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2011年9月26日 (月)

早大医学部問題続報 ハードルはかなり高そうです

先日もお伝えしましたように、茨城県から早稲田の医学部を誘致したいという動きが出ていますが、その後の続報が出ています。

早大の悲願「医学部新設」 茨城県で実現するか(2011年9月23日J-CASTニュース)

  「早稲田にとって医学部創設は悲願」。早大総長だった奥島孝康氏が11年前に会見で語った言葉だ。それが今、茨城県で新設に向けた動きがあるというのだ。

   「早大医学部」新設誘致の動きは、2011年9月20日までに一部メディアで報じられた。

橋本昌知事が早大に書簡を送りアピール

   それによると、早大出身のあるベテラン県議がパイプ役になって、茨城県で早大OBらを中心に誘致活動が始まった。新設地としては、都心から特急電車を使えば1時間強で行ける笠間市の県畜産試験場跡地(約35ヘクタール)が候補に挙がった。知事選で医科大学誘致を掲げた橋本昌知事も賛同し、6月下旬には早大側にラブコールの書簡を送るまでになった。

   さらに、県内で8月に開かれたOB会の支部総会にも橋本知事が訪れ、再び誘致をアピールしたというのだ。医学部誘致の理由として、全国でワースト2にも入った医師不足の問題があるとしている。

   早大関係者も興味を示し、すでに現地を視察。10月にも視察が予定されているという。

   医学部の新設は、1981年に琉球大であってからは、30年間もない。当初は医師が過剰になると予測され、その後も医師会の反対などで実現しなかったとされている。

   それが、最近の医師不足もあって、状況が変わってきたというのだ。

   民主党は、10年夏の参院選マニフェストで医師を1.5倍に増やすとうたった。文科省もこの年12月に、新設も視野に入れた「医学部入学定員のあり方に関する検討会」を立ち上げている。文科省の医学教育課によると、医学部新設の要望は、茨城県のほか、静岡県や新潟県からも出ており、報道でも、各地のいくつかの大学は医学部新設を検討しているとされている。

   こうした動きの中で、いよいよ早大の悲願が実現しそうなのか。

早大「何も決まっていない」

   医学部新設について、早大の広報課では、橋本昌知事から代理人を通して誘致書簡が届き、早大OB会の支部総会でも要望があったことは認めた。

   しかし、医学部については、新設するかも含めて何も決まっていないと素っ気なかった。

    「新設の願望や企画、提案は、昔から卒業生らから何度も寄せられています。今回も、そういった要望の1つとして受け取っています」

   大学関係者が視察と報じられたことについては、「卒業生の方がもしかしたら現地を見学されたかもしれませんが、大学の意思とは別です。10月に現地視察の予定もありません」と言う。

   早大は、東京女子医大と2000年3月29日に学術交流協定を結び、主に大学院を中心に医工連携を進めている。総長だった奥島孝康氏が「医学部創設は悲願」と意欲を見せたのはこのときだ。ただ、東京女子医大を医学部に編入するかについても、広報課では、検討しているとは聞いていないとしている。

   最近の早大総長は、医学部新設にやや否定的だ。

   前総長の白井克彦氏は、朝日新聞のインタビューで、お金がないこともあって医学部は置かないと語り、現総長の鎌田薫氏も会見で「学部の新設はしない」と明かしている。広報課では、「トーンダウンではありませんが、医学部を持つことが重要なのでなく、早大として今後の健康・医療に貢献できるかが重要だということです」と説明している。

   一方、茨城県の医療対策課では、報道内容について困惑ぎみだ。

    「うちの方も初めて聞いた話ですので、内容は承知してないです。早大誘致については、内部検討もしていません

   ただ、国に医科大学誘致などを要望していることは認め、そのことについては、「医師不足解決の1方法としてはあると思っています」とした。

ある意味ではこれも相思相愛と言うのでしょうか、早大の医学部を誘致したいという茨城県の意図と、長年医学部を持ちたいと願ってきた早大の意図とが合致しているとは言えるのですが、問題は先日も書きましたようにやはり早稲田が茨城ということをどう考えるかでしょうか(苦笑)。
実際問題として文科省は医学部新設に当たっては医療系の学部を持っていること、実習先として使える病院があることなどの条件を抱えていて、それらの条件に合致しない早大としてはどこかの医系大学等と合併するなりしなければならないだろうという観測が一般的で、ネットなどでも女子医以外に名前が取りざたされている大学もあるようです。
ただ現時点では早大側も茨城県側も公式にそうした話はまだないと言っている段階で、単に公約に絡んだポーズだけなのか水面下で密かに話を進めるつもりであるのか、いずれにしてもとんとん拍子で話が進んでいっているという感じではなさそうですよね。
ただこの記事においても早大が医学部を持てなかったのは医師会が邪魔をしたからだと言う「噂」が掲載されていますけれども、伝え聞く地元の情報を見る限りでは医師会自らがその噂が事実であると立証しようとしているかにも見えます。

【茨城】 早稲田大医学部誘致に県医師会が反対表明(2011年9月22日朝日新聞)

早稲田大学に設置されていない医学部の誘致を茨城県が進めているとの一部報道を受け、県医師会(斎藤浩会長)は21日、会見を開き、「医学部の新設には様々な問題がある。誘致に反対する」との見解を示した。県と早大の両当局は「誘致を正式に要望しているとはとても言えず、なぜこんな騒ぎになるのか……」と困惑している。

 新聞2紙が17日付朝刊で、橋本昌知事が早大に県内での医学部新設を要望し、県畜産試験場跡地(笠間市)を提案した、と報道した。ただ、県によると、早大OBの県議らが誘致に動き、6月に早大に要望書を出したが、「県として正式に要望したというレベルの話ではない」という。

新設医学部誘致に県医師会反対「地域医療が崩壊」(2011年9月22日茨城新聞)

県医師会の斎藤浩会長は21日、緊急の記者会見を開き、県が新設医学部の県内誘致を早稲田大学に打診していることについて、「不適当だ」と反対する見解を発表した。

医学部新設の問題点として▽教員、付属病院の勤務医・看護師など多大な人的資源が必要で、医師・看護師不足に拍車を掛ける現場の医師や看護師が引き上げられ、地域医療が崩壊する医学部の定員は最近4年間で1298人増加し、人口減を踏まえると将来の医師過剰を招く卒業者が本県に定着するとは限らない-の4点を挙げ、「巨大な箱もの新設は全国に影響し、禍根を残す。医師会が支援することはあり得ない」と述べた。

医師不足の解消策については「定員増と地域枠拡大で対応するのが現実的」と述べ、喫緊の課題である医師の偏在は「行政、筑波大などの既設医学部、医師会の3者が連携することでクリアできる」とした。

斎藤氏は18日に橋本昌知事と会って見解を伝え、医学部誘致をやめるよう進言したことを明らかにし、「医師会の意向をくんだ新たな対応を期待する」と当面は県の出方を見守る考えを示した。

斎藤氏は会見後、取材に対し、「(本県出身の)原中勝征日医会長も同じ意見だ」と述べた。

医学部誘致なら医師不足に…という医師会の理屈(2011年9月22日読売新聞)

 医学部誘致を公約とする茨城県の橋本知事が早稲田大学(鎌田薫総長)に新設医学部の誘致を打診したことについて、県医師会(斎藤浩会長)は21日、水戸市の県メディカルセンターで記者会見を開き、教員確保で全国の医師不足に拍車をかけるなどとして、医学部の新設・誘致は不適当と批判した。

 斎藤会長は18日に知事に会い、「おやめなさい」と進言したことも明らかにした。

 医学部の新設・誘致に反対する理由として、県医師会は「教員確保のために医師を集めれば全国の医師不足に拍車をかける」「既存医学部で入学定員の増加を図っている」「中小医療施設や有床診療所などの経営に影響する」「医学生は卒業後に出身地へ戻る可能性もあり県の医師不足解消にならない」の四つを挙げた。

 県医師会によると、医学部の入学定員は、1981~84年度に年8280人だったが、その後の抑制政策で2003~07年度は年7625人に減少した。04年度に始まった臨床研修制度で大学に医師が残らず、都市部の医療機関などに流れたことで地方の医療機関への医師配置システムが崩壊し、各地で医師不足が顕在化した。

 県内の医師数(2008年)は人口10万人当たり162・1人で、埼玉県に次いでワースト2位。二次医療圏別では、筑波大のあるつくば医療圏の同342・3人に対し、県北の常陸太田・ひたちなか医療圏は同90・9人と3分の1にも満たず、偏在も問題になっている。医師確保を県の喫緊の課題とする橋本知事は、09年8月の知事選で医学部誘致を公約とした

 一方、国は08年度から医学部の入学定員の増員や、地域枠などを設ける医師確保策を講じており、県医師会の小松満副会長は「ハコモノを造れば壊すことはできない。融通性のある既存のシステムを維持すべき」と述べた。また、少子高齢化や人口減少の影響にも触れ、斎藤会長は医学部を新設すれば医師過剰になる恐れもあるとし、「大きな禍根を残す」と批判した。

 早大誘致を巡っては、橋本知事が6月下旬、鎌田総長に宛てて、医学部新設の際の県内立地を求める文書を提出。中央病院、こころの医療センター、リハビリテーションセンターなど県立の医療施設が近接する笠間市の県畜産試験場跡地(約35ヘクタール)をキャンパス候補地に挙げ、教育、研究に各施設を活用してほしいとの協力姿勢を示している。

県と大学という当事者双方が「まだ何も具体的な話は進んでいませんが」と言っているような段階で、県医師会のトップが「師会が支援することはあり得ない」とまで言い切るというのが彼らの意志の固さを示していると言えそうですが、発言内容からすると県医師会から県当局に圧力をかけたと受け取るべき内容に見えますよね。
同県医師会が挙げた四つの理由というものがどれほど妥当なものであるのかはともかくとして、彼らの本音としては結局「中小医療施設や有床診療所などの経営に影響する」というところにあるのだろうなと容易に判ってしまうのが悲しいところですが、その方針を日医会長も公認していると言うのですから田舎開業医の既得権確保では終わりそうにない話です。
医学部を新設すべきかどうかということは未だに賛否入り乱れているところでどちらが正しいとも断定できませんけれども、現段階で積極的に作る意味があるとすれば医学部定員増と言うよりも、都道府県毎に人口比で顕著な差がある医学部定員を少しでも是正し、医療供給の地域間格差を是正するという意味においてではないでしょうか。
その点からすると仮に作るとしても茨城よりも優先されるべき都道府県が他に存在するだろうという気がしますし、仮に新設が認められるにしてもそう多くにはならないだろう新設医大が茨城に来るかと言えば来ない可能性の方が高そうにも思えます。
その意味では人口比で県内の医学部定員が必ずしも過少過ぎるというほどでもないにも関わらず、現状で医師数がここまで過少であるという同県の現状がどこから来るものなのか、単に筑波大が県内への医師供給に消極的であるといっただけの理由ですませてよいのかという点も(大いなる自省を込めて)考えるべきでしょうね。

冒頭の記事にもあるように民主党は公約として医師数を1.5倍に増やすということを言っていて、そのためには現在の既存医学部定員を増やすだけではずいぶんと長い時間がかかりそうである(国の医師数カウントにはとっくに定年年齢を過ぎた老医や研究者も含まれています)一方、各大学はすでに定員増に関しては「これ以上は無理。勘弁して」と及び腰であることが知られています。
もちろん一部私大などは経営上の観点からもさらなる学生像に対応出来るのかも知れませんが、そうした大学は往々にして国試に合格し実際に医者として世に出る医師数となるとひどく少なくなっていたりするものですから、それなら優秀な学生が集まることが期待出来る有名私大に新設して貰った方がよいという考え方もあるかも知れませんが、現状ですでに医学生のレベル低下は教官が嘆くレベルになっていると言います。
今後さらに「県内の医学部はその卒業生を悉く県内の地域医療のために差し出すべきである」なんて医師囲い込みの動きが強化され、すでに言われているように奨学金だの地域枠だので学生の進路を縛り付けようと言う動きが強化されるほど、大学側からすれば今までなら到底合格がかなわなかったレベルの学生が大勢入学してくるのは痛し痒しというところでしょう。
要するに大学の側からすると定員増ももう限界で、そろそろ急増しすぎた学生を引き締めて質を保つべき時だと考えていそうなのですが、これに加えて今回いち早く医学部誘致反対を強固に主張しているのが他ならぬ茨城県医師会であるということも大きなポイントでしょうね。

ご存知のように民主党政権になって以来長年にわたって自民党の強力な支援団体であった日本医師会という組織はすっかり干されてしまいましたが、この日医の方針に逆らって先の衆院選で民主党候補を独自に応援して見せたのが茨城県医師会という組織であることは周知の通りです。
その後茨城県医師会の原中会長が日医の会長選に当選した結果、日医自体が自民党支持から民主党支持へと歴史的な転換を遂げたことは記憶に新しいところですが、要するに全国数多の地区医師会の中でもこの茨城県医師会という組織は最も現政権との距離が近いのみならず、民主党政権からすれば自民党から日医という大きな支持団体を引きはがした最大の功労者でもあるわけです。
その茨城県医師会がこうまで強固に「県内に医学部?!とんでもない!」と誘致反対を主張しているというのですから、どのようなルートであれ政権の側にもその意向は伝えられるものと考えておくべきで、民主党政権としても昨今なかなか政権運営も難しい折りに、わざわざ新規獲得した主要支持団体の機嫌を損ねてまで異論も数多ある話を無理押しすることもなさそうに思えませんか。
とりあえず現段階では医学部を新設する、それもよりにもよって茨城県において新設するということが極めて高いハードルに遮られていそうだということが言えると思うのですが、今のところ公式な話は何も進んでいないという立場であるだけに、誘致実現には県知事が国政に連なる医師会と喧嘩してまで選挙向けの公約と心中する覚悟があるのかどうかが問われることになりそうですね。

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コメント

誤:女子医意外
正:女子医以外

投稿: 魔狸 | 2011年9月26日 (月) 08時10分

だから早稲田が茨城ってありえないw

投稿: aaa | 2011年9月26日 (月) 14時46分

>「県内の医学部はその卒業生を悉く県内の地域医療のために差し出すべきである」

患者数と人口が多くて、医師需要が大きい大都市圏の医療が崩壊するでしょう。
今でも、大都市圏の病院勤務医は、その地域の医学部卒業生に加えて、地方国立医学部の卒業生を吸収することで何とか成り立っていましたからね。
それを地方に縛りつけたらどうなるか、目に見えています。

>都道府県毎に人口比で顕著な差がある医学部定員を少しでも是正し、医療供給の地域間格差を是正

大都市圏ほど学費の安い(年間授業料53万円)の国立医学部が必要ですが、1県1医大の名のもとに実際には患者数も人口も少ない地方に国立医学部が設置されてきました。
結局、医師需要も多くて、症例数や卒後教育機会など医師としてのトレーニング条件の良い大都市圏に地方国立医学部卒業生が進出しています。
需要と供給のバランスを考慮せずに国立医学部を設置したら、そうなるのはわかっていたはずです。

投稿: 医師需要と供給 | 2011年9月26日 (月) 21時45分

すみませんでした
誤字訂正しておきました>女子医意外

投稿: 管理人nobu | 2011年9月27日 (火) 09時34分

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