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2011年11月16日 (水)

京大病院肝移植患者事故死 それは起こるべくして起こった?!

すでに報道などでご存知だと思いますが、京大病院において肝移植後の患者の不幸な死亡事故が発生したようです。

脳死肝移植患者 医療ミスで死亡(2011年11月14日NHK)

京都大学附属病院で、今月、脳死肝移植を受けた50代の男性患者が、手術後の人工透析で看護師が交換する部品を間違えたため、脱水症状を起こして、14日、死亡したことが分かりました。病院は、医療ミスと認めて遺族に謝罪しました。

京都大学附属病院によりますと、死亡したのは、5日、脳死からの肝臓移植を受けた50代の男性患者です。男性は、腎臓の機能が低下していたため、移植手術のあと人工透析を受けましたが、12日、看護師が、血液中の老廃物を取り除く部品を機械に取り付けるべきところ、間違えて血液中の血しょう成分を取り除く部品を医師に手渡し、医師も確認せずに取り付けたということです。男性は、このあと脱水症状を起こして意識不明となり、14日、死亡しました。部品の間違いに気付いたのは、男性が死亡したあとだということで、京大病院は、医療ミスと認めて遺族に謝罪するともに、警察に届け出ました。

会見で、京都大学附属病院の三嶋理晃院長は「病院の過失により、このような結果となり、責任は誠に重大だ。心からおわびを申し上げたい」と謝罪しました。京大病院では、先月、40代の女性患者が、脳死からの肺移植を受けた際、血液中に酸素を送り込む装置が動かなくなり、脳に重い障害を負って意識不明の重体となる医療事故が起きたばかりです。

京大病院:器具誤装着 脳死肝移植後、透析中の男性死亡(2011年11月14日朝日新聞)

 京都大病院(京都市左京区)は14日、人工透析の際に間違えて別の装置を取り付けるミスで、入院中の50代の男性患者が死亡したと発表した。三嶋理晃病院長は「病院の過失」と認め、「社会の信頼を損なう結果となり、おわび申し上げます」と謝罪した。病院から報告を受けた京都府警は、業務上過失致死容疑での立件を視野に捜査を始めた

 京大病院によると、患者は今月5日、脳死による臓器提供での肝臓移植手術を受けた。経過が良好だったため一般病棟に移った。もともと腎不全で透析を受けており、12日夜に当直医2人が透析用の濾過(ろか)装置を交換した。ところが、その約3時間後に血圧が低下するなど容体が悪化。治療を受けたが、翌13日午前10時50分に死亡した。

 その後の調査で、付けられていた透析用の装置が、血液中の老廃物を取り除く本来の装置ではなく、血液の成分を分離するための別の装置だったことが分かった。当直医の指示で看護師が装置を取りに行き、保管場所の隣にあった別の装置を誤って持ってきた。当直医も確認を怠って装着したという。装置は形は似ているが、色や大きさは違う

京大病院で機器取り違え 男性患者が死亡(2011年11月14日日テレニュース24)

 京都大学病院で脳死肝移植手術を受けた50歳代の男性患者が、透析用の機器の取り違えで死亡する医療ミスがあった。 京大病院によると、男性は今月5日に脳死肝移植手術を受け、経過が順調だったことから、6日後に一般病棟に移った。男性は元々、腎不全を患っていたため透析治療をあわせて受けており、12日夜に透析用のカラムという機器を交換した約3時間後に容体が急変、13日朝に死亡した。病院側が調査したところ、機器を交換した際、腎臓疾患ではなく、肝臓疾患に用いられる別の機器が装着されていたことがわかった。 機器は形が似ている上、隣り合わせに保管されており、交換した医師ら3人は、機器が大きいなどの違和感があったにもかかわらず確認を怠ったという。

まずは不幸にして亡くなられた患者さんに対してお悔やみを申し上げますとともに、そのご冥福を祈りたいと思います。
もともとの状態が肝腎症候群などを呈するような肝不全の末期だったということなのでしょうか、いずれにしてもかなり重篤な状況で移植術を受けられたのでしょうし、それだけに一つの取り違えが致命的になったのだろうと推察します。
今回の事故の経緯をまとめると看護師が透析用の機材を取りに行ったところがたまたま隣にあった類似のものと取り違えてしまった、そして医師も機材が異なるという違和感を抱きながら漠然と取り付けてしまったということで、結局のところ各段階における確認が足りなかったという要約にしてしまえば話は非常に簡単です。
ちなみに先日あったという別件の移植絡みのトラブルについてはこちらの記事の通りですが、これまた何らかの機材絡みのトラブルがあったのでは?とも想像させるような状況ですよね。

京大病院:脳死肺移植後に脳障害…40代女性が意識不明(2011年10月18日毎日新聞)

 京都大病院(京都市左京区)は18日、40代女性患者が10日の脳死肺移植手術後に脳障害を起こし、意識不明になったと発表した。手術中に心肺補助装置(PCPS)が停止するトラブルがあったが、因果関係は不明で「現時点で医療ミスとは考えておらず、肺移植手術の自粛はしない」としている。外部の専門家らによる調査委員会を設置し原因を究明する。【榊原雅晴】

 一山智副病院長(医療安全担当)と執刀医で呼吸器外科長の伊達洋至教授が会見。患者は重症の肺リンパ脈管筋腫症で、山梨県立中央病院で脳死判定された60代男性の両肺の移植手術を受けた。

 手術は10日午前10時38分開始。人工心肺装置を装着して左右の肺を摘出し、提供者の肺を移植。約4時間後に人工心肺装置を外した。しかし、血中の酸素濃度が低下したため午後5時59分に心肺補助装置を作動させた。13分後、血液を流す管の中に気泡が生じ、安全装置が作動して停止。4分間で気泡を除き、再稼働させた。

 同9時50分、集中治療室に移した時には異常はなかったが、翌朝、左右の瞳孔の開きに差があり、検査の結果、脳障害が分かった。

 伊達教授は「ドナーの肺が山梨から届くのに約6時間かかったこともあり、移植肺が機能不全を起こし、酸素濃度が低下したのではないか」と話した。補助装置に生じた気泡については「初めてのトラブル。装置に異常はなく、原因は不明。ただ、停止中の酸素濃度は必ずしも低酸素脳症を起こすほどではなかった」としている

 京大病院では06年、脳死肺移植を受けた女性(当時30歳)が死亡し、その後、肺移植手術を自粛した。事故調査委員会が移植チーム内のコミュニケーション不足などを指摘。07年に岡山大から、日本初の生体肺移植を行った伊達教授を招き、09年に脳死肺移植の再開を決定した。今回は再開後11例目。現在、京大病院では約30人の患者が肺移植を待っている。

今回の事件では今後業務上過失致死などで刑事訴訟になるのかどうかはまだ判りませんが、しかし前述のような「確認不足でした」という簡単な要約で事件を総括したつもりになってしまっては幾らでも今後同じ事故が発生してもおかしくないという危険が大いにあるのではないかと思いますね。
以前に書きましたように神戸中央市民病院でのボンベ取り違え事件が発生した折にも、類似の形状をしている酸素ボンベと二酸化炭素ボンベを同じ場所に保管している、そして誤接続が出来ないようコネクター形状を変えるなどの対策品を使用していなかったことが事故に結びついたことを指摘しましたが、今回の事件においても全く同様の構図が見られるだけに、何ら学んでいない大学当局の管理責任は問われざるを得ないでしょう。
特に透析などは患者にとって日常的かつ生涯にわたって続く行為だけに一度の取り違えが命がけということになっては困った話で、すでにガイドライン等でも誤接続に対する対策が提唱されているようですけれども、メーカー側も早急に物理的な対策を講じていただきたいものだと思いますね。
しかし京大病院ではただでさえ先日事故があって世間の注目を浴びたばかりだというのに、立て続けに今度は明らかな事故原因を放置したばかりに患者が亡くなったとなれば院内の管理体制はどうなっているのかと思われても仕方がありませんが、こうしたハードウェアの問題だけで事故原因を語れないことに今回の問題の大きさがあります。

そもそもこの種の機器の扱いも本来であれば機器の門外漢である当直医などではなく専門家(この場合は技師)が扱うのが筋であるし、一般病院であればそうなっていたはずであるのにわざわざ素人の看護師と医師とが慣れないことをやって事故を起こしてしまったということも大いに問題ですよね。
東京女子医大の事件にしても回路内に組み込まれたガスフィルターが水滴で閉塞を起こしたことが事故原因だったという説があり、結局高裁判決では機器不良ではなく大静脈へのカニュレーションの位置不良が問題であったという判決になりましたが、この時の判決文でも水滴によるフィルター閉塞などが起こりえるのだという知識を医師が持っているのが当然だとは言えないという裁判所の見解が出てきます。
以前からこの種の機器取り扱いの問題が医療事故に結びついたという事例はたびたび起こっていますが、例えば当直中の医師が慣れない自動分包機を使った結果思いがけない薬の取り違えが発生したといった事故があった場合を考えれば、やはり問われるべきは扱い慣れない機器の操作を違えた医師ではなく、きちんとした薬剤師等の専門家を置いておくなりといった対策を怠った施設の安全管理意識ではないでしょうか?

特に今回の場合は事件が起こったのが大学病院であるだけに、独自の労働基準問題において(苦笑)夕方五時以降は元より技師などは不在であったのではないかとも推測しますが、そうなると今回の外科系講座を始め別に透析の専門家でもない当直医が機械を扱わざるを得ないということも当たり前に発生し得るわけですよね。
今回の当直医がどういったキャリアの方だったのかは判りませんが、きちんと専門の技師が機械を扱うのが当然という外病院でやってきた医師が大学に出戻りで当直などをやっていると、そもそもこんなものを触った経験もほとんどない人も多いでしょうから渡されたものをそのまま使うしかないでしょうし、今回看護師の取り違えなどがなくともいずれ起こるべくして起こった事件だったのかなと言う気がします。
今回の事件を受けて大学病院当局としても何らかの対策を打ち出さずにはいられないでしょうが、その対策というものが例えば「当直医は当直中に操作する可能性のある全ての機材の構造、原理に精通し、かつ何らかの操作においては必ず上級医とのダブルチェックを行わなければならない」なんてぶっ飛んだものであれば、京大病院を改めて見直すことになるんですがね…

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コメント

同系統のものはまとめたくなるのが人情ですからね。
接続部を分けるなどメーカー側も頑張って欲しいですが、既存の機材更新で一世代かかりますし…
しかしこれ、先日の理屈で言えば透析メーカーが訴えられるのでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2011年11月16日 (水) 11時54分

TPPの行方とも絡むが、海外では医賠責加入要件に診療患者数の上限を設定してるわな。
外資系の保険屋ばかりになると医賠責に加入できるのは大学病院医師かパートタイマーくらいになるんじゃないか?

投稿: aaa | 2011年11月16日 (水) 12時28分

>しかしこれ、先日の理屈で言えば透析メーカーが訴えられるのでしょうか?

賠償となると医賠責を使うのだと思いますが、その場合元から医者相手の商売なのでさすがに遠慮するのではないかと思いますが。

投稿: 管理人nobu | 2011年11月16日 (水) 16時58分

「当直医は当直中に操作する可能性のある全ての機材の構造、原理に精通し、かつ何らかの操作においては必ず上級医とのダブルチェックを行わなければならない」

私には京大がこれ以外の回答をしてくるとは思えませんね。

投稿: REX | 2011年11月17日 (木) 23時54分

そこまで逝きますか?!
当然茄子がカラムを取りに行くなんて取り違えの元だから医師が倉庫に走らないといけないのでしょうね?!
さすが天下の京大病院!

投稿: 管理人nobu | 2011年11月18日 (金) 10時37分

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