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2011年7月19日 (火)

さいたま市でのたらい回し事件続報

先日もお伝えしました埼玉の「12病院”たらい回し”事件」ですが、かねてその旨が報じられていた通り消防救急側を中心とした事後検証が終了、報道陣に公開されました。

病院の受け入れ拒否、死亡可能性高めた 消防局が検証 /埼玉(2011年7月16日朝日新聞)

 さいたま市南区で6月、車いすの無職星野美穂さん(当時38)=同市見沼区大谷=が乗用車と衝突して死亡する事故があった。この事故について市消防局は15日、11カ所の病院に受け入れを拒否され、救急車の到着から搬送まで2時間以上かかったことが死亡の可能性を高めたとする検証結果を発表した。

 市消防局によると、救急隊が現場に着いたのは6月29日午後10時25分ごろ。星野さん自身は搬送を拒否したが、左頭部がはれ、腰の痛みを訴えたという。隊員は電話で病院を探したが「当直医は耳鼻科」などと断られ続けた。星野さんは最終的に、一度拒否された市内の救急指定の総合病院に運ばれたが、30日午後2時ごろ、外傷性くも膜下出血などで死亡した。

 検証結果では、医療機関の受け入れと救急隊が搬送先を決める体制が不十分などとし、搬送時間がかかって死亡した可能性が高まったと結論づけた。

救急患者「たらい回し」で死亡 医療と連絡「不十分」 /埼玉(2011年7月16日東京新聞)

 さいたま市南区で六月二十九日夜、車にはねられた車いすの女性(38)が救急搬送時、病院に受け入れを次々と断られて死亡したことを受け、市消防局は十五日、検証結果を発表。「(医師不足による)医療機関の受け入れ態勢、収容先を決める救急内部の連絡が不十分で、搬送に時間がかかり死亡の可能性が高まった」と結論付けた。 (前田朋子)

 さいたま市は今後、救急搬送時に手間取った際の手順を明文化。市内二十四カ所の二次救急医療機関に対しては、専門外でも一時的に収容してもらうよう依頼する方針。

 市や上尾市などの消防本部、医師会などでつくる「県中央地域メディカルコントロール協議会」が各病院や救急隊の対応を検討。その結果、事故後、救急隊は現場で搬送先を探し長時間が経過。「さいたま市消防局の指令センターに連絡し、搬送先を探してもらうなど協力を仰ぐ態勢が構築されていなかった」と指摘した。

 さらに、女性は手足と頭にけがをし、受け入れる医療機関側も整形外科か脳外科か、二次救急か三次救急かどちらで診察すべきか迷ったという。女性は最終的に、三次救急医療機関のさいたま赤十字病院(さいたま市中央区)に収容されたが死亡した。

 市の関根正明救急課長は、遺族に「死を無駄にしないでほしい」と言われたことを明かし、「命を救えず非常に残念。関係機関と協力して、救急医療体制を構築したい」と話した。また、市は受け入れを断った病院数を十二から十一に訂正した。

しかし医療側の受け入れ体制が整っていないとは今頃何を言っているのですけれども、それに対しての対策が「無理でも無茶でも受け入れろ」では対策と呼ぶに値するのでしょうか?(確かに検証した消防救急側からすれば患者を置いてくれば仕事は終わりでしょうが…)
二次救急に対して「専門外でも一時的に収容してもらうよう依頼する方針」というのは、市内二十四カ所と言うくらいですから本当に名ばかり救急を掲げている施設も少なからずあるでしょうに随分と無茶なことを言うと思いますが、そもそも前回にも書きましたようにこのレベルの症例を盲目的に数撃てば当たる式でやっても現場は対応が難しいはずですよね。
こうした重症症例の場合来た時点でおいそれと再搬送も出来ないという状況になっていることがままありますから、専門外だろうがとりあえず受け入れろと言われても対応不可能であれば来た時点で不幸な結果になるのが判りきっているとも言え、三次救急対応が予想されるような症例を二次救急でやれというのがそもそも無理なのではないかと思われます。
日本ではどんな医療機関でも特に選別もされず雑然とした患者層がやってきてしまいますけれども、本当に限られた医療リソースで重症患者に最適効率の救急を行う気なら、高次医療機関は搬送対応に特化して一般診療は受けないように厳しい受診制限を行う、そして診断のついた患者は片っ端から下位施設に転送させるといったような病病連携を構築しないと難しい気がしますが、それで病院経営が成り立つかどうかもまた別の問題ですよね。

今回の事件はそれとして、さいたま市の場合これに限らず以前から救急医療が危ないと言われ続けていたにも関わらず、未だに抜本的解決が図られていないという状況にあったことが注目されます。
ちなみにさいたま市でも例によって救急車の適正利用の呼び掛けというものが行われていて、約10分に1回の割合で救急車が出動している(平成21年度)という状況ですから、救急隊としては引受先がなく物理的に救急隊が拘束されてしまうという状況は非常に困るんだろうなとは想像出来ますよね。
もっともそうした状況は多かれ少なかれ全国どこの地域であっても同じようなもので、当直を回すのも苦しい施設が多い中で「当直医が専門外なら当該診療科の医師を呼び出せばいいじゃないか」なんて話にしても、その医師が当該診療科の一人医長で平素から昼夜の別なく激務をこなしているといった場合に、当直医が気軽に患者を受けて「あとよろしく」で丸投げする気になるかどうかですよね。
要するに需要に対して明らかに供給過少であり、切羽詰まった現場ほど大きな仕事をいきなり引き受ける余裕などないのは当然で、結果として一番割を食うのが生きるか死ぬかの最重症患者ということになってしまうのだとすれば、どうしたっておいそれと改善の見込みのない供給側の能力向上よりは需要の側の抑制が必要という話になるはずですが、常に民意をうかがう行政側がそれを認められるかどうかです。

拠点病院も医師不足  受け入れ拒否/診療所連携、難航も /埼玉(2011年7月13日読売新聞)

2011知事選  課題の現場

 深谷赤十字病院(深谷市)に先月中旬、心肺停止状態の4か月の乳児が搬送されてきた。救急の医師によって蘇生したものの、乳児はすぐ、県内の別の病院に転送された。常勤の小児科医が不足し、24時間の監視態勢が取れないためだった。

 救命救急、周産期母子医療、がん診療、災害時の医療拠点などを担う県北部の総合的な医療拠点だが、2006年に73人いた常勤医は今年5月時点で65人に減った。他の病院に派遣を要請するなど努力を重ねても、内科系医師は4人減り、糖尿病患者の受け入れは縮小、人間ドックも中止した。眼科と耳鼻科は、非常勤医だけでまかなう。毎日の診療はできない。入院は当然、受け入れられない

 同病院は07年、県から地域医療支援病院★に指定された。諏訪敏一院長はため息をつく。「いつでも、どんな容体でも診られる時代ではなくなっている。患者に診療所との通い分けをしてもらうよう、県も取り組みを強化してほしいのだが

     ◇

 同じ地域医療支援病院の済生会栗橋病院(久喜市)では、救急搬送の受け入れを断るケースが増えている。昨年度は913件で、5年前の約3・6倍になった。受け入れ要請が3295件と、5年前より655件増加する中、1日あたりの外来患者は250人程度までにしか減らず、許容範囲を超えたためという。

 緊急の治療を終えた患者を、身近な「かかりつけ医」に逆紹介する医療連携を進めた結果、昨年度の逆紹介率は84・7%で5年前より約35ポイント上昇。しかし、風邪や軽度な慢性疾患で薬を処方してもらうために診察を受ける「大病院志向」の患者も依然として多い。「連携を進めなければ、外来患者は減らず、必要な救急患者の受け入れはできない」。同病院地域医療連携センターの黒沢正剛・副センター長は危機感を募らせる。

 上田知事は前回知事選のマニフェストで「地域医療支援病院を6から10に」と掲げた。結果的に11に増やす実績を残したが、課題は多い。

     ◇

 県は09年度以降、医師不足や地域医療連携などに対応するため専門の担当者を置く。病院誘致に失敗し、拠点病院がない加須市に対しては、周辺市町や医師会を説得するなどして支援。周辺自治体の中核病院や診療所などと、カルテなどのITネットワークを結び、医療連携しやすくする取り組みが来年4月、試行段階に入るという。

 それでも、県内で進行する医療の空洞化は、加須市のような分かりやすいケースばかりとは限らない。

 川越市の病床15床の「西部診療所」。川越市や比企郡の医療圏にある地域医療支援病院と連携を組むものの、支援病院に指定されていない鶴ヶ島市などの病院と独自に連携している。診療所の患者を救急搬送しようとして、受け入れを断られることもあったという。診療所の小川正時理事長は「診療所は制度や人材、設備などから受け入れられる内容は様々。ハード面より、こうした違いをこまめに聞き取って連携のルール作りをすることが、県の医療行政の役割として重要ではないか」と指摘している。

  ★地域医療支援病院 医療法に基づき、救急医療体制や病床数などの基準から判断し、各都道府県知事が決める。連携する診療所から患者の紹介を受けたり、軽度な慢性疾患などの場合には、診療所に逆紹介したりすることになっている。

それは「地域医療支援病院を6から10に」などと言えば知事選の受けは良いかもしれませんが、その結果実際の現場における診療余力がそれだけ上がっているかと言えば、結局のところは無い袖は振れないと言うしかないのではないかと思います。
当面患者側に対して地域の医療リソースに相応するレベルまで受診抑制をなどと言うことは選挙対策上も出来ないということであれば、とりあえずは救急搬送の部分を少しでも効率化していくくらいしかないのかも知れませんが、前述のような十把一絡げのやり方を推進しようとする姿勢を考えた場合に「本当に現場の状況を見た上で言っているのか?」と非常に大きな不安を感じざるを得ませんよね。
施設毎に何が出来るかの違いがある以上、その違いをきちんと把握した上でルール造りをするべきだという小川理事長の言葉は診療所に限らず救急医療全般に通じる話だと思いますが、ルールを作る側が全く現場に目を向けないで想像の世界だけで話を進めているという場合、それについて行けない現場が戦犯扱いされるというのはどうも釈然としません。
昨今ではどこの自治体でも「医者○人ゲットだぜ!」などと広報に懸命ですが、個々の顔も個性も見ることなくただ頭数だけを数えているばかりでは仏作って魂入れずということになりかねませんね。

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コメント

なんでしょうね、これは。
国民の救急に対する認識ってこの程度なんですかね?

<救急車>乗り逃げされる…搬送のため停車中 大阪
毎日新聞 7月19日(火)1時26分配信
 18日午前11時ごろ、大阪市住吉区遠里小野(おりおの)6の路上で、急病人搬送のためエンジンをかけたまま止めていた救急車が乗り逃げされた。救急車は北東へ約5キロ走った同市東住吉区駒川3の府道で信号停車した後、突然バックし、途中から追尾中の大阪府警住吉署のパトカーに衝突。同署員が運転していた男を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した。同署は窃盗や道交法違反(無免許運転)容疑でも調べる。

 住吉署などによると、住吉区の無職の男(39)で「救急車でドライブした」などと供述。救急隊員3人は体調不良の80代女性の救助のため車を離れていた。救急車は盗難防止装置付き。同署は男が運転できた経緯を調べている。女性は別の救急車で搬送され無事だった。【宮武祐希】

投稿: kan | 2011年7月19日 (火) 09時26分

>>国民の救急に対する認識ってこの程度なんですかね?
大阪人と一般国民を一緒には出来ないと思いますよ。
私も色んなところで仕事しましたが、大阪人の民度は独特のものがありますな。

投稿: 浪速の勤務医 | 2011年7月19日 (火) 12時22分

ミングクの民度はともかくw必ずしもミングク特有の事件でもないらしいな
いずれにしても真っ当な人間のやることじゃないのは同意

29日午後4時15分ごろ、静岡県由比町北田の駐車場で、病人搬送のため出動した
救急車の運転席に男が乗り込み、発車。止めようとした男性をはねた。男性は病院に
運ばれたが、頭を強く打ってまもなく死亡した。
 
110番通報で駆け付けた蒲原署員が、業務上過失傷害の現行犯で救急車に乗り込んだ
会社員松葉大志容疑者(28)=静岡市清水区北脇=を逮捕した。
調べでは、松葉容疑者は被害者の男性らと現場でバーベキューをしていたが、別の男性が
「気分が悪い」と訴えたため、119番通報。隊員3人が搬送の準備中、松葉容疑者が
無人の運転席に乗り込んだという。同容疑者は酔っていたとみられる。
共同通信@FLASH24 2006/04/29

投稿: aaa | 2011年7月19日 (火) 15時06分

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