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2011年11月28日 (月)

診療報酬はやはり据え置き しかし目先の数字にこだわるのは得策か?

先日の仕分けに関わる話を見ていて、これは診療報酬の引き上げはないなと思っていましたら案の定、引き上げは見送りになりそうだとのアナウンスが直後にあったわけですが、当然ながらこの件に関しては各方面から「話が違うじゃないか」とクレームがついているようです。

診療報酬本体部分引き上げ、見送り示唆…厚労相(2011年11月25日読売新聞)

 小宮山厚生労働相は25日午前の閣議後の記者会見で、2012年度の診療報酬改定について、医師の技術料や人件費に当たる「本体部分」の引き上げを見送る可能性を示唆した。

 小宮山氏は従来、診療報酬の引き上げを主張していた。しかし、政府の行政刷新会議が提言型政策仕分けで、本体部分の「据え置き」か「抑制」を求めたことを踏まえ、「重く受け止めて検討していく」と述べた。

 ただ、小宮山氏は「産科、小児科、救急、外科のような力を入れなければいけない診療科目を支援し、勤務医の処遇を上げていくことは継続したい」と語り、本体部分の引き上げを見送った場合でも、こうした分野には重点配分する意向を示した。

公約守って…診療報酬引き上げ求め意見書(2011年11月25日読売新聞)

 医療機関に支払われる診療報酬の2012年度改定をめぐり、個々の診療報酬点数を決める中央社会保険医療協議会(中医協)の総会が25日、厚生労働省内で開かれた。

 医師や歯科医師ら診療側の委員7人は、「民主党は診療報酬を増額し、医療崩壊を食い止めると政権公約に掲げて政権を獲得した」として、引き上げを求める意見書を提出した。

 一方、健康保険組合連合会などの支払い側の委員7人は「医療機関の経営状況は、おおむね安定的に推移している」と引き上げ反対を訴えた。診療報酬の改定率は、政府が来月下旬、2012年度予算案の編成にあわせて決定する予定だ。

こういうニュースを見ると医療業界内では診療報酬引き下げケシカラン!公約違反トンデモナイ!と言われそうですが、実のところ管理人個人としては現時点での診療報酬引き上げを積極的に求める意志はなく、むしろ引き上げ見送りもありではないかと半ば肯定的に評価するものです。
その理由の一つとして今回に限らず診療報酬総額が幾ら引き上げられたから勝ち、据え置きや引き下げなら負けといった画一的な議論をする意味がなくなっていると考えていることがあって、日本の将来像を考えればいずれ破綻することが目に見えている現状のビジネスモデルを目先の診療報酬増によって生きながらえさせてしまうことは決して医療業界のためにも国民のためにもならず、今こそ別な道を考えるべきだということです。
もう一点は診療報酬抑制が長年続いてきたことが医療崩壊の主因であるとされていますが、一方で医療崩壊という現象がこうまで社会的に大きく取り上げられることになって始めて根本的な改革が必要であると認識され始めた部分も少なからずあり、例えば医療提供側においては医師を始めとするスタッフの労働環境を重視しなければ医療は続かないということがようやく認められ、改善が図られつつあるわけです。
また不要不急の救急・時間外受診、クレーマーやモンスターといった医療の利用者側の問題も同様に、医療崩壊という現象が取りざたされ始めてから「いけないこと」という社会的認識がされるようになったのも事実であり、医療に無制限なリソースや資本を投入することが非現実的であり需要の抑制が必然であるなら、現場での給付制限を行うに当たって診療報酬上の制約とは非常に使える「言い訳」になると考えています。

要するに現段階では目先の報酬増というカンフル剤で医療の諸問題を覆い隠してしまうよりも、危機的状況であることを契機に抜本的な改革を進めていくことが長期的に見ればより有益であって、同時にそうしたあるべき将来像に関する議論については未だ不十分であるという立場ですが、もちろん医師会や病院協会といった経営者サイドに近い視点に立てば全く異なる見解があるのは当然ですよね。
このあたりに関してはそれぞれの立場での考え方があるところだと思いますが、ただし後述するようにそれでは日医あたりが経営者サイドの視点からなるほど、これは素晴らしいと絶讚されるようなアイデアを提示してきているのかと言えば、それがはなはだ心許ないからこそ本当に大丈夫か?と心配になってくるわけです。
その一方で今どき選挙時の政権公約を云々するというのも極めて空しいものがありますけれども、あの劇的な政権公約の際に掲げられた公約がことごとく反故にされているという批判もある中で、せっかく獲得した日医を始めとする医療系支持団体を敵に回すようなことを言い出すというのは、好意的に考えれば現政権も目先の票対策を離れていよいよ腹をくくってきたかという考え方も出来るのかも知れません。
となれば、当然ながらこの際ですから徹底的に医療の歪みを空気を読まずに(失礼)是正していくべきではないかと思うのですけれども、どうも関連する話題を取り上げていくと未だに覚悟が不徹底であるかのような話に終始しているらしいのが気になるところで、結局選挙で批判を受けそうな部分は全く手つかずということになりそうな気配なのですね。

窓口100円負担、見送りで調整 前期高齢者2割負担も 一体改革で政府・民主党(2011年11月27日産経ニュース)

 政府・民主党は26日、社会保障と税の一体改革に向けた医療制度改革で、来年の通常国会に提出する法案について、外来患者の窓口負担に一律100円を上乗せする「受診時定額負担制度」の導入を盛り込まない方向で調整に入った。厚生労働省の社会保障審議会部会などで「治療が必要な患者の受診抑制につながる」との慎重意見が強いためで、今後の検討課題として先送りする公算だ。

70~74歳の医療費の窓口負担の1割から2割への引き上げも、高齢者への周知が間に合わないため実施を見送る方針

 小宮山洋子厚生労働相は一体改革のうち年金制度改革について、来年の通常国会への提出法案には給付拡充策を優先して盛り込む方針を表明している。財源となる消費増税関連法案の成立を優先させるため、負担増となる政策を極力先送りする狙いがあるが、年金や医療の財政健全化が停滞する懸念が出ている。

 受診時定額負担制度の導入で確保できる財源は約3700億円。一体改革案では、これを医療費の窓口負担が一定を超えると払い戻される「高額療養費制度」の拡充に充てることが明記されていた。政府はがん治療などの医療費の高額負担が指摘される中、高額療養費制度の拡充は実現したい方針。別途財源を確保し、一部でも実施に移す方向で再調整する。

 受診時定額負担制度は、病気で病院を訪れるたびに、窓口で100円(低所得世帯は50円)の追加負担を徴収する制度で、初診や再診のため病院を訪れるすべての患者が負担する。このため月平均4回は通院しているとされる高齢者に影響が大きい。民主党内の議論でも「低所得者、高齢者に厳しい制度だ」と反対論が強まっていた。

 一方、高額療養費制度の拡充は、払い戻しを受けられる自己負担額の月額上限(8万100円+医療費の1%)を(1)年収300万円以下で4万4000円(2)年収300万円超~600万円未満で6万2000円(3)年収600万~800万円で8万円-に引き下げる案が検討されている。

そもそも高齢者負担が一割に据え置きというのは本来の制度の趣旨からすればあくまで暫定的な措置だったはずですが、これまた高齢化進む日本においては大票田となる高齢者向け選挙対策として窓口負担の正常化(それでも二割ですから現役世代よりは優遇ですが)を見送った結果、結局そのしわ寄せは生活苦に喘ぐ現役世代に回ってくるということは言うまでもありません。
日本ではもともと窓口負担は高いのだから、窓口負担の引き上げによって受診抑制を図るのは間違いだという声がかねて根強くありますが、それでは日医を始めフリーアクセス堅持を主張し、いつどこであれ誰でもどんな医療機関に自由に受診する権利を持つと主張する方々はどのような方法論によって増え続ける医療需要を抑制しようとしているのでしょうか?
無論、日医ら経営サイドに近い立場の方々からすれば需要抑制などとんでもない、むしろもっと国民が医療を利用しお金を落としてくれるようにしなければならないと考えていらっしゃるのでしょうが、同時にあくまでも国民皆保険制度維持、自由診療も混合診療も反対と訴えているわけですから、結局公費を際限なく投じて業界を保護しろと主張しているのと同じ事だと国民からは見えることでしょう。
むろん今回国が言い出した再度の医療費抑制政策への回帰は医療への将来的展望に基づいてのものだとは到底考えられませんけれども、もしも医療業界が今後も診療報酬を上げ続けなければ生き残っていけないという稚拙な経営戦略しか提示できないというのであれば、そのやり方はいずれ必ず行き詰まるということは今や当事者以外の誰にでも目に見えているということです。

医療は経営的観点から行ってよいものではない、どんなに経営的には不利になっても全国津々浦々の僻地に至るまで高度な医療設備と各診療科の専門医を取りそろえた立派な病院を用意しておくのが理想であると言う主張は確かに受けは良いかも知れませんが、経営面はさておいてもそうしたやり方はすでに現場のスタッフからNOを突きつけられて破綻しつつあるわけです。
それを避けるためには身の丈にあった現実的な医療供給体制への戦線縮小を図るなど、需要側ではなく供給側の観点に立った永続可能な医療体制を模索すると同時に、例えば皆保険制度堅持にとどまらず、場合によっては自由診療・混合診療をも積極的に取り入れていくといった今までと全く違ったやり方も必要になるのだと思います。
ところが何もかも今まで通りのやり方を変えるのは一切まかりならん、ただそれでは経営が苦しいから診療報酬はどんどん引き上げろと言わんばかりの日医の主張を聞いていると、この国難続きの時代にあってひどく浮世離れした人たちなんだろうなという感想しか出てきません。
従来のやり方ではもはや確実な破綻が避けられない以上、身の丈にあって永続可能な医療体制への再編を図るなら今こそ業界的必然性もあり、国民の理解も得られやすい好機であると言えるはずですし、逆に言えば長期的にみて最も誰のためにもならない悲惨な結末とは僅かばかりの目先の報酬増と引き替えに、今まで通りのシステムの永続を約束して(させられて)しまうことではないでしょうか。

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コメント

以前と比べると医療に対する世の中の見方が変わってきたんじゃないでしょうか。
診療報酬を増やすと言えば医者は儲けすぎだと大騒ぎでしたが、最近はそうした批判は減ったように感じますし。
ただそれでもこれ以上の負担は無理だという人が増えているのなら、医療費にも上限を決めるしかないと思います。
ただ治療効果が10倍違うなら話は別ですが、僅かな効果の違いのために高い最新の治療ばかりをやる必要はないんじゃないでしょうか。
デフレ時代でパソコンだってごく平凡な性能でも安いものが一番売れているし、多くの人はごく標準的な治療でも安い方がうれしいと思います。
それ以上の高度な医療を求める人には追加でお金を払って高度な医療をしてもらえばいいと思います。

投稿: 通りすがりのただの人 | 2011年11月28日 (月) 16時45分

日医が金科玉条のように掲げる誰にでも同じ医療を提供すべきという建前が諸刃の剣なんですよね。
確かに良い方に考えれば理想主義的で悪くないのかも知れませんが、世の中には医療費がこんなに高いと困るじゃないかという人もいれば、とにかくこれ以上はないという高度医療をと望む人もいる。
しかも日医は混合診療反対、医療給付に差をつけることは一切マカリナランですから、必然的に全ての人に最良高度な医療を誰にでも使えるほど安く提供するしかないということになってしまいますが、それはやはりどう考えても無理があるということをまず認めなければならないはずです。

民主党のひと頃主張していたベーシックインカムなんてものも考え方としておもしろいとは思うのですが、実際に必要なお金を計算してみればとても無理だって話になってきてますよね。
あれも一日三食トップバリューのカップラーメンでいいやとコスト計算するならまだしもですが、毎日高級料理食べ放題を基準に支給額を算定するなんてあり得ないことでしょう。
それを医療においてだけはやれと言っているようなものだと考えれば、全国民にお金の有無にかかわらず平等に保証すべきなのはお金に糸目をつけない最善最良の医療ではなく、現実的なコストで実現可能かつ日常的に求められる最低限必要な医療なんじゃないかと言う考え方もあっていいはずです。

アメリカなどでは保険によって出来る治療に差があることが問題視されますが、どんな患者が来てもとりあえず皆保険で出来る治療があるなら現場も困らないはずですし、長年寝たきりのおじいさんだろうが何千万もかけて集学的治療をやらなければ手を抜いたと訴えられかねないというのは、財政面がどうこうと言う以前にやはり何かおかしいんじゃないかと思います。


投稿: 管理人nobu | 2011年11月29日 (火) 09時11分

いつも思いますが、まずは無駄な延命治療をやめてはいかがでしょうかね。
患者家族の意思で、高齢で意識もなくなった人のわずかに数日の延命治療にどれだけのとんでもないコストがかかっているのか、現行の保険制度化ではまともに理解されていないでしょう。
それをやめるだけでも、相当額の医療費削減につながると思います。
しかも、医療従事者の負担も減る、という形でです。

そういった医療現場の現状をまるで考えずに、一律に「診療報酬削減」って言ったって無理ですよ。

誰かがそういった医療を「無駄」と言わなければ、どうにもならないと思います。
ああ、もちろん、マスコミに集中砲火を浴びることは間違いないでしょうけどね。

結論:医療費削減ができないのは、悪平等を唱えるマスゴミのせいである

投稿: | 2011年11月30日 (水) 11時48分

後期高齢者医療制度はそっちの議論につなげやすい制度だったんですよね。
現役も高齢者も制度内では平等、しかし制度間では違う医療を。
子供もお年寄りも同じ医療ってやはり無理があるんじゃないかと思います。

投稿: ぽん太 | 2011年11月30日 (水) 13時38分

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