« 今日のぐり:「ラーメン ギョーザ 笑楽」 | トップページ | 福島原発事故を契機に噴出する長年の懸案 »

2011年9月20日 (火)

医学部新設 大本命がついに始動か?!

と言うことになるかどうかは判りませんが、今回は当事者ではなく周囲の方で環境が整えられつつあるというニュースが出てきました。

早大に医学部新設打診 茨城県、医師不足解消狙う(2011年9月18日産経ニュース)

 ■笠間の畜産試跡地提案

県が早稲田大(東京都、鎌田薫総長)に対し、医学部の新設誘致に乗り出すことが関係者の話で分かった。既に県関係者が笠間市の県畜産試験場跡地を候補地として提案しており、今後、誘致活動が具体化するとみられる。県は医師確保を最重要課題としており、医学部誘致が医師不足解消につながることが期待されるが、国は約30年間、医学部新設を認可しておらず実現に向けて課題は大きい。

 関係者によると、早大医学部の新設誘致は、早大と縁があるベテラン県議がパイプ役を務め、協議を進めている。既に笠間市平町の県畜産試験場跡地を候補地とする具体的な案も示している。

 厚生労働省の調査によると、平成20年の県の医師数は人口10万人当たり153・7人と全国ワースト2位で、県内には医療過疎地域も多い。

 県は昨年、ドクターヘリを導入して救急医療体制の充実を図ったが、根本的な医師不足は解消されていないのが現状だ。

 橋本昌知事は21年の知事選で、マニフェストに大学医学部誘致を掲げた早大医学部誘致にも積極的な姿勢を示しているとされる。

 ただ、文部科学省などは医学部新設に慎重姿勢。昭和54年以降、新設は認められていない。今後、橋本知事をはじめ県幹部が早大への働きかけを強めていくとみられる。

早稲田と言えばかねて医学部を持ちたいという意志があるとは噂されているところですが、今回具体的に周囲からも働きかけがあったということで、いよいよ話が具体化してくる可能性もあるかという気になってきますよね。
この医学部新設問題、今のところ各地の大学から「是非うちに」と手は上がっている状況とは言え、正直いずれも大学としての質はかなり…といった印象が強く、仮に新設されたとしても遠からず歯学部のように定員割れをするようになるんじゃないかとか、法科大学院のように司法試験に全く受からず授業料詐欺だと言われるのではないかとか、様々な懸念がささやかれていたわけです。
医師にどの程度の学力が必要かは諸説あるところとは言え、いわゆる底辺に近い私学と言えば学費の問題はともかく医師免許取得の上でもそれなりのリスクになるわけですし、現状でこれだけ既存医学部の定員が増加し学生のレベル低下が叫ばれそろそろ国試も厳しくなろうかとも予想される中で、どうせ新設するなら優秀な学生が集まるだけのネームバリューある大学にと考えてしまうのも人情ですよね。
ちなみに今をときめく野田総理も早稲田の出身だということですから、仮にその在任期間中にどこかの大学に医学部を…と言う話にでもなれば大いに優位な立場たり得るのではないかと思いますが、問題は医学部新設を主張する人々と新設なんてとんでもないという人々とが久しく以前からがっぷり四つで組み合って話が進んでいないということでしょう。

医学部定員検討会で論点整理案- 文科省、定員増は「引き続き議論」(2011年8月10日CBニュース)

 文部科学省の「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会」(座長=安西祐一郎・慶應義塾学事顧問)の会合が8月10日に開かれ、同省が論点整理の素案を示した。素案では、医師の配置やキャリアパス、医学教育の改革などこれまでに一定の方向性が示された8項目について意見をまとめた。一方、今後の入学定員増など3項目については、「論点整理以降、引き続き議論が必要」としている

 素案で一定の方向性が示されたのは、▽医師の配置やキャリアパスなど▽医師の勤務・診療に関する環境整備▽地域枠の活用などによる地域医療の充実▽基礎研究、イノベーションを担う医師(研究医)養成の充実▽国際貢献などグローバルな視点で活躍する医師養成の充実▽総合医の養成の必要性▽医学教育の改革▽今後の医師養成体制の充実―の8項目。それぞれについて意見をまとめている。

 一方、これまで意見が分かれていた、▽将来の医師需要の推計▽既存の医学部の入学定員増▽医学部の新設―の3項目は、「論点整理以降、引き続き議論が必要」として両論を併記。入学定員増については、「既存の医学部の体制を強化しながら、医学部定員増で(医師不足に)対応していくべき」との意見や、「偏在対策についての議論が必要」「2022年以降は、医師が余ってくると推計される」との意見が出たとしている。

 これを踏まえての自由討議では、定員増をめぐり、この日も賛否両論が出た。自由討議の最後に安西座長は、「(検討会として)具体案を出さないと、世間の期待には応えられない」と指摘。その上で、「医師の数自体は充足している(から偏在解消で対応すべき)とおっしゃるのであれば、偏在をどう解消するのか具体案を出さなければいけない」「医師を増やさないといけないとおっしゃる方は、増え過ぎてしまうのではないかという疑問に答える必要がある」などと述べ、具体的な対応策を示すべきだとの考えを示した。

 文科省はこの日の意見を踏まえて素案を修正し、次回会合で改めて示す方針だ。

実際の議論の様子は例によってロハス・メディカルメディカルさんで取り上げられているのでご参照頂きたいと思いますが、まあ医学部新設に関して言えば率直に言って、この調子ですと未来永劫まとまりそうにもないですかね(苦笑)。
ただしこうした会合の常として省としての考え方に反するような結論が出そうな人選はしないはずですから、新設賛成派、反対派の両者が互いに譲り合わずに時間ばかりが過ぎていくという状況こそ、文科省にとっては狙い通りということなのかも知れません。

【参考】医師不足対策に「医学部新設」も ─ 文科省素案(2011年8月11日ロハス・メディカルメディカル)

結局何が問題になっているのかと言えば、医学部の定員を増減させるだけなら過剰になってくれば減らせばいいだけの話で、実際に以前にも大きく削減された実績があるわけですが、新設となると金もかかるだけに多すぎたから潰せとも言えないのは当然で、数のコントロールをしやすい定員の増減で対応すべきだという声は根強くあるわけですね。
一方新設派の言い分としてはすでに各大学において定員増は限界を迎えていることが明らかであり、まだまだ医師不足解消が見込めない以上新設は当然であるというものもあれば、現状の医学部所在が各都道府県における医師数の「既得権益」になってしまっていることは、最後の医学部新設以来数十年を経て人口動態も大きく変わっている現状にそぐわないという声もあるようです。
とりわけ埼玉県や千葉県などのように人口がそれなりに多い割に医学部が一つしかないような県では不公平感が強いのだろうと思いますが、国の方ではいったいこの問題をどう考えているのかと言うことが、前述の検討会に出された素案の内容を見ていくと何となく見えてくるような気もします。

資料7 事務局提出資料(論点整理(素案))(文部科学省資料)より抜粋

(略)
[1]地域偏在や診療科偏在について

    厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によれば、地域間及び診療科間で医師数の偏在が見られる。都道府県間の医師偏在状況では、人口対10万人医師数が240を超える都府県がある一方で、埼玉県や千葉県など関東地方では人口対10万人医師数が180を下回っている
    さらに、同一都道府県内でも、一般に県庁所在地等の都市部よりも、郡部などにおいて医師が少ない。また、北海道等非常に広い自治体もあり、人口比に加えて面積も考慮する必要もある。
(略)
[3]一般教養のあり方
(略)
    なお、教養教育の充実と関連して、米国のように、一般の大学の学部で4年間学び、その後に医学部に入学するメディカル・スクールの設置を検討してはどうかという提案がヒアリングの中であった。一方、現在の医学教育、医師、学生の質を考えたときに、現在の医学部と4年制のメディカル・スクールをダブルスタンダードとすべきではないとの反対意見があった。このため、教養教育の充実に関しては、制度の問題としてではなく、6年間を通じて医師として必要な教養を学ぶことができるようにする等、上記の各大学のカリキュラムの充実、工夫が進むことを期待したい。
(略)
3.新設による対応について

現下の医師不足への対応として、前述の入学定員の増員による対応のほかに、大学医学部の新設による対応も考えられる。
 この点について、本検討会においては、

○既存の医学部の入学定員を増やしているが、教員も増えておらず、周りの施設もないという状況。この対応を現場に強いるのは限界があり、医学部を新設すべき。

○医学部が東西に偏在しているため、医学部を東日本に新設すべき。

○しっかりした医学教育ができるシステムを作るために医学部新設を検討するのもよいかと思うが、医師数を増加させるためだけに医学部を作るのは賛成しかねる。

○医学部を新設してから医師が働くまで時間がかかることを考えると、教員などを増強しながら、今の医学部の定員増で対応して医師を育てていくべき。

○将来的に医師数が過剰になった場合を考えると、既存の医学部定員数の調整で対応していくべき。医学部新設は到底考えられない。

などの意見が出された。
 医学部を新設することとした場合、医学部の地域偏在の解消につながるとともに、総合医などの新しい医療ニーズに特化した医師養成が可能になるなどの利点があるとの指摘がある。他方、将来、医師供給が超過した場合に規模を縮小することが事実上難しいことや、新設する際、指導力のある優秀な医師を教員として確保するために広く医師を募る必要があり、結果的に地域の医師不足が助長されるのではといった指摘もある。また、入学定員増の場合以上に新設から実際に医師が増加するまでのタイムラグが大きいという問題とともに経費面にも配慮をする必要がある。

 いずれにせよ、現下の医師不足対策として、既存の定員増による対応と医学部新設による対応とのいずれがふさわしいのかについては、現時点では結論を出すには至らず、今後、国民的議論を深める必要がある。

基本的に医学部定員増に関しては反対意見というほどのものは記載されておらず、過去の議論においても予算や人材の手当てがつくのであれば最も妥当な方法論であるというコンセンサスが形成されているように見えますが、ここでは医師不足の現状として東日本、とりわけ埼玉や千葉、あるいは北海道や東北が名前を挙げて取り上げられていること、そしてわざわざ資料の随所に下線が引いてあることが注目されます。
ちなみにこの下線部に関しては当然ながら委員の側からも「何勝手なことやってんの?どういうつもり?」と突っ込みが入っているのですが、文科省高等教育局医学教育課の村田善則課長曰く「一部、全体の整理の中で少し......、頂いたご意見に事務局として肉付けをして、まとまりをつけた」部分に下線を引いたということで、まさしくこのあたりが文科省的な肝の部分であるということなんでしょうね。
委員からの意見でも新設するなら東日本であって、西日本に対してはそうした意見はないらしいということなんですが、下線の引き方を見る限り文科省はメディカルスクール論も新設論にもさほど熱意も見られないように思え、恐らくは将来的な医師過剰予測などもにらみながらこのまま新設については議論中ということで流すつもりなのか、少なくとも多くの大学での新設は認められそうにないかなという印象を受けます。
すでに歯学部やロースクールも増やしすぎて崩壊している現状ですから、これから医学部新設となればよほど有利な条件でなければ認められないと思われ、そう考えると例えば私大に混じって公立の新設医学部として名が上がっているはこだて未来大などは自治体の支援次第ではかなり有利なのかなという印象を受けますし、仮に早稲田が埼玉や千葉にということになればこれまた有力候補になり得るのかも知れません。

委員の意見などを見ても感じるのですが、例えば相対的に医師数は充足しているという西日本でも医師の高齢化が進んでいて実働医師数はそんなに多くないんだとか皆が医者が足りないと言う、しかし一方で定員増にしろ医学部新設にしろ即効性はいずれにしても期待出来ないと皆が口を揃える中で、結局一番問題とされているのは医師偏在ということなのかなという印象を受けます。
ここでいう医師偏在とは「例えば…徳島?」的な数の上でどこの県は多い、おらが県は少ないという問題というより、例えば県内の医学部定員はそこそこ多いのに卒業した者から県外に去ってしまうだとか、県庁所在地にはそれなりの数がいるが郡部には全く医者が来ないだとか言った話で、要するに即効性を持ってこうした問題を解消するために医師配置への強制力が必要であるという結論を出したいようなんですね。
結局いくら大学を新設しようが定員を増やそうが地域の医師不足解消に結びつくという保証は何もないわけで、むしろ関東や北海道などはいるところにはいる医者が広大な辺境地域に流れていかないことに苦労しているとも言えますから、文科省としてはなるべく金もかけず即座に問題を解決する手段として医師配置への強制力を導入すべきと言いたいのかも知れませんが、それはむしろ厚労省筋で議論すべき話ですよね。
そう考えていくと総数に関しては基本定員増のみでメディカルスクールも新設もないか、あっても最小限度にとどめ、そして文科省的に医師配置に介入する手段として強制力のある紐付き地域枠のより一層の拡充を進めていくといったあたりが、彼ら文科省として思い描いている最終答案なのかなという気がします。

ふたたび冒頭の早稲田の話題に戻りますけれども、仮に新設が認められるとすれば早稲田はかなり有望株になり得そうであって、しかも早稲田の医学部設置を慶応出身の武見太郎が潰したなんて伝説もある日医が民主党政権からすっかり干されてしまっている現状では、開設する地域さえ間違えなければ一番手とも見えてきそうに思えますが、問題は茨城という土地が正解なのか間違いなのかですよね。
世間の声を聞いていますと幾らなんでも茨城では慶応との格差が固定化しそうだから嫌だとか、文系の印象が強い早稲田に医学部ではカラーが合わないだとか、果ては都の西北じゃないから茨城はないだとか様々な声がありますが、早稲田ブランドに集まる学生が卒業後も茨城に残るとはちょっと考えにくいことを考えると、現地の医師不足解消目的で誘致する対象として早稲田を選ぶ側の見識も問われそうです。
現実的に元東京教育大の筑波大が地元に残る人材を育てているとは言えない現状が地域医療にとっての問題点なのだとすれば、明らかに茨城ブランドに染まりそうもない早稲田に妙な期待を抱くよりも、自治医なりにお金を出すなり筑波大に協力に働きかけるなりして地元枠を10倍くらいにしてもらうのがよほど確実な方法なのかも知れませんが、ブランド力のある早稲田任せにするのと比べると自治体の出費はかさみそうですよね。
茨城と言えば先日も原発事故後に医者が減っているという件で市長自ら「放射線が怖くて逃げるとしたら、医師としての資質以前の問題」などと糾弾していることが話題になったくらいで医者の間ではもちろんですが、国民の間においても正直あまりよい印象を持たれているという話も聞かないだけに、早稲田さえ頷いてくれればもうそれで問題は全て解決だなんて甘い期待だけは抱かない方がよさそうに見えるのですが…

|

« 今日のぐり:「ラーメン ギョーザ 笑楽」 | トップページ | 福島原発事故を契機に噴出する長年の懸案 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

定員増と地域枠で馬鹿が増えてるのに、これ以上新設なんて勘弁してくれというのが正直なところじゃないかな?
結局医療崩壊は医師不足のせいじゃなく医師の使い方が間違ってたせいだってこともようやく理解が進んできたのに、現状肯定しちゃダメでしょう
まずは医師に雑用仕事ばかりやらせるような馬鹿病院をさっさと潰せというのが神の御意志ということですよ

投稿: kan | 2011年9月20日 (火) 13時19分

早稲田が茨城って詐欺だろjkって声がきっとあがるはずw

投稿: aaa | 2011年9月20日 (火) 17時17分

医学部だけ、歌を「都の東北」に変えればよいのでわ?

投稿: JSJ | 2011年9月20日 (火) 18時24分

>早稲田が茨城って詐欺だろjkって声がきっとあがるはずw

その昔、青山が移転した途端偏差値が下がった事がががw

投稿: | 2011年9月21日 (水) 12時04分

皆さんそんな人の悪い(笑)
こうした逆境試練に耐えられる人材こそ茨城県が求めるものに合致するかも知れないじゃないですか
きっと質実剛健ないい大学になると信じましょう

投稿: 管理人nobu | 2011年9月21日 (水) 15時58分

早稲田医学部・・・・できたとしても、都内に有力な関連病院がありますか?
いまの三流・四流私立医大と変わらないレベルの臨床教育しかできないでしょう。

新設の私立医大に将来性はありません。

投稿: 私立医大の現実 | 2011年9月21日 (水) 22時19分

文科省が医学部新設にあたっては以下の三条件を満たすことを原則としていたはずです。

(1)既に看護や薬学などの学部がある
(2)医療系の基礎科目の教員がいる
(3)実習先として地域の病院が活用可能

早稲田はこれらの条件を満たしていないのですから、どこかと合併するか取り込むかしなければならないはずですね。
すでに幾つか名前が出ているところもあるようですけど、成功するかどうかは手を組む先の選択も大きく影響しそうに感じますが。

投稿: ぽん太 | 2011年9月21日 (水) 22時53分

昨日も続報を取り上げましたが、周囲だけでなく学内においてもかなり反対論も根強いようです。
早稲田が医学部を持つにしても今すぐ茨城でということはないんじゃないかなという気がしています。

投稿: 管理人nobu | 2011年9月27日 (火) 09時36分

学問の原点にかえって自然科学(医学)の発展に寄与しよう。学園もこれに参加するのだ。

投稿: river-hill | 2012年11月12日 (月) 11時34分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/52776634

この記事へのトラックバック一覧です: 医学部新設 大本命がついに始動か?!:

« 今日のぐり:「ラーメン ギョーザ 笑楽」 | トップページ | 福島原発事故を契機に噴出する長年の懸案 »