« 今日のぐり:「活魚回転寿司 いわ栄(いわさか)」 | トップページ | 結婚適齢期はないかも知れませんが、出産適齢期は確実にあります »

2011年8月 1日 (月)

最近の医学部教育に関わる話

先日「最近の若手医師はなってない?」という話題を取り上げましたけれども、若手医師のみならず医学部学生もなっていないという声が大きくなっていると言いますが、先日日経メディカルの方でその話題が当の学生の手によって取り上げられていましたのでご一読いただければと思います。

◆心に刺さったニュース 医学生の学力が低下…それがどーしたの?(2011年7月28日日経メディカル)

9割の医学部で「学生の学力低下を危惧」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201106/520358.html

 これは「全国医学部長病院長会議」が行ったアンケートの結果を報じた記事です。医療系サイトのm3.comやキャリアブレインなどでも報じていました。これらを読むと、約9割の大学で、医学部の教員が学生の学力低下を危惧しているほか、この2年間で医学部の留年者や休学者、退学者が増えていることなどが、明らかになったそうです。

 このアンケートは、全国医学部長病院長会議の「学生の学力低下問題に対するワーキンググループ」が、昨年12月から今年1月にかけて、全国80大学の医学部長もしくは教育責任者を対象に実施したものです。この調査結果を受けて同会議は、医学部の新設や定員増に改めて反対するという立場を表明しています。

 しかし私は当事者である医学生として、この発表内容に強い違和感を覚えました。まず、学力低下について。

 調査結果では、学力低下を示す事柄として「1年生の生物、物理、化学の成績低下」「授業中の態度(私語や教員の指示への対応)の変化」などが挙げられましたが、これらはゆとり教育や社会の教育(いわゆるしつけ)レベルの低下の結果でしょう。今の時代に生まれ、ゆとり教育を受けてきた身としては、「学生のせいじゃない」と言いたい。こうした流れを容認してきたのは、日本の社会全体です。子どもは生まれる環境や時代を選べないのです。

 調査では、2008年以降、留年者や休学者、退学者の数が増加しているほか、医学部の最終合格者におけるセンター試験の平均点と最低点が低下しているという結果も出ています。2008年といえば、国の施策で医学部の定員が増員された年です。定員が増えれば、“成績ピラミッド”の裾野が広がるのは当然のことで、今さら驚くには当たらないのではないでしょうか。

 それよりも、「医学生の学力の低下」の背景にある時代の流れが問題だと思うのならば、その問題を医学部としてどう解決していくかに力を注ぐべきです。今回の発表のように、学力低下だけをことさらに取り上げて問題だと騒ぐだけでは、責任逃れにしか見えません

 記事では各大学が講じているという「学力低下対策」にも触れていました。例えば「1年生に不足分野の補習を行っている」「講義・実習の出席を厳しくチェックしている」などです。しかし、これにも疑問があります。補習はともかく、出席を厳しくチェックすることが実際に功を奏しているのでしょうか

 筆者の実感としては、学生は「この先生の話を聞きたい。この講義は出る価値がある」と判断すれば、何もしなくても出席するものです。授業内容が変わらないのに、締め付けばかり厳しくしても良い医師の育成にはつながらないどころか、かえって学生のモチベーションが下がる原因を作っているように思えます。また、先生方には、レジュメを読み上げるだけ、ぼそぼそ喋るだけ、といった講義になっていないか、学生がどう受け取っているのか、今一度振り返ってみてほしいと思います。

 学力低下を示す事柄として、このほか「進級試験不合格者の増加」も挙がっています。しかしこの裏には、大学側の「試験を難しくして学生を締め付ければ、国試合格率が上がる。ひいては大学の評価が上がる」という意図が見え隠れします。これは様々な大学の学生から耳にする話です。試験を難しくすれば留年者が増えるのは当然の話であり、それを「学力低下」のせいと断定するのはいかがなものでしょうか。

 さらに言えば、極論ではありますが、医学生の学力が落ちて何の問題があるのでしょう?患者さんが求めているのはどんな医師なのか?現場が必要としているのはどんな医師なのか?そこが一番重要なのではないでしょうか。それらを見定めた上で、学力の問題にとどまらず、きちんと医学部が教育していこう、というような前向きな議論に持っていくことはできないのでしょうか。

 イマドキの学生は、一方通行の講義では身に付かない知識や経験を得ようと、能動的に学びにいっています。例えば、学生たちの交流(勉強会など)は昔よりも活発になっているはずです。メーリングリストやTwitterで大学や地域の壁を越えて交流したり学んだり、という学生達も大勢います。困ったときにすぐ「あれなんだっけ?」と聞ける仲間が全国にいる。少し前だったら考えられない状況ではないでしょうか。

 大学には、国試合格率を上げなければ、大学の入学希望者が減ってしまう、という苦しい事情があることも確かで、同情の余地はあります。しかし、国試合格率を上げるために大学自ら留年者を増やしたり、国の施策に乗っかって定員を増やしたりしておいて、一方では「学生の学力が低下した」と嘆いてみせるのはおかしな話です。

 大変多忙と思われる医学部長がわざわざ集まって会議をするなら、「医学生の学力低下を理由に医学部新設・定員増に反対する」という後ろ向きな議論を展開するのではなく、「各大学が、時代の要請を反映しながら、いかにして質の高い臨床医、研究医を育成し、社会的責任を果たしていくか」という前向きな議論をしていただきたいと切に望みます。

 その上で、「教育者が足りない」「教育施設が足りない」といった問題が顕在化してくれば、そのことは国や国民に積極的にアピールしていくべきですし、今まで通りの教育体制で良いのか?代替手段はないのか?と自らを省みることも必要だと思います。工夫のしどころ、色々あると思うんですけどねえ・・・。(水)

まあ昨今の至れり尽くせりの予備校の授業などを経験した学生達に、医学部の講義に文句のつけようがないほど素晴らしい!と感じている人間と、幾らなんでもあれはないだろうjkと感じている人間とどちらが多いかと問えば、間違いなく後者の方が圧倒的に多くなりそうですけれどもね(苦笑)。
国試合格率が入学希望者数に反映されるような大学というのはよほどにアレな大学なんじゃないかなという気もしますけれども、とりあえず最近の学部教育がやたらと学生を子供扱いしていることだけはこうした当事者の声からもひしひしと感じるところですかね。
一昔前は医学部の学生と言えば他学部と比べて授業態度も不真面目で出席も悪いと教養の教官からも毛嫌いされるような傾向がありましたが、それでは彼らダメ学生全員が不真面目でダメな医者になっていったかと言うとむしろ真面目一方の堅物だった学生が案外伸び悩んだりする一方で、要領よく必要なことを手早く片付けていくスキルを身に付けたタイプの方が意外にその後大成していたりします。
大学などという場所は別に義務教育でもなんでもなく自ら求めて学びに来た場所ですから、そこで出席がどうこうなどと言う方がナンセンスなんじゃないかなと思うのですが、こういう目に見える結果だけを求めるような「対策」ばかりが先行していく現状を見ると医学部の医師国家試験予備校化が進行している気がしてなりません(それならそれで講師陣をもう少し何とかしろよですが)。

そもそもまともな講義をこなせる教官が医学部にどれだけいるのか、多くは学生教育など片手間仕事のように考えている彼らがどんな教育者としてのトレーニングを受ける機会があったのかを考えて見れば、教育の素人がいくら顔を集めて話し合ったところでまともな教育改革のアイデアなど出てくるはずがないわけです。
彼らが学生の学力低下を云々するのであれば、まず彼ら自身がきちんとした教育者になるべくトレーニングに時間と労力を費やし、一人前の教育者として世間に認められるスキルを身に付け相応の実績を手にして初めて「俺たちはこれだけのことをやっているんだから、お前達もそれに応えて見せろ」と言うだけの資格があるんじゃないかと言う気がします。
記事では「患者さんが求めているのはどんな医師なのか?現場が必要としているのはどんな医師なのか?そこが一番重要なのではないでしょうか。」とありますが、近頃の学生は質が悪いと嘆く以前に象牙の塔にこもった住人達がどれだけの教育が出来ているのかと自問してみることが先決なんじゃないでしょうかね。
医学部の教官というものが学生に御高説を垂れる資格があるほどご立派なのか?と考えさせられる最近の一例として、「学生ばかりが悪いようなことを言っていたところが、実は一番悪いのは教官の側だった」という事件が実際に起きてしまいちょっとした話題になっていることを紹介しておきましょう。

土下座させ学生の頭踏む=医学部教授を停職―横浜市立大(2011年7月29日時事通信)

 横浜市立大医学部の男子学生=当時(20)=に暴言を吐いたり、暴力を加えたりしたとして、同大は29日、医学部の50歳代の男性教授を停職3カ月の懲戒処分とした。
 同大によると、教授は被害者学生とは別の医学部の学生から相談を受けた際、被害者学生の問題行動が原因と思い込み、2月22日の医学部の学期末試験開始直前、試験会場で被害者学生に名誉を傷つける発言をしたという。
 被害者学生は身に覚えのない暴言の理由を聞くため教授の部屋を訪ねると厳しい叱責を受け、土下座をさせられ、頭を足で踏みつけられ、頭を丸めることを要求された
 教授は同大の調査に対し、自らの一方的勘違いに基づき暴言や暴力を振るったことを認め、「心よりおわびし反省している。大学教員として持つべき品位、品格を持ち得ていなかった」と話しているという。 

学生を土下座させ頭踏んだ医学部教授、停職(2011年7月29日読売新聞)

 横浜市立大は29日、学生を土下座させ、頭を足で踏んだなどとして、医学部の男性教授(51)を停職3か月の懲戒処分にした。

 発表によると、教授は2月22日、学期末試験開始前の会場で、医学科2年(当時)の男子学生(20)に「ストーカー」「犯罪者」などと暴言を吐いた。身に覚えがなかった学生が理由を聞こうと、試験終了後に教授室を訪れたところ、教授は学生に土下座させ、頭を足で踏み、翌日までに頭髪を刈り、反省文を提出するよう求めたとされる。

 教授は市大を通じて、「私の行為は、教育に携わる者が決して行ってはならない許されざるもので、真摯(しんし)に反省し、心よりおわびする」とのコメントを出した。市大人事課は「教授の誤解による行動で、ハラスメントを超えた暴力行為」としている。

 市大は、医学部長(64)についても管理責任を問い、戒告とした

見て判る通り事件そのものは今年の早い時期に起こったもので、探してみると少し前に学生側が同教授を提訴したという記事が出ていたのですが、この6月20日に開かれた第一回の口頭弁論において教授側は事実関係についてはおおむね認め、すでに謝罪しているとして損害賠償額のみを争うという姿勢を示したということです。
事件そのものの経緯としては逆にふられたのは女子学生で、その逆恨みから担当教授を始め周囲にあることないこと喋り回っていただけで、事情を知っている同級生などは唖然としていたとか様々な噂があるしているようですが、そちらの方は今回あまり関係のない話ですから割愛するとして、ここで取り上げたいのはこの教授氏のとった行動です。
記事などから総合すると女子学生の訴えを聞いて男子学生がストーカー行為を働いていたと勘違いするまではまだあり得る話としても、もう一方の当事者を呼び出して話を聞くでもなくいきなり試験場に現れて男子学生を公衆の面前で罵倒する、そして訳がわからず説明を求めて訪問した(それはそうでしょう)同学生に対してこうした行為に及ぶというのですから、どう考えても普通の人間のとる行動とも思われませんよね。
「大学教員として持つべき品位、品格を持ち得ていなかった」と言いますが品位と言うより元からのキャラクターの問題では?と思われる話ですが、これまた噂によれば必要な品位、品格を持っていないことを自覚しているはずの同教授はすでに復職しているとも言いますから、今後の民事訴訟の場においてこのあたりが「全く反省の態度もない」と言われることになるのかも知れません。
ただこの教授個人の人物はそれとして、現在の医学部のシステムを考えるとこういうあからさまに斜め上な人物でも教授になれてしまうと言うことの方が問題で、しかも教育者としてどれほど不適格であっても(事実上教育を放棄していたとしても)それを理由に教育の場から排除する道もないというのは学生にとって一番の悲劇ですよね。

ちなみにネット上では明らかに別人物であると思われる同大教授の名がやたらにあげられているのですが、二年生に試験をしていたということですから医学部のカリキュラムを考えれば大体の当たりはつくにしても、もちろんここで個人を特定したりする意図も意味もないことですが、以前にも学位取得の謝礼金問題で新聞沙汰になった同大ではどうも教育する側に大きな問題があるのかなという印象が、また全国に広まってしまったことは確かでしょう。
しかしこうまで明白なDQN行為の処分がなぜこんなに遅れたのかと思うところですが、実は四月の時点ですでに処分が下されていたのに延び延びになっていたらしいというのはこんな事情があったらしいのですね。

横浜市大と解任医学部長が和解(2011年5月12日産経ニュース)

 横浜市立大の医学部長の解任を今年4月に通知された黒岩義之教授が、解任は無効として地位保全を求めた仮処分申し立ての審尋が12日、横浜地裁であり、教授が7月末に医学部長を辞任することなどで、和解が成立した。

 教授側代理人と横浜市立大によると、和解内容は、大学側が通知した平成23年4月30日付の解任を撤回して黒岩教授が医学部長の地位にあることを確認し、黒岩教授は任期途中の同7月31日付で部長を辞任するというもの。

 黒岩教授は「次期理事長人事を画策したとの事実無根の誤解があった。任期途中の辞任は不本意だが、紛争長期化を避けるため決断した」。横浜市立大は「学生の不安や動揺を解消し、医学部の運営を正常化するため、和解案を受け入れた」と説明している。

解任を撤回し戒告とした上で自ら辞任するという、いわば形の上で辛うじて名誉だか体裁だかを守った形での退任劇となったということですが、医学部長と教授の関係を考えると上司と部下と言うにはいささかアレですから正直とばっちりという気もしないでもないとしても、やはり管理責任上全く責任をとらずでは済まされない話ではありそうですよね。
記事を見ているだけでも何やら学内人事に関わる暗闘なども背後に関わっていた印象を受けますが、これまた聞くところによれば学内における同大出身派と学外出身派との勢力争いに絡んで問題が複雑になっているとも言い、万一にもそうした思惑が絡んで学校側が誠意ある対応を取るに遅れるところがあったのだとしたら学生側としては救われない話です。
いずれにしてもこうしたアカハラめいた話は程度の差こそあれ全国各地の大学で起こり得ることで、医学部の教官は本業の方で業績さえあげておけばどんな人格破綻者でも教育不適格者でも出世できるのかと思われても仕方がないところがありますが、そうした歪んだ個性によって構成される大学側が良かれと考え実施しようとする大学教育の改革とは本当に大丈夫なのかとここでも心配になってくるわけです。
医学部教育を抜本的に改革するにはちょうど今が良いタイミングであるという考え方自体はありだと思いますが、やるならやるで素人の思いつきではなくきちんとした教育の理論とエヴィデンスに基づいたことをやってもらわないことには、前より悪くなったんじゃないかと言われてしまう可能性がかなり高いものになりそうな気がします。
それにしても、今の医学部教授の中で学生教育を真剣に考えている人間というのはどれくらいいるものなのでしょうね?

|

« 今日のぐり:「活魚回転寿司 いわ栄(いわさか)」 | トップページ | 結婚適齢期はないかも知れませんが、出産適齢期は確実にあります »

心と体」カテゴリの記事

コメント

学閥ってどこの学部にでもあるのでしょうが、医学部の場合卒業後も同じ狭い世界で生きていくから大変なんでしょうね。
今の時代でも教授には絶対服従って感じなんでしょうか?

投稿: 通りすがりのただの人 | 2011年8月 2日 (火) 12時20分

学位目当ての若手や大学に残りたい連中は別として、普通の臨床医なら医局側の窮状を知ってるだけに強気に出ることも多いですが。
ただ学生にとっては教授の機嫌を損ねれば進級も卒業も出来なくなると言う恐怖感はあるでしょう。
これは基礎の教授なんでしょうけど、まともなコミュニケーションも取れない変な先生が多いイメージはありますけどね。

投稿: ぽん太 | 2011年8月 2日 (火) 15時47分

ごく最近も学生の熱意が教授の鶴の一声で潰されたという事例を目撃しましたけれども、偉そうなことを言うなら人が学ぶ邪魔だけはするなと声を大にして言いたいです。

投稿: 管理人nobu | 2011年8月 4日 (木) 11時00分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/52356923

この記事へのトラックバック一覧です: 最近の医学部教育に関わる話:

« 今日のぐり:「活魚回転寿司 いわ栄(いわさか)」 | トップページ | 結婚適齢期はないかも知れませんが、出産適齢期は確実にあります »