« 今日のぐり:「餃子の王将 東岡山店」 | トップページ | マスコミの差別意識が明らかになった橋下氏報道 »

2011年11月 4日 (金)

TPPは現代の黒船になるか?

昨今賛成派、反対派とも非常に賑やかなことになっているTPP関連の話題ですが、反対派の中核的勢力としてJAと医師会が共同戦線を張る気配を見せるなど、まるで医療の業界では反対一色であるかのような騒ぎになっています。
こんな中でまたぞろ日医あたりが「TPP絶対反対!」と大騒ぎしそうな話題が農業新聞から出ているのですが、まずは問題の記事を紹介してみましょう。

医療自由化目標「入手していた」米国文書で厚労相 (10月28日日本農業新聞)

 米国政府がTPP交渉で、公的医療保険の運用で自由化を求める文書を公表していたにもかかわらず、日本政府が「公的医療保険制度は交渉の対象外」と国民に説明していた問題で、小宮山洋子厚生労働相は27日、「9月16日に外務省を通じて受け取っていた」と述べ、入手していたことを明らかにした。公的医療制度の根幹である薬価の決定方法が交渉対象になる可能性も認めた。

黙っていれば判らないだろうと言う考えであったとすれば小宮山厚労相もとんだ厚顔ですけれども、皆保険制度のような極めて特殊な制度がTPPのような議論の中で取り上げられないでいると考える方がどうかしていますから、話が出ていたこと自体は別に意外でも何でもありません。
ただそうした当たり前に議論に取り上げられそうな話を敢えて取り上げられないと説明する、それもそうでないことを知っているにも関わらず嘘をついた形になっているというのは、これだけ大騒ぎになっているTPP問題に小さくない一石を投じた形ですよね。
どうもこの一件、発端として民主党の長尾たかし議員からの内部情報発信などが拡散し騒ぎになってきたようなんですが、西村幸祐氏がツイートで拡散した長尾議員のメッセージを引用してみましょう。

重大な事実が分かった。
国民向けTPP資料には、「公的医療保険制度は(TPP議論の)対象になっていない」と明記していた。我々議員にも繰り返しそのような説明がなされていた。医療保険制度自体を交渉するTPPの「金融サービス分野」では議論の対象とはなっていないというもので、実は別の分野である、「物品市場アクセス分野」で取り上げられる可能性を厚生労働大臣が認めたのだ。ではこれをいつ認識したのか。なんと、9月16日に「米国政府が公的医療保険の運用で自由化を求める声明」を、大臣は外務省を通じて受け取っていたのだ。

いや、確かに「金融サービス分野」では議論の対象となっていないにしても、「物品市場アクセス分野」では取り上げられそうだと言うのであればさすがに議論の対象外は詭弁もいいところですが、どうもこういう意図的な隠蔽工作まがいのことをやってのけたというのは指導力を発揮し切れていない小宮山厚労相というよりは、官僚主導でやっていることのように思えますね。
TPP交渉の是非に加えて皆保険制度を交渉に入れるかどうかといった話はまだまだ大変な議論にならざるを得ないところだと思いますが、こういう意図的な情報隠蔽と受け取るしかないような策を弄してまで勝手に話を進めていこうということであれば、やはりそれは公平な議論の結果出てきた結論とは到底言えないものでしょう。
これだけでも「皆保険制度は金科玉条」という日医にとっては頭に血が上りそうな話だろうなとは容易に想像出来ますけれども(苦笑)、このところさらに日医の老幹部の皆様方の血圧を跳ね上げそうな話が出てきているというのですから彼らの健康状態が懸念されますよね。

診療報酬引き下げ検討 12年度、賃金低迷とデフレで(2011年11月1日47ニュース)

 政府、民主党は1日、公的医療保険から病院や薬局などに支払われる診療報酬について、2012年度改定で引き下げることを視野に検討に入った。賃金の低迷が続き、デフレ脱却のめども立たないため、医療機関の収入増を図ることに国民の理解を得るのは難しいと判断した。東日本大震災からの復興に巨額の費用が見込まれ、医療費の一部を負担する国の財政が逼迫している事情もある。

 ただ、党の厚生労働部門を中心に、プラス改定を主張する意見も根強く、年末の予算編成まで激しい折衝が続きそうだ。

 医療費の財源は保険料が49%、税が37%、患者負担は14%。

何しろ震災後あちらでもこちらでも復興関連の予算をどうやって捻出しようかと大騒ぎになっている中で、放っておいても年々自然増加が見込まれる医療費だけをさらに積極的にプラス改定ということになれば時期が悪いという考え方は理解できます。
このあたりは長年続いてきた医療費削減政策との絡みで、日医の自民党から民主党への歴史的乗り換えたことが政権交代の象徴とも言われただけに、今更民主党政権から「やっぱり医療費は引き下げます」と言われても「それは話が違う」と言いたくもなるでしょうが、同時に医療崩壊などに国民の関心が集まる中でこの医療費問題もまた国民の関心を呼ばざるを得ないでしょうね。
とりわけ昨今では日本社会全体がワープア化が進んでいる中で、特に貧困化にあえぐ若年労働世代において諸政策のメッセージ性が非常に注目を集めるようになってきていますけれども、厚労省もマスコミ諸社を通じて一斉にこうしたニュースを発信してきているあたりがなんとも判りやすい世論対策の構図かなという気がします。

病院の平均収支、大幅改善…診療報酬改定効果か(2011年11月2日読売新聞)

 厚生労働省は2日の中央社会保険医療協議会で、6月に実施した医療経済実態調査を報告した。

 医療法人や国公立を含む一般病院(病床数20以上)について、収入から経費を差し引いた月額の平均収支は、2009年6月に1249万円の赤字だったのに対し、11年6月は140万円の黒字と大幅に収支が改善した。

 年度単位で一般病院の平均収支をみると、10年度も赤字だが、赤字幅は大幅に縮小した。赤字額は09年度の7686万円が、10年度は354万円だった。

 調査は診療報酬改定の参考にするため、2年に1回実施。一般病院の平均収支の改善は、10年度の診療報酬のプラス改定により、救急医療、産科、小児科などに手厚い配分を行った効果が表れたものとみられる。開業医である一般診療所院長の10年度平均年収は2755万2419円で、病院勤務医の1447万7620円の1・9倍だった。

診療報酬のプラス改定影響、病院の赤字縮小 厚労省調査(2011年11月2日朝日新聞)

 厚生労働省は2日、病院や診療所の経営状況を調べた最新の医療経済実態調査の結果を公表した。2010年度は前年度に比べ、一般病院(介護収益が2%未満)で利益率がマイナス2.5%からマイナス0.1%に改善。診療所でもプラス11.6%から12.1%に微増した。10年度に診療報酬が10年ぶりにプラス改定された影響とみられる。

 来年度の診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会で示した。一般病院1施設あたりの赤字額は、7686万円から354万円に縮小。医療関係の収入が伸びた。診療報酬改定で病院の救急医療などに重点配分されたことが一因とみられる。診療所は高い利益水準を維持したが、黒字額は平均1498万円から1587万円の微増にとどまった

開業医の平均年収2755万円 前年度比0・5%増(2011年11月2日47ニュース)

 厚生労働省は2日、医療機関の経営状況などを調べた「医療経済実態調査」の結果を中央社会保険医療協議会に報告した。開業医が多い診療所(医療法人経営)の院長の2010年度の平均年収は2755万円と前年度より0・5%増えた。医師の年収は民間病院を除くと増加しており、おおむね待遇が改善していることが示された。

 実態調査は、診療報酬改定の前年に実施され、改定作業の基礎資料。地域や診療科によって医師不足が続いていることなどから、厚労省は12年度改定で、前回重視した産科や救急などに引き続き配慮するとともに、介護との連携を視野に在宅医療にも手厚く配分する方針。

特に日医を狙い撃ちするかのように開業医はまだまだこんなに大儲け!と連呼しているあたりが非常に判りやすいと言いますか、まあ日医からも例によって反論のコメントが出てくるのでしょうけれども(苦笑)、よくよく見れば民間病院医師の年収が伸びていないなど、単にアレな公立病院でようやく医師給与を引き上げただけの話かとも思える話です。
いずれにしても「このご時世にまたぞろ医者だけはこんなに儲けている!国民の金で養ってもらっているくせに何ともケシカランじゃないか!」なんて投書欄が目に浮かぶような話ですし、実際にそうした国民世論を喚起するのがまさに厚労省の狙いなのでしょうけれども、日医など医療系団体にしても診療報酬プラス改定で医療機関の収支が改善しつつあるということまでは異論がないわけですよね。
前述のメッセージ性ということを考えれば、国民の方を向いて「やっぱり医療費だけは特例で増やします」とは言いにくい、一方でせっかく優良支持母体として新規獲得した日医の方を向かっては「いやあ、プラス改訂は無理でした」とも言いにくい、となればおそらく両睨みでの妥当な落としどころとしてプラマイゼロに限りなく近い自然増加分だけの改訂というシナリオになるのかなという気がしています。
ただこうした国民の批判の声と財政上の要請をどちらもクリアしながら、なおかつ医療機関側では今まで以上の収入を得られる(可能性がある)道があって、それこそが他ならぬ国民皆保険制度の見直しによって混合診療なり自由診療なり、公費を使わない私費の診療で医業収入を稼いでいく道であるというのは非常に象徴的かなという気がします。

TPP参加の議論はもちろん各方面に諸説あるところだろうし、賛成派反対派どちらの言うことにも一理あっていずれかが正解、他方が間違いということもないんだと思いますが、一方でTPPに強硬反対している中心勢力が医療や農業分野といった、いわば現代日本でそろそろどうしようもないほど行き詰まってしまっている気配が強い領域であることが象徴的ですよね。
国民全体にしても日本がどうも具合が悪くなってきているという漠然とした気配を感じている、そしてそれを打開するためには今までとまるっきり異なった発想で旧体制を根本からひっくり返すような改革を続けていくしかないと薄々理解はしている中で、何となく不安ではあるけれどもTPPくらいの衝撃がないことには明治維新や戦後のような一大転換はなし得ないんじゃないかと言う気も実はしているのかも知れません。
将来的に国が保険診療にこれ以上金は出せない時代となり、例えばどんな診療行為をやっても100円ぽっきりの定額性なんてとんでもない診療報酬体系が設定され保険診療機関が続々と潰れている、一方でいち早く民間保険併用の自由診療に移行した医療機関は我が世の春を謳歌しているという状況になったとしても、相変わらず日医は「国民皆保険制度死守!混合診療絶対反対!」と叫び続けるつもりでしょうか。

|

« 今日のぐり:「餃子の王将 東岡山店」 | トップページ | マスコミの差別意識が明らかになった橋下氏報道 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

病院の平均収支、2年前が大赤字>今ちょい黒字ということは、やっと借金が増え続けるのに歯止めがかかって、すこ~しづつ返済に向かえそうだ、っていうだけでしょう。
ここで削減したら今まで借金してた分も返せず、また借金漬けに逆戻り。
健全化というのは、今までの借金の返済のめども立って、経営が継続できそうだ、という状態をいうのであって、これ以上赤字・借金が増えなくなったことを言うのではないと思うんですけどね。

まあ、国家を仕切っている人たちが、借金を増やすことにあそこまで鈍感になっていますから、いまさら下々が借金漬けになって首が回らなくなろうが、どうでもいいようですけど。

ああ、開業医の収入はどうやら医療法人無床診療所の収入のようで、個人立(非法人)診療所のことではありませんね。
もちろん、儲かっているから医療法人化している(ああ、保険診療をほとんどしていない美容整形とかもほとんどすべてが医療法人ですね)わけで、あえて「個人診療所」ととらえられるような書き方をしているのはやはり相当な悪意あるいは目的(診療報酬を無理やり減らす)を持ってやっているとしか思えません。

投稿: | 2011年11月 4日 (金) 11時27分

赤字病院を身の丈にあった規模に縮小する絶好の口実にはなるかなと。
地域内で涵養できる医療資源の適正規模を見極める眼力が求められるわけだ。

投稿: kan | 2011年11月 4日 (金) 16時46分

マスコミのやり口は今更ですが、昨今おとなしいように見えてやはり彼らのスタンスはそこだったかと改めて理解はできますかね(苦笑)。

投稿: 管理人nobu | 2011年11月 4日 (金) 18時18分

アメリカ流の医療になれば医師の収入はあがり、仕事量は減るという考えもあるな。
一方で支払い不能の患者とのトラブルが増えそうだがw

投稿: aaa | 2011年11月 6日 (日) 20時31分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/53146160

この記事へのトラックバック一覧です: TPPは現代の黒船になるか?:

« 今日のぐり:「餃子の王将 東岡山店」 | トップページ | マスコミの差別意識が明らかになった橋下氏報道 »