ中医協側で不満を募らせているというのも単に面子を潰されたことに対する怒りというだけのことで、診療報酬を上げるの下げるのということに関して一致団結しているというわけではないらしいのですね。
ただ失礼ながらこの年の瀬も押し詰まった段階で「診療報酬の議論をするために必要な資料が、圧倒的に不足している」などと悠長なことを言っているのであれば、来年度診療報酬改定に向けての議論を一体いつやるつもりなのだという話で、それこそ「年に何百時間もかけて(中医協では)何をやっているんだ」と言われても仕方がないというものでしょう。
ここから「診療報酬の議論をするために必要な資料」をさらに収集し、例によって十年一日という長々しいだけの議論を経て改めて「中医協として、メッセージを発信していく」のがいつのことになるのかは分かりませんが、例年あれだけの時間を割いてもまともな結論に至っているようにも見えない議論が今回に限っては仕分けという外圧によって綺麗にまとまるとはちょっと思えませんよね。
当面は中医協の出してくるメッセージを待つしかありませんが、仮に仕分け結果を無視するかのような結論を出すようでは次は中医協の存在自体が仕分けされるということにもなりかねず、今回の診療報酬改定は意外な部分で楽しみが出てきたというところでしょうか。

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コメント

中医協がメッセージ?
横から余計な口出しをするなってかw
連中が一致団結するなんてあり得んだろw

投稿: aaa | 2011年12月 5日 (月) 10時10分

てっきり仕分けで勢いづくかと思っていた支払い側委員が憤慨しているというのは意外なんですが、何故こんなに怒り狂っているのか記事だけではよくわからないですね。
単にメンツをつぶされたから、なんてことであれば、ちょっとどうしようもない人たちだなと感じてしまうのですが。

投稿: ぽん太 | 2011年12月 5日 (月) 12時46分

ちょっと細かいところまで調べがついていませんが、支払い側は引き上げ自体は反対という姿勢は堅持しているようです。
日医などは「経営がまだ不安定で」と引き続き引き上げを主張しているようですが、経営の安定化に向けた努力という点に関して言えば多くの医療機関はまだ不十分だと思います。
経営的に健全な黒字運営を目指すのか、赤字垂れ流しでも地域への貢献を第一義にするのか、各医療機関毎に目標も異なるはずですから、単に赤だ黒だと十把一絡げに議論しても仕方ないはずなのですが…

投稿: 管理人nobu | 2011年12月 6日 (火) 08時21分

そろそろ「患者の自己負担は医療費の3割」って原則をやめて、治療内容ごとに病院に支払う医療費と患者の自己負担額を個別に決めたほうがいいのではないかと思います。
あと、患者の自己負担を病院が徴収するシステムもやめて欲しいなあ・・・健康保険組合で公共料金のように振り込みでも何でもいいから回収して欲しい。

投稿: クマ | 2011年12月10日 (土) 13時19分

何であれ変革に強烈に反対する勢力がいますからねえ…
少なくとも未収金に対しては健保組合がまず医療機関に支払った上で自ら回収するようにしてもらいたいです。

投稿: 管理人nobu | 2011年12月12日 (月) 08時54分

凄い時代になりましたね。

投稿: ネッスル | 2012年1月 9日 (月) 17時44分

投稿: | 2012年1月 9日 (月) 17時44分

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