« 年金制度 どうせ何をやっても改悪にしかならないのなら | トップページ | 大人気のスマートフォンですが、思わぬ落とし穴もあるようです »

2011年10月12日 (水)

喫煙者はますます肩身が狭くなってきているようで

以前にも原発事故関連の発言で当「ぐり姸」にご登場いただいたことのある中部大の武田邦彦教授ですが、先日はこんな発言で再び脚光を浴びることになりました。

「タバコと肺がんはほぼ無関係」 武田邦彦教授発言は暴論なのか(2011年9月7日J-CASTニュース)

  原発事故への発言でも知られる武田邦彦中部大教授が、統計データを元にタバコと肺がんはほぼ無関係とブログに書いて、論議になっている。これが本当なら、「健康のため」の増税論議は無意味になってしまうのだが…。

   小宮山洋子厚労相の1箱700円発言をきっかけに、政府内で、タバコ増税について閣内不一致を生むほどの論議になっている。増税の根拠について、小宮山氏は「健康のため」を挙げたが、武田邦彦中部大教授(資源材料工学)が、こうした観点からの増税に異論を差し挟んできた。

喫煙は減ったのに、肺がんが増えている

   武田教授は、自らのブログで2011年9月6日、これまでの「先入観」を否定し、「タバコと肺がんはほぼ無関係」とまで言い切ったのだ。

   ブログでは、国の統計データから、この40年間で、男性の喫煙が8割から4割へと半減し、女性は2割弱で変化がないことを指摘。それにもかかわらず、男性は7倍に、女性は数倍に肺がんが増え、男女合わせれば5倍以上に増えていることから、タバコが肺がんの主要な原因とは言えないとした。

   これに対し、統計から、年齢が上がるほど発がん率が高くなることが分かっているとして、肺がんの増加は、高齢化が主な原因との見方を示した。武田教授は、100年前に比べ、平均寿命が40歳ぐらいから80歳前後にまで伸びていることが大きいとしている。

   そのうえで、武田教授は、タバコには、楽しみや精神的安定などのメリットもあると指摘。酒なども健康に害があるのに、タバコだけ社会的に制限して、値段を上げたり、喫煙者を追放したりするのは誤りだと断じている。

厚労省「調査結果から関係ある」

   こうした武田邦彦教授の主張に対し、厚労省の生活習慣病対策室では、「様々な研究をしている専門家の方がいますので、個別にコメントは出しかねます」と述べるに留まった。

   一般的には、必ずしもタバコのみで肺がんにかかるわけではなく、年齢が上がるにつれて発がん率も上がるのは確かだとした。とはいえ、生活習慣病対策室では、「肺がんとタバコの関係はあり、非喫煙者に比べて肺がんにかかる危険が高いことは分かっています」と話す。

   その調査結果として、国立がん研究センターで1966~82年に、当時の平山雄疫学部長が喫煙の影響を調べたところ、喫煙者は非喫煙者に比べ、男性が4.5倍、女性が2.3倍も発がん率が高かったことを挙げた。また、アメリカのがん協会が82~86年にがん予防研究の調査をしたところ、男性は22.4倍、女性は11.9倍もの高い発がん率を示したとしている。

   厚労省のがん対策推進室でも、「一般的には、肺がんとタバコの関係は深いと言われていて、それが覆ったとは特に聞いていません」と言っており、武田教授の発言は、さらに論議を呼びそうだ。

ま、シロウトの思いつき発言の是非についてここでは事細かに追求する意図はありませんけれども、武田教授もいやしくも科学者として教授という地位にまで上り詰めた御仁だというのに、このところの発言はいささか科学者としての適正すら疑われかねないようなものになっているのは残念ですよね。
さすがに武田教授としてもこれが無理目のこじつけ、あるいはためにする議論の類であることは承知しているだろう(と信じたい)ところで、要するに主張の眼目としては昨今のタバコ増税議論に関連して「社会的に制限して、値段を上げたり、喫煙者を追放したりするのは誤り」だという部分にあるのでしょう。
臨床医からすればこの種の「○○は決して有害ではない!」「○○だけが悪者のようにいうのは許せない!」式の主張は別に喫煙者に限らず、大量飲酒者やホメオパシー愛好家など多方面でみられる日常的なもので、「昨日み○も○たもこう言っていた!やはり俺が正しかった!」なんて主張する患者など今更目新しいものでもないでしょう。

管理人自身は非喫煙者ですが幸いさほど煙に神経質になる方でもないこともあり、リスクなどもきちんと承知した上で人様に迷惑を与えず利用する分には好きにしたらよいのではないかと思いますし、喫煙に限らず日頃熱心に患者指導をされている臨床医の先生方の多くも本音の部分では「他人の健康など知ったことか」ではないかなとも勝手に推測しています。
ただ納得ずくで使った本人の健康被害はともかくとして、アルコール中毒で家庭が崩壊したとかホメオパスの砂糖玉処方で妊婦と子供に健康被害が出たとかいった周囲への悪影響が出る以上は問題は社会的なものにならざるを得ませんから、「誰の迷惑にもなっていない」という部分が保証されない限りは社会も相応に対応せざるを得ませんよね。
喫煙ということに関しては近年いわれる受動喫煙問題などは周囲の健康被害のみならず部屋の汚染など環境自体への悪影響もいわれていますが、何より肺癌のみならず各種疾患に対する明確な悪影響を考えれば、タバコが医療費増大に大いに貢献しているということは認めざるを得ません。
となると、財政上の観点から盛んに支出の抑制が叫ばれ、とりわけ近年ではメタボ健診を始めとして少しでも生活習慣に起因する健康リスクを回避し医療費を抑制する政策が強力に推進されている中で、タバコだけが「個人の自由だ」とその例外となるというのもおかしな話だという考えもあるということです。

【社説】たばこ値上げ―財源より健康のために(2011年10月10日朝日新聞)

東日本大震災の復興財源として、たばこ増税が検討されている。1本当たり2円、1箱にすれば40円になる。

 復興に多額の資金を要することは事実だが、取りやすいところからとる安易な議論でなく、たばこ価格は国民の健康の観点から考えるべきだ。

 英国の医学誌「ランセット」は先月、日本の皆保険制度導入の50周年を記念する特集号を発行し、日本の保健医療制度を高く評価すると同時に、将来に向けての課題を挙げた。その筆頭が「喫煙率の高さ」で、禁煙政策の重要性を訴えた

 日本も批准したたばこ規制枠組み条約も、国民の健康を守るため、禁煙を進めるさまざまな政策を求めている

 たばこの健康への害はいうまでもない。肺がんだけでなく心臓など循環器系や脳血管などにさまざまな病気を引き起こす。全国で毎年13万~20万人が亡くなっていると推定される。

 他の人のたばこの煙を吸う間接喫煙による死者が約6800人、との推計もある。

 そのリスクは、いま問題になっている放射線と比べても大きい。国立がん研究センターによれば、非喫煙者の女性のがんのリスクは、夫が喫煙者だと0.2~0.3%高まる。一方、放射線による発がんの影響が明らかになるのは、少なくとも累積で100ミリシーベルトという高い線量の被曝(ひばく)で、がんになるリスクは0.5%高まる。

 医療費の増加や労働力の損失など、喫煙による社会的損失は年5兆円以上との試算もある。男性の喫煙率が4割近くあり、「たばこ大国」と呼ばれる現状を放置することは許されない。

 禁煙のためにきわめて重要なのが価格だ。欧米諸国に比べて安い日本のたばこ価格を上げることは、とりわけ若年層が新たにたばこを吸わないようにするうえで効果が大きい

 昨年10月、過去に例のない1箱100円の大幅値上げが実現した。政権交代後、政府税制調査会で初めて、健康問題としてたばこ増税が議論された結果だ。ようやく始まった健康の観点からのたばこ価格の議論を、後戻りさせてはならない。

 厚生労働省研究班の調査では、禁煙者の約7人に1人が昨年の値上げがきっかけと回答した。価格が500円なら36%、さらに600~700円なら21%の人が禁煙すると答えた。

 健康を守るには、思い切った値上げが必要だ。

 私たちはこれまで、1箱千円でもいいと主張してきた。この考えは今も変わらない。

「1箱千円でもいいと主張してきた」なんて言ったところで朝日の社内でも陰では「冗談じゃないよ」という声も相当数あったのではないかと推測しますが(苦笑)、とりあえずタバコ値上げにより社会の被る害を減らす一方で、タバコ増税による税収増までも達成されるなら何ともおいしい話じゃないかという声は以前から根強いということです。
これに対して被害の減少はともかくとして、値上げによる需要減も考えれば税収は増えない、むしろ減るんじゃないかという声もまた少なからずあったわけですが、幸いにもと言うべきか残念ながらと言うべきか、値上げで売り上げ本数こそ減ったものの売り上げ金額ではすでに値上げ前の水準に回復したというデータがすでに出ています。
となるとさらに喫煙者の反応を見ながらうまい具合に値上げを行っていけば健康被害が減り医療費は抑制できるだろうし、税収もさほど減らないかあるいは今よりも多い状態を維持出来る可能性があるとなれば、これは国の側からすれば非常においしい話だろうなと思えてきますよね。
もちろん純粋に健康の面から考えるとタバコなど1本1万円にしてでも全部やめさせた方がいいのでしょうが、現実問題として国と地方合わせて2兆円規模という巨大な税収源として位置づけられているわけですから、言葉は悪いですが喫煙者は生かさず殺さずでうまい落としどころを見つけて行かざるを得ないのでしょう。

ちなみに日頃から患者相手に偉そうに生活指導などをしている医者の日常生活はかなり不健康で紺屋の白袴どころではない、なんて指摘も以前からあるわけですが、こと喫煙率ということに関して言えば実は意外に「優等生」であるという調査結果が出ています。

医師の喫煙率9%、診療科間で4倍超の差-ケアネット調査(2011年10月3日CBニュース)

医師の喫煙率は9%で、日本人全体の喫煙率23%を大きく下回っているとの調査結果を、ケアネット(東京都千代田区)がこのほど発表した。診療科別に見ると、最低の呼吸器科(3%)と、最高の麻酔科、整形外科(共に14%)とでは、4倍超の差があった。

 ケアネットは、小宮山洋子厚生労働相が記者会見でたばこ増税に言及したことを受けて、9月21-28日に同社サイトの会員医師を対象に、インターネット上で調査。4000人が回答した。

 それによると、医師の喫煙率は9%で、このほか「以前に喫煙していた」が34%、「喫煙したことがない」が57%だった。厚労省の「2009年国民健康・栄養調査結果」では、日本人全体の喫煙率は23%で、これを大きく下回った

 診療科別に見ると、9%を下回ったのは、呼吸器科(3%)、神経内科(5%)、眼科(6%)、小児科と内科(共に8%)。一方、上回ったのは、麻酔科、整形外科(共に14%)、泌尿器科、脳神経外科、産婦人科(各13%)、精神・神経科と耳鼻咽喉科(共に12%)、外科(10%)だった。

■喫煙医師も過半数が「値上げすべき」
 また、たばこの適正価格を尋ねたところ、喫煙医師の52%が現行の400円より高い価格を選んだ。17%は「1000円」と答えた
 一方、非喫煙医師では、96%が400円より高い価格を選んだ。52%が「1000円」と答えたほか、選択肢の中で最も高い「1300円以上」と答えた人も20%いた

呼吸器科医が喫煙率最低であるのは呼吸器学会の専門医認定の要件に「非喫煙者であること」なんて物々しい一文が加えられたこととも大いに関係しているのでしょうが(苦笑)、おもしろいのは喫煙者の対処で大いに苦労していそうなイメージのある麻酔科医の喫煙率が最高であるということですよね。
もう一つ興味深いのは喫煙医師も含めて医者の世界ではタバコ値上げ論者が多数派らしいということで、それもちょっとやそっとの値上げではなく大幅値上げを主張している人間が当の喫煙者にも多いというのは、自分の意志ではやめられないがここまで値上げをすればやめられるだろうという他力本願的な考えから来るものなのでしょうか。
平素から他人には厳しいことを言っている人間の自己管理というものも問われる問題だなと意地の悪い見方もできそうですが、逆に考えれば自分たちの行っている生活指導というものがどれほど意味あるものだったかがあきらかになったとも言えるわけで、点数を稼ぐために形ばかりの指導でお茶を濁すことのないよう自戒も必要ですよね。

|

« 年金制度 どうせ何をやっても改悪にしかならないのなら | トップページ | 大人気のスマートフォンですが、思わぬ落とし穴もあるようです »

心と体」カテゴリの記事

コメント

煙草の価格を高くしすぎると、闇煙草や大麻などの違法薬物がはびこるリスクもあるので、価格上昇はほどほどにしておいたほうがいいのだろうと個人的には思います。
どの程度の価格が適正なのかはわかりませんが。

投稿: クマ | 2011年10月12日 (水) 10時25分

欧米諸国並みがひとつの目安となるのでは。
何にしても再値上げにも反対しにくい感じですね。

投稿: ぽん太 | 2011年10月12日 (水) 14時32分

だいたい一箱500円以上はするようですね。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4740.html
ただ日本は喫煙率がまだ高いからこそ反対論も根強いですが、社会的に喫煙者が圧倒的少数派になってくればまた話も変わってくるでしょうね。
本当に健康第一で価格統制をするのであれば、イベント的に毎年ちょっとずつでも値上げを繰り返すのがよい警告になるのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2011年10月12日 (水) 19時18分

結局復興財源にたばこ税はやめて所得税増税だってね。
http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_323338

投稿: | 2011年10月13日 (木) 08時11分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/52966020

この記事へのトラックバック一覧です: 喫煙者はますます肩身が狭くなってきているようで:

« 年金制度 どうせ何をやっても改悪にしかならないのなら | トップページ | 大人気のスマートフォンですが、思わぬ落とし穴もあるようです »