« 今日のぐり:「餃子の王将 国道太子店」 | トップページ | 日医はTPP反対 その理由がまた胡散臭いんですが… »

2011年11月 7日 (月)

徐々に進むNP議論 医療の永続性を担保するものは何か?

夕張診療所の村上先生が今度は滋賀で公演したと言う話題を本日最初に取り上げてみましょう。

医師不足対策を紹介 彦根で夕張市の医師が講演/滋賀(2011年11月6日中日新聞)

 地域医療の在り方を考える会が5日、彦根市野瀬町のひこね市文化プラザであり、北海道夕張市で地域医療を担う医師村上智彦さんが講演した。

 村上さんは、病院の医師不足を食い止める手だての一例として、兵庫県丹波市で住民たちが掲げたスローガン「安易に救急を利用するコンビニ受診を減らす、日常的な診療をお願いするかかりつけ医をもつ、医者に感謝の気持ちをもつ」を紹介。「住民が医者を大事にすると分かれば医師は集まる。医療を守る運動を、住民が盛り上げていく必要がある」と訴えた。

 また、長寿県の長野県の例を挙げながら、健康診断の受診率の高さが長寿につながることを説明。予防医療の大切さを伝えていた。

 会は、市内で医療の勉強会を開いている住民団体「彦根市の地域医療を守る会」が主催。市民や医療関係者ら100人が参加した。 (森若奈)

しかし村上先生には失礼ながら、その方面では全国に名を轟かせる聖地・彦根で「住民が医者を大事にすると分かれば医師は集まる」とは皮肉かネタかと思ってしまいますけれども、まあおっしゃることはまったくその通りとしか言いようがない話ではありますよね。
先日も村上先生の講演ネタを少しばかり取り上げましたが、一臨床医としてそれほど高い評価を得ているという話を聞かない(重ね重ね失礼)村上先生であっても地域医療でそれなりに大きな仕事が出来ているということは、まさに先生の示すところの「高度な専門医療を受ける人は人口1千人に1人」であり、大多数の地域住民は高度な技術によるcureよりも日常的かつベーシックなcareの方が重要だと言うことを示しているように思います。
よく医療の破綻などと言うことが言われ、「今の患者は24時間365日専門医に最高の医療を提供されて当たり前と思っている」と批判する声がありますが、そうした声の生まれた背景に医療提供の側自体も長年とにかく医療のレベルを高め、常時最高の医療を提供するべく寝る間を惜しんで努力することが当たり前だと考えて邁進してきた事実があることも見逃せませんね。

いま医療を制約しつつあるものは幾らでもあるとして、その中でも主要な2点として診療報酬などに代表されるコストの問題、そして医師不足や地域医療崩壊などリソース不足に象徴されるマンパワーの問題が挙げられることは多くの方々にも異論がないと思いますが、このいずれも突き詰めれば金や手間を無視してとにかく医療の質だけを追求してきた過去の医療従事者達のつけが顕在化してきているとも言えると思いますね。
未だに某大先生のように医者が足りないのだからもっと医者を増やせ、OECD平均並みまで無条件で増やせと壊れたレコードのように(これもしかし、今は通用しなさそうな表現ですね…)繰り返す人がいますが、ではそうやって医療の水準を維持しさらに高いレベルを目指す体制を整えれば、また患者側の期待値、要求水準も上がって無限に続くイタチごっこになってしまうのは明らかですよね。
特に高齢化、過疎化が進んでいる僻地などでは実質放置された患者も多く、真っ当な医療をやってきた熱心な医者ほど「探せば幾らでも疾患が隠れている!」とテンションを上げてしまいますが、命は何よりも重いという観点から医療がどんどん高度に専門的にと突き詰められてきた流れがそろそろ破綻を迎えつつある今だからこそ、引くべきところでは敢えて引くということも重要になってくるんじゃないかなと言う気がします。
そういう意味ではものの判っていない人間に医療を無茶苦茶にされてはたまらないと一部でさんざんな評判なナースプラクティショナー(NP)あるいは特定看護師というものも、何でも出来る限り最高の医療をやっておけばそれでいいんだと言っていられない今こそ真剣に検討しなければならないテーマなのかも知れませんね。

医師補助の「特定看護師」、床擦れ治療や鎮痛薬も(2011年11月5日中国新聞)

 看護師が医師の補助として、高度な医療行為をすることを認める「特定看護師」の導入を検討している厚生労働省は5日までに、具体的な基準を盛り込んだ「看護師特定能力認証制度」の原案をまとめた。

床擦れで壊死えしした組織の切除や、がんの鎮痛薬の投与量・用法調整の判断などを、医師の指示の下ですることを「特定行為」として認める内容。5年以上の実務経験を持つ看護師が、専門研修を受け国家試験に合格することを条件とする。

 2013年度の開始を目指し、来年の通常国会に保健師助産師看護師法の改正案を提出する方針。7日に厚労省で開く会議で公表する。特定行為の内容は、既に各地の医療機関で始めているモデル事業の実施状況を踏まえさらに検討する。

 高い能力を持つ看護師に医師の業務を補助してもらうことで、医師の負担を軽くし、患者の生活の質(QOL)も向上させる狙い。高齢化が進み在宅医療のニーズが高まる中、不足する医師に代わり、細かいケアにつなげる狙いもある。

 現行法も、看護師は医師の指示の下で「診療の補助」として医療行為ができると定めているが、その範囲ははっきりせず、医療現場で混乱が起きていると指摘があった。

 新制度では、こうした医療行為についての規定を法律で明確に位置付ける。「大学院修士課程に相当」とする2年間の研修か、8カ月程度の研修を義務とし、その期間に応じた医療行為を認める。

 一般の看護師は医師に患者の状態を逐一報告し、具体的な指示を仰ぐ必要があるが、特定看護師になれば、医師の治療計画を超えない範囲で、患者の症状を自ら判断し処置できる。認証を受けた看護師には、その後も研修を受けることを求める

例によって何でも反対の日医あたりはこのNP制度導入に関しても「患者にとって不幸な結果をもたらすだけでなく、生命をも脅かすことになりかねない」などと唱えて絶対反対の構えですが、そこまで患者さんのことを考えるなら医師会の先生方も盆暮れ正月には患者を近所の病院に丸投げして優雅にバカンスなんて無責任なことをせずに死ぬ気で働けと言いたい先生方も多いことでしょう(苦笑)。
ま、日医の見解はともかくとして多くの真面目なお医者さん達が感じている素朴な感情として「勝手にやるのはいいが、ちゃんと責任も自分でとれや」と言うことがあるのは想像に難くないところで、とりわけ医者の目の届かないところで無茶苦茶なことをやって自分は何の責任も取らず、後の尻ぬぐいだけは医者に押しつけるなんて制度を認めてしまった開業助産師の二の舞だけは避けたいというのは当然ですよね。
しかし一方では全国各地で慢性化しつつある産科医不足解消の補助的手段として滲透しつつある院内助産という例もあるわけで、このあたりは医療は個人ではなくチームで行うものであるという現代の考え方からすると工夫次第で幾らでもNPの働ける余地はあるだろうし、またNPに限らず医者からコメディカルスタッフにもっと仕事を割り振る体制を構築していかなければならないと感じています。

特に医療の大部分を占める日常管理などではとにかく患者との接触時間が長い人間の方が気づきやすいという側面もあって、医師より看護師、看護師よりも家族の方が最初の徴候にいち早く気づくということもままあるわけですから、問題はNPという制度導入そのものよりもそうした何かが違うという徴候を正しく拾い上げ伝達していくシステムを構築できるかという運用にあるんじゃないかと思いますね。
またそれとは別に個人的に感じているNPの問題の一つに資格認定をどうやるかという部分があって、特に高い能力云々の担保条件として、間違っても「大学病院で○年間高度な看護研究に従事し」なんて受験資格を盛り込まないように(苦笑)気をつけて見ていかなければならないのかなと思っています。
また研修必須などということになるとまたぞろ組織を作りスタッフを雇ってなんて話も出てきそうな気がしてならないんですが、例によって厚労省あたりの天下り先にならないようにこれまた目を光らせていく必要はあるでしょうね。
そしてもちろん、どのような分野を特定看護師に認めるのかという議論が重要なのは言うまでもないですが、それ以上にそれによって医療現場がどう効率化されリソース不足が改善されるのかということは絶対的な議論の大前提にしなければならないと思います。

民主党政権の唱える医療、介護分野の主導による経済成長戦略なんてことを言われるまでもなく、国内産業による輸出がTPPなどどう頑張ってもせいぜいが現状維持の頭打ちになっていくだろうことを考えれば内需で莫大な潜在需要がある医療、介護領域に大きな雇用の道があることは自明の理ですし、持っているばかりで使わない高齢層から収入の少ない若年層へお金を流すためにも意味があることです。
しかしそうした拡大路線を取っていく上で、いつまでも医師が動かなければ何も進まないというシステムで行ってしまうと医者自身どんどん仕事が増えてますます大変になっていくのは当たり前ですから、どこかで他人に仕事を任せるということも進めていかなければならない道理ですし、そのためには他人を信じ任せて育てるということもしなければならないでしょう。
未熟な人間に仕事を任せれば当初は幾らでも問題は出てくるのでしょうが、今現場を支えている多くの医師達は若手や研修医の指導などを通じて人材を育てるにはとにかく根気と忍耐、そして寛容がいるということを判っているはずですし、他業種の事に関してももう少し広く長い目で見ていければいいのかなという気がします。

|

« 今日のぐり:「餃子の王将 国道太子店」 | トップページ | 日医はTPP反対 その理由がまた胡散臭いんですが… »

心と体」カテゴリの記事

コメント

患者が看護婦にみてもらいたいと思ってるかどうかは気にしないでいいの?

投稿: | 2011年11月 7日 (月) 10時15分

政府、災害時に「病院船」を検討 平時は国際協力に活用
日経 2011/11/6
 政府は大規模災害に対応するため、医療施設を備えた「病院船」(災害時多目的船)の検討を始める。今月にも有識者や関係省庁からなる検討会議の初会合を開き、来年3月までに結論を出す。東日本大震災では津波被害や停電、断水で病院の業務に支障を来した。患者輸送も困難だったことから被災地に近い沖合に派遣できる病院船の必要性があると判断した。

現場のお医者さんは利権の駒ですね。

投稿: a | 2011年11月 7日 (月) 20時41分

NPがアメリカで広く受け入れられているのは、NPだと専門医よりだいぶ安いからです。
元々診療報酬が安い日本でさらに安く診療を受けれても、値段の差が大きくないなら医者にかかりたがる患者が多いのでは?
そして看護師よりNPにある程度高い給料を払わないとなり手も少ないでしょうし。
ただでさえ看護師不足なのに、NPなんて作って成り立つとは思えません。

投稿: はまぐり | 2011年11月 7日 (月) 22時27分

制度そのものが激変するか崩壊するかと大騒ぎになっている時に、制度の永続性を前提とした議論にあまり意味があるとは思えません。
時代は変わり制度も変わる中で現場の人間が主体的に声を上げていかないと、また何も判っていない人間から押しつけられるだけになるかも知れませんよね。
もっともそう考えると何一つ変えてくれるなという某団体の主張などは、あれはあれで何も面倒なことはしたくない、考えたくないという点で整合性はあるということなんですけどね。

投稿: 管理人nobu | 2011年11月 8日 (火) 07時31分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/53179491

この記事へのトラックバック一覧です: 徐々に進むNP議論 医療の永続性を担保するものは何か?:

« 今日のぐり:「餃子の王将 国道太子店」 | トップページ | 日医はTPP反対 その理由がまた胡散臭いんですが… »