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2011年10月24日 (月)

崩壊していく中国社会のモラル そこから日本が学ぶべき教訓とは

先週から中国国内で大きな騒ぎになっているこちらの事件、すでに国内でも報道されていることからご存知の方も多いのではないかと思います。

瀕死の女児を見て見ぬふり 中国、道徳崩壊に批判(2011年10月17日産経ニュース)

 中国広東省仏山市で女児(2)が車にひかれ、血を流して倒れているのに通り掛かった18人の人々は誰も助けようとせず、女児は別の車にもひかれた後に病院に搬送、意識不明の状態が続いている。現場の一部始終を収めた防犯ビデオ映像がインターネット上に出回り、「中国の経済は発展したが、道徳は失われた」などと嘆きの声が相次いでいる。

 中国紙などによると、女児が事故に遭ったのは13日夕方。映像によると現場は商店街の幅約4メートルの道路で、女児は道路を渡っていたところをワゴン車にひかれた。ワゴン車は走り去った

 女児は路上でうずくまり、苦しんでいたが、通行人の若い男性や子連れの母親、バイクや自転車に乗った人々計18人は女児に目をやりながらも素通りし、女児は別の車にも両脚をひかれた。(共同)

中国で2歳女児ひき逃げ、通行人ら相次ぎ無視に怒り殺到(2011年10月18日ロイター)

 [北京 17日 ロイター] 中国広東省仏山市で13日、2歳の女児がライトバンにひき逃げされ、通行人十数人が女児を無視して通り過ぎるという事件が発生。その一部始終をとらえた監視カメラの映像がテレビで放映され、ネットユーザーから怒りの声が上がっている。

 新華社が17日に報じたところによると、女児は狭い路地でライトバンにひかれ、通行人らに無視された上、さらに別のトラックにもひかれた。女児は最終的に女性が助け出したが、事故現場に約7分間放置されていた。

 女児は病院に搬送されたが昏睡状態で、英字紙チャイナ・デーリーによると、脳死宣告を受けた。ひき逃げした運転手2人は、その後逮捕されたという。

 インターネット上では、女児を無視した通行人らを非難するコメントが殺到。ユーザーの1人は中国版ツイッター「新浪微博」 に「中国国民の恥だ」と書き込んだ。また別のユーザーは、「本当にわれわれの社会はどうなっているんだ。みんな、こういった無関心を断ち切るために反省すべきだ」と訴えた。

上海余話 仏山に仏はいないのか(2011年10月20日産経ニュース)

 インターネット上で「この18人も逮捕しろ」「金持ちだらけの広東人から道徳が失われた」などと数百万件もの非難が殺到した。中国共産党機関紙の人民日報までが、「文明社会の市民の責任だ」と論評で指摘する騒ぎが広がっている。
(略)
 地元紙記者が数人を突き止めて聞いたところ、事故現場で明らかに女児を見ていたにもかかわらず「何も知らない」と言い逃れた男も。

 事故が起きた仏山に仏はいなかったのか。ただ人心荒廃は仏山だけではなさそうだ。先日も書いたが、中国各地で最近、人助けしたのに逆に加害者扱いされてカネをせびられる信じがたい事件が頻発している。

 通行人18人もたぶん、関わりを避けたかった以上に加害者扱いを恐れたのだろう。非難の世論は18人だけではなく、実は中国社会そのものに向けられていることに気付く人がどれほどいるだろう。(河崎真澄)

中国国内でも公開されているニュース映像はやや大きめで鮮明な画像ですがかなり重いようなので、ロイターの日本語版動画ニュースから参照いただいた方が概略の状況はわかりやすいかも知れません。
車にひかれそのまま立ち去ったなどと言われるといわゆる車に当たったという状況を想像されるかも知れませんが、実際には全く違う状況で文字通りタイヤで踏みにじっていったと言う方が正解でしょう(正直こういうものに弱い方は参照をおすすめしかねます)。

【参考】【動画】视频: 广东佛山2岁女童被撞 18路人漠然走过 111018 第一时间(2011年10月18日中国国内ニュース)

【参考】【動画】中国で2歳女児ひき逃げ、通行人ら相次ぎ無視に怒り殺到(2011年10月18日ロイター)

ロイターの方では彼女をひいた運転手のコメントも流していて、いわく「ひいたことは判っていた。もし彼女が死んだのなら1500ドル払えばすむことだ。でも生きているならその10倍は払わなければならない」と言っているとのことなんですが、もう一人の運転手の方も両親に対して口外しないことを条件に現金払いを申し入れたとのことですから、何となく現地の状況が想像出来ますよね。
交通ルールなど滲透していない東南アジアなどではこうした自動車事故は結構当たり前に起こっていて、いくらかのお金で解決するということはごく当たり前に 行われているということなんですが、中国でも広東省のような沿岸地域と言えば同国内でも最も羽振りがよく、言葉を換えれば一番文明化されている地域と見ら れるだけに、未だにこうした状況にあるという事実には驚かされます。
事件の背景を考えると以前にも紹介したように中国では「倒れた老人は助けるな(押し倒した犯人扱いされ慰謝料を請求される)」などと言う「常識」がまかり通っていることに加え、医療費支払い不能患者が多く救急搬送も医療行為も全て前金制になっていることから「うかつに救急車など呼んで関わり合えば後で治療費を請求される」という懸念もあるようです。
こうした事例は司法や医療が一般大衆の行動様式あるいは道徳観にまで影響し得るという実例とも言えそうですが、こうも相次いで見るに堪えない事故が続くということになるといずれ当局としても放置を続けるわけにもいかないはずですよね。

残念ながら脳死状態にあるとも伝えられた問題の女児は事故から9日目の21日未明に無くなったということですが、この悲惨な事態を受けて同省政府ではこの種の「見殺し行為」を処罰するか緊急対策会議で検討するだとか、同省の共産党の会合において幹部から「社会全体の道徳水準の向上に向けて、積極的かつ効果的な方策を取るように」と指示が出たといった話も伝わってきています。
ただしどうも問題は厳罰化だのといったレベルで対処出来るようなものではなく根本的なところに原因があるようで、例えば冒頭の記事にもあるようにようやく女児を助け起こした女性に対してこんな声も上がっているということなんですね。

18人が見て見ぬふり中国2才児ひき逃げ事件、救助した女性が「売名行為」だと非難される(2011年10月18日exciteニュース)

先日、中国広東省で2才児が車にひき逃げされたあと18人が見て見ぬふり、結果2度車にひかれることになったという痛ましい事件が起きた。19人目に現れた女性が道路でぐったりしている女の子を助け、女の子はやっと病院に運ばれた

彼女はその行為から有名人になったのだが、なんとその後「有名になりたかったから助けたんじゃないか」と心ない市民から非難されていることがわかった。

ひどい中傷を受けたのは陳賢妹(ちん けんめい)さん(58才)。2度ひき逃げにあい血まみれになっていた女の子を救助した女性だ。事件が事件だけに彼女は一躍有名人に。連日報道されていることはもちろん中国版Wikipedia「百度百科」にもページができてしまうほどだ。

だが、その状況が面白くなかったのか、一部の心無い市民から「売名行為だ」「有名になりたかったからやったんだろう」と激しく非難されていることがわかった。陳さんの家族も「正しいことをするのがそんなにいけないことなのか」と心を痛めている。

陳さんによると、彼女は読み書きができず電話も一人ではかけられないそうだ。倒れていた女の子を道路の脇に寄せ、周囲に救急車を呼んでくれるようを願い出たが、誰も応じなかったとのこと。やっとの思いで女の子の両親を見つけ、救急車を呼んだとのことである。

非難されるべきは陳さんでなく、ひき逃げ犯と素通りしていった18人、そして陳さんの要請を無視していた人々ではなかろうか。

ネットユーザーからは

「人の善意をそんな風に言うなんてひどすぎる」
「中国の恥、彼女がいなかったら中国社会はもっと恥をさらしただけだ」
「やっかんでるんだろう。そんなに有名になりたければ人助けをすればいいじゃないか」
「私は陳さんを尊敬します」

などとコメントしている。

また陳さんは「私が稼いだお金ではないから」と、政府からの感謝状と報奨金2万元を辞退。この行為にもネットユーザーたち「いい人はどこまでもいい人だ」と感心しているそうだ。
(略)

当時のビデオなどを見る限りでは到底売名目的の行動には見えないのですが、失礼な言い方をすれば読み書きも出来ず今の時代に十分に対応出来ているとも思えない人であったからこそ倒れている子供を助け起こそうという気持ちにもなったのだと思えば、その背後にある現代中国社会一般の実情というものが垣間見えてなにやら空恐ろしいような気になってきませんでしょうか?
こういう状況になってくれば例えば助けた人には報奨金を出すなどと言う制度などを作れば今度はお金目当てで事故を起こすということすら起こりかねず、ひとたび社会のモラルが破綻してしまうとその立て直しがどれほど困難なことになるかということは我々日本社会も他山の石としなければならないでしょうね。
もう一点興味深いこととして、今回の事故に関して当然ながらあちらこちらからネット上に声があふれているのですが、それに対して当局からかなり厳しい規制がかかっているようなのですね。

【中国ブログ】女児ひき逃げで通行人放置、「言論統制」されたリツイート(2011年10月18日サーチナ)

  広東省で2歳の女児が1台のワゴン車に2度もひかれて逃げられ、さらに別のトラックにもはねられた挙句、18人の通行人に無視され続けた事故について、中国人ブロガー「顔落」さんが感想を書いている

  女児は最終的にゴミ拾いのおばさんに助けられたが、事故後、このおばさんに対し「売名行為の自作自演でやったんだろう」という見当違いな批判もあったと報じられている。

  ブロガーは「ニュースを知って辛くなった。傍観者たちの冷淡で麻痺した感覚はひどかった。でも、私もただのニュースの傍観者でしかない。何と言ったらよいのだろうか」とひどくショックを受けた様子。

  そんな時、ブロガーはたまたま「微博(中国版ツイッター)」で、有名人の書いたあるコメントを見かけた。「自分の民族を強烈に卑下したくなった。18人もいたのに。この無力感や劣等感は、天宮一号を18機打ち上げても立ち直れないほどだ」というもの。天宮一号は、中国が9月29日に打ち上げた宇宙ステーション建設のための実験機。ブロガーはこのコメントに共感し、リツイート(転送)した

  だが翌日、そのコメントはネットポリスから「マイナスイメージを形成する」などの理由で非難を受けてしまったという。国家プロジェクトの天宮一号を引き合いに出したのが良くなかったようだ。

  これに対しブロガーは、「コメントを大げさに問題視する理由が理解できない」、「おかしなことが起きたら、それに対する不満や批判が出るのは当たり前ではないか」と反論。ネットポリスに対して恐れることなく、正論を主張した。

  文末では、「ニュースを見て最初は激しく憤ったが、今ではむしろ自問自答している。この民族は今こそ自問と反省を行うべきではないだろうか。『無関心はいけない』などのスローガンで終わらせてはいけない」と記し、中国社会を覆う道徳崩壊に対し、強い危機感を示していた。(編集担当:西山正)

ご存知のように中国では非常に厳しいネット規制が敷かれているのみならず、当局が常にネットを監視していることが知られていますが、一見すると何ら関係のなさそうなこうしたところにまでチェックが入るという意味は何なのでしょうか。
近頃では中国国内でも様々なあり得ないような事件があり、そのたびに市民の憤慨の声が政治批判に結びつかないように非常に神経をとがらせているという話も伝わってきますが、今回の事故に関してもそれが例えば経済一辺倒の成長第一主義への批判から、最終的に国政批判などに結びつくことを警戒しているということなのでしょうか。
特に単なるスローガンで終わらせてはならない、今こそ行動の時だとも読める呼びかけというのは、当局からすればここから延焼に延焼を重ねて第二の天安門事件にでもなってはたまらないという気持ちなのかも知れません(ちなみに検閲の甲斐あってか中国の若い世代は天安門事件自体を知らないそうですが)。
このあたりは全くの余計な深読みなのかも知れませんが、今回の事故と相前後して中国国内の掲示板にたてられた「日本人の民度の高さは習慣の問題?」なるスレにも今回の事故に絡めた自己批判めいた書き込みに混じって、「日本人の民度は強制されてできあがったもの。」なんて書き込みが上がっているというのがひどく意味深にも見えてきますね…

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コメント

うわああぁぁぁ…
これはきついですよね…
こうして大勢スルーだとニュースになりますけど、とっさの時に何したらいいか判らないで見て見ぬふりって日本でも普通にありそう…

投稿: 通りすがりのただの人 | 2011年10月24日 (月) 12時36分

こんな社会で名前まで出した陳賢妹さんが一番偉いよ。
人肉捜索されてどんな目に遭うかも判らないのに。

投稿: kan | 2011年10月24日 (月) 14時54分

世も末…

http://kinbricksnow.com/archives/51476975.html

投稿: | 2011年10月24日 (月) 21時03分

>女性を助け起こす前に携帯電話で事故現場の写真を撮影。自分が事故とは無関係だとの証拠をちゃんと残してから、「善行」を始めた

ここまでやるならいっそ天晴れと感心すべきなのか微妙なところですね…

投稿: 管理人nobu | 2011年10月25日 (火) 10時08分

日本も救急車を有料化(1回5万円)で前金制にすべきだと思います。
時間外救急医療もすべて前金制にして後で適宜返金するシステムに変更すればいいと思います。

投稿: 元神経内科 | 2011年10月25日 (火) 18時00分

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