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2011年10月 4日 (火)

進む福島県当局のプロ弱者化

ある程度予想された事ですが、数字としても出てきたというのがこんな話です。

福島の医師、12%が自主退職…原発から避難?/福島(2011年9月28日読売新聞)

 東京電力福島第一原発事故後、福島県内の24病院で常勤医師の12%に当たる125人が自主退職していたことが、県病院協会の調べでわかった。

 原発事故からの避難などのためとみられ、看護師の退職者も5%に当たる407人(42病院)に上った。県内の病院では一部の診療科や夜間救急の休止などの影響が出ている。

 調査は7月下旬、県内の医師らの勤務状況を調べるため、全139病院のうち、同協会に加盟する127病院を対象に実施。54病院から回答を得た。

 主な市町村で、原発事故前の医師数に占める退職者の割合が高いのは、南相馬市の4病院で46%(13人、警戒区域の1病院1人を含む)、いわき市の5病院で23%(31人)、福島市の6病院で9%(41人)、郡山市の4病院で8%(25人)。

 看護師では、南相馬市の4病院で16%(44人、警戒区域の1病院2人を含む)、いわき市の7病院で8%(113人)、福島市の9病院と郡山市の6病院は4%でそれぞれ68人、54人減少した。

研修医の希望先、宮城と福島は昨年同期比1割減(2011年10月1日朝日新聞)

 卒業後1、2年目の医師に義務づけられている臨床研修で、宮城、福島両県内の病院を研修先の第1希望に挙げている医学生が、昨年同期と比べて約1割減っていることがわかった。研修医は医療の担い手としても期待されており、大幅に減ることになれば両県の医療に影響が出かねない。

 医学生と受け入れ側の臨床研修病院の双方の希望を組み合わせる業務を担当している「医師臨床研修マッチング協議会」が30日、全国の病院別に、来春卒業予定の医学生の第1希望者数(29日現在)を中間発表した。希望登録の締め切りは10月13日。

 中間発表によると、宮城県では18病院の来年度の募集定員計170人(昨年度比18人増)に対し、医学生の第1希望者は計89人で昨年同期より10人減っていた。福島県は16病院の募集定員計146人(同3人減)に、第1希望者は計54人で8人減だった

岩手県は12病院の募集定員計126人(同7人増)に、第1希望者が計62人で1人増えていた

被災地では医療体制が崩壊して退職を迫られる病院スタッフも少なからずいたということですから、ある程度減ると言う事は予想の範疇ですけれども、約1割という数字が多いのか少ないのかですよね。
先日の報道によれば福島県からの県外避難者は5万5793人で県人口の3%程度だと言いますが、7月1日時点での数字と比べて1万人以上増えているというのは今さらそんなに避難者が急増したというよりも現状把握が進んだと考えるべきでしょうから、例えば住民票等は変更していなくても実際の避難者の数はさらに多数になっている可能性も否定出来ません。
現地では当座の雇用もないでしょうから今後もおいそれと人口が回復するとも思えず、誰も住まない町で暖簾を出していても仕方がないのは当然ですから、それならば需要のある他地域に出て働こうと考える人間は医療職に限らず多いことでしょうね。
まして失礼ながら医療業界では全国に名を知られた聖地である福島でのことですから、過去の様々な出来事ともセットで「やはり福島だけはやめとこう」と考える人間は今後も増えこそすれ減るとも思えず、むしろ一割程度の減少でよく済んだものだと感じる人も多いかも知れません。

さて、その福島においては先日避難準備区域の解除が行われ住民の復帰が始まっているとのことですが、住民と一緒に医療スタッフもただちに戻ってくるかと言えば経営上の一般常識で考えても、当面は住民の戻り具合を見てから業務再開を判断すると言う施設が多いだろうなとは推測できるところですよね。
被災地では顧客激減のみならず設備面でも相応にダメージを受けているでしょうし、それを整備してスタッフを再招集し営業を再開するとなれば医療でなくとも初期投資がかなり必要であるわけで、他地域での競合が激しく進出移転の余地がないといった産業であるならともかく医療専門職と言えば自分の腕一つで幾らでも働き口はあるのですから、わざわざ厳しい環境に舞い戻って経営上のリスクを冒す必要もないわけです。
そう考えると被災地で医療始め各産業を元通りに復旧するのがよいのか、あるいは住民分布の変化なども見ながら全く新しい体制を構築すべきなのかの議論も必要ですし、民営であってもインフラとして必要なものであれば再開のコスト負担など何らかの公的補助なりも考えていくべき状況だと思うのですが、どうも現状では明快なビジョンもなくなし崩しに話が進んでいるようにも見えるのは気になりますね。

緊急時避難準備区域解除 深刻な医師不足、震災前から激減 福島(2011年10月1日産経ニュース)

 ■国の力で拡充を

 原発から主に20~30キロ圏の緊急時避難準備区域が30日、解除された。だが、インフラや市民サービスの復旧は道半ばだ。特に医療サービスの不足は深刻。南相馬市は常勤医が震災前から半減し、県全体でも約12%の医師が自主退職した。医療現場からは「国の強制力がなければ医師拡充は期待できない」(南相馬市健康づくり課)と悲鳴が止まらない。(中川真)

                   ◇

 避難した住民が帰還するための大きな条件のひとつに医療サービスがある。しかし、緊急時避難準備区域から解除された南相馬市原町区にある同市立総合病院では、震災前の3月1日に21人いた常勤医が10人(8月1日現在)に半減した。

 この結果、18科あった診療科のうち、産婦人科や眼科など6科が休診したままだ。「市内での出産は2つの民間医療機関に委ねるしかない」(南相馬市)という。仮に除染が進んでも、妊産婦が安心して帰還できる環境とは言い難い。

 入院機能の弱さも深刻な問題だ。同市内の各病院は震災前、計1329病床を擁していたが、震災後の避難や規制の結果、現在機能しているのは285床だけだという。

 県病院協会の前原和平会長(白河厚生総合病院院長)は、「震災前から医師不足が深刻だった地域で、一旦離れた医師復帰は難しい」と指摘する。

 同協会が7月、県内127病院に行った調査(54病院が回答)でも、浜通りや県北・県中を中心に、震災前に1168人いた医師のうち、67人が3月末までに離職し、7月までに全体の約12%にあたる計135人が離職した。

 看護師も同様で、震災前は6554人いたが、7月までに464人(約7%)が離職している。

 日本医師会や日本薬剤師会などでつくる「被災者健康支援連絡協議会」では全国から医師派遣を続けているが、数週間の短期支援が多いのが実情だ。「施設説明などで期間が終わってしまう。半年、1年来てほしいのだが」(前原会長)という。

 南相馬市では「解除されても見捨てられた状況は変わらない」(飲食業女性)との憤りは住民に根強い。全面帰還に向け、国の幅広い対応が求められる

福島:医療支援拠点を設置 避難準備区域の医師不足解消に(2011年10月2日毎日新聞)

 細野豪志原発事故担当相は2日、福島県庁で佐藤雄平知事と会談し、9月30日に解除した緊急時避難準備区域の医師不足解消に向け、厚生労働省の「医療従事者確保支援センター」を近く福島県に置く考えを表明した。同センターの設置で医療スタッフの確保を支援する。

 同区域内にある市町村の復旧計画では、病院再開に向けて医師不足が課題となっていた。細野氏は会談後、記者団に「戻って来るかどうか、医療の問題で迷っている方がかなりいると思う。福島県(沿岸部)の相双地区に拠点を作り、医師確保や病院経営をサポートしていく」と語った。
(略)

南相馬に医療支援センター 原発相示す(2011年10月3日福島放送)

東京電力福島第一原発事故の緊急時避難準備区域解除を受け、政府は地域への住民の帰還を促すため、南相馬市に相双地方の医療体制の再生を目指す「医療従事者確保支援センター」を近く開設する。

細野豪志環境相兼原発事故担当相が2日、県庁で佐藤雄平知事と会談し、明らかにした。

ただ、具体的な医師確保策は示されなかった

支援センターは厚生労働省の出先機関の位置付けで、同市の県相双保健福祉事務所内に設ける。

当面は同省職員2人を派遣。

旧緊急時避難準備区域内の公立、民間病院の医師と看護師の数を把握した上で、必要人員の確保に努める

病院への財政支援も検討する。

ただ、全国で医師不足は深刻化している。

原発事故の影響で警戒区域が設定され、放射線量の低減に向けた除染作業の進められている相双地方で、どれだけ医療関係者を確保できるかは不透明だ。

福島界隈ではいったいいつから市の健康づくり課が「医療現場」に転じたのかと疑問に思うのですけれども、仮に聖地としてすっかり手垢がついてしまった福島の行政当局が、震災復興を錦の御旗に「国の強制力」による医療資源の囲い込みを期待しているというのであれば、結局同県としては過去と現状に対する何らの総括も贖罪もなしに済ませてしまう心づもりであるということなのでしょうか?
聞くところによれば福島県ではこの機会に乗じて、県立医大の放射線医療拠点化を画策しているということですけれども、失礼ながら震災被害で現地の人々が今をどうやって生きていこうかとあっぷあっぷしている状況でこんな巨大なハコモノを立ち上げ、貴重な復興予算を横取りするのみならずただでさえ不足している県内医療リソースを食いつぶそうとしているかにも見えるというのは、到底真っ当な考え方とは思えません。
同構想には「被災者の生活再建とは無縁」「火事場泥棒のような予算要求」と厳しく切って捨てた小松先生を始めとして各方面から批判が相次いでいますけれども、失礼ながらそれだけの力量もあるとは思えない福島県立医大にこんなものを作ったところで本来の目的上もさしたる貢献が出来るとは思えず、自ら望んで予算をドブに捨てようとするかのような県当局の姿勢こそ問われるべきでしょう。

【参考】Vol.277 福島県の横暴、福島県立医大の悲劇(2011年9月27日医療ガバナンス学会)

【参考】Vol.275 福島県立医大の放射線医療拠点化構想を問う~事業仕分け人の視点から~(2011年9月23日医療ガバナンス学会)

福島と言えばすでに震災前からあの手この手で医師の動員を画策してきた土地柄ですが、崩壊を続ける県内の医療体制を抜本的に立て直そうと知事が土下座までして見せたという岩手県では研修希望も増えてきているという冒頭の記事を思い出す時、なるほど聖地と呼ばれるのは何も一つの事件が起こったからと言うだけではないのだなという気がしてきます。
医療関係者からすれば原発事故云々ということもさることながら「あの福島で働く?う~ん…」と最初から及び腰になっているところに、彼の地から聞こえてくる話がどれもこれもこんな調子では到底行ってみようという気持ちにはなれないのも当然ですが、音頭を取るべき県が自らを省みることなくひたすらクレクレ君に徹するばかりでは今後復興予算を注ぎ込んでもどんな斜め上の使い方をされるか判ったものではないですよね。
県側も身の丈にも不相応なら現実にもそぐわない夢想の世界にいつまでも遊んでいないで、厳しい現実世界にしっかりと向き合った上で地に足の付いた政策を早急に打ち出してこないことには、医療に限らず福島県土の復興ははるか遠い夢のまた夢ということにもなりかねないでしょう。

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コメント

今まで踏ん切りがつかなかった連中も、原発事故を体の良い言い訳にして一斉に逃散していってる気配すらあるからな
被災者には悪いが復興計画もこの調子じゃ、ますます福島のイメージが悪化してしまうんじゃない?

投稿: aaa | 2011年10月 4日 (火) 08時39分

はじめまして。
思い返せば大熊町・双葉病院の医師・スタッフが患者を置き去りにして逃げたという、名誉棄損も甚だしい大誤報を
マスゴミが垂れ流したのも、元はといえば福島県の発表が大もとでした。(県は後でこっそり訂正したみたいですけど)
大野病院の件だって、県警本部は富岡警察署に対する表彰を撤回してないみたいですし、福島県が医師をどう見ているか
丸わかりです。先生方は早く逃げて下さい。その聖地はウソの聖地です~(笑)

投稿: kawashima | 2011年10月 4日 (火) 12時30分

下手な医師集め政策などよりは真面目に反省し謝罪しますという態度を示す方がよほど効果がありそうに思うのですが、我々は何も悪いことはしていないではさすがに医者も感情を持つ生き物ですから…

投稿: 管理人nobu | 2011年10月 4日 (火) 16時05分

こーゆーときこそたくさん飼ってる医系技官の出番じゃないのか>厚労省

まあ、役に立つとも思えないけど、数字合わせにはなるぞ。

投稿: | 2011年10月 4日 (火) 18時15分

田舎なんて大抵がその程度の臨床力でも十分では?

投稿: ケン | 2011年10月 4日 (火) 22時45分

頭を下げるのは彼らのプライドが許さないのでしょう。「自分達福島県公務員の無謬性を維持する為には
医者共を犠牲にしても全く構わない」と、彼らの態度が彼らの考えを雄弁に物語っています。
やはり、医師は聖地に軽々に足を踏み入れてはいけないのです。

投稿: kawashima | 2011年10月 5日 (水) 13時39分

県立医大と聞くと臨床医の養成所?のようなものを想像してしまうのですが、福島県立医大はこういう研究?のようなことも盛んなのでしょうか?

投稿: 通りすがりのただの人 | 2011年10月 6日 (木) 08時48分

>原発事故を体の良い言い訳にして一斉に逃散
だと思いますよw
福島県のたかり体質でしょうかw
原発にたかり
今度は復興予算にw

投稿: 元外科医 | 2011年10月 9日 (日) 00時01分

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