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2011年11月27日 (日)

さらなる勢力拡大を図るあの方達の眷属

市民団体というといろいろとありますが、先日三重県は四日市からこんな市民団体の活動を示すニュースが出ていました。

四日市市立病院に8427人署名 委員会への市民参加求める/三重(2011年11月23日中日新聞)

 四日市市立四日市病院の医療安全管理委員会への市民参加などを求め署名活動をしていた市民団体「安全で安心な医療を願う会」の阪本則子代表(54)=同市あかつき台=は22日、市総合会館で8427人分の署名を同病院の村田智事務長に手渡した。一昨年9月から今月までに県内外で集めた。多くは四日市市民という。

 同委員会は医療事故の事例の検討などをする組織で、医師や看護師ら院内の10人で構成。阪本代表は、医療事故のとらえ方や情報公開の考え方で、病院と市民に隔たりがあると主張し、署名では委員会の体制強化と市民代表の参加を求めた

 村田事務長は、委員会内で個人情報を扱うことなどから市民参加に難色を示したが、「安心な医療を提供してほしいという思いは分かる」として、情報発信の手法の検討には前向きな姿勢をみせた。 (福岡範行)

一般論として医療の利用者が市民である以上、その利用者の視点を入れていくということは顧客満足度向上のためにも有益であると考えられますが、個人情報保護についてはすでに産科無過失補償制度において一般公開可能な書式についての議論が進んでいるわけですから、技術的な諸問題点については必ずしも解消出来ないものではないと思います。
それよりも根本的な問題となるのが市民の視点を取り入れるというのであれば、その大前提として取り入れられる視点が正しく市民のそれを代表していることが必要であるはずなのですが、単に声が大きいだけで市民目線からかけ離れた極論ばかりを主張するプロ市民の方々ばかりの意見を聞いていたのではとんでもないバイアスがかかってしまうことになりますよね。
この観点からすると「安全で安心な医療を願う会」なる団体の素性が今ひとつ明らかではないのですが、坂本則子氏についてはあの勝村久司氏が幹事を務めることでも有名な「医療過誤原告の会」の中部地区例会(本年5月開催)でも活躍をされているようですから、やはり勝村氏らの流れに連なる活動家の方ということになるのでしょうね。

三重県四日市市で「安全で安心な医療を願う会」を立ち上げた坂本則子さんから、医療事故問題解決後の被害者活動として、教訓的な報告をしていただいた。
お父様の医療事故を通じて、地元の市民病院が市民参加による医療安全のしくみをつくることを願い、医療安全委員会への市民参加を求める署名活動(到達8500名、目標2万名)を行っている

もちろん医療事故被害者の方々が独自の活動をされることは全く心情的にも理解出来ることですが、いわば医療ということに関して特殊な経験をされてきた彼らが一般市民代表としての地位を主張するというのは、逆に本当の素朴な市民の声を覆い隠してしまう危険性も大いにあるということです。
中医協なども「すべての医療裁判は隠ぺいや改ざんとの戦いにすぎない」と主張する勝村氏を患者側の代表として加えたことでどのような歪みが発生したかを思い出すとき、二度とその種のバイアスは避けなければ国民に等しく不利益をもたらすだけだと考えられますから、四日市市立病院においてもきちんと正しい道を見極めての対処を望みたいものですね。
ただ今後のことを考えるとこの種の団体が勢力を増しこそすれ弱まることはないだろうと考えるのは、近年の過剰とも言われる弁護士人口の急増で彼らを支援する弁護士には事欠かないという背景事情があるからで、実際にこのところ全国各地で相次いで医療事故相談窓口が開設されるようになっています。
かつては弁護士にしてもそれなりに信念のようなものがあって、「医療訴訟の件数がこの程度で済んでいるのは明らかな無理筋は我々のところで止めているからだ」と言う声も聞きましたが、何しろ新司法試験制度下で誕生し仕事にあぶれつつある弁護士はそうした判断を正しく行うだけの経験値に乏しく、何より食べていくのに四苦八苦しているという悲しい現実があります。

弁護士という職業の報酬制度を考えると、本来裁判に持ち込みさえすれば勝っても負けても一定額の弁護士報酬が得られるわけですから、ダメ元でどんどん訴えさせた方が確実に稼げる、しかしそれを今まで行ってこなかったのは恐らく医師が無駄な治療をよしとしないのと同様に、彼らなりの職業的なプライドというものがあったのだと思います。
しかし現実的に食べていくために手段を選んでいられないほどワープア化が進んでしまえば職業モラルが低下していくのも当然で、すでに当の法曹専門家の方からも弁護士は急激に増やしすぎだ、このままでは大変なことになるという警鐘が鳴りっぱなしという状況になっているわけですよね。
実際にこのところ全国各地で弁護士人口に関するシンポジウムも開かれているというくらい当事者の危機意識は高まっているようですが、単に平均年収が下がって弁護士が危機感を抱いているというレベルではなく、市民にとっても今後思いがけないことで訴えられてしまうリスクが急増するかも知れないという意味でも問題意識を持っていかなければならないはずです。

12月1日 法曹人口問題に関するシンポジウム(東京弁護士会HP)より抜粋

市民にとって望ましい弁護士の質と量

~司法の現場で今起こっている法曹人口・法曹養成をめぐる諸問題について弁護士会側の問題意識を提示し「市民の視点」からご意見を伺い検討します~

法曹人口は、2002年閣議決定に基づき、この10年間、急激な増員政策が取られてきました。日本弁護士連合会も 「国民の必要とする数を、質を維持しながら確保する」 という方針のもと、これを受け入れてきました。

しかしながら、2001年司法制度改革審議会意見書が予測した法的需要の増大が実際には十分に現われていない現実とも相俟って、司法試験合格者の急増は、現在、例えば以下のような懸念を生み出しています。

・ 合格者の一部に基本的な知識・能力不足の者が見受けられることから、法科大学院及び新修習制度が、急激な合格者増加に対応しきれず、「法曹の質」の維持という観点から見て十分に機能していないのではないか。

・ 司法修習生に深刻な就職難問題が発生しており、その結果、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)による実務家として必要な経験・能力の修得が十分にできていない弁護士が、社会に大量に生み出されるのではないか。

この問題は、質と量の両面において、どのような弁護士が市民に必要とされるのか、という問題でもあり、弁護士側の独りよがりにならないためにも、市民の目線で検討することが必要です。
(略)

このところ財政難もあってようやく日本でも抜本的な利権や既得権益の見直し議論が出てくるようになりましたが、一方では思うように世の中を動かしたいという願望を持った人たちがいて、他方ではその人たちに手段を提供出来る人々が仕事もなく世にあふれているというのは、考えて見ると新たな利権が形作られていくにはずいぶんと 都合のいい状況になってきたのかなと不安を感じています。
医師と弁護士と言えばともすると医療訴訟などを通じて敵対的な関係ばかりがクローズアップされてきましたが、お互いに数が急増しつつある今だからこそ専門職としてきちんと意思疎通を試みていかないと、思いがけない行き違いからとんでもない事件に巻き込まれる羽目にもなりかねませんよね。

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コメント

単なる署名ですが、市民病院のように医者がそろわず、管理者サイドも甘い病院は、”自称”医療被害者団体たるプロ市民へ突っ込み返すパワーもなく、突っ込まれやすいのかもしれません。

グリーフケアに失敗した個々の人間の集合体たる自称被害者グループが騒いだところで、医療安全の構築には寄与しないのは明確なんですが、かれらはそれを理解できるだけの認知力を持ち合わせていないので、今後も明後日の方向を向いた主張を繰り返すだけでしょう。

医療安全のノウハウすら理解できていない彼らの主張はダメ、と強固に突き返すだけの信念をもって、彼らに反撃するしかないです。

投稿: とある内科医 | 2011年11月27日 (日) 10時07分

医師の世界は狭いですからね。こんなことに署名が集まるような場所は心の僻地といえましょう。
万が一、こんな団体を病院の中に入れたことが知れ渡ったらたちまち聖地認定されて来年からの
マッチングやら医師招聘に支障をきたすのではないですかね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2011年11月27日 (日) 12時36分

プロ市民度と心が僻地度の間には相関が認められそうな気がする

投稿: kan | 2011年11月27日 (日) 18時58分

三重の病院をはじめて応援したくなってきたw
こいつら横のネットワークが強固だから一つ割り込めば全国で同じ事仕掛けてくるぞ

投稿: aaa | 2011年11月28日 (月) 12時15分

現地の状況が不明なこともあって、市民病院側の良識をどの程度期待してよいものか判断しかねています。
地域住民の声は神の声だなどと妙なことを口走る地元議員や事務などに牛耳られていなければいいのですが。

投稿: 管理人nobu | 2011年11月28日 (月) 13時21分

いっそのこと、プロ市民の方々に参加していただきたい。
その結果がどうなるか、非常に興味があります。
ま、結果は分かり切ってるような気もしますけどね。

投稿: 通りすがり | 2011年11月29日 (火) 18時31分

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