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2011年9月30日 (金)

今日はなぜか農業の話です

先日はこんな記事が出ていまして、若返り云々はともかく就農者を増やすという意味ではなかなか良いアイデアなんじゃないかという気がします。

新規就農者に7年間150万円支給へ 45歳未満対象で“若返り”(2011年9月27日産経新聞)

 農林水産省が、45歳未満で新たに農業に従事する個人に年150万円を最長7年間給付する制度の創設を2012年度予算の概算要求に盛り込むことが27日わかった。新規就農を支援し、従事者の平均年齢が66歳と高齢化が進んでいる農業の“若返り”を図る。

 最長の交付期間は、就農前の研修の2年間と就農後の5年間を合わせた7年間となる。準備期間や就農直後は、所得が少なく、生活への不安が強いことから、最低賃金に相当する150万円を支給することで、農業への転職などを検討している人を後押しする。農業に従事したことがある経験者を対象に含めるかどうかなどの細部は今後詰める。

 新規就農支援策は、政府の「食と農林漁業の再生実現会議」が、フランスの制度を参考に導入を提言していた。

 また農業法人に若手雇用を促すため、研修費として月約10万円を1年間給付しているが、これを2年間に延長する。概算要求には、「新規就農総合支援事業」として、158億円を計上する方針だ。

150万円が妥当かどうかはともかく、とりあえず農作物に関してある程度自給自足レベルでの栽培が可能となれば食べてはいける水準ということなんでしょうか。
ただ新規就農にあたっては農耕用の機械購入と共に、参入初期コスト高騰の一因となっている土地をどうするかが一つの大きな問題ですが、国が世話するのか、あるいは地域の休耕田を団体なりで管理して貸与するような形になるのか、いずれにしても「土地は自前で用意してください」では参入ハードルが高すぎますよね。
地方に行くと人手不足でとても手が回らないと休耕田になっているような場所がたくさんあって、害虫駆除などの上でもそうした荒れ放題の未耕作地があちらこちらにあると困るという声もあるようですから、きちんと仲介が機能するようになれば無駄に遊ばせるくらいなら安く貸し出すという地主はそれなりにいそうにも思います。
ただこうした「後継者募集!」のかけ声というのは過去にもさんざん行われてきましたが、どうも画期的にうまくいったという話も聞かないのはもちろん農業に対するイメージもさることながら、実際の現場にも問題無きにしも非ずという事情もあるようなんですね。

「農業やりたくない」 就職拒否のミャンマー難民夫婦が会見/千葉(2011年9月29日産経ニュース)

 アジア初の第三国定住制度で来日し、千葉県の農場で職業訓練を受けていたミャンマー難民の夫婦が28日、東京都内で記者会見し、「(農作業は)大変だった。農業はやりたくない」と話した。雇用を前提とした訓練だったが、夫婦ら2家族は就職を拒否した。

 会見したのは男性(46)と妻(48)。農作業が早朝から長時間におよび、暑いビニールハウス内で作業する大変さを説明。長男(16)が通っていた夜間中学が遠く、帰りが遅くなることから通学を断念したとも明らかにした。

 支援を行うアジア福祉教育財団難民事業本部に対策を求めたが「『頑張れ』といわれるだけで何もやってくれなかった」と話した。

 政府は第三国定住として平成24年までの3年間に計90人を受け入れる計画で、29日には第2陣の18人が来日予定。男性は「日本に来てよかったか」との質問に「事実を言うとよくない」と言葉を濁した。

言葉を始めとしてカルチャーギャップといった問題も大きかったのかも知れませんが、実際の農作業自体が耐えられないほど過酷であったかどうかはさておき、ここで問題にすべきは過酷でとても我慢出来ないと感じている新規就農者に対して何らの改善策あるいは支援策をも周囲が用意出来なかったという現実でしょう。
冒頭の記事にもありますけれども、これだけ不況で就職先がない、もっと雇用確保をと言われながら、農業を始めとする第一次産業や医療、介護領域では相変わらず人材不足が深刻であるという事実が示している意味を、当事者はもっと深刻に受け止めるべきだと思いますね。
例えば医師不足が言われる医療現場においても研修制度が変わり研修医側が病院を選ぶようになった結果、今までの「医者なんて毎年送られてくるもの」という殿様商売を続ける気満々だった地方公立病院などは軒並み研修医からも見捨てられ崩壊の瀬戸際ですが、その場合「近頃の若い連中は贅沢で我が儘だから」で済ませてふんぞり返っているのが正しいと言う人間はいないでしょう。
現場となった農場がどのような意識で受け入れていたのかは判りませんが、今や農業と言えばどこも人手不足が言われている中で「根性のない奴は要らない」などと贅沢を言える状況でもないでしょうに、漫然と今まで通りのやり方でやらせていたのだとすれば時代の変化が読めてないとも言われかねないでしょうね。

旧態依然とした感覚と言えば農業はおおむね都市部よりは田舎でやるものという事情もあるのでしょう、独特な土着の文化が今も根強く残っている土地柄も多いと聞きますが、今の時代にあってはそうした文化もまた農村が忌避される大きな理由の一つとなっているようです。

【農業体験・ファームスティ】(北海道の農業体験募集サイト)より抜粋

農家へ滞在して仕事や暮らしぶりを体験、人や農村、まわりの景色、空気や風をを感じて下さい。日常の忙しい日々を忘れ2~3日のんびり過ごしてみませんか?
忙しい都会と違い、ゆっくりと大空を眺め遠くの景色に見とれる・・便利で 快適な生活を離れ外へ出るのは『心の癒し』? 自分探しのきっかけになるかもしれません。
帰りには表情が違ってきます・・・それは、ちっちゃなご褒美かも。
田舎はどんな事でも受け入れる寛容さがあり、農作業では何も考えず無念無想の境地・・・・・まわりと一体になって、時間を忘れてしまうほど・・・・。

朝陽・夕陽が山に映える景色は北の盆地特有の風景。夜の静けさと暗闇は星空観賞の絶対条件・・・自分のたくましさを見つける絶好の機会。
宿泊・食事などは、こちらで用意しますが特別扱いはしません。体験料も無料で作業報酬もありません
できるだけ田舎の良さを体験してもらうもので、現在、独身女性以外は受入れしていません
※田舎に定住/結婚を考えている方には、一般農家への滞在は何よりの情報収集になると思います。
※人の役に立ってるのを実感し、自分の逞しさを発見するきっかけになるかもしれません。
【内容詳細】
・期間 年間をとおし随時(忙しいのは4~5月の植付け・8月末~10月の収穫時期)
     例年8月下~10月上は収穫最盛期につき受け入れ数が多くなります 
    個室(ベッド・寝具・TV・電動ポット・ドライヤー・扇風機・ロッカー等あり)
    自転車・ ミニバイク(普通免許要)身軽で来ても作業体験などに支障はありません。
・必要品(着替え、UV化粧品・部屋着があれば十分) 
※食事・部屋(個室)はこちらで用意します。トイレ・シャワー・食事等は家族と同じで特別扱いはしません。
・体験内容 通常の農作業、苗植付け・草取り・花壇の手入れ・収穫、その他、雪道散策(冬場のみ)
・体験日数/費用 1日からOK、体験料・滞在費すべて無料(但し、朝7:30から夕5:00まで農作業あり)。 
※日程決まり次第早目に予約を、部屋の確保が難しい場合は実費(5000円程度/日)で近隣の農家民泊となります。
※都合により受入れをお断りする場合もあります。
作業報酬 なし 
対象 女性限定(年齢18才~35才くらい)
・保険 各自加入の保険
・作業服/靴貸与(洗濯機あり)・・・・つなぎ服・ウインドブレーカ・長靴・スニーカー・麦わら帽子ほか
・交通費  なし(富良野市内からふらのタクシーで約7分 2000円程 ちょっと値上がりしてるかもしれません)
・注意事項 自室を含め建物内は全禁煙です、喫煙者はお断りします。飲酒についても遠慮願います。
お子様・ペット同伴・体調不良・ご病気・海外旅行から帰国間もない方もご遠慮ください
※部屋の確保が難しい場合、近くの農家民泊(謝礼要)になります。
※私どもで送迎は出来ませんので、ご自分で行き来して下さい。(買い物は7km先の富良野市内に各店あり)

待遇面等「この過酷な労働条件でのんびり過ごすとはギャグですか?」などと色々言いたいことはありますけれども、それよりも何よりもどう見ても農業体験と言うよりは労働力兼花嫁募集という話ですよね(実際にそう明記しているページもあるようですが、この募集条件ですと農業体験と分ける意味がないような…)。
もちろん農家が嫁を取るなというわけではないし、何より今の時代に農業というものについて回るイメージを承知しているからこそ「まず実情を知って貰わないと」という気持ちにもなるのだろうと理解は出来るのですが、こうまで露骨な選別を行うというのであれば結局欲しいのは余所者の就農者ではなく百姓仕事に文句を言わずに働く嫁なんだろうと勘ぐりたくもなるのが人情と言うものです。
実際にこうした農業体験に名を借りた?実質花嫁候補募集の話というのはかなり問題化していて、「農業体験というから行ってみたら勝手に嫁扱いされてひどいセクハラを受けた」「町ぐるみで騙された」などという被害者の声も出ており、しかもきちんと釈明なり謝罪なりをするでもなく一切を削除して知らない顔をしているらしいというのでは信用を自ら失うも同然の行為でしょう。
こうした件では例によってwikipediaから役場サイトに至るまで壮絶な削除合戦が繰り広げられているようですが、「実在してる北海道の農業体験実習生募集要項そのものや「実習生=花嫁候補という考え方は暗黙の了解」という擁護レスがあったことに人々が恐怖して」いて、しかも「現在までの反応を見るとこれが理解できていないらしい、ということがさらなる恐怖を生んでいる」というのが実際のところでしょう。

ま、あまりこういう話ばかりですと真面目に農地を維持し、新規参入者は大歓迎しますという全国圧倒的多数の真面目な農家の方々に恨まれそうですが、いずれにしても農家の意識とその他国民の意識との間に少しばかりの乖離があるのだとしたら、お互いのためにも良い話ではないですよね。
農業に後継者が来ない理由として幾つもありますが、農家の側からするととにかく農業などやっていても儲けにならない、お先真っ暗で展望が開けないのだから若い人間が農業を目指さないのも当然で、ここをなんとかしなければ農業に先はないと言う声がよく聞かれます。
例えば今もやる気のある農家の方は各地にいて、昨今農業の世界では「TPPで日本の農業が潰れる!」と大反発の嵐ですけれども、いやそんなことはない、これを好機にやる気のある農家にきちんと補助金も出して農地を集約化させ、自家消費用だけのなんちゃって農家はお引き取りいただくようにしていけば農業の生産性は増し、産業として十分成り立つようになるんだと熱く語っているものです。
もちろん農業の後継者を確保するためには産業として魅力あるものでなければならないというのは全く正論で、そのために日本の農業は再編して大規模化、機械化も推し進めるべきだというのは十分理解出来る話なんですが、消費者から見ると今まで高くても日本の農作物を優先して買ってきたのは手作業でやるしかない小さな農地が多いが故に、隅々まで行き届いた手間と心遣いにお金を出してきたという気持ちもあるわけですよね。

日本全国で大規模農家への集約化が進み、アメリカのように巨大な機械で一気に作業が進められるようになればそれはもちろん産業としての効率性は高まるのでしょうが、そうなった段階で果たして消費者が日本産にこだわるべき理由が残っているのかということを、これから農家の方々は顧客に語るべきビジョンとして示していかなければならないでしょう。
作る側の論理と消費する側の論理双方をきちんとすり合わせ、お互いにとってメリットがある形で健全かつ永続性のある農業が続けられたら一番いいんじゃないかなと思いますが、その意味でようやく国も本腰を入れる気になってきたのなら悪くない話でしょう。

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コメント

集約化集約化言う人がいますけど、無理じゃないですかねえ。
実際土地を持ってる人がばらけてても、高齢化でその地域で請け負っている家に作業が集中していたりして結構集約化されてますよ。土地の所有者が変わるだけの話でしょう?
それに一度分けちゃったものは皆さん手放しませんよ。まあ、高齢化なので死ぬのを待てばー?

広いところは大規模店舗に化けてない限りは使われてます。
耕作されていないところは小さかったり山がちだったりする所で、そんなとこ集約化なんて無理無理!
大規模にすると農薬使用量もふえますしねえ。
国土保全や環境保全の観点からいうと小さな農家が色々作ってる方が健全だと思いますがねえ。そこに金を出す気がないなら、もう年金農業でいいんじゃね?高齢化いうけど、子供が定年になったら引き継いだりする家もあるでしょう。

投稿: | 2011年9月30日 (金) 22時42分

集約化というと聞こえはいいですが、ある意味では農地解放の逆行程なんですから、農家の土地に対する執着ぶりを考えれば所有者変更はまず無理でしょう。
だから土地の使用者だけを変えていく、そして農機具なども個々の零細農家が持つのではなく一元管理して貸し出すようにする、それらを個人交渉レベルではなくきちんとした団体なりの窓口を作ってやらなければ地元有志はともかく、外部の人間や新規就農者は閉鎖的な農村へは入って来れません。
問題はその管理者の主体として様々な意味で手垢が付きすぎているJAと言う団体が適切なのかどうかだと思うのですが…

投稿: 管理人nobu | 2011年10月 1日 (土) 07時18分

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