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2011年8月10日 (水)

福山てんかん事故は禁錮1年だそうです

本年5月10日に広島県は福山市内で集団登校中の小学生の列に車が突っ込み、4人が重軽傷を負うという悲惨な事故がありましたが、ちょうど栃木でやはり小学生の列にクレーン車が突っ込むという悲惨な事故のあった直後で、しかも双方とも運転していたのがてんかん患者であったということから大いに話題になりました。
栃木の方では過去にも同様の事故歴があるにも関わらず薬の内服を怠り、しかも前日深夜まで交流サイトでチャットをしていたことなどから「いくらなんでもひどすぎる」と社会的批判も相当なものでしたが、福山の事件においても発作が続き医師にも運転を止められていたにも関わらず、免許更新の際にもてんかんの持病を隠すという違法行為まで行って運転を続けていたということで、相応に厳しい司法判断が下されたようです。

広島・4児童負傷事故で禁錮1年 「発作予想できた」(2011年8月8日朝日新聞)

 広島県福山市で5月、軽乗用車を運転中にてんかんの発作で意識を失い、登校中の児童4人をはねて重軽傷を負わせたとして、自動車運転過失傷害罪に問われたアルバイト警備員村田真樹被告(38)=同市沼隈町下山南=の判決公判が8日、広島地裁福山支部であった。森脇淳一裁判官は「発作により人を死傷させる可能性を認識しながら運転を継続した過失は大きい」として、禁錮1年(求刑禁錮1年2カ月)を言い渡した。

 判決によると、村田被告は5月10日午前7時45分ごろ、医師から止められていたのに軽乗用車を運転し、てんかんの発作で意識を失って小学生4人をはねた。

 森脇裁判官は「自宅は公共交通機関の便が悪く、自動車を運転できない不便さは相当のものがあるが、無自覚で安易な姿勢は厳しい批判に値する」と指摘した。

てんかん事故禁錮1年 地裁福山支部判決(2011年8月8日山陽新聞)

 車を運転中に持病のてんかん発作を起こし、登校中の小学生4人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転過失傷害罪に問われた福山市沼隈町下山南、アルバイト警備員村田真樹被告(38)の判決公判で、広島地裁福山支部は8日、禁錮1年(求刑禁錮1年2月)を言い渡した。

 判決理由で、森脇淳一裁判官は「過去にてんかん2 件発作による事故を起こした経験がある上、医師から運転をしないように指導されていた」と指摘。「免許がないと通勤が不便になるため、更新の際も意識喪失の事実をふせていた事故は偶発的ではなく、無自覚で安易な姿勢は厳しい非難に値する」と述べた。

 争点となった事故の予見性については「処方された抗てんかん2 件薬を服用していても、1年から1年半の割合で発作が起きていた」と言及し、執行猶予付き判決を求めた弁護側の「予見できた可能性は低い」という主張を退けた。

 判決などによると、村田被告は5月10日午前7時45分ごろ、福山市藤江町の県道を軽乗用車で通勤中、発作で意識を失い、児童10人の列に突っ込み4人を負傷させた。

てんかん無自覚、運転38歳に禁錮1年 4児童重軽傷事故(2011年8月8日産経新聞)

 運転中にてんかん発作が原因の事故を起こし、小学生4人に重軽傷を負わせたとして自動車運転過失傷害の罪に問われたアルバイト警備員の村田真樹被告(38)に広島地裁福山支部は8日、禁錮1年(求刑禁錮1年2月)の判決を言い渡した。

 判決理由で森脇淳一裁判官は「てんかん発作で事故を起こす可能性を認識しながら運転を継続した」と指摘。「事故は偶発的ではなく、無自覚で安易な姿勢は厳しい非難に値する」と述べた。弁護側は執行猶予付き判決を求めていたが「過去の事故の記憶を失っている上、公判で供述を変更する態度は心から反省しているとは認めがたい」として退けた。

 判決によると、村田被告はてんかんの持病があり、医師から車の運転を控えるよう指導されていながら軽乗用車を運転。5月10日朝、広島県福山市の県道で発作を起こし、登校中の小学生の列に突っ込み、4人に重軽傷を負わせた。

禁錮1年という量刑が重いのか軽いのかですが、ざっと調べた範囲では昨年栃木で同様に小学生の列に突っ込んで5人に重軽傷を負わせたという事故の場合、同じく事故後に別な追突事故まで起こしているという問題ある状況に対して禁固2年・執行猶予5年という判決だったと言いますから、執行猶予がついていないことを考えるとこんなものなのかとも思えます(しかしこの栃木の事故も怪しいですよねえ…)。
てんかん患者の起こした事故については未だ司法判断も一定していないようで、心神喪失で無罪となったものもあれば実刑が出ているものもあるようですが、医師から運転を止められていたとか薬の内服を怠っていた、あるいは発作を繰り返していたにも関わらず運転を続けていたといった場合にはおおむね相場相応の有罪判決が出ているという捉え方でよいのでしょうか。
要するに運転中止義務を課せる程度に運転中に発作を起こすことへの予見性があったかどうかがポイントなんだと思いますが、この予見性というのも実際の運用を考えるとなかなか面倒なところがあって、ネットで見かけたこんな書き込みには思わず「う~む…」とうなってしまいました。 

発作を伴う病気を持つ者に免許を持たせない、奪うことを徹底しなかったドライバー社会が悲劇を生んだ!
ドライバーらの腐った性根を警察への積極的な通報、役所や議員に自動車の規制取り締まり強化で叩き直していこう。

・法定速度、制限速度以下で正しく走らない暴走ドライバー = あらゆる重大死亡事故の元凶 一秒でも早い免許剥奪を
・3秒前ウィンカー守れないクズ = 二輪巻き込み事故の元凶
・駐車場所守らないクズ = 違法駐車や路上駐車は反社会的行為であり、れっきした犯罪行為、重大死亡事故の元凶でもああります
・信号のない横断歩道で人が渡ろうとしているのに停止しないクズ = 横断歩道は歩行者絶対優先です
・交差点等の右左折で徐行や停止もせず、歩行者や自転車に異常接近するクズ = 交差点は事故多発危険エリア 最大限に慎重かつ安全、交通弱者に威嚇や恐怖を与えない運転を
・側方間隔1.5メートル以上空けないスレスレ追い抜き、幅寄せするクズ = 側方間隔1.5メートルは教習所でも習う基本事項。それ以下の間隔で抜けない場合は抜かないよう心がけよう。危険運転に該当する反社会的行為です。
・「警笛鳴らせ」の標識がある場所以外でのクラクション使用するクズ = 犯罪行為 http://nemonemo.nobody.jp/dourokoutuuhou.html 
・制限速度以下で道交法を守り正しく安全運転をする善良なドライバーに対して「法律にしがみつき自分勝手」「トロトロ運転」と暴言を吐き煽り運転するクズ 
 = (車間距離不保持という重大死亡事故の元凶である犯罪行為であり殺人未遂行為
・駐車場内や学校の敷地内ですら徐行しないクズ = 子供が大勢殺傷されています。そして加害者ではなく遺族や子供を誹謗中傷するのも恥ずべき日本の歪んだドライバー文化です。

自動車は悪魔的な殺傷力を有する凶器 自動車の運転は徹底的に控えることが善良な市民の努めです
善良で理性のある市民ほど、自動車を運転せず、自転車や公共交通機関を活用しています。

上記のような素人が目で見て判る危険行為ならまだしもですが、てんかんでは患者も取り締まる側も病気自体には素人ですから、最終的にどの程度予見性があったかどうかも医者の判断ということになるのでしょうが、例えば低血糖発作を起こした糖尿病患者に運転禁止を申し渡すかと言えば、おそらくほとんどの医者が(患者側から可否を聞かれた場合は別として)積極的にそこまでは言及していないんじゃないかと思います。
てんかんの有病率は0.8%、そのうち車に乗っている人がどれくらいになるのかは判りませんが、およそ急な意識障害を来しそうな疾患の中では決して多数派と言うほどではなさそうなだけに、こちらばかりを突き詰めて厳しく対応するほど他の疾患は放置しておいていいのか?という話になってきそうですよね。
何よりこういう判決が出て社会的にもてんかんが注目されるようになってくると、今度はコントロール良好な患者がたまたま何か起こした時でも担当医の方が「なぜ運転を止めなかった!?」と(まさしく「いわき病院事件」のように!?)責任を問われかねず、これまたJBM的にはてんかん加療歴のある患者には一律運転禁止を申し渡すべきということにもなりかねません。

相次ぐてんかん患者の事故を受けてか、客観的な証拠として免許取得・更新時に脳波なりをチェックするようにするべきだという意見も少なからず見られるようですが、通常の状態では脳波異常が出る確率はあまり高くないこともあって司法での取り扱いも脳波異常が無くともてんかんと認定したり、あるいは脳波異常がないからてんかんではないと認定したりと、今ひとつ曖昧な部分があるようです。
何より正確な診断のためには睡眠時と覚醒時両方の脳波を記録(完全脳波記録)することが必要だと言いますが、当然ながらこれは記録するのにも非常に長い時間が必要となるのは誰でも判る話で、しかも毎年毎年新規取得あるいは更新に訪れる膨大な免許取得者の数を考えると、コストや手間は間違って何とかなったとしても所見を見て異常の有る無しを判断する医者が到底足りそうにはありませんよね。
普通にちょっとあり得ないような事故を起こした場合には漏れなく脳波をチェックせよなんて声もありますが、それではチェックするのはてんかんだけで良いのか、てんかん患者ばかりを特別扱いして厳しく規制することに社会的正義は認められるのかという話になってきて、これは非常に面倒な問題になってきそうだなと思えます。
いずれにしてもてんかんに限らず対策を考える上で事故発生率などの基礎的データは必要になるわけですから、当面全数とは言わずともサンプリング調査であっても基礎疾患と事故率について何かしらの客観的な調査は行ってみるべきなのかとも思うのですが、あまり例のない調査だけにやってみると思いがけないような意外な結果が出てくることもありますかねえ…

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コメント

当面事故を起こした例に限ってチェックするくらいがせいぜいかな。
コントロール不良の症例は事故を繰り返しているようだからやらないよりはいいだろう。

投稿: aaa | 2011年8月10日 (水) 11時03分

てんかん関連の講演会を何度か聴講しましたが、てんかん発作~交通事故の対策はこれまでかなり曖昧であったようで
こういう事故があってから騒がれるという、原発事故と同じく極めて日本人らしい後手後手反応となっているのが現状のようですね。
自動車運転免許更新の際にてんかんの病歴云々というのもごく最近のことですからね。

一般的に原因疾患のはっきりしないてんかんは10~20歳に発症することが多いですが、脳梗塞後など原因疾患のはっきりしたてんかんはむしろ40歳以上の年齢にあります。特に脳梗塞後(麻痺軽度で運転可能)などは半年~2年で発作がでます。
こういう事故を根絶するためにはてんかん、脳梗塞後遺症(てんかん・高次脳機能障害)認知症など脳疾患のすべての人から運転免許取り上げるしかないでしょう。
ただ日本には電車もバスも満足にない、自分で自動車を運転できなければどこにも行けないような不便な地域がたくさんあります。
現実は高いリスクを冒して自動車を運転している人がたくさんいるのでしょうね。

投稿: 元勤務医 | 2011年8月10日 (水) 11時28分

ま、何の病気でも往々にして社会的問題を起こすのはコントロール不良な一部で、それが真面目な患者の迷惑になるという構図があるんでしょうけどね…
事故原因として考えた場合には極端な話、てんかん事故が年に一件とかいったレベルなら特別視するようなリスクじゃないということになります。
てんかん患者の事故率を他の疾患と比較することや、絶対数がどれくらいになるのかと言ったデータがないままで規制ばかり唱えるのではこんにゃくゼリーの二の舞になってしまいかねません。

投稿: 管理人nobu | 2011年8月11日 (木) 12時14分

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