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2011年7月 9日 (土)

漁業も特区を構想中だそうです、が…

以前に「被災地を医療特区に」ということを書きましたが、もともと今回の被災地は全国に名だたる医療過疎地域であることに加えて、今回の被災で更なる医療資源の流出を招くことが確実な状況ですから、通り一辺倒に再建を目指すというだけでは到底おっつかないと言う現状認識がその背景にあったわけです。
被災地と言えば当然ながら医療以外の産業も様々なものがあり、特に三陸の好漁場を抱えてきた現地の水産業は壊滅的な打撃を被ったことが知られていますけれども、こちらの方では水産特区導入に対して現地から根強い反対があるというのですね。

水産特区阻止アピール 石巻で「漁業の未来考えるつどい」学者、漁協、消費者ら意見(2011年7月5日三陸河北新報)

 みやぎの漁業の未来を考える県民のつどい「『水産特区・漁業権をめぐる問題』でのシンポジウム」(東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター主催)が3日、石巻専修大で開かれた。県内から約400人が参加。「地元主体の復興を進め、漁業の秩序を壊す水産特区を撤回させよう」とのアピールを採択した。

 初めに、センター世話人の庄司捷彦弁護士が「漁協の意志、意向を無視した特区の提案に漁業者の怒りが強まっている。課題山積の中、水産県宮城を多面的に考え、水産復興の道筋を探りたい」とあいさつした。

 元山形大教授の綱島不二雄さんが、村井嘉浩知事の特区構想について問題提起し「民間企業への漁業権の開放、漁港の集約が主な内容。民間参入がないと、水産復興が動かないというのはおかしい。小さい浜で漁が再開できる仕組みを早急につくるべきだ」と指摘。

 漁港の集約について「流通面でいいが、漁村は家族が役割分担して成り立っており、サラリーマン化できない。漁村が崩壊し、漁業権が消滅する」と述べた。

 その上で「企業は海を汚し放題。民間への開放は甚大な津波被災のさなか、話にならない。海は国民のもの。漁民が生き生きと働き、浜を守ってもらう。漁業権を守ることの大切さを確認してほしい」と強調した。

 この後、特区構想に反対する県漁協の木村稔経営委員会会長が基調報告した。

 木村会長は「一部漁業者の同意があるからといって、漁場の調整・管理を企業に委ねた場合、漁場の一元管理は崩れ、安定した生産の維持は難しい。企業は魚価の低落で採算に合わないと撤退する。何とか特区を阻止したい」と力説。

 さらに「復興は企業のためではない。50年続いた漁業の復興策として、漁協が漁場の一元管理をし、流通、加工業者、漁業者が連携する枠組みをつくる必要がある」と訴えた。

 引き続き、水産加工業、消費者などの代表4人が、それぞれの立場で特区をめぐる問題で意見を述べた。

 全国漁業協同組合連合会(全漁連)は、政府の復興構想会議が提言した漁業への参入規制を緩和する「水産特区」に事実上反対する決議案を、6日に都内で開く緊急全国漁業代表者集会で採択する。

水産特区の慎重検討求め決議(2011年7月6日NHK)

東日本大震災の復興に向けて検討されている「水産業復興特区」は、地域の意向を踏まえない企業の参入につながるおそれがあるとして、全漁連=全国漁業協同組合連合会が、政府に対して慎重な検討を求める決議を採択しました。

水産業復興特区は、民間企業の資本を活用し、震災で被害を受けた水産業の復興につなげようというもので、宮城県の村井知事が提唱し、政府の復興構想会議の提言に盛り込まれました。しかし、被災地の漁業関係者の間で、地域の意向を踏まえない企業の参入につながるという懸念も出ています。このため、全漁連が6日、都内で集会を開き、全国の漁業関係者およそ250人が参加しました。この中で、全漁連は、特区の構想が地域の秩序の崩壊につながるものであれば、導入を容認することはできないとして、政府に対して、地元の漁業者の意向を踏まえ、慎重に検討するよう求める決議を採択しました。集会で、全漁連の服部郁弘会長は、「特区構想は、われわれが長年にわたって築き上げてきた漁協が地域の漁業権を管理するという根幹を揺るがしかねない。地域の意向を踏まえない強引な企業の参入には反対だ」と述べました。

全漁連「水産特区」反対を決議…自民、共産も(2011年7月6日読売新聞)

 全国漁業協同組合連合会は6日、都内で緊急集会を開き、政府の東日本大震災復興構想会議(議長・五百旗頭(いおきべ)真防衛大学校長)の提言に盛り込まれた「水産特区構想」に反対する決議を採択した。

 全国の漁業者ら約230人のほか、自民党の石破政調会長、共産党の志位委員長ら野党幹部も出席し、特区構想に反対する姿勢を打ち出した。民主党農林水産部門会議の佐々木隆博座長も出席したが、「皆さんの思いを政権幹部に伝える」と述べるにとどめた。

 岩手県漁協の大井誠治会長は集会で「震災で三つの涙を流した。悲しみの涙、感動の涙、被災地に不安や混乱を招く行動への憤りの涙だ」と語った。

しかし漁協さんの方では自分達のやってきたことにもの凄いプライドがあるかのようにも聞こえますけれども、実際のところそこまで素晴らしいものだったのかどうかが問題で、何しろ反対をアピールするにしても主語が漁業従事者ではなく漁協ですからね。
ま、第一次産業は何しろ地場と密接に結びついていますから地元関係者からこうした反対が出ることは予想されたことですし、漁協が反対するのは日医が被災地の医療特区に反対するのと同様のものかとも思うのですが、この場合地元手動の復興というもので再び漁業が再生するのかどうかのビジョンを示してもらわなければ単なる反対のための反対になってしまうでしょう。

恐らく漁協としては港湾や漁船その他の関連インフラに関しては国や自治体の支援を仰いだ上での再建を意図しているのだと思いますが、当面はお爺ちゃんが再び船に乗って出漁出来るようになった!よかったよかった!で新聞ネタにはなっても、こちらも漁業従事者の高齢化(半数が65歳以上と言います)、後継者不足で将来の漁業が立ちゆかないと懸念されていることには変わりないわけです。
三陸の場合は世界三大漁場と言われるほど漁業資源はそこにあるわけで、後はそれをどう活用するかだけを考えればいいと単純に考えてしまいそうですが、漁業があるから生活が成り立っている地域が多数あったと考えると、今回の震災で若年世帯の県外流出や沿岸部住民の内陸移住などが言われるわけですが、漁村の崩壊は地場漁業の破綻に直結するということにもなりかねません。
5月20日の河北新報の記事によれば今回の震災を受けた調査で宮城県漁協の組合員の3割近くが漁業をやめる考えを持っていると言う結果があり、廃業希望者は高齢の正組合員と、農業を兼ねる准組合員に多いということなんですが、好意的に取れば若くやる気のある組合員に業務を集中する好機とも言えるものの、そもそもハコモノの再建はなったとしても必要な漁業従事者の数を確保出来るのかが疑問ですよね。

いずれにしても企業参入をこうまでバッサリ切って捨てたとなれば、今後の漁業復興に対して漁協が全面的な責任を負ってのこととなりそうですが、その漁協のイニシアチブということに関してはそれが単なる旧態依然の利権保持につながらないかということも含めて、各方面から様々な声があるようですね。
率直に言ってこの地域がそれほど資本的に豊かであるという話も聞きませんから、少なくとも現地の漁協が左うちわでウハウハ言っているということもないのでしょうが、全国的にも漁協の経営危機が続く中でどこまで主体性を発揮できるかが問題ですし、逆にやる気のある漁業者にとっては古いやり方から一気に改革を推し進める好機とも映っているようです。

「水産業復興特区」漁業権の民間開放で甦るか三陸漁業(2011年6月3日クローズアップ現代)

   陸前、陸中、陸奥(むつ)の3つを合わせて言われる三陸1 件。その三陸沖の好漁場を擁して発展してきた沿岸の町がガレキの山と化して3か月が経とうとしている。カツオ漁が始まる6月は活気づくはずが、壊滅的な打撃を受けていまどん底にある。

   そんななか、宮城県石巻市では「震災前よりも強い水産業に生まれ変えさせたい」と、従来からのしがらみを断ち切り独自の再生に挑む動きが出てきた。背景にあるのは、村井嘉浩宮城県知事の「水産業復興特区」で、成功すれば震災前から高齢化、若者の漁業離れなどで衰退しつつあった水産業再生のモデルケースになるのだが、地元漁協の猛反発も表面化している。

全国一の水揚げ・気仙沼のカツオ壊滅

   全国有数の水揚げを誇っていた三陸沿岸の町々を津波が襲い、多くの漁船、市場、水産加工場が飲み込まれ、被害総額は9000億円に上るという。国は地盤のかさ上げなど港湾整備に補助金を出して復旧作業に取り組んでいるが、他の支援については手が回らず遅れている。

   カツオの水揚げ全国一の宮城県気仙沼港。6月になると三陸1 件沖のカツオを追って全国から漁船が集まり活気づく。今年は絶望に近い状態だ。カツオを冷やすのに必要な製氷会社は全滅に近い。カツオ漁に欠かせない餌となるイワシが三陸沖では例年の2割しかとれない見通し。静岡県まで行ってイワシを買い付けているが、輸送代は1回で100万円の赤字になる。それでも、他の漁港に水揚げを持って行かれるのを防ぐために、背に腹を代えられないのだという。

漁業者と水産加工会社が共同会社

   こうした厳しい現状は、三陸沿岸の他の漁港も同じだが、国の支援を待ってはいられないと、石巻市の水産加工会社は新たな構想に取り組みはじめた。創業50年を超える水産加工会社の副社長・木村隆之さんは、「厳しいけど水産業を変えなければと考えている。このピンチは、逆に今までのしがらみを外せる可能性が十分ある。強い産業になるようやらなければ」という。

   木村さんが目指すのは、漁業者と水産加工会社が共同運営する法人の設立。趣旨に賛同する消費者から1万円の出資を募り、それを復興基金に漁船や漁具を調達し、付加価値のある商品を直接消費者に届ける。市場や問屋を通さない新しい水産業を目指しており、名付けて「三陸海産再生プロジェクト」。目標の会員は10万人で、始まったばかりだ。

   その下敷きとなったのは、知事の村井が打ち出した「水産業復興特区」だ。地元漁協が独占してきた漁業権を民間に開放し、民間資本を生かして地元漁業者と加工・流通業者が一体となって漁業を行うというものだ。ただ、村井は地元漁協との調整をせずに構想を発表したため、既得権を失うのを心配する地元漁協が猛反発し、特区構想の撤回を要望している。

漁協システム「面倒見てくれるがコスト高」

   キャスターの国谷裕子が「水産加工会社の新たな取り組をどうお考えですか」と聞く。岩手県陸前高田市出身で海洋政策論が専門の小松正之(政策研究大学院大学教授)は次のように答えた。

    「日本の沿岸漁業は作るだけで終わっており、流通と加工の連携が乏しかった。それを一つに束ねて対応する考え方は、一歩前に進めたものだと思う。村井知事の言われた漁業権の問題で、民間へのリンケージを考えることも将来的には必要だ。
    県が漁協に養殖などの漁業権を与え、組合員がそれを使うのを行使権というが、この行使権を得るために20万円、40万円、100万円を払うのが一般的なケース。漁協に属し、行使権の中でやっていれば漁協が何もかも面倒を見てくれるが、高くつく
    一方、漁業者が直接、知事から権利を得れば、販売や技術開発など単独ですべてやらなければならないが、半分は漁協と組み、半分は新しい形でやる方法もある。また、登記して自分の権利とすれば、若い人に譲渡もでき、貸し与えることもできる。
    知事が言っているのはそうした多様性、選択肢を持たせるという意味だと思う」

   既存の殻を打ち破り、新たな枠組みが成功すれば、モデルケースとなり全国の水産業を変えるきっかけになる可能性がある。そのチャンスを生かせるのは苦境に立たされた今しかないのかもしれない。

漁協は「復興の核」たり得るか【番外編】まず大幅な増資で体制を整えよう(2011年7月8日日経ビジネス)より抜粋

 東日本大震災後、漁業復興の核になるのは漁業協同組合(漁協)だと岩手県の達増拓也知事は言う。国も漁船の共同利用など震災対策補助事業の受け皿として漁協の役割に期待しているようだ。

 しかし、漁協は本当に復興の核たり得るのだろうか

 この10年近くの間、漁協は積もり積もった不良債権や損失の処理のためリストラ、合併に追われ、漁業向けの融資をばっさりと削り落としてきた。やる気のある漁師を応援するどころか、我が身を守るので精一杯だったからである。

 数字を見てみよう。

処理できないまま繰り越した損失は約450億円

 農林水産省の年報によると、2010年3月末現在の漁業向けの全金融機関による貸出残高は1兆1550億円で、10年前の2兆3231億円の半分。漁業界にとってのメーンバンクとも言うべき、漁協、県域の信用漁協連合会、そして農林中央金庫というマリンバンク系統の漁業貸出残高も同じ期間に44%減、7840億円(系統内貸借を除く純残高)に縮んでいる。

 消費不振による魚価の低迷などでこの間、漁業の生産額も減り続けているが、漁業の継続を支えるべき融資の減り方はそれよりも大きい。急激な与信残高減は、漁業不振というより、漁協自体の経営不振に起因し、それが漁業の発展を妨げる悪循環に陥っているといってもいいくらいだ。

 漁協の経営が行き詰まれば、漁師の自立を助けるどころかお荷物になってしまう。危機感を抱いた水産庁が漁協の欠損金対策に本腰を入れ始めたのは2007年のことである。

 全国に漁協はおよそ1000あり、漁師たちから集めた出資金の総額も2000億円ほどあるが、当時、処理できないまま繰り越した損失(欠損金)が450億円ほどに膨らんでいた。漁協を250に集約しようという全国漁業協同組合連合会(全漁連)の構想も、漁協の欠損金の扱い方が妨げになってほとんど進まないままだ。

 当時、水産庁は欠損金が5000万円以上あり、経営内容から判断して10年かかっても処理できそうもない「要改善漁協」を110選び出し、徹底的なリストラ、場合によっては破綻処理を迫ることにした。信漁連による漁協への貸し倒れが増えることに備え、農林中金にも150億円の特別拠出を依頼し、資本注入を拡大する態勢も整えた。
(略)
 漁協のバランスシートは東日本大震災で大きく傷ついた。大いに同情すべきところもある。しかし、被災前からも未処理損失の解消など重い経営課題の解決を迫られていたという事実もきちんと知っておくことは大切である。漁業の復興とは、漁師たちの事業の復興のことであり、漁協の再建とは峻別すべきものだからだ。

 例えば6月30日に岩手県が公募した「いわての漁業復旧支援事業」を見てみる。震災で仕事を失った人を復旧途上の漁業の現場で雇用し、その人件費のほとんどを補助するという事業なのだが、あらかじめ委託先は漁協が自営する定置網か養殖場に限るとうたってしまっている。

 海中に固定する定置網、養殖いかだの復旧には人手がたくさんいる。お天気次第で作業の予定も立てにくく、漁業者はみんな苦労の連続である。それなのに、どうして漁協の自営だけ補助するのか

漁協に限って出されることが腹立たしい

 「岩手県は定置網の復旧にも補助を多く上乗せしてくれ、漁師の負担が小さくて済む。その姿勢はとてもありがたい。しかし、漁協だけを優遇するような補助が次々出てくるのはいかがなものなのか

 岩手県釜石市での定置網事業を振り出しに、宮城県の石巻市、女川町、さらに静岡県熱海市でも定置網を経営する泉沢水産の泉沢宏専務は苦言を呈する。
(略)
 網や漁船の多くを失い、当面は人手がどうしても余ってしまうため、本格的な事業の再開まで北海道の同業者の元で従業員を一時引き受けてもらっている。牡鹿半島周辺に居残る従業員も泉沢さん以下全員の給料をカットし、雇用をかろうじて維持している立場からすれば、失業者雇用の補助金が漁協に限って出されることが腹立たしい

抜本的な資本増強、体力強化が先

 経営者としては、販路拡大のため企業との提携にも熱心で、熱海の定置網事業では日東製網と共同で有限責任事業組合(LLP)を設立し、互いにできる範囲の仕事を協力しあうかたちで漁獲物の販路拡大に取り組んでいる。

 「商社や水産会社の資本を受け入れることも個人的には賛成。市場のニーズが分かるし、販売を目的とした生産体制を組め、将来へのビジョンも描きやすくなるだろう」

 被災後の事業再建にあたって、自分でもファンドの活用など資金調達の可能性を模索してみたこともあるといい、宮城県の村井嘉浩知事が養殖業への企業参入を想定して提唱した水産業の特区構想にも共感している。
(略)
 国や自治体の補助金に頼るばかりでは漁協が復興の核になりえない。自らの努力でしっかりした財務基盤を築いてこそ、はじめて漁協はやる気のある漁師を助けることができるようになる

これでは「海の不動産業」

 最後に、ここ数年間、特に九州、四国、紀伊半島などで急速に広がったマグロ養殖事業のことも少し紹介しておこう。

 三菱商事、双日、日本水産、日本ハムなど大手企業が競うように新規参入したが、これら大手資本は無理矢理、沿岸漁場の入り口の扉をこじ開けたのではない

 真珠、鯛など伝統的な養殖事業が破綻し、使われないまま放置されていた漁場を漁協が借りてくれと頼み込んだケースや、農林中金が漁協の欠損金解消策として養殖漁業権(区画漁業権)の企業への貸し出しをあっせんしたケースもある

 漁協が養殖企業誘致に走った背景は様々だ。魚種は異なるとはいえ、西日本で起きた養殖漁場貸し出しの動きが、三陸にも波及する可能性も全くないとは言えないだろう。

 しかし、そこで考えておきたいことが1つある。漁協が欠損金対策として、養殖漁場を貸し出すケースについてである。漁業振興の効果もあるにはあるが、これでは「海の不動産業」と言われても仕方がないだろう。

 もし、漁協が養殖漁場の新増設を県に申請し、そしてそれが地元漁師の利用ではなく、最初から企業への貸し出しを目的にしているようなケースである時、漁協をほぼ無条件に優先する養殖漁業権のあり方は問い直されるべきだろう。宮城県の水産特区構想を引き合いに出すまでもなく、海は漁協のためだけにあるわけではないからだ。

こうして客観的なデータもならべて見ていきますと、必ずしも「そっくりそのまま昔通り」という再建が本当に地域にとっても良いことなのか、単に漁協という業界団体にとっていいことに過ぎないのではないかとも思えてくるという点では、今やなんでもかんでも変えること自体に反対といった体にも見える日医あたりと似た構図にも思えてきます。
日医の場合はすでに末端のまじめな開業医にすら存在意義を問われかねないくらいに現場の意識と乖離してしまっている部分がありますが、漁協の場合も真面目でやる気のある漁業者ほどその存在を足かせにしか感じていないということになれば、果たしてお金やリソースをその下にばかり集中させていくことが健全で望ましいことなのか考えてみなければなりませんよね。
漁業の場合は養殖や資源保護の取り組みなども近年なされているとは言え、基本的には自然からの収奪産業であるわけですから、早い者勝ちの奪い合いという側面を多少なりとも緩和するためにも漁業権設定もやむなきところがあるのでしょうが、その漁業権自体かねて封建的な世襲特権だという批判もあり、国としてその保護にのみ大きなお金を注ぎ込むことが良いのかどうかという議論はあっていいはずです。

せっかくの好漁場を間近に要していながら単に「海の不動産業」の利権を保証するに過ぎない存在になっているのだとすれば、いっそ今回の震災を機に全てのしがらみをなかったことにしてゼロから新しく作り上げた方がよほどすっきりするかも知れず、何より震災を単に災難とだけ捉えるよりもよほど前向きですよね。
企業参入で漁場管理が後退するという声は根強くあるようですが、幸い三陸沖に関してはしばしば日本海などで言われるような近隣諸国による密漁などもあまりないだけに、きちんとした規制などによって対応はしやすいんじゃないかという気がしますし、特区導入のモデルケースにはしやすいのかなと思えます。
何にしろ漁村のみならず広く地域にとってよりよい利益につながるという前提があってこそ特区構想も生きると思うのですが、くれぐれもこちらが新たな利権の温床になって旧態よりも更に退歩するということだけは避けて頂きたいものです。

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コメント

実際に何かを変えてみたところ、所定の効果が出て、なおかつ悪影響が想定の範囲/規模で収まることが確認できる所まで行って、初めて改良と言える。変えただけだったらただの変更に過ぎない。といういつもの話ですかね。

変更したい人はただの変更提案を改良とか改革と勝手に名付けて夢だけを語ることもしばしばですが、変更される人にとっては変更が発生することしか確定していない上に、変更が改良でも改革でもなかったことが判明したときに、変更される人に降りかかる悪影響が今よりどのくらい大変なのかも分からないと怖いです。

そこを不安に思う人が、最悪な状態がある程度精度良く推定可能で、それなりに実績のある対処法が確立されている現状への復旧が一番低リスクであると判断すること自体は自然なことだと思います。

投稿: 通りすがり | 2011年7月 9日 (土) 14時45分

そのリスクを覚悟でチャレンジしてみるというのが特区と言うものでしょ

投稿: | 2011年7月 9日 (土) 23時27分

漁業者の3割が廃業すると言うのに従前通りのやり方で成功するとも思えません。
特区構想も一考の価値はあります。

投稿: | 2011年7月10日 (日) 00時18分

被災地の医療と同じで、旧来の体制は崩壊していて元通りにもならないことが確定しているのに、形ばかり復旧してみましたという行為がどれほど意味があるのかです。
今なら既存の制度を壊すという一番面倒な部分をすっ飛ばして新しいやり方にチャレンジできる好機ですのに、やる気のある若い人たちの声が通らないというのは非常にもったいない話ですよ。

投稿: 管理人nobu | 2011年7月10日 (日) 10時13分

うーむ。いくつか思ったことを。
価値観の違いに過ぎないかも知れないのですが、成功が保障されていない以上、
失敗のことも考えたい、というのと、失敗するのなら未知の失敗より既知の失敗の方が
ましである確率が高いからそちらを選びたい、と思いました。
あと形だけ復旧しただけでもいくつか良いことはあると思います。
1つは何も無い現状よりは良い、ということと、たとえ結果的に崩壊が避けられなくても、ゆっくりと崩壊できることです。ゆっくりと崩壊することで得られる利点は崩壊の進行過程がある程度制御できることと、当事者の環境変化が緩やかになることにあると思います(どちらかというと地域医療問題は対策が拙速に過ぎたと思います。緩やかに制御されたリストラの例としてはわが国では農業政策が代表的だと思います)。
あと、生き残った人が沢山いて人間関係や付随する法律上の権利関係が残っている以上、被災地域で「全てが」無に帰した訳では決して無いと考えています。
私が一番気にかかるのは、このスレッドでご紹介いただいた意見の大半が被災地に残っているものの存在を程度の差はあっても相対的に軽視しているのではないかということです。
被災された方々それぞれに、失ったものと残されたものはまちまちのはずです。そういう差異に触れずに一律にああするとかこうするとかという発言はどれも被災者間で残されたものを平等に再分配させるという構造を持っているように見えます。ちょっとここまで。

投稿: 通りすがり | 2011年7月12日 (火) 13時10分

儲け主義の会社に手を出されたら漁業が荒廃するなんて反対論にも一理あるように見えて、結局は日本の社会全部がいつの間にか後ろ向きの事なかれ主義に陥ってしまっているってことなんでしょうね。
それを突き破って被災地でしか出来ないということをやってしまうことが、災い転じて福となすということにつながるのかも知れないですね。
保守的な人が多そうな土地柄ですから思い切るのも難しいんでしょうけど…

投稿: ぽん太 | 2011年7月12日 (火) 17時40分

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