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2011年11月24日 (木)

近頃ようやく見え始めた厚労省の本音

先日は今更に各社から開業医は儲けすぎ!的な記事が出ていたと思っておりましたら、またぞろ想像通りにこういう話が出てきました。

診療報酬、病院勤務医へ重点配分…厚労省方針案(2011年11月17日読売新聞)

 厚生労働省は17日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)医療部会に、2012年度の診療報酬改定で、救急や産科、小児科、外科などの急性期医療を担う病院勤務医らの待遇改善に重点配分するよう求める基本方針案を提示し、大筋で了承された。

 12月上旬に最終決定される見通しだ。

 方針案は、深夜勤務などの激務などを理由に勤務医の人材確保が難しい現状を踏まえ、「勤務体制改善の取り組みの適切な評価を検討すべきだ」と明記した。

 また、医療と介護の連携強化による在宅医療の充実も重点配分分野と位置づけ、退院直後で医療の必要性が高い患者に対する訪問看護の充実や、リハビリテーションを検討するとした。

 医療行為などの対価である診療報酬は医療機関の収入の柱となっている。2年ごとに改定されており、前回の10年度改定では引き上げられた。

前回も書きましたように、11月2日の中央社会保険医療協議会で厚労省から出された6月実施の医療経済実態調査の中にある「開業医である一般診療所院長の10年度平均年収は2755万2419円で、病院勤務医の1447万7620円の1・9倍」というデータを各社が一斉に報じた約2週間後、同じく厚労省の部会においてこういう話が出てきたということをまずご記憶いただきたいと思います。
先日も消費税増税に併せて仕入れにかかる消費税分を最終消費者である患者に転嫁できない医療機関の損税問題がさらに拡大し、最終的に多くの医療機関が経営危機に見舞われる恐れが出てきたという話を取り上げましたが、こういう議論の流れを見ている限りでは吝嗇な厚労省が消費税増税に併せて診療報酬大幅増を言い出すなんてことはちょっと考えにくそうですよね。
すでに以前から開業医の報酬を勤務医に回せ、特に救急など切迫する領域を優遇せよという話は何度も出ていたところですが、総額は抑制基調で一部領域に重点配分という方針の裏を返せば、開業医に限らず切迫する領域以外は医療費全般さらに絞りますよという強い意志を示しているということなのでしょう。
問題はその結果医療現場がどうなるのかということなのですが、先頃から始まっている仕分けの議論を見ていると厚労省の目指す方向というものがよりクリアーに見えてくるようです。

開業医と勤務医「収入同程度に」政策仕分け(2011年11月22日日テレニュース24)

 国の重要政策について議論し、方向性を提言する「政策仕分け」は、3日目の22日から医療や介護、年金など社会保障をテーマにした議論が始まった。22日の議論では、開業医に比べ、救急や産科などの勤務医は負担が多い割に給与が低いため、離職率が高く、医師不足につながっている問題が取り上げられた。

 仕分け人・玉木雄一郎議員「みんな、お医者さんですよね。同じお医者さんなのに、何でそもそも診療報酬が違うんですか

 仕分け人「結局のところ(厚労省が)正しいサンプリングを取っていない。実態をちゃんととらえて、診療報酬の効果とか、お医者さんの待遇状況を見ているんですか」

 厚労省側「今のご意見は今後、中医協(=中央社会保健医療協議会)で反映していきたい

 仕分け人「問題意識はほとんど同じという中で、なぜスピード感がないのかを議論している」

 議論の結果、仕分け人9人中6人が来年度の診療報酬改定では「総額を据え置くべき」とした他、中・長期的には開業医と勤務医の収入を同じレベルにすべきなどの提言がまとめられた
(略)

「提言型政策仕分け」3日目 「開業医と勤務医の収入を平準化すべき」との提言(2011年11月22日FNNニュース)

政府の行政刷新会議による「提言型政策仕分け」の3日目の議論が行われ、医師不足を改善する方策に関連し、「開業医と勤務医の収入を平準化すべき」との提言がまとめられた
(略)
議論では、救急外来や産婦人科の勤務医は負担が多いにもかかわらず、開業医に比べて給与が低く離職率が高いため、医師不足につながっている問題が取り上げられた。
また、この中では外科や内科の開業医の年収が平均1,900万円であるのに対し、眼科が3,500万円であるなど、診療科目ごとの収入格差や、医師の数が偏っている実態も指摘された
22日の議論では結果として、「勤務医と開業医、診療科目間での報酬配分を大胆に見直す」との提言がまとめられた
(略)
一方、22日午後、仕分け会場を視察した野田首相は、提言の実現に向け、議論の内容を予算措置に反映させると強調した。
野田首相は「最大の拘束力は、国民の皆さんが見ているということ。これは最大の拘束力ではないでしょうか。この国民の皆さんの前で議論したこと、出てきた方向性は、政府がしっかり受け止めて、特に予算編成にしっかりと反映していくということはあらためて私は各閣僚には指示をしたいと思います」と述べた。

そもそも勤務医と言えばサラリーマンであり収入=手取りですが、この収入と開業医の「収入」とはまったく性質の異なるもので、勤務医と開業医の収入は本来同じであるべきなのかというそもそも論は抜きにしても(同じ業界だからと店主と従業員の収入は同じであるべきという話には常識的にならないですよね)、全く違うものである両者の「収入」を同列に扱って多い少ないを議論すること自体に無理があるというものでしょう。
何も知らない素人の仕分け人がそこを混同して「こんなに収入が違う!おかしいじゃないか!」と言うところまでは予想の範疇だとしても、それに対してその違いを知っているはずの厚労省からは「いや、その実際の意味するところは違うわけでして…」と事を分けて解説をしなければならないはずなのに、実際には「いやごもっとも。これは中医協に反映します」と仕分けを渡りに船と首肯しているわけです。
もちろん冒頭に取り上げたような厚労省の動きを見ればこの流れは当然に予想できたわけですが、それにしても素人仕分け人のあまりにいい加減すぎる議論を自らの目的のために活用するというのは考えて見ればずいぶんと阿漕な行為ではありますよね。
厚労省がこんな手段を問わずというやり方を用いても開業医の診療報酬を大幅削減したいという背後には、かねて同省が悲願とする医師の集約化という目的が見え隠れしていることは言うまでもないことで、要するに彼らの意図としては開業医も赤字零細病院も全部潰れてくれれば万々歳ということなのでしょう。

面白いのはこの一連のニュース、ネットなどで見ていてもひと頃なら「開業医ざまあwメシウマw」で終わっていたでしょうに、設備投資など開業のリスクを認めた上で案外冷静に議論をしているということで、むしろ「役人は馬鹿なのか?」なんて声も多数というくらいですから、素人の皆さんにもすぐにばれるような詐術で事を進めようとする厚労省もどうなのよというものでしょう。
厚労省の悲願たる医師と医療機関の集約化、計画配置論の是非はまた別の話としても、さすがにやり口がこれでは開業医の代弁者たる医師会と言わずとも明日は我が身の勤務医も含めて現場の感情的反発は避けられそうにありませんが、そうは言っても金を出す側の都合が優先されるのは世の常ですから、今後診療報酬改定の場で基本方針が大きく覆ることはないものと思われます。
となると、そうしたお国の大方針に逆らわずにどう受け流していくかと考えた方が建設的かなとも思うのですが、例えばいっそのこと開業医の先生方は診療報酬大幅削減と引き替えに、開業医に関しては混合診療解禁を主張してみるといった思い切った方針転換をしてみるのはどうでしょうか?
あるいは医療機関の少ない僻地診療において診療所というものの果たす役割は非常に大きなものがありますが、こうした通常の経営が成立しがたい地域においても全国均一同一価格という皆保険制度の縛りをいつまでも固守するのがいいのかどうか、例えば僻地等特定地域においては都市部とは全く別の診療報酬体系を求めていくといった戦略もあってもいいように思います。

日本のCT設置率は世界的に見て異常に高いことが知られていますが、全国の開業医がミニ病院化しても仕方がないというもので、病院と開業医とは単に規模の大小で区別されるのではなく質的に異なる存在を目指すべきだということに多くの先生方は異論がないのではないでしょうか。
いきなりイギリスなどに見られるような家庭医制度導入とまではいかなくとも、やはり常識的に風邪の患者がいきなり大学病院にやってくるというのはおかしいと誰でも感じているのですから、単に病身病病連携と言うにとどまらず日医の言うフリーアクセス至上論の是非なども含め、この機会に考えるべきことは幾らでもありそうですよね。
国が本気で潰しにかかっている今だからこそ、潰される側はもっと必至になってビジョンを打ち出していくべきなんじゃないかと思うのですが、結局診療報酬が増えた、減ったという議論で終わっている限りはいつまでたってもポスト皆保険時代にも対応し得る新しいアイデアなど出てきそうもありません。
多くのしがらみに縛られた大組織である病院に比べれば、医師一人の医師がダイレクトに反映されやすいというのが開業医の強みでもあるのですから、全国均一の画一的な医療にばかり甘んじつついずれ国の大方針の通りに自然淘汰されていくのか、それとも自ら生き残る道を探るのかの分かれ目がすぐ目前に迫っているように思えます。

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コメント

内情を知れば知るだけ日本医師会にはあまり良い感情を抱けませんが、地域医療を頑張っていらっしゃる開業医の先生方には素朴な戦友的感情があります。
厚労省が医師を大病院に集約化して厳格に管理したい意向なのだとすると、勤務医にしても自分たちさえ良ければそれでよいと思っていると、いつ矛先が向かってくるか判りませんよね。
現状ではほぼ唯一多くの医師の声を集約化出来る組織なのですから、医師会がもう少し現場の意見を率直に反映出来るオープンな団体になってくれることを切に願います。

投稿: ぽん太 | 2011年11月24日 (木) 12時03分

>>素人の皆さんにもすぐにばれるような詐術

 マスコミの皆さんにばれなければOK(^_^;)

投稿: おかだ | 2011年11月24日 (木) 12時54分

もう反論する気もなくなりつつあります。保険診療のみの眼科開業医(特に手術をしていないトコ)の年収がどうして3500万円になるかねぇ。大嘘のデータを元にボンクラどもがいくら会議をして頂いても、まちがった方向の結論しか出ませんわ。アホらしい。

投稿: 蛾蜻蛉 | 2011年11月24日 (木) 14時28分

厚労省は仕事怠けてるくらいの方が世のため人のためになるのかもなw

投稿: aaa | 2011年11月24日 (木) 18時29分

厚労省も現場に出ている役人は悪い人間ばかりではないという声も聞きますが、こういう姿を見るとどうも信用には値しない相手なんだろうなと思ってしまいますよね。
そういう油断ならない相手だという前提に立って今後の戦略を組み立てていかなければ仕方がないでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2011年11月25日 (金) 08時19分

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