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2011年8月26日 (金)

今日は労働者の健康に関わる話題を

先日こういう記事が出ていたのですが、御覧になりましたでしょうか?

ドック「異常なし」最低を更新 昨年の受診者(2011年8月19日山陽新聞)

 日本人間ドック学会は19日、10年に人間ドックを受診した全国の約300万人について、「異常なし」とされた人の割合が前年を1・1ポイント下回り、8・4%と過去最低を更新したと発表。

 集計を始めた1984年から続く減少傾向に歯止めはかからなかった。同学会の笹森典雄名誉顧問は「診断技術の向上により、より多くの異常が発見されるようになった」としながら、「年代に関係なく成績が悪化している。ストレスへの対処や生活習慣の改善が不可欠だ」と話した。

 異常があった検査項目は多い順に肥満(27・7%)、高コレステロール(27・3%)、肝機能異常(27%)。

ちょっと調べて見ただけでも人間ドックだけでなく、各地の職場検診においても軒並み過去最高を更新してきているようですから、これは全国的な傾向と言っていいように思いますが、実際に国民の健康が悪化しているのか、基準の方が厳しくなっているだけなのかです。

健康に「異常あり」54% 県内の職場健診 過去最悪、全国で17番目(2011年7月22日熊本日日新聞)

 県内で2010年に職場の健康診断を受けた人のうち「何らかの異常がある」と指摘された人の割合(有所見率)が54・4%と過去最悪となったことが、熊本労働局のまとめで分かった。全国平均52・48%を1・92ポイント上回り、全国で17番目に高かった。全国平均を上回ったのは12年連続。

 調査は、厚生労働省と各労働局が毎年実施。10年は、健診結果の報告があった県内1266事業所の15万2861人のうち、8万3162人が「異常有り」と診断された。

 業種別では、タクシーなど運輸交通業の有所見率が69・52%と最も高く、次いで建設業64・83%、貨物取扱業62・94%だった。

 規模別でみると、従業員50人未満が61・35%、50~99人が57・49%、100~299人が54・69%、300~999人が51・74%、千人以上が49・41%。小規模の事業所ほど有所見率が高かった

 異常の項目別では、血中脂質が30・8%で最多。肝機能16・46%、血圧14・45%、血糖11・99%など。

 県内の有所見率は04年以降、7年連続で50%を超えており、上昇傾向が続いている。同局健康安全課は「脳疾患、心臓疾患など重篤な病気につながるケースもある。各事業所には健診結果を踏まえ、労働時間短縮や従業員に対する保健指導に取り組むよう求めたい」と話している。(楠本佳奈子)

福井県の労働者は不健康? 健診「異常あり」ワースト(2011年4月13日福井新聞)

 企業に義務付けられている定期健康診断で、血中脂質や血糖などの数値が「異常あり」とされた福井県内労働者の割合(有所見率)が65・1%(速報値)と、全国都道府県で最も高かったことが福井労働局の2010年調査のまとめで分かった。全国平均52・5%(同)を大きく上回り、08年から3年連続ワースト1位になった。

 脳・心臓疾患に関係する項目の割合が特に高いことから、同労働局では「企業に対し健康教育や保健指導を促し、有所見率を下げていきたい」としている。

 調査は、従業員50人以上の県内事業所の健診結果をまとめた。脳・心臓疾患関係の項目の中で最も「異常あり」が多かったのは血中脂質41・9%。次いで血圧22・2%、血糖15・3%、心電図検査11・4%となっている。これらの数値が悪化し過酷な労働環境が重なれば、動脈硬化から脳梗塞や心筋梗塞を招きかねない。

 本県では07年は55・4%だったが、08年65・9%、09年65・9%と高い水準で推移。ただ、「異常あり」と判断する基準値について全国統一の?物差し?はなく、各健康診断機関で判断が異なる。同労働局では、08年以降、本県の有所見率が急激に伸びた理由について、同年に導入された特定健康診査で厳格な基準値が示され、県内健診機関の多くがその数値を採用しているためではないかと推測している。「福井のサラリーマンが他県に比べ特段、不健康ということを示すものではない」としている。

 同労働局では昨年10月、有所見率改善に向けた計画を策定。事業者や労働者に対し、労働時間短縮や作業転換などの措置、医師による保健指導、健康づくり計画策定などを求めている。12年度までに有所見率を07年の水準まで減少させることを目標にしている。

昨今では職場検診などもずいぶんと厳しい事を言うようになってきて、昔ならばまあいいかで流されていたようなケースでも片っ端から精密検査に回されてくるような印象がありますが、これも近年国が音頭を取って予防医療に重点を移していくという方針を示していることがその理由なのでしょう。
2008年から特定健診(いわゆるメタボ健診ですね)というものが始まり、将来的に医療費を押し上げることになる各種重大疾患のリスクを増す生活習慣病に対して今まで以上に厳しく指導されることになったと同時に、とりわけ受診率や目標達成率によってペナルティが保険者(企業)に課されたというのが特徴ですが、この結果特に大企業ほど健診にひっかかる人間に対して雇い止めをするような問題が実際にあちこちで発生しているようです。
制度導入当初からこのようなことが起こり、結果として社会的弱者が一番の迷惑を被ることは予想されていたことですけれども、一般に生活水準と健康水準とは比例すると言われる中で相対的に疾患リスクの高い人々が正規雇用層から外れ、きちんとした健診すら受けられなくなっていくということであれば将来本当に国民全体での疾患リスクが低減されるのか疑問ですよね。
このように一見すると国民たる労働者の健康を守るための制度が、実際にはその役を十分に果たしていないのではないかということは実社会ではしばしば見られる現象ですが、この面でたびたび問題になるのが労災認定というもので、先日も後々揉めそうな判決が大阪地裁で出されたということです。

プログラマー過労自殺「困難な仕事でなかった」大阪地裁、労災請求を棄却(2011年8月24日産経ニュース)

 平成14年に大阪府豊中市のプログラマー、北口裕章さん=当時(27)=が過労自殺で死亡したのは、達成困難なノルマを課せられたためとして、会社員の父、久雄さん(68)が国に労災認定を求めた行政訴訟の判決が24日、大阪地裁であった。中村哲裁判長は「本人の能力からみて、特段困難ではなかった」として、原告の請求を棄却した。

 原告側は「入社1年足らずで複雑なシステムを組まねばならないのに、先輩や上司からの指導がなかった」と主張したが、中村裁判長は「会社の支援体制に問題はあったといいがたい」と退けた。

 判決によると、北口さんは13年10月に京都市内のコンピューター会社に入社。翌14年6月3日未明、豊中市内の雑居ビル5階から飛び降り自殺した。

過労自殺訴訟棄却に遺族「非常に残念」(2011年8月24日産経ニュース)

 「敗訴したが、ここで引き下がるわけにはいかない」。北口裕章さんの父、久雄さんは判決後にそう語った。

 北口さんはプログラマーだったにもかかわらず、自殺翌日の平成14年6月4日には、取引先に1人で打ち合わせに行く予定だった。精神的な負担は大きかったとみられ、周囲には「仕事が大変だ」とメールを送っていたという。

 北口さんの死後、仕事を引き継いだ元同僚は「入社したてでは絶対にこなせない難易度と分量だった」と話し、裁判でも同様の証言をしたが、判決では証言の大半が採用されなかった

 久雄さんは15年7月、労働基準監督署に労災を申請したが、行政段階で不認定が確定したため、20年9月に提訴。会社勤務の傍ら、コンピューターの技術職を目指す学生に体験を語るなど、過労自殺の防止に向けた活動を続けている。

 久雄さんは「仕事内容を最もよく知る元同僚の証言が唯一の救いだと思っていたが、取り上げられず非常に残念だ」と話した。

まずはお亡くなりになられた北口さんのご冥福をお祈りいたしますが、何やら記事を読む限りでは釈然としない話という印象を受けてしまうのは、本来であれば労働者を守るための制度であったはずのものが十分に労働者を守るために機能していないように見えるせいでしょうか。
仕事を一番よく理解しているだろう同僚が実際に仕事を引き継いでみて「こんなの入社したての新米には絶対無理」と証言しているのに(これも考えて見ると、会社を敵に回すような勇気ある発言ですよね)、その証言が採用されずこの程度の仕事なら特段困難ではなかったというのもおかしな話だなと思いますし、実際自殺までしているというのに労災認定もされないというのではご遺族も泣くに泣けない気分でしょうね。
ちなみに判決文の方は地裁のHPでもまだ公開されていないようで入手できなかったのですが、同裁判に関する支援活動をしているNPO法人POSSEのHPから同裁判の経緯なるものを引用させていただきましょう。

北口裁判(過労死事件)に関して、署名ご協力のお願い(2011年5月16日NPO法人POSSE member's blog)より抜粋

北口裕章さんは大学卒業(文系)後、コンピュータソフトウエアの会社でプログラマーとして2年間勤務しました。しかし、あまりの長時間労働もあって退社しました。その後約半年間で数十社の面接を受け、ようやく京都のS社に中途社員として採用されました。S社の仕事は学校関係に事務合理化のソフトウエアを販売し、それをその学校にあうように組み立てる(カスタマイズという)ということが業務の中心でした。

やっと見つかった新たな仕事でしたが、裕章さんは入社後わずか7ヶ月で自死されました。(2002.6、27歳)。翌日関東にあるS学園に一人で打ち合わせのために出張予定でありました。ご両親は仕事が原因で「うつ」を発症したことによる自死と確信し、翌年、京都上労働基準監督署に労災申請をされました(2003.7)が認められず、さらに京都労働局、中央審査会と上申されましたが、全て不支給決定が出されました(2008.3)。

会社は社長を先頭に「かん口令」を敷き、労基署の調査に対しても会社に都合のよい発言をする社員だけ応ずるようにしました。そして、労基署は入社後の教育は充分、援助体制もありS学園のカスタマイズは易しいものであったとの会社側の主張をそのまま是認し、労災の不支給決定をしました。そのような経緯もあり、ご両親は2008年9月に労災の認定をもとめて大阪地裁に提訴(行政訴訟)されました。 

その直後、両親は裕章さんの仕事の内容を最も知っていたベテラン社員と面談することができました。この社員は「裕章さんに与えられた仕事は入社半年足らずの人には絶対無理であった」と断言し、本件裁判でも新しい証拠に基づいて証言しました。つまり会社や被告(国)のそれまでの主張と全く反することが明らかになりました。

本件で原告側は、労基署段階では存在していなかった新証拠、新証人の証言を採用し、以下のことを認め、公正な判断にて、労災遺族補償不支給決定を取り消されるよう強く要請しています。

・裕章さんに与えられたS学園のカスタマイズ作業は達成困難なものであった。
・裕章さんは達成困難なノルマにより適応障害を発症し自死に至った。

ま、原告側の立場からの主張ばかりを取り上げるのも一方的と言うもので公平さを欠きますけれども、昔からプログラマーだのSEだのは激務で知られる職業だけにネタのような話も幾らでもあるもので、自嘲的に「現代の炭坑夫」なんてことを言う人もいるようですが、そうなる根本的な理由は受注時点の契約で収入が決まってしまうということにもあるようです。
締め切りも近づいているのに仕様変更などで面倒でこじれた作業が続くほど通常ならば人手が欲しいところですが、入るお金はすでに決まっているわけですから応援スタッフを出せば人件費分が赤字になっていく、その結果ひたすらサービス残業だけが増えていくという理屈ですよね。
救われないのが仮に自分で能力を鍛え上げ優秀な人材になったとして、会社とすればそういう人材をとことん使い倒す方が少ない人件費とマンパワーで大きな儲けが期待出来るものですからさらに仕事が集中する、要するに通常であれば能力が向上し仕事を素早く的確にこなせるようになれば楽になりそうなところを、ますます自分の首を絞めることになりかねないわけですね。
しかもそうやって会社のために尽くしても比較的職業人としての寿命が短いと言い、下手をすれば30代あたりから仕事についていけず離職せざるを得なくなるようで、あちらこちらの過労死で裁判沙汰になっている話を見ても他業界よりはずいぶんと年齢層が低く、普通なら駆け出しと呼ばれそうな年代に集中する傾向があるようです。

そういう話を聞けば「こんな使えない電カル組みやがってあの糞SEが!」なんて文句をつけるのも憚られようと言うものですが(苦笑)、要するに社会的にも厳しい職場であるという認識がかなり広く行き渡っていて、実際に過労死も続発している中でこうした事件が起こった場合には、敢えて過労死でないとするにはそれなりの明確な根拠が必要なんじゃないかと言うことです。
ところが記事を読む限りでは会社側の主張を丸呑みしたということなのか、嫌にあっさりと「いやそれは過労死じゃありませんから。はい次の方どうぞ」と言われているような印象すら受けるのが何だかなあと感じていたのですが、どうもこの中村哲裁判長なる人物は過去にも主文を読むだけで判決理由の読み上げを省略したりで法廷でトラブったようなこともあるような「筋金入り」の方だったらしいのですね。
法廷における一般的な流儀については存じ上げませんが、仮にも人一人の人生に関わるような判決を下すにあたってその理由も言わないのは一般的感覚からしてもどうなのかですし、それに対して説明くらいするべきだろうと抗議すると「うるさい」と言い残して退廷すると言うのはどうも変わったキャラクターなのかなと感じらて仕方有りません。

もちろん今回の裁判がトンデモ裁判長によるトンデモ判決であったと断定する根拠は今のところ全くありませんが、何やら漂う気配としては医療訴訟などでも過去にトンデモ判決を連発するトンデモ裁判官が何人かいるという噂が立っていたことを連想させる話かなと言う気がしてきます。
「国破れて3部あり」で知られる某有名裁判官のように明らかに特定の傾向をもった判決を連発することで知られている人物もいて、それを知っている原告の中にはその裁判官の担当に当たるまで訴えと取り下げを繰り返す人もいたなんて伝説がありますけれども、こうした話を聞くとどこの業界でも一部には必ずトンデモさんがいて、そういう人ほど後世に残る伝説を沢山持っているのかなと思わざるを得ません。
医療の世界ではいずれ医者余りの時代になってくれば出来の悪い医者など淘汰されてしまうだろうなんてひどく楽観的なことを言う人もいらっしゃるようですが、すでに一足先に人材供給が大過剰になってしまって大騒ぎしている司法の世界でそういう現象が果たして起こるのかどうかを見ていれば、そうした説が正しいのかどうかも判断出来るかも知れませんね。
もっとも、それが判ったからと言ってその時点から後戻りして修正できるかどうかは全くの別問題なのですが…

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コメント

最近事業所側がひどくナーバスになっているのをひしひしと感じます。
特にこのあたりの大企業は労災に過剰な反応を示すところが多くて、ちょっとでもリスクがある人間は派遣やパートでも受け入れないようなんですね。
そのたびに何とかしてくれと言われてもこっちも嘘は書けないし、当面就労に支障はありませんと書くくらいが精一杯なんですが…

投稿: ぽん太 | 2011年8月26日 (金) 14時49分

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