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2011年9月12日 (月)

お産難民は全国的に深刻化 しかし国民全般の危機感はまだ薄いようです

あの徳洲会もついにか、と思ってしまいそうなニュースが先日出ていましたが、御覧になりましたでしょうか。

鹿児島・屋久島:唯一の産科、連絡なく突然休止(2011年9月9日毎日新聞)

鹿児島県屋久島町で唯一産婦人科がある屋久島徳洲会病院(山本晃司院長)が、今月から同科の診療を取りやめていることが分かった。町や県への事前連絡は一切なく、町は「非常に遺憾。早急な再開を求める」と話している。休止について「内部の事情」などとあいまいな説明だったという。

しかし公的病院でもない徳洲会経営の病院が診療内容など内部の事情についていちいち県や町へ事前連絡しなければならないというのもおかしな話ですが、早急な再開を求められても同会としても「こっちには別にそんな義務なんてないし」といった感じなんでしょうかね?
同病院のHPというのがどうも判りにくくて(失礼)外来表などもはっきりしないんですが、とりあえずトップページの診療科目に産婦人科の表記は残っている一方で、職員募集では内科や外科は募集中なのに産科医の募集はない(助産師若干名の募集はある)というのは単に更新が遅れているだけなのか、それともすでに完全に撤退することが確定しているのかどちらでしょうか。
離島の産科医療消滅と言えばひと頃隠岐から産科医が消えたことが話題になっていて、あちらの方は内科医が産科に転科するというウルトラCで何とか無産科医状態は解消したようですけれども、いくら高齢化が進んでいるだとう離島とは言っても一万人以上の人口がある中で産科医が一人もいないというのは寂しいですよね。
ただ町としては自分は何もしなくても徳洲会が勝手にやってくれるというくらいのつもりだったのかも知れませんが、全国的に見ても到底屋久島界隈まで産科医がやってくるような余裕などなさそうだという事情を示す記事が、先日以来また話題になっています。

「マジメに医療をしていても逮捕されるのか」と産科医減少(2011年9月8日NEWSポストセブン)

「出産難民」あるいは「お産難民」といった言葉が生まれるほどに、出産をしたくてもその地域に出産できる産婦人科や出産施設がないといった現状があるという。少子化に拍車をかけるようなこの深刻な事態について、産科医・性科学者の宋美玄さんと医療ジャーナリストの熊田梨恵さんが語る。

 * * *
宋:実は日本の中から次々と産婦人科が消えていて、日本の産婦人科医療は崩壊寸前なんです。読者のかたでも、妊娠した人が「産む場所がない」とかいうてる話、聞いたことあるんやないかと思います。

熊田:妊娠反応が出てすぐに産院に行っても出産の予約が取れないとか、聞きますね。

宋:ザラですわ…地方には産婦人科医がそもそもいない地域もあるんですけど、実は神奈川県や埼玉県なんかの都市部もかなり深刻な状況です。産める場所がないから、里帰り出産しはる人もいる。

熊田:以前産婦人科だったところが、婦人科に鞍替えしていてお産は診てくれなくなったというのもありますね。

宋:議論が高まったのは「大野病院事件」がひとつのきっかけでした。2004年に福島県立大野病院で妊婦が帝王切開手術中に死亡して、執刀医が業務上過失致死などで逮捕された事件です。妊婦さんはベテランの産婦人科医でも一生の間に1、2回しか遭遇しないといわれるほどの難しい胎盤の病気を抱えてはったうえに、当時病院には産婦人科医師がひとりしかいなかった。患者さんが亡くなってしまったことは、どんな事例であれ本当につらいことですが、「マジメに医療をしていても逮捕されるのか」といって、私の知り合いの産科医も辞めていきました…

熊田:日本の医療の歴史に残る事件でしたね。被告は4年後に無罪になりましたけど、当初、表面的な報道だけが大きく流れて、「医者が医療事故で患者を殺して捕まった」という間違ったイメージも流布したと思います。

宋:どんなに健康な女性でも、妊娠すれば一定の割合で、予測できない母児死亡などの不幸な出来事が起こる可能性はあるんです。大野病院事件でも、医療者からすれば被告の先生は精一杯の医療をされていたとわかる。どれほど手だてを尽くしても医療に100%の安全・安心はないんですよね。不幸なことが起こるたびに医者が逮捕されたら、誰も医者なんて辞めてしまいます

興味深いのは一昔前ならこういう話題が出れば、医療関係者が群がってきて口角泡を飛ばして激論を交わしていたものですが今は妙に冷め切っていると言うのでしょうか、「はあ、減ってますね。だから何?」とすっかり手を引いた後と言う感じになっているのが印象的で、ひと頃あれだけの社会的騒ぎになった大野病院事件なども受けて現場はすでに「過ちは繰り返しません」モードに落ち着いてきたということなのでしょうか。
中・長期的に見ると産科医、小児科医が減っているのと同等以上に出生数自体が減っているという話もあって、減少自体は必ずしも逮捕リスクのみに起因するものではない可能性もありますが、それだけに身近な産科がなくなっていくという傾向は今後も当面続きそうだとは言えると思いますね。
この理由として産科は多忙である上に訴訟リスクが極めて高いということが学生にまで知られてしまったということもあるでしょうし、昔のようにはお産が儲からなくなったといった即物的な理由もあるのでしょうが、いずれにしても産科が今後増えてくると期待する状況でもない以上は、社会の方でもそれに対応した産み方を考えていかなければならないということですよね。

助産師 健診から出産まで (2011年9月8日読売新聞)

富山赤十字病院  県内初産科医の負担軽減

 富山赤十字病院(富山市牛島本町、小西孝司院長)は今年度、助産師が健診から出産までを扱う「院内助産所」を県内で初めて開設する。医師によるバックアップ態勢も整え、日常生活に近い環境でのお産を目指す。また、医師不足などで、分娩を取りやめる公的病院が相次ぐ中、産婦人科医の負担の軽減も期待されている。

  約10畳のフローリングの床に畳のマットが敷かれ、テレビや洗面台が備えられた部屋には、大きな窓から明るい太陽光が降り注ぐ――。同病院の7階にある産婦人科棟では7月、院内助産所の開設に向けて改修が終了した。このほかにも、約15畳の和室や約10畳の洋室、自宅のような雰囲気の分娩室=写真=を備える。開設までに、さらに医療機器などの導入を進めている。

  同病院産婦人科では、2010年に医師5人が年間661件のお産に立ち会った。また、すでに08年4月には、妊婦健診などを医師に代わり助産師が受け持つ「助産師外来」を設置しており、10年に延べ736人が利用した。

  ただ、2年ほど前から「家族に見守られながら、自宅出産に近いお産がしたい」と助産師による分娩を希望する妊婦が増え、正常な経過をたどっている妊婦を対象に試験的に9例を実施してきた。近くにいる医師がすぐに駆けつけることができる安心感と、家族が見守る中、自宅のような雰囲気でリラックスしてお産に臨めると好評だという。

  厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、県内の産婦人科・産科医数は04年の110人から08年に98人に減った。医師の負担が大きくなり、分娩を取りやめる公的病院も相次いだ。県医務課によると、公立南砺中央病院(南砺市梅野)は医師、助産師不足から09年に分娩機能を休止。北陸中央病院(小矢部市野寺)は06年に、あさひ総合病院(朝日町泊)も03年に休止している。

  同課は「院内助産所の開設は、産科医の負担軽減だけでなく、助産師の専門意識が高まることで医療の質の向上にもつながる」と期待を寄せる。

以前から断続的にこの院内助産の話題は取り上げていますが、今回の富山日赤や奈良県立医大といった基幹病院クラスでもこうした制度が推進されているのを見ても地方ではすでに産科医がいないというのはデフォルトの状態であって、今や背に腹は代えられないものとしても患者の多様なニーズに対応する意味でも使えるものは使って行かざるを得ないということなのでしょう。
助産師と言えば以前から言われている開業助産所のリスクであるとか、あるいはひと頃問題になった開業助産師のホメオパシー汚染も総本山の助産師会自体がホメオパシーとずぶずぶであったとかいった問題も多く、「助産師に任せて自然なお産なるものをやるのはいいが、そんな一昔前の医療水準で周産期死亡率100倍の時代に逆戻りしないか?」と懸念する声は根強いようです。
しかしこうした問題を起こしている助産師というのは概して独自の理論を実践している一部の開業助産師の方々であって、産科医の指導や監督の下に院内で真面目に働いている助産師の方々の方がはるかに多いわけですから、産科医の過労による離職や事故のリスク上昇とも照らし合わせながらお産関連領域の全体で見てリスクを最小化する道を探っていくのは当然でしょう。
ただ肝心の産む場所がこれだけの状況になっていながら、どうも一部では未だに危機感に乏しいというのでしょうか、少しばかり方向性が違っているのでは?とも思える話もあるようなのですね。

里に帰らぬ出産 夫や社会的支援を頼って(2011年8月24日産経ニュース)

 晩産化や産科医不足などで、里帰り出産を断念する女性が増えている。夫の立ち会い出産のため、あえて里に帰らない妊婦も。ただ、母体を回復させる産後6~8週間の「産褥(さんじょく)期」は特に夫や両親ら周囲の助けが必要だ。無料の育児情報誌『miku(ミク)』編集長でAll Aboutガイドの高祖常子(こうそ・ときこ)さん(51)は「ママ1人で頑張りすぎず、家族や社会的サポートの助けを借りて」と助言する。(豊田真由美)

 ◆背景に晩産化

 厚生労働省の統計によると、「母の出産時平均年齢」は上昇傾向にある。昭和50年に25・7歳だった第1子出産時の平均年齢は、平成21年には29・7歳。6年の第2子出産時の平均年齢は29・7歳で、この15年間で子供1人分の差が開いたことになる。

 晩産化に伴い、親が高齢で体力的に妊産婦の世話が難しいケースや、既に亡くなっていて頼れないなどの理由から、里帰り出産をしたくてもできない女性が増えているようだ。一方、晩産でなくても、夫が妻の出産や赤ちゃんの成長をそばで見守ることで、夫婦の絆を強め、夫に父親になった実感・自覚を持ってもらいたいと考える女性もいる。

 富山市の主婦、曽根圭奈(かずな)さん(27)は一昨年10月、同市内で長女の愛子ちゃんを出産した。両親が住む福井県で産まなかったのは、夫に出産に立ち会ってもらいたかったからという。「里帰り出産をしなくて良かったと思うことは、夫がずっとそばにいてくれたこと。困ったことは特に思い浮かばない。強いて言うなら、実母にもそばについていてほしかったということくらい」

 3児の母でもある高祖さんは「里帰り出産をしないことのメリットは、親子3人で生活サイクルをつくっていけること」と指摘する。妊産婦が何カ月も「里」にいたり、里帰り中に周りに頼りすぎたりすると、自宅に戻ってから苦労することがあるという。

 また、「1カ月検診を終えて夫の元に戻ると、その間におむつ替えなど赤ちゃんの世話の経験値が上がった妻は不慣れな夫のやり方を見ていられず、自分でやってしまいがち。すると、夫は母子からの疎外感を感じてしまう」と解説する。
(略)

市区町村が育児サポート

 全国には市区町村などが実施するさまざまな育児サポートがある。

 産前・産後の家事を手伝うヘルパーの派遣事業▽生後4カ月までの乳児を抱える家庭を訪問し、育児相談や情報提供を行う「乳児家庭全戸訪問(こんにちは赤ちゃん)事業」▽育児の援助を受けたい会員と援助したい会員との調整をする「ファミリー・サポート・センター」-など。利用料は自治体によって異なり、所得などに応じて安くなる場合もある。まずは地域の子育て支援センターや自治体に問い合わせてみよう。

いやまあ、医療記事に関してはかねて定評のある(苦笑)産経らしい記事だとは言えるのでしょうか、もちろん晩産化というのも今日のお産現場をとりまく大きな問題ではあるし(そもそもリスクの高い高齢出産は扱わないという施設も増えていますよね)、父親にも自覚を云々というのもそれはそれで大切なことなのでしょうけれども、率直に言って沈みつつあるタイタニックの甲板で紅茶の味に文句をつけているような牧歌的光景にも見えます。
すでに全国各地で「とても域外からの需要にまで対応出来ない」と里帰り出産の制限をしている施設は多いですし、逆に都心部では妊娠5週でもすでにお産予約が取れないなんて状況にもある中で、未だにこれだけお産のやり方にこだわりをもっていられるというのは幸せなんだと思いますが、お産情報誌の協力まで得て書いた記事がこの調子で大丈夫なのかと正直不安になるのは自分だけでしょうか?
お産というのは確かに当事者でなければ普段から関わり合いになることではないですし、それも昨今では一人の人間が一生に一度か二度あるかないかというレベルにまで機会が減っているとは言え、まずは国の将来にも大いに関わる問題として国民全体が当事者意識を持って貰わないことにはどうしようもないのかも知れません。

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コメント

話はそれますが、隠岐の先生がマラソンの大会に参加しているときは応援の産婦人科医が隠岐に来ているのか、その時期に出産予定の妊婦さんが本土に行っているのか、気になります。
さらに話はそれますが、今の若い人はウルトラCって分かるのでしょうか?意味は分かっても語源を知らない人が多そうです。

投稿: クマ | 2011年9月13日 (火) 17時43分

昔はオロナミンCの強化上級バージョンがあったんだって言ったら信用されるかなw>ウルトラC

投稿: 烈風 | 2011年9月14日 (水) 06時33分

そんなの決めたら確かにすごいことになりそう…

投稿: 管理人nobu | 2011年9月14日 (水) 08時51分

マラソン大会に参加されている間は、3月までは本土から応援を頼んでいたと思います。
4月からは島出身のベテラン医師が帰ってこられたので、二人体制になっています。

投稿: s | 2011年11月16日 (水) 16時35分

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