« 福山てんかん事故は禁錮1年だそうです | トップページ | フジテレビ騒動 思いがけずおもしろいことに »

2011年8月11日 (木)

今度は歯科医の話ですが

先日は新司法試験導入の余波で弁護士業界が大変なことになっているということを紹介しましたが、その折にもご紹介いただきましたようにいよいよ過剰と言われる法科大学院の統合も行われそうな勢いです。
弁護士をもっと増やせと養成システムまで変えたと言うのにわずか数年で頓挫するとはどんな甘い予測なのかという話ですが、学生が集まらず大赤字は出るわ合格者は出ず授業料詐欺と言われかねないわでは、さすがにこれは無理だと判断されるのも当然ですよね。
さて、こちらもひと頃から増えすぎて困っていると言われるのが同じ国家資格である歯科医で、近年供給過剰から市場が崩壊しつつあるのみならず、歯学部などはどこも大変で統廃合が検討されているというのですから全く同じ構図と言えるのは単なる偶然でしょうか?

受験生離れ、国試不振…歯学部統廃合論も- 歯学部サバイバル時代(上)(2011年8月8日CBニュース)

 歯科医の供給過剰が叫ばれる中、受験生の歯学部離れが深刻化している。中には入学者の数が定員の半分を割り込むケースもあり、大学側は歯科医を志す優秀な学生を一人でも多く獲得しようと躍起だ。歯学部は、文字通りの「サバイバル時代」を迎えている。(木下奈緒美、兼松昭夫)

 文部科学省によると、国公立、私立を合わせた全国29歯学部の今年度の入学定員は計2459人だが、入学したのは2158人(87.8%)。11の歯学部で定員割れとなった。
 特に、私立大の苦戦ぶりは深刻だ。全国に17ある歯学部のうち、今年度は10大学(58.8%)で入学者が定員を割り込んだ。定員に対する充足率は、最低の奥羽大歯学部で25%と2割台になった。また、競争率が2倍未満の歯学部は14校(82.4%)で、松本歯科大では受験者81人全員が合格した。

 歯学部全体の受験者数は、2008年度の1万359人から翌09年度は7122人に激減。10年度も6472人に減少したが、今年度は6805人と微増した。「下げ止まり」との楽観的な見方もあるが、これまでの減少幅を考慮すれば改善したとは言いにくい。

 受験生による歯学部離れの背景には、歯科医の過剰供給問題があるとされる。
 1960-70年代の学部増設などに伴い、歯科医の養成数は急激に増加。厚生労働省によると、歯科医院数も2009年には6万8097軒で、1984年からの25年間でほぼ6割増えた。一方で、医療費全体に占める歯科医療費の割合は、62年度は12.4%だったが、08年度には7.4%にまで下がった。

 大学関係者らは、このほかにも、▽歯科医の「ワーキングプア」などの報道▽経済状況の悪化▽医学部の定員増―などが、受験生の歯学部離れに拍車を掛けているとみている。
 「今や歯学部を受ければ合格する状況。学生の質低下が避けられない」―。そんな嘆きの声すら出始めている。

 学生不足に喘ぐ中、歯科医師国家試験(国試)の結果が振るわずに苦悩する大学もある。文科省によると、今年の新卒者の国試合格率は、全体で81.8%だった。これに対し最低の岩手医科大歯学部は64.8%で、最高の広島大(100%)との間には、35.2ポイントの格差がある。

 優秀な学生を集められずに国試の合格率が低迷し、それが受験生のさらなる歯学部離れを促しているとの見方もある。

■民主・川口氏「統廃合視野の歯学部再編は不可避」

 こうした中で、文科省も対応に乗り出している。
 同省の「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」は09年1月、優秀な入学者を確保するため、国家試験の合格率が低い大学などの入学定員の見直しを提言。その後、各大学の取り組みをフォローアップし、「現状の教育課程に改善が必要な歯科大・歯学部も散見された」と指摘した。
 具体的には、▽十分な臨床能力を身に付けることができていない▽留年者数や国家試験合格率の状況改善に結び付いていない▽競争倍率が限りなく1倍に近づくなど入学者選抜が機能していない―などの課題を挙げている。

 同省では引き続きフォローアップを実施するが、今年5月25日に開かれた会合では、「(大学側の)自主的な改善に任せていいのか」「根本的な改善策を考える必要がある」など、委員から厳しい意見が上がった。これに対し同省の新木一弘・医学教育課長(当時)は、「改善がない場合にどういうアクションを取れるのか、法的なことも含めて検討したい」と応じた。
(略)

「やれること何でも」学生獲得あの手この手-歯学部サバイバル時代(下)(2011年8月9日CBニュース)

 受験生の歯学部離れに歯止めを掛けようと、大学側のサバイバル戦略が本格化している。

 「やれることはすべて、何でもやろうという感じだ」―。鶴見大歯学部の黒井和男事務部長は自嘲気味に話す。
 同大の歯学部では今年度の募集人員128人に対し、97人が入学した。来年度は募集人員を115人に減らす方針だ。背景には、受験生の減少と文部科学省からの要請がある。
 同大歯学部では、2008年度は622人だった受験者数が翌09年度には半数以下の263人に急減。さらに10年度には160人となり、小林馨歯学部長は「抜本的に考え方を変えなければならないと感じた」という。

 学生獲得策として、今年度の入試から初年度学納金を200万円程度減額。AO入試やセンター試験利用入試などを導入したほか、受験生向けの学部紹介ビデオを製作し、今夏からインターネット上で公開し始めた。また、多くの症例を学生にみせるため、土曜日にも病院での診療を行い、来院する患者に学生診療への参加協力を求めるなど、教育の充実に取り組んでいる。
 学費の減額に取り組む歯学部は多いが、設備の維持や教員の確保、病院への投資などにはどうしてもコストが掛かる。黒井事務部長は「コスト戦略で他大学に対抗すると、本来の学部の在り方が損なわれる。教育の質の維持・充実で差別化を図りたい」と話す。
(略)

 3年前から定員割れしている日大松戸歯学部では、今年度も受験者数が減少し、08年度(476人)と比べると約3分の1の157人だった。うち合格者は149人で、競争倍率は1.05倍。近年の選抜機能の低下により、授業についていけない学生も出てきているという。
 しかし、山本浩嗣教授は「(在学中に)学生がどれだけ伸びるかが大事だ」と強調する。同大が昨年創設した「教育・学習総合センター」では、学習面だけでなく、生活面も含めた学生の状況を把握し、サポートする体制を取っている。また、卒業した学生の国試対策などのフォローアップにも力を入れている。
 学生獲得に向けては、来年度の入学生から6年間の学費を計360万円削減受験科目を3科目から2科目に変更するほか、試験の会場・種類の増加なども実施する。

■大学側「定員割れ続けば歯科医不足に」

 新たな入試制度の検討、学費の減額、教育の充実による差別化、学生のサポート…。多額の費用と労力を掛けて学生獲得に取り組む大学関係者は、統廃合を含む歯学部の再編をどうとらえているのか―

 鶴見大の小林歯学部長は、「歯科医養成の全体的なグランドデザインなしに議論しても現実的ではない」と指摘する。過剰といわれる歯科医だが、大学側への求人は減少しておらず、むしろ「今の定員割れの状況が長く続けば、10年もたたずに若い歯科医人口が不足する」という危機感を持っている

 日大松戸歯学部の山本教授も、疾病構造の変化に対応するため、歯科医の需要は増すと見る。一方で、「現状を維持する必要はなく、環境に適応できた大学が残るべきだ。自助努力をしなければ淘汰(とうた)されていくと思う」と指摘。ただ、「政府主導型で(統廃合)という時期ではない」との認識だ。

 大学関係者らが期待するのは、少子・高齢社会での新たなニーズの開拓。歯科医療には今後、患者の全身状態を考える総合的な診療や、訪問診療、高齢者へのきめ細かいケアなどが求められる。これらを新たな歯科医のやりがい、魅力として積極的にアピールし、優秀な学生の獲得を目指す。
(略)

ま、学生の学力低下云々などというのはどこかで聞いたような話でもあるわけですが、国試合格はおろか大学での勉強にもついてこれないレベルの学生で数だけを揃えたところでどうするのかという話で、実際に国試合格率も低迷している学部ほど学生からも見放されているわけですから、どう見ても定員が過剰であるというしかなさそうです。
そしてこうした底辺私大としては学部定員減は収入源から直ちに経営危機に結びつくわけですから、過剰だ過剰だと言われてもおいそれと定員を削るわけにもいかないところで、こうなるとそもそも国が音頭を取って歯学部増設を進めてきた当初の政策が正しかったのかという話にもなりそうですよね。
さすがに司法試験並みとはいかないまでも歯科においても国試難易度引き上げによって過剰問題に対処しようとしているらしく、合格基準の引き上げが発表された平成18年からの国試合格率は以前からすると考えられないような数字が続いていますが、実際には必要数から計算すると合格率50%程度で良いという意見もあるようですから、今後さらに一段と厳しい基準が採用されるかも知れません。

おもしろいのは現場で地道に臨床をしていらっしゃる開業の歯科医の先生方が青息吐息で収入も下がるばかり、このままではやっていけないから定員を減らしてくれ!と怨嗟の声すら上がっていると言うのに、記事にもあるように大学の偉い先生方は「いやそんなことはない!歯科への需要はまだまだあるはずだ!」と全く危機感の欠片もないようなコメントばかりを出していることですよね。
記事にも登場している日大の山本教授などは「歯科医は儲からなくなったなんて報道するから学生が集まらないじゃないか!」なんて逆ギレしているそうですけれども、確かに大学で年俸幾らで雇われているような先生方にとっては危機感が薄いどころか、元々開業志向が強くて手駒が少ないだろう歯科講座にとっては安く使い倒せる手駒を揃える格好のチャンスであると言う考えもあるのでしょう。
このあたりは大病院の管理職におさまっていながら講演とツィッターばかりしているらしい(笑)某大先生などを筆頭に、際限なく増えた医者を安く大量に抱え込めるようになれば大いにメリットがある方々が口を揃えて「メディカルスクールをさっさと作って医者を大量に養成せよ!」なんてことを主張していらっしゃるのと同様の構図が垣間見えて、非常に興味深いものがありますよね。

歯科医の世界でも弁護士と同様、すでに地域の顧客をがっちり抑えているベテランの先生方はまだしも深刻なことにはなっていないという話で、歯科医余りでワープアだと泣くような目に遭っているのはやはり新規開業の若手の先生に多いようなんですが、当然ながらこうした方々は歯科医のヒエラルキーの中でさしたる発言力も持ち合わせていないだろうと推測されます。
歯科保険医協会なども「自助努力を超えている。何らかの法的な対応を取らないと、歯科医療は崩壊してしまう」などと国会議員に働きかけ始めたようですが、自助努力を超え法的な対応が必要であるというのは要するに現場のそうした危機感を裏腹に、大学界隈でたむろっている先生方には全くその気がないという現状をオブラートに包んだ表現とも言えそうですよね。
そして医師の場合は近年ようやく権利意識に目覚めた医者達があまりにもひどすぎる職場からは逃散するという労働者としての当然の権利を行使し始め、それが医療崩壊などと呼ばれる社会現象ともなった結果ずっと据え置きだった勤務医の給与が最近ようやく上がり始めたなんて話もありますが、文字通り「嫌なら辞めろ。代わりは幾らでもいる」状態になっってしまった歯科医にはもはやそんな交渉の道すら閉ざされてしまっているわけです。
「仲間が増えれば仕事も楽になるよ~?」なんて一時の甘いささやきにうっかり乗ってしまうとどんな運命が待ち受けているか、弁護士や歯科医の例を見れば誰でも判りそうな話だろうということですが、こうすればいいよと大きな声で主張している人々の言葉に耳を傾けるに当たっては、それが誰にとってどんなふうに良いのかということも念頭においておかなければならないと言うことでしょうか。

|

« 福山てんかん事故は禁錮1年だそうです | トップページ | フジテレビ騒動 思いがけずおもしろいことに »

心と体」カテゴリの記事

コメント

>講演とツィッターばかりしているらしい(笑)某大先生

ちょっwwwそれは言っちゃダメですってwwww

投稿: kan | 2011年8月11日 (木) 11時22分

でも上がりのパターンとしては結構いいポジションかと(笑)

投稿: 管理人nobu | 2011年8月11日 (木) 12時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/52440135

この記事へのトラックバック一覧です: 今度は歯科医の話ですが:

« 福山てんかん事故は禁錮1年だそうです | トップページ | フジテレビ騒動 思いがけずおもしろいことに »