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2011年8月25日 (木)

産科無過失補償制度 初の「再発防止に関する報告書」出る

全然関係ない話ですが、ブログの記事をアップするときにはあらかじめ下書きを書いてからコピペするのですが、リンクなどを貼り付ける作業が案外手間がかかります。
そうやって苦労して仕上げたものをいざアップしようとした際に、回線の具合が悪いのかエラーが出て全てがパーになってしまった時の腹立たしさは弁舌に尽くしがたいものがありますね。
最近はこうした非常事態を防止するためにとりあえず編集が終わった段階で全文をコピーしておくのですが、うっかり忘れた時に限ってトラブルが起こりやすいような気がするのは何事も基本をおろそかにすべからずという神の意志が介在しているのでしょうか。

どうでもいい話はそれとして、産科の無過失補償制度に関して日本医療機能評価機構が「再発防止に関する報告書」を初めて公表したという話題を各社が揃って取り上げていますが、並べてみるとなかなか興味深いという印象を受けますね。

産科補償制度の再発防止で初の報告書- 医療機能評価機構(2011年8月22日CBニュース)

分娩に関連して一定の条件下で発症した重度脳性まひ児に対し補償金を支払う「産科医療補償制度」を運営する日本医療機能評価機構は8月22日、記者会見を開き「再発防止に関する報告書」を初めて公表した。同制度が始まった2009年以降に補償対象になり、昨年末までに原因分析報告書を公表した15例について検証し、再発防止策などを提言する内容。同制度に加入する施設や関係団体に配布して周知を図るという。

 報告書では15例について、「テーマに沿った分析」と「数量的・疫学的分析」を行っている。

 テーマに沿った分析では、(1)分娩中の胎児の心拍数聴取(2)新生児蘇生(3)子宮収縮薬(4)臍帯脱出―の4点に着目。(1)(2)(3)については、日本産科婦人科学会や日本産婦人科医会などの診療ガイドラインが徹底されていない例があったため、現場にガイドライン徹底を呼び掛ける
 また、(4)が起こった3例には、▽経産婦▽分娩誘発▽人工破膜―などの共通点があったことを踏まえ、学会などに対し、事例を集めて因果関係を分析するよう提言している。

 数量的・疫学的分析では、新生児が生まれた時間や妊産婦の年齢、体重などに分けて集計した。ただし、「15例と対象が少ないため、何らかの結論を導くことは難しい」としている。

 報告書をまとめた同機構の「産科医療補償制度再発防止委員会」の池ノ上克委員長(宮崎大医学部附属病院院長)は会見で、「現場では当然行われていると思われる内容も含まれているが、日々の診療行為の確認に活用し、産科医療の質の向上に取り組んでいただきたい」と述べた。

出産時の指針逸脱多発で注意喚起 促進剤過剰投与など(2011年8月22日47ニュース)

 出産で赤ちゃんが重い脳性まひになった場合に、過失の有無にかかわらず補償金が支払われる「産科医療補償制度」を運営する日本医療機能評価機構は22日、再発防止に向けて初めてまとめた報告書を公表。学会の指針を逸脱した陣痛促進剤の過剰投与や、心肺蘇生処置が不十分だった例が相次いでいたとして、関係学会や医療機関に注意喚起した。

 制度は2009年に始まり、機構はこれまでに208件を審査、うち192件の補償が決まった。報告書は、原因の分析が終わった13都府県の15件について、どんな問題があったかを分析した。

分娩誘発剤投与、6件で問題点=新生児脳性まひ-評価機構(2011年8月22日時事通信)

 財団法人日本医療機能評価機構は22日、2009年から10年に分娩(ぶんべん)で発症した新生児の脳性まひのうち、6件で分娩を誘発する子宮収縮剤の投与に問題点があったと発表した。
 投与は脳性まひの直接の原因ではないとされるが、同機構は日本産科婦人科学会などの「産婦人科診療ガイドライン」を順守するよう提言した。
 同機構は分娩で脳性まひとなった子どもを救済する「産科医療補償制度」が始まった09年1月から10年12月までに補償対象となり、状況が公表された15件について分析。6件で子宮収縮剤の投与量が多かったり、投与後の評価をしていなかったりしたという。

産科事故で不適切診療多発 医療補償例分析で判明(2011年8月22日産経新聞)

 分娩(ぶんべん)が原因で脳性まひになった子供の医療や養育を補償する産科医療補償制度の補償対象例のうち15件を日本医療機能評価機構が分析したところ、胎児の心拍の監視が不十分だったり、蘇生法に問題があったりするなど、多くのケースで不適切な診療が行われていたことが22日、同機構がまとめた再発防止に関する報告書で分かった。

 同機構は「今回指摘した診療行為が必ずしも脳性まひの原因になったわけではないが、産科医療向上のためにも防げることは防ぐようにしてもらいたい」としている。

 同機構は、平成21年1月から今年6月末までに補償認定が行われた178件のうち、原因分析を終えた15件を検証。報告書によると、15件中8件で、本来なら分娩時に必要な胎児の心拍の監視が不十分だったと指摘された。新生児の蘇生についても7件で“教訓”となる事例があったと説明。中には出生時に仮死状態だったにもかかわらず、助産所が蘇生に必要な器具や酸素を常備しておらず、状態を悪化させたケースもあった。

 陣痛を促進する一方、不適切な使用が事故につながる恐れがある子宮収縮薬については、基準量を上回って投与したり投与間隔が短かったりするなど、学会の指針に則さず使用されていたケースが6件あった。

産科医療補償制度で初の報告書 医療行為に問題も(2011年8月22日朝日新聞)

 お産の際の事故で重い脳性まひになった赤ちゃんに補償金を支払う「産科医療補償制度」で22日、支給が決まった中に診療行為に問題があった事例が多く含まれていることがわかった。運営する日本医療機能評価機構が、再発防止に向けた報告書を初めて公表した。

 この制度は2009年に始まり、医師の過失の有無を問わず補償される。

 報告書は2010年までに原因分析が終わった15件をもとに作成。病院が7件、診療所7件、助産所1件だった。問題があったとされたのは(1)胎児の心拍数を十分に確認していなかった=8件、(2)蘇生が不適切=2件、(3)陣痛促進剤の使い方が診療指針を逸脱していた=6件=など。1件の事故で複数の問題点が指摘されたケースもある。

 再発防止委員会の池ノ上克委員長(宮崎大学病院長)は「基本的なことが必ずしも守られているわけではなかった。医療機関は日々の診療をもう一度見直してほしい」と話した。(月舘彩子)

冒頭に取り上げましたCBニュースの記事などは多少のニュアンスめいたことも伝わってきますけれども、以下に並ぶ他社の記事を読んでいるだけではこれが「再発防止に向けた報告書」の話であるようには到底判らないような内容になっていますし、取り上げ方に各社のスタンスの違いのようなものもあって興味深いですね。
実際には池ノ上委員長の言うように「現場では当然行われていると思われる内容も含まれているが、日々の診療行為の確認に活用し、産科医療の質の向上に取り組んで」いくことを目的に敢えて基本的なところから事細かに指摘したということなのでしょうが、まるで現場ではガイドラインなど基本中の基本すら守られていなかったことが脳性麻痺につながったと受け止められかねない記述です。
脳性麻痺自体の発症原因は未だ明らかではなく(むしろほとんどの場合出産時というよりはもっと早い段階での脳障害が原因と推測されています)、ひと頃医療訴訟回避のためにアメリカで帝王切開率が急増したときも脳性麻痺は目立って減らなかったと言いますから、基本的に原因が分娩経過のどこかにあるんじゃないかと一生懸命追求することにどれほどの意味があるのかという考え方はあるでしょう。
ましてJBM的に脳性麻痺は帝王切開が遅れたからだ!なんて判断が示される中でお産の部分だけにフォーカスを絞って問題点を列挙するということは、世間の人々には「なるほど!こんなミスがあったから脳性麻痺になったのか!」と誤解されかねない話ですし、実際に世論を主導することになるマスコミ各社の論調がまさしくその通りの方向に(意図的に?!)行ってしまっていることは強く懸念されますよね。

ちなみにこの報告書、六月時点でまとめられたものだと言いますが、「テーマに沿った分析」と「数量的・疫学的分析」を二本柱としている割には異常の15症例の経過を分析するばかりで正常分娩との比較は行っていないなど、自ら「疫学的な分析としては必ずしも十分ではない」と告白していたものです。
すでに昨年の団塊で再発防止委員会の方からは「防げる事故は絶対に防止する」という意気込みで現場に積極的な提言を行っていくという姿勢が打ち出されていますが、問題は彼らの言う事故防止とは恐らく分娩時の事故一般というニュアンスであったでしょうに、前述のように世間的には脳性麻痺の防止と受け取られかねないと言うところにもありそうです。
産科の無過失補償制度は補償、原因分析そして再発防止が当初からその三本柱として挙げられていましたが、脳性麻痺というものの発症原因を考えた場合に現状では補償はともかく原因分析と再発防止の方はいささか物足りない印象が拭えないところで、非常に限定的な補償だけを扱うシステムの中に非常に大きなテーマを組み込んでしまった制度のいびつさをこんなところでも感じさせられますね。
日本医療機能評価機構などという胡散臭い天下り団体にこんな重要な仕事を任せても、例によって彼らの懐を暖かくするだけという批判は抜きにしても、医療の部外者であるはずの弁護士の方がよほど現場での実践に役立ちそうな原因と再発防止策を提示しているのが情けない気もするところで、委員になっている先生方にはよほど頑張っていただかなければ「誰も読まない報告書が形ばかり出されて終わり」ということになりかねません。

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コメント

他科ではガイドラインはあくまで参考で担当医の判断により云々と書いてあることが多いと思うのですが、産科領域ではガイドラインは絶対という扱いなんですかね?

投稿: ぽん太 | 2011年8月25日 (木) 10時57分

ガイドライン通りなら何かあっても学会が責任取るのかw

投稿: aaa | 2011年8月25日 (木) 13時43分

これ、制度発足してからどれだけ事故が減ったってデータは公表するのかしら?
再発防止を目的にしてんだからそっちのデータも出してないとおかしいよね?

投稿: 外野のひと | 2011年8月25日 (木) 19時56分

本当はそういう統計も出してきちんと役に立ってるかどうかの検証もしなければならないはずですけどね。
今のところは何となくそれらしいお題目を唱えて終わりになりそうな悪寒が…

投稿: 管理人nobu | 2011年8月27日 (土) 11時41分

nobu先生は産婦人科の先生なんですか?

「よほど役に立つ」というリンク先見ましたが、「よほど」というのは誤解を招く表現だと思います。

投稿: 一産婦人科医 | 2011年8月29日 (月) 12時07分

ああなるほど、よほどと言うと確かに誤解を招くかも知れませんね。
う~ん、どういう表現がいいんでしょうねえ…まだしも、あたりが適当なんでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2011年8月29日 (月) 18時08分

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