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2011年7月 7日 (木)

医療の専門家も被爆リスクを危惧している!?

当たり前と言えば当たり前なんですが、先日こんな記事が出ていたということで改めて注意喚起をしておきたいと思います。

「がんばれ」ほどほどに 日本うつ病学会提言(2011年7月2日朝日新聞)

東日本大震災の被災者に「がんばれ」と言い過ぎないで――。日本うつ病学会の委員会(河西千秋委員長)が1日、被災者を支援する人たちや報道機関などに向けた緊急提言をまとめ、大阪市で始まった総会で発表した。

 提言は、「がんばれ」、「強く」、「絶対」といった励ましが、被災者には時につらく、「これ以上どうがんばればいいのか」と感じることもあると知ってほしい、とした。被災者にも、悲しいことや困ったことを相談するのをためらわないよう呼びかけた。

 学会によると、心の傷の多くは時間の経過とともに軽くなるが、2割くらいが悪化したり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったりする。震災から約4カ月たつこの時期、繰り返し励まされたり、過激な報道があったりすると、当時を思い出して重症化する恐れがあるという。

鬱傾向にある人に安易な「がんばれ」は禁句というのは今や世間的にも常識ですけれども、マスコミなどでは各界の著名人を多数投入してがんばれの連呼というのはどうなのかと以前から気になっていただけに、学会からこういうコメントが出てきたというのは歓迎したいと思います。
そうは言っても被災地の状況は未だ全く予断を許さないようで、しかも国会は全く停止状態だわ復興相は自爆技で辞めるわでいったい何をやっているのかと憤懣やるかたない方々も多いと思いますが、そんな中で今頃になってと思えるようなこんな調査結果が出てきたことが話題を呼んでいます。

福島第一周辺の子1000人調査 甲状腺微量被ばく45%(2011年7月5日東京新聞)

 東京電力福島第一原発の事故で、国の原子力安全委員会は四日、三月下旬に福島県内の第一原発周辺の市町村に住む子供約千人を対象に行った放射線被ばく調査で、45%の子供が甲状腺に被ばくしていたことを明らかにした。安全委の加藤重治審議官は「精密検査の必要はないレベル」と話している。

 調査は国と同県が三月二十六~三十日に、甲状腺被ばくの可能性が高いと予想されたいわき市、川俣町、飯舘村で、ゼロ~十五歳までの千八十人を対象に実施。45%の子供に被ばくが確認された。

 安全委によると、最高値は毎時〇・一マイクロシーベルト(一歳児の甲状腺被ばく量に換算すると年五〇ミリシーベルト相当)に上ったが、99%は毎時〇・〇四マイクロシーベルト以下。同様の換算で年二〇ミリシーベルトに相当するが、加藤審議官は四日の記者会見で「換算するには(調査の)精度が粗い。精密測定が必要な子供はいなかった」と述べた。

 国際放射線防護委員会(ICRP)勧告では、年間一〇〇ミリシーベルトの被ばくで発がんリスクが0・5%高まるとして、同量を緊急時の年間被ばく限度としている。今回の調査でも一〇〇ミリシーベルトを基準とし、一歳児の甲状腺被ばくの年換算でこれに相当する毎時〇・二マイクロシーベルトを超えた場合、精密検査をする予定だった。

 国が国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書では、千八十人の子供の甲状腺被ばくを調査したことを記しているが、何割の子供が実際に被ばくしていたかは明らかにしていなかった。

ちなみにこの調査に関しては放射性ヨードの半減期が8日しかないというのに、爆発から10日以上過ぎた何とも微妙な時期に調査をしたようにも見えるところに「また政府お得意の隠蔽体質か!」と作為を感じる人も少なからずいるようですが、実際問題として考えると震災直後の大騒ぎの時期にそこまでの調査を要求するのも酷ではないかなという気はします。
正確性に問題があるのは承知の上で最高値で年換算50ミリシーベルト、99%は同20ミリシーベルト以下というレベルをどう評価するかですが、甲状腺に1シーベルト(1000ミリシーベルト)を受けると癌になる可能性があり、2シーベルトを越すと確実にガンになるとのことで、実際に小児甲状腺癌増加が見られたチェルノブイリ事故後のウクライナ、ベラルーシ界隈ではこの300倍以上のレベルで甲状腺被爆があったようです。
それから考えるとそこまでのリスクとは考えなくてもいいのかなと思える数字ですが、もちろん平均値として精密検査は不要なレベルだとしても個々の被曝量は異なるわけで、個人が任意で検査を行う分には何も問題がないというのは健診などと同じ事ですから、地域の医療リソースを考慮しながら各自の判断で対応していただくべきだということなのでしょう。

ただこうしたデータが出てきますと事故自体の規模の差もあるのでしょうが、内陸のウクライナと違って平素から海藻などからのヨウ素摂取が多い日本では積極的なヨード剤内服は必要ないという意見は正しかったのかと思えるところで、今回の原発事故は巨大な疫学調査の対象であると言われるように今後も様々な検証がなされエヴィデンスが蓄積されていくのではないかなという気がします。
甲状腺に関してはそれとして、もちろん被災地界隈の子供達が揃って内部被曝をしてしまっているというのは予想されたこととは言え気持ちの良いことではありませんが、今のところ政府としては更なる積極的な対応までは行う気はないようですし、要するコストやマンパワーを考えると現段階ではまずまず妥当かとも思います。
全数チェックは行わずとも今後もサンプリング調査は続けるはずですし、その過程で新たな疫学的エヴィデンスが追加されるようになれば方針が変わる可能性はありますが、今のところは現地に投入できる医療リソースも限られているわけですから、「とにかく心配だから出来ることは何でもやれ!」も無茶な話でしょう。
被災地に近い人々はきちんとしたソースからの情報に耳を傾けながら、いたずらに過敏にならず各自が冷静に被爆防止対策を心がけていくということになりそうなんですが、そうした当たり前の対応では気に入らないという人も大勢いらっしゃるらしいのですね。
もちろん当事者が心配するなと言われても気持ちが悪いというのは当たり前の感覚なんですが、こうした際にこそ冷静であるべき外野がいたずらに不安を煽るような行為に荷担するということであれば、これは明らかに問題でしょう。

菅、福島の子供“見殺し”「問題ナシ」決め付けていいの?(2011年7月2日zakzak)

 福島市の子供10人の尿から放射性物質が検出された問題で、高木義明文部科学相は、健康に悪影響はないとの認識を示した。しかし、医療の専門家は「無責任な発言だ」と猛反発している。たった一度の検査で「問題ナシ」と決めつけたのは、都合の悪い情報を隠蔽し、目を背け続ける菅直人政権の姿勢を象徴している。

 「詳しくは健康診断しないといけないが、ただちに(健康に影響が出る)というものではない

 高木文科相は1日、閣議後の記者会見でこう述べた。

 尿は、福島県内の市民団体が5月下旬、6~16歳の男女10人から採取し、チェルノブイリ原発事故で周辺の子供の被曝量を調査したフランスの放射線測定機関に検査を依頼。全員から微量の放射性物質が検出された。

 放射線医学総合研究所の試算では、この子供たちが70歳までに受ける線量はセシウム134が7・8マイクロシーベルト、セシウム137が8・9マイクロシーベルト。一般人の年間被曝限度量1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト)よりはるかに低いというのが、問題ナシの根拠だ。

 果たして信用していいものか? 医学博士の中原英臣氏は「現段階で断定的に言うべきではない。無責任な発言だ。今回の事故はまったく未知の世界。問われているのは5~10年先のことで、ただちに影響がないのは当たり前」と憤慨した

 「汚染のない地域に住んでいれば『問題ナシ』と言えるが、子供たちは事故のあった原発から遠くない地域にいる。文科相は会見で『これから徹底した追跡調査、経過観察を行います』と言うべきだった。今は放射能の影響を受けやすい子供の検査を早急に実施しなければならない

 原発事故の発生後、枝野幸男官房長官が「直ちに影響はない」と繰り返したように、菅政権は一貫して国民の健康被害を軽視してきた。

 原子炉の状態も「メルトダウン(炉心溶融)ではない」と言い張っていたが、結局は、メルトスルー(溶融貫通)というさらに深刻な状況だったことが発覚。国民からは「現政権の言うことは何も信用できない」との声が多数あがっている

 子供を“見殺し”にする政権に、将来を語る資格はあるのか。

「医療の専門家は「無責任な発言だ」と猛反発している」なんて大上段に構えたことを言うものですから、普通に考えて放射線医療の専門家が何かを言っているのかと誰でも思うところですけれども、その「医療の専門家」なる人物がよりにもよって中原英臣というのはネタとしか思えないんですが(笑)。
ご存知のない方のために紹介しておきますとこの中原英臣なる人物、医療の現場とは全く縁もゆかりもない人物で、かつてウイルス進化論なるトンデモ学説を提唱してみたもののもちろんまともな学者からは全く相手にされず、その後何をトチ狂ったか知りもしない医療業界の裏話なるものを暴露すると称する本を次々と上梓し、一躍マスコミ業界ご推奨の「医療の専門家」としてご活躍されている人物です。
もちろん問題提起する自由は誰にでもあるものですし、ただでさえ政府発表がそもそも怪しいと言われているようなご時世だけにきちんとしたソースを添えて「それはおかしい!」と突っ込むのであれば全く問題ない話なのですが、単なる一介の電波芸者のコメントを専門家の発言ででもあるかのように捏造して「お前の発言は根拠が曖昧だ!」などと迫って見せるというのは、世間的には「お前が言うな!」のトンデモ行為ではないですか。
このあたりの業界お得意のテクニックというものは以前も紹介した通りですけれども(そう言えば、今回もあの時と同じくzakzakですね)、マスコミも毎回こういうことをやっているから「今回もまともな専門家からは望み通りのコメントを得られず、仕方がなしに子飼いのトンデモさんに声をかけたのだな」と見透かされるようになるわけで、確信犯でやるならやるでもう少し質の高い仕事をこなしてもらわないと笑えないというものですよ。

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