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2011年11月14日 (月)

TPP問題 とりあえず交渉への参加は決まる

先日11日は総理によって参加表明があった、いやあれは参加表明ではなく単に話は聞いてみるというだけだとか賑やかしいのがTPP問題ですが、特に根強い反対意見のある医療、農業関係者からはこの事態に大きな反響があったようです。

TPP問題、最大焦点は関税撤廃 農業、医療で米圧力(2011年11月11日中国新聞)

 野田佳彦首相が11日、環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加を表明した。しかし、TPPを主導する米国が今後、最大の焦点である農作物の関税撤廃や、医療分野などの規制緩和を求め、日本に強い圧力をかけてくるのは必至。国内でも関係団体の反発が一層高まりそうで、首相の手腕が問われるのはこれからだ。
(略)
 ▽隔たり

 最大の焦点は関税で、どこまで例外を認めさせられるかだ。日本が要求する例外品目は「日本の食文化の源であるコメが最有力候補」(筒井信隆農林水産副大臣)。コメは約778%の関税で守られている。農水省の試算では、関税がなくなると、国産米のほとんどが値段の安い外国産米に置き換わり、国内生産量が90%減少するという。

 ただ、TPPで仮に例外品目が認められるにしても、1~2品目程度との見方がある。コメ以外にも牛肉、麦、砂糖など地域で重要な農産品は多い。そのため、業界団体や産地から例外を求める声が高まりそうだ。

 外務省は「関税撤廃の例外品目は認められる可能性がある」との見解を示している。9カ国の交渉で、米国も砂糖の例外扱いを求めているとされているが、TPPは関税撤廃が原則のため各国の意見は分かれている。実際に認められるかどうかは不透明だ。

 生活の安全・安心に深く関わる医療分野でも懸念が強まっている。政府は保険適用の診断と適用外の自由診療を併用する「混合診療」の全面解禁について「(今後)議論される可能性は排除されない」と認めた。医薬品分野でも、開発などで圧倒的な競争力を持つ米国が、自国企業の販路拡大のため規制改革を強く求めてくる可能性がある。

 公共事業の入札をめぐり、関係書類の英語表記化などで小規模自治体に大きな負担も懸念されている。金融サービスでは、民間企業との公平な競争条件になっていないとして米国が、郵政民営化や共済制度の優遇措置見直しを強く要求してくる可能性も否定できない。
(略)

【TPP】国民皆保険危ぶむ声 県内医療関係者/静岡(2011年11月12日静岡新聞)

 環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加方針を野田佳彦首相が正式表明した11日、県内の医療関係者からは、国民皆保険制度が崩れると危ぶむ声が上がる一方、理解を示す声も聞かれた

 県医師会の篠原彰副会長は、株式会社の医療参入や保険がきかない自由診療と保険診療を併用する「混合診療」の全面解禁に反対の立場。それらが認められれば、「国民皆保険制度が崩壊する」と交渉参加に危機感を示した。医師や看護師などの労働力の受け入れについても「日本の医療の質を下げる可能性がある」と指摘した。
 県薬剤師会の明石文吾副会長も「日本の医療を守るため、どういう条件を出していくか明確にしないまま、交渉に入るのは拙速」と切り捨てた。

 一方、県立総合病院の神原啓文院長は皆保険制度の堅守を前提とした上で、医療品や医療機器の貿易自由化に関しては、「グローバルな競争の中で、質が高く安価な製品が使えれば、患者にとっても有益」と話した。

かつて米輸入騒動の時にも明らかになった事ですけれども、日本人の口に合う食味のジャポニカ米は元々生産量に比べて貿易量の少ない米全体のわずか15%ほどを占めるに過ぎず、しかもこの場合輸出国として問題となるアメリカなども近年自家消費分が増えてきているわけですから、どうも農水省の試算なるものが何らかの思惑を含んだものではないかという気もしますけどね。
それはともかく医療に関して言えば、例によって日本医師会(日医)は絶対反対の一辺倒ということで、全国紙などは専らこの日医らの主張ばかりを取り上げて「医療業界からはこんなに懸念の声が続出している!」と言っているようですけれども、現場に近い筋ほど「いや、実はそんなに悪いものでもないんじゃない?」という声も出ているということは注目されますね。
さらに実際の臨床を担当する現場医師達に問えば皆保険制度堅持などといった日医反対論の中心命題に対しても別な意見が出てきそうですけれども、いずれにしても日医の意見がすなわち医師達の意見を代表するものなどではないことを示す実例として、先日はこんな調査結果が出ているようです。

TPP交渉参加、「賛成派」の医師が過半数-ケアネット調査(2011年11月8日CBニュース)

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉参加について、「やむを得ない」と考える「消極意見」まで含めると、医師の過半数が「賛成派」であることが、8日までのケアネット(東京都千代田区)の調査で分かった。

 ケアネットは、TPP交渉への参加の是非について、4-7日に同社サイトの会員医師を対象にインターネット上で調査を実施。1000人から回答を得た。

 その結果、全体では、TPP交渉について「参加はやむを得ない」と考える医師が44%で最も多く、以下は「参加しないほうがよい」30%、「全面的に反対」14%、「全面的に賛成」9%などの順。ケアネットでは、「やむを得ない」を「消極意見」として「賛成派」にカウントしており、「賛成派」が53%と過半数に達した
 このうち、勤務医の「賛成派」は56%だったのに対し、開業医では「全面的に反対」が22%、「参加しないほうがよい」が30%と「反対派」が半数を上回った=グラフ=。

 アンケート調査に寄せられた 「賛成派」のコメントでは、「医療にも競争、効率化が必要と思う」「是々非々ではっきりと日本の利益になるように主張すべき」「医療に競争原理はそぐわないが、不要なものは淘汰されるべき」などがあった。一方、「反対派」のコメントでは、「医療格差を助長し、ひいては現在の保険制度の崩壊につながりかねない」「国民皆保険制度は絶対守るべき! コメは輸入できても、健康は輸入できません」「医療にも経済観念が持ち込まれ、おかしな方向に行きそうな気がします」などがあった。

 TPPについては病院団体などから、混合診療の解禁による国民皆保険制度の崩壊や、海外資格医師の流入などを危ぶむ声が上がっている。

ま、そんなところなんだろうなとは予想できた話なんですが、先日も書きましたように日医の(表向きの)反対理由というものも「いやそれでは国民が困るから…」などと全く要領を得ないものばかりで、業界団体として「なぜ我々はこれに反対しなければならないのか」という説得力が皆無なのですから仕方がない話ですよね。
ただその中でも勤務医と開業医では賛成派、反対派の比率が少しばかりながら逆転しているというのがまさしく日医の支持母体を明示する結果になっているわけですが、しかし逆に見れば開業医にしても消極的反対派まで総ざらえしてもたかだか52%と、日医の主張するように「いやもう交渉の余地なし!断固反対!」などという雰囲気とはほど遠いのが現場医師達の意見であるとも言えそうです。
コメントを見てみても賛成派のコメントと反対派のコメントのポイントになるものは「競争」とか「淘汰」とか言う言葉に象徴されそうですが、賛成派はそれらによって医療が変わることを求めているのに対して、反対派は自分たちにとってどうこうという視点で主張しているようにも見えないところが、両派の間に横たわる当事者意識の差なのかなという気もします。
すでに日医が反対論の根拠としている混合診療解禁なども議論の対象となることが(密かに?)明らかになっていますが、これなども亀田などの例を出すまでもなくかねてやる気のある現場からは「何故やらせないんだ?!」とむしろ早期解禁を望む声も出ていたくらいで、少なくとも日医の絶対反対論が医療の世界の主流的見解であるように受け取られるのは間違いだということが明らかになったと言うことでしょう。

しかし日医などの主張するように本当に日本の医療制度が世界に冠たる素晴らしいものだと言うのであれば、各国間でオープンな状態になった場合に強い競争力を発揮するのは日本の医療の側になるはずだと言う理屈が成り立つはずですけれども、そういうことは言わないというのがどれだけ自分に自信がないのかという気がしますけどね(苦笑)。
日医の理屈抜きにしても、アメリカにとっていわばアキレス腱とも言える医療分野で世界の優等生たる日本に参入してきてもそうそう一般国民に相手にされるとも思えず、あちらの医療制度の実情を知るほどにむしろ日本の医療制度がどれほど恵まれたことであったかが誰にも判ろうと言うものでしょうし、実際に先行して解放された保険分野なども外資はやはり…という声が出ているわけです。
そう考えると実際に外資が脅威の対象となるのは医療よりも製薬の方ではないかと思いますし、こちらの方面では明らかにアメリカの製薬業界は世界的なメジャーブランド揃いですから国内製薬会社の商売相手として厳しいと言えば厳しいのですが、一方で医薬分業のおかげで薬で儲けることのなくなった今の医者は安いから、メジャーブランドだからという理由で薬を選択することもないようにも思いますし、患者にすればどこの国の会社かよりもドラッグラグなどの方が大問題でしょう。
ただ例の非関税障壁を外国企業が一方的に訴える事の出来るというISD条項を野田総理が何も知らないまま交渉を進めるつもりであったというのが非常に気になるのですが、悲観論ばかりでなくこちらもストロングポイントに関しては負けずにどんどん訴えていくというくらいの気構えはあっていいはずです。

いずれにしても医療に限らずTPPを巡る議論を見ていて個人的に思うことは、例えば農業などはJAを中心にTPP反対派の中核勢力のように言われていますが、北海道静岡、あるいは新潟など全国各地のやる気のある現場生産者からはむしろTPP歓迎、世界に打って出るチャンスだという声も続々と出ているということです。
無論日本の農業が高コスト体質であることは事実なのでしょうが、それでは国内顧客に限っても国内産にこだわる顧客が安かろう悪かろうの農作物を求めているのかと言えばそんなはずはないわけで、昨今輸出対象となっている海外富裕層向けなどと同様に多少割高でも質が良くて安心して食べられるものを求めている人も多いのですから、高コスト体質だから90%が潰されるというのは必ずしも当たらないと思います。
むしろTPPの話がなくとも就農人口が減少する一方で農業が先細るだけだと言う状況こそ憂慮すべきで、現状をただ維持したところで将来に何もよい目はないということを考えれば、日本の農業の存在意義や目指すべきところをここで真剣に議論し、惰性で続ける人ではなく本当に将来を背負って立つ意志のある人々にゆだねていく方策の一つとしてTPPを活用するくらいの気構えはあっていいですよね。

ある意味では農業以上にガラパゴス化が進んでしまった日本の医療もまた、TPPという外圧によってあちらもこちらも大きな変化が生じざるを得ないのでしょうが、結局のところ医療のような高度のマンパワー集約型産業では日本人相手の仕事は日本人が主体となってやっていかざるを得ない現実は普遍なのですから、「何が何でも絶対反対!」などと耳を塞ぎ目を閉ざすばかりでも仕方がないのかなという気がします。
一昔前に「アメリカでは大統領が内視鏡をやるのにも麻酔が必要で、全軍の指揮権を副大統領に移譲してからやらないとダメ!」なんてびっくりニュースがありましたけれども、そんな素晴らしきアメリカの医療が日本に流れ込んできたら怖くて夜も眠れない、これでは商売あがったりだと恐れおののいている方々であれば、それはなんとしてもTPP絶対反対だと声を上げなければならないのでしょうけれども、ねえ…

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コメント

>混合診療を認めればお金のある人しか受けられない医療が増え、日本の保険制度が崩れる可能性がある
この理屈が実はよくわからんのだけど、誰か教えて?

「公的保険を守って」 TPPで日医副会長
http://www.asahi.com/health/news/TKY201111090447.html

 野田佳彦首相が近く環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加を表明する方針を示しているのを受け、日本医師会の中川俊男副会長は
9日、「交渉に参加しても、政府には公的保険制度を守るためにがんばってもらうしかない」と朝日新聞の取材に述べた。
 保険診療と、保険のきかない自由診療を組み合わせた混合診療は、日本では原則禁じられている。混合診療について、
外務省は「TPP交渉では議論の対象になっていない」と説明してきたが、7日に全面的な解禁が議論になる可能性があるとの見解を示した。
 日本医師会は、混合診療を認めればお金のある人しか受けられない医療が増え、日本の保険制度が崩れる可能性があるとして、
交渉の参加に反対してきた。中川副会長は「米国はこれまでも混合診療解禁を日本政府に求めており、外務省の見解には驚かない。
今後も制度を守るため、たたかっていく」と語った。(小林舞子)

投稿: | 2011年11月14日 (月) 10時32分

あまりに馬鹿馬鹿しいので保険診療だけでやっていく病院は減るということでは?
むしろ金があっても治療に選択肢がないことが日本の医療のおかしさではあるんだけどね。

投稿: kan | 2011年11月14日 (月) 14時19分

◆投資家が国家を訴えた訴訟

▽2010年末までに全世界で…390件

▽1位 アルゼンチン…51件 
▽2位 メキシコ 
▽3位 チェコ 
▽4位 エクアドル 
▽5位 カナダ 
▽6位 ベネズエラ 
▽7位 米国、同率 ウクライナ…14件 
▽ 対日本…ゼロ

上位には、北米を除き、発展途上国がずらりと並ぶ。
この状況をみれば、ISD条項導入は、
日本企業が法律の整わない発展途上国で活動する上で、有益なもの。

日本からの対外投資を保護し、活性化する基盤とできるから」
であろうことは、誰もが予想できること。

投稿: aaa | 2011年11月14日 (月) 17時43分

無保険者が来たところで困るのは事務であって医師は関係ないとも言えるわなw

投稿: aaa | 2011年11月14日 (月) 21時33分

混合診療導入後保険の給付範囲が狭められるのを危惧しているのでは?
ただ現状でも最先端の医療はお金がないと受けられないのに、いまさら何を言っているのかなという気はします。
日常的な保証対象をきちんと押さえるのが強制保険の役割で、そこから先は任意というのが当たり前の姿だと思うのですけど、現状ではいわば国民全員がフルセットの保険に強制加入で高い高いと言わされているわけですから自業自得というのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2011年11月15日 (火) 07時17分

医師会や薬剤師会が反対を述べるのは既得権を守りたいがためだけ。特に近年の門前薬局全盛の状況を見れば彼らが日本の医療の将来像など考えていないのは明白。

投稿: 江田島 | 2012年2月19日 (日) 12時22分

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