« 校庭でサッカーボールを蹴っていた小学生に損害賠償1500万円 | トップページ | 諸悪の根源がどこにあったのか »

2011年7月 1日 (金)

宇和島徳洲会 狙われるのには理由があります?

先日以来お伝えしている生体腎移植に関わる問題ですが、ひと頃行方不明が伝えられていたドナー男性が警視庁の事情聴取を受けているという話が入ってきました。
やはり仲介役となった組長にあった100万円余の借金帳消しという条件で臓器提供を承諾したということですが、組長に支払われた金額は1000万円と言いますから暴力団にとってはずいぶんと美味しい話になったのは間違いなさそうですよね。
今回のレシピエントである堀内利信容疑者については、当初は妻の経営する会社の従業員を養子縁組しドナーに仕立てることを画策していたところ断られたという話もありますし、フィリピンでの海外移植に失敗してからは手段を選ばずドナーを探していたという状況であったようです。
それだけ見境も無しに養子縁組をしていたわけですから戸籍などを見るだけでも状況は理解出来そうなものですが、実際には薄々事情を察知していたとしても断りにくいという病院側の声もあるようなんですね。

臓器売買:「養子縁組」に疑念も移植承認 拒否の根拠なく(2011年6月27日毎日新聞)

 生体腎移植を巡る臓器売買事件で、開業医の堀内利信容疑者(55)=臓器移植法違反容疑などで逮捕=から移植手術を依頼された板橋中央総合病院(東京都板橋区)の倫理委員会が、ドナー(臓器提供者)との養子縁組が偽装ではないかとの疑念を抱いたまま移植を承認していたことが病院への取材で分かった。病院側は「養子縁組の過程を不審に思ったが、拒否するまでの根拠はなかった」と釈明している。

 同病院によると、昨年1月下旬に堀内容疑者から、元暴力団組員の坂上文彦容疑者(48)をドナーとする生体腎移植の申し込みがあった。戸籍で親族確認をしたが、坂上容疑者とは約1週間前に縁組したばかりで年齢も7歳しか離れていないため、通常1回しか開かない倫理委を2回開催。日本移植学会の倫理指針に従い、別の病院の精神科医による聞き取りも行ったが、縁組偽装や金銭授受をうかがわせる証拠は見つからなかったという。

 このため倫理委は昨年3月、「指針や法に触れる積極的な証拠はない以上、患者の希望を拒否できない」と判断し、移植を承認した。ところが、移植手術直前に堀内容疑者から「ドナー候補の関係者から金銭要求があり、病院に迷惑をかけるので手術は行わない」と書面で連絡があり、移植は急きょ中止になったという。

 実際に移植手術が行われた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)も、養子縁組が繰り返されていることを戸籍で把握。倫理委員会を2回開いたが、堀内容疑者が詳しい説明を渋ったため、それ以上の調査はしなかったことが分かっている。

 学会の倫理指針は生体臓器移植の対象を原則として親族に限定。06年に宇和島徳洲会病院で起きた臓器売買事件を受け、ドナーの本人確認や自発的意思の確認の徹底などの規定を追加したが、手術の可否の判断は基本的に医療機関に任せているのが現状で、臓器移植法にも生体移植に関する特段の規定はない。【川崎桂吾、前谷宏】

この板橋中央にしても結局トラブルから中止にならなければ移植が行われていた可能性が高かったわけですが、何しろ移植を受けるくらいですからレシピエントが健康を害していることは明らかであるし、目の前で当事者であるドナーとレシピエントが「やってくれ」と声を揃えて言っているなら、医療の一般論として考えても拒否することは難しいというのは理解できます。
このあたりは例えば深夜救急における鎮痛剤中毒患者への対処などにも似たところがあると思いますが、怪しい、あるいは更に一歩進んでまず確実に黒だと言うところまでは推定できても、実際に断れるかどうかは様々な要因から総合的に判断せざるを得ないところで、こうした事件を防ぐためには単なる学会指針などに留まらず法的強制力のあるルール作りも必要なのかも知れません。
ただソセ中がやたらとやってくる病院があるのと同様に、限りなく黒に近いグレーの人々が集まってくる病院というのが実際に存在するというのには、やはりそれなりに理由があることなんだなと感じさせられるのがこちらの記事ですよね。

臓器売買:うちならすぐ移植と全国から患者 宇和島徳洲会(2011年6月28日毎日新聞)

積極的な生体腎移植の実施で全国に知られる宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)に28日、臓器移植法違反容疑で再び捜査のメスが入った。生体腎移植を巡る臓器売買事件の解明を進める警視庁による家宅捜索。逮捕された堀内利信容疑者(55)の移植手術を実施した同病院側は、偽装養子縁組の真相をどこまで知っていたのか。事件は新たな局面を迎えた。【川崎桂吾、前谷宏、喜浦遊】

 「大学病院では1年半も待たされるところ、うちの病院では問題がなければ1~2週間で移植を受けられます」。昨年9月に鹿児島県・奄美大島で開かれた腎移植がテーマの講演会で、堀内容疑者の手術を担当した執刀医(38)は、宇和島徳洲会病院での移植のメリットを語っていた。

 同病院には、腎移植を希望する腎不全患者が全国から押し寄せる。10年の生体腎移植件数は72件で東京女子医科大学病院などに次いで全国4位。右肩上がりで増えており、開業7年の地方病院としては異例の数字を積み上げる。同病院は、遠方からの患者のために約70キロ離れた松山空港まで送迎バスを運行しているという。

 数字を押し上げているのは、泌尿器科部長を務める万波(まんなみ)誠医師(70)の存在だ。市立宇和島病院時代を含めて1000件以上の生体腎移植を手がけた。ある患者は「よれよれの白衣にサンダル履き。しゃべり方もぶっきらぼうだが、患者のことを一番に考えてくれる」と信頼する。

 万波医師とともに堀内容疑者の移植手術を担当した執刀医も毎日新聞の取材に、「万波医師にテクニックを教えてもらいたい」と思い、同病院での勤務を希望したことを明かした。この執刀医を巡っては、堀内容疑者の妻則子容疑者(48)からドナー(臓器提供者)との偽装養子縁組の経緯などを聞いていた疑惑が浮上している。

 同病院は、06年に摘発された国内初の臓器売買事件の舞台となって家宅捜索を受けたばかりでなく、がん患者などから摘出した腎臓を別の患者に移植する手術を繰り返していたことも発覚。万波医師は「患者のため」と妥当性を主張したが、厚生労働省は転移の危険性があるなどとして、病気腎移植を原則禁止するようになった。

 また、臓器売買事件の公判では、被告となった患者の男性(当時59歳)から「万波医師も対価のことを知っていた」と指摘されたが、万波医師はその後の取材に「知らなかった」と否定していた。

腎移植の闇:臓器売買事件/下 縁組偽装、見抜けぬ病院(2011年6月26日毎日新聞)

 「20世紀で人類が手にすることができた最も効果的な医療技術。それが臓器移植です」。昨年9月、鹿児島県で開かれた生体腎移植の講演会。壇上から語りかける医師は当時、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)に勤務していた。医師は生体腎移植のメリットや手術の手軽さを説明し、続けた。「うちの病院では、養子縁組をされた後に移植を受ける方もいます

 その2カ月前。同病院では、堀内利信容疑者(55)=臓器移植法違反容疑などで逮捕=への移植手術が実施されていた。執刀したのは、泌尿器科部長の万波(まんなみ)誠医師と、この医師。堀内容疑者が逮捕され、ドナー(臓器提供者)の男性(21)とは偽装養子縁組だった疑いが浮上している。

    ◇

 堀内容疑者は移植を受けるために養子縁組の企てを重ねていた

 最初は知人女性に持ちかけた。死体腎移植の順番が回ってくる気配はなく、海外渡航移植も失敗。堀内容疑者は焦っていた。しかし「移植には養子縁組が必要」と説明すると女性は逃げ出した。

 頼ったのが暴力団組員、滝野和久容疑者(50)だった。1000万円の報酬で紹介されたドナー候補の坂上文彦容疑者(48)と養子縁組し、板橋中央総合病院(東京都板橋区)で移植を受ける話がまとまった。しかし手術直前の昨年5月、1000万円を追加要求され、計画は流れた。

 そして宇和島徳洲会病院。堀内容疑者は別の暴力団組員から新たにドナーの男性を紹介され、養子縁組のわずか1カ月後の昨年7月に移植を受けた

 両病院の倫理委員会は実態を見抜けなかった。宇和島徳洲会病院は、養子縁組が繰り返されていることを戸籍で把握したものの、堀内容疑者が坂上容疑者との関係の説明を渋ったため、それ以上調査しなかった

 臓器移植に詳しい医療関係者は「養子縁組直後は疑問を感じてもおかしくなく、普通なら手術を避ける」と指摘する。別の病院関係者からは「病院は捜査機関ではない。偽装養子や臓器売買を見抜くことには限界がある」との本音も漏れる。

 日本移植学会の倫理指針は生体移植のドナー条件を親族と定めるだけで、法的拘束力はなく、審査は病院任せだ。専門家は「法規制の強化や不正がないか調査する専門の第三者機関の設置などを議論すべき時期に来ている」と提言する。
(略)

「うちの病院では問題がなければ1~2週間で移植を受けられます」だの「うちの病院では、養子縁組をされた後に移植を受ける方もいます」だのと、全国を飛び回って営業活動を繰り広げていたというのですからそれは顧客も集まるでしょうが、そうやってノウハウまで提示した上でかき集めた顧客を甘い審査で次から次へと手術に回すのであれば、それはこういう事件も起こるだろうなと誰でも思いますよね。
もちろん宇和島徳洲会としてもそれなりに言い分はあるのでしょうが、何しろ徳洲会であり万波医師であるというだけですでに世間の偏見に晒されがちな状況にあるわけですから、その衆人環視の中でこういうグレーと取られかねない振る舞いを繰り返すというのも随分と勇気があるなと感じられる行為です(注:褒めていません)。
その上宇和島徳洲会では臓器は取ったら取りっぱなしだというのですから、それは「人を人ではなく単なる臓器としてしか見ていない」などと妙な誤解?を受けかねないのも当然でしょう。

術後ドナーと接触せず 宇和島徳洲会 検診のルールなし(2011年6月25日産経ニュース)

 「堀内クリニック」院長の堀内利信容疑者(55)に生体腎移植手術を行った宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)が、臓器提供者(ドナー)の術後の検診について明確なルールを作っておらず、男性ドナー(21)とは術後に1度も接触していなかったことが24日、関係者への取材で分かった。この移植でも暴力団関係者が仲介しており、ドナーへのこうした対応を問題視する声が上がっている。

 日本移植学会などが作成した「腎移植臨床登録」では、ドナーは術後、3カ月と1年ごとに移植を受けた病院での定期的な検診を定めている。宇和島徳洲会病院では、術後のドナーの検診について一定のルールはなく、患者ごとに対応しているという。

 同病院によると、堀内容疑者は昨年7月の手術後、8月23日に退院。9月22日と今年3月16日に病院を訪れ、執刀した万波誠医師が術後の経過などを確認した。しかし、ドナーとなった男性は術後、一度も受診していないという。

 日本移植学会の湯沢賢治広報委員は「ドナーの術後をケアは世界的な常識で、宇和島徳洲会病院の倫理観が問われる」と指摘。

 これに対し、同病院の平島浩二事務局長は、万波医師が学会の会員ではなくルールに縛られる必然性がないと指摘。遠方の患者が増加傾向にあり「都市部から離れた宇和島では、移動にかかるコストが大きい。ドナーへの経済的な負担は極力避けたい」と説明した。

まあ「万波医師が学会の会員ではなくルールに縛られる必然性がない」というのもその通りなんでしょうけれども、別にこんなところでそうまでけんか腰になる必要性もまたなさそうに思うのですけれどもね…
この宇和島徳洲会を巡っては、すでに院内倫理委員会でもどうやら今回の移植はグレーっぽいとあたりをつけていながら手術に踏み切ったところまでは判っていますが、その上で問われているのは移植目的の養子縁組という行為を認識していたのかどうかです。
すでに堀内容疑者の妻からは「執刀医には養子の経緯を伝えた」と言う供述が出ているということなんですが、そうなりますと病院側も単なる関係者ではなく容疑者の側に連なる者として事件への関与を疑われることになりますよね。

徳洲会執刀医、臓器売買認識の可能性(2011年6月27日産経新聞)

 生体腎移植をめぐる臓器売買仲介事件で、内科医院「堀内クリニック」院長、堀内利信容疑者(55)の妻、則子容疑者(48)が、「宇和島徳洲会病院で移植手術を受ける直前、執刀医に移植手術のために養子縁組を行ったことを伝えた」という内容の供述をしていることが27日、捜査関係者への取材で分かった。警視庁組織犯罪対策4課では、執刀医が偽装養子縁組の可能性を認識しながら手術を行った疑いがないか調べている。

 住吉会系組長から臓器提供者として男性(21)を紹介され、昨年6月に養子縁組を結び、翌月、同病院で移植手術を受けた。

 捜査関係者によると、同課の調べに対し、則子容疑者は、昨年7月の手術前に同病院の執刀医と面会した際、「仲介役の組長に男性を用意してもらい養子縁組を結んだことを伝えた」などと供述しているという。

 一方、この執刀医は27日、東京都内で記者会見し、「(則子容疑者が)まさか虚偽の話をするとは思わなかった」と養子縁組の経緯は伝えられていないことを強調した。執刀医とともに手術にあたった万波誠医師も病院に対し「違法性の認識はなく、粛々と最善を尽くした」などと説明。事件発覚後の会見で同病院側も臓器売買や偽装養子縁組の認識がなかったとしている。

 堀内容疑者らは組長側に謝礼を支払っていた疑いが浮上しており、執刀医がこれを知っていれば、臓器移植法に抵触することになる。同法では、臓器売買の事実を知りながら手術を行うことを禁じ、違反した場合は5年以下の懲役か500万円以下の罰金を科すとしている。

 堀内容疑者はこの臓器移植前の平成21~22年、別の住吉会系組員らに現金1千万円を渡し臓器提供を求めるなどした疑いで逮捕されている。

作り話をするにしても容疑者の妻がこういう話をするということの意味が今ひとつ判らないのですが、いずれにしても事実かどうかは今後の捜査の進展に委ねるしかないとしても、マスコミ報道などが高名な万波医師絡みだけに「そういうことがあっても全く意外ではない」というスタンスで行われているというのは気がかりですよね。
万波医師個人は純粋に患者思いの良い先生なのかも知れませんが、和田心移植以来とかくモラルという面から世間の余計な関心を引きやすいこの国の移植医療というものを牽引する立場の一人として嫌でも注目が集まるだけに、それなりに社会的責任というものもあるだろうことは自覚しておいていただきたいとは感じます。
万波先生個人としては「生涯一移植医でやりたい放題やって終われたら満足」という気持ちもあるのかも知れませんが、移植医療そのものはむしろこれから先にどんどん国内でも発展していかなければ国際問題にもなりかねないという時代に、失礼ながら御年を考えても医師人生の先がそう長いとも思えない一個人が後先考えず暴走をされては、かえって後の移植医療そのものの後退を招くのではないかということです。
養子移植の是非など移植医療そのものの範囲についても議論が必要な部分は多々あるように感じますし、社会的な理由によって医療の範囲を規制していくというのも時にやむを得ない部分もありますが、医療自身の起こした問題によって余計な制約が加えられるということになれば、地道に真面目に移植医療の未来を信じて働いている現場の士気も下がってしまうでしょう。

|

« 校庭でサッカーボールを蹴っていた小学生に損害賠償1500万円 | トップページ | 諸悪の根源がどこにあったのか »

心と体」カテゴリの記事

コメント

万波医師にも徳洲会にも義理も同情もありませんが、警察がこうやって捜査情報をリークして世論(&マスコミ)に対して次の獲物の逮捕の根回しをしていく手法にはムカムカします。

投稿: JSJ | 2011年7月 1日 (金) 09時09分

いつの間にか普通に関係者情報が流れるようになってますけど、法律的には問題ないんでしょうかね

投稿: 管理人nobu | 2011年7月 1日 (金) 11時19分

★「臓器売買」逮捕の内科医が胸にしまう「養父の死」★ (週刊新潮7/7号)

「25年前のことです。堀内の養父が撲殺される事件がありました。
当時は<マンションで医師殺される>と小さく報じられただけでした」
そう声を潜めるのは捜査関係者。
養子縁組を繰り返した堀内自身が養子だったとは。
そして、親族が殺害されていたとは驚く。いったいどんな事件だったのか。
「堀内の養父は、内科医院近くのマンションで、29歳のホストと半ば同棲状態
にありました。で、ある夜、一緒にホストと酒を飲んでいる時に養父は、貸して
いた9万円を返済するようホストを詰った。すると、逆上したホストが、バールで
頭蓋骨が陥没するほど殴って殺したんです」
布団の上で毛布が被せられ、うつ伏せで見つかった遺体は”女装姿”だったという。

「養子の堀内は相当ショックだったと思いますよ。もともと内科医院は養父が院長で、
堀内は41年前、中学生のころに養子に入った。金沢医科大学を出させてもらって、
わずか2年後のことだったんですから」
堀内は医院を継ぎ、その3年後に則子と結婚、娘を一人もうけた。
透析の苦しみからは解放されたが、養父の死に加え、自らの罪を背負うこれからの
人生は、苦難に満ち溢れているに違いない。

投稿: 堀内容疑者の過去 | 2011年7月 1日 (金) 16時28分

養父の死と今回の臓器売買とは何の関係もありませんね。

警察を擁護するつもりはないですが、マスコミは欲しい情報貰えないとヤクザみたいな警察バッシング、訳の分からない犯罪者擁護とか平気しますからある程度しょうがないですよ。

投稿: | 2011年7月 1日 (金) 18時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/52082167

この記事へのトラックバック一覧です: 宇和島徳洲会 狙われるのには理由があります?:

« 校庭でサッカーボールを蹴っていた小学生に損害賠償1500万円 | トップページ | 諸悪の根源がどこにあったのか »