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2011年6月29日 (水)

いざという時になったら考えよう、では遅すぎる

今日は本題に入る前に少しばかり長い前振りを書きますけれども、原発問題ではあちらからもこちらからも集中砲火を浴びている感のある政府も苦労してるんだろうなと同情申し上げるのですが、先日も野党の方からこんな厳しい批判が飛び出していました。

党派超えて原発安全対策を 福井県知事が自民幹事長に要請(2011年6月25日産経ニュース)

 福井県の西川一誠知事は25日、自民党の石原伸晃幹事長と福井市内で会談し、福島第1原発事故を受けた原発の安全対策について、与野党の枠を超え国全体で早急に取り組むよう要請した。

 西川知事は会談で「震災直後から安全基準を示すように政府に求めてきたが、依然として具体的な回答がない」と指摘。原発につながるアクセス道路の早期整備などを求める要望書を手渡した。

 会談後の取材に「原発は国民の全体の関心事だ。特定の政党の問題でなく、国全体として取り組むべきだ」と話した。

 一方、石原氏は会談後、停止中の原発の再稼働を急ぐ政府の姿勢を「事故が起きた時にどうするかの説明がなく、今の基準で安全だというのでは無責任だ」と批判し、再稼働を認めていない西川知事に理解を示した。

こういう状況ですから総論としても各論としても日本の原発をどうするかということはなし崩しに現状を追認するのではなく、一度国や地域において徹底的に民意を問いコンセンサスを形成しておいた方が良い時期ではないかとも思うのですけれども、それはそれとしてここで注目していただきたいのが最後に掲載されている石原氏のコメントの部分です。
日本人の国民性というものなのか、リスクマネージメントということに関する捉え方が少し独特なのではないかと以前から思っていたのですが、先日たまたま企業相手に商売をやっているアメリカの保険屋と話をしていますと、どうやら企業のレベルであってもやはり日本のそれは相当に認識が違う、あるいは間違っているんじゃないかと言うのですね。
例えば今の時代はどんな企業も国際化していかないとやっていけませんし、とりわけ製薬業界などは合併合併で規模を拡大しながら世界レベルで商売をしていかないと新薬競争にも到底太刀打ち出来ませんから、アメリカあたりにも日本から製薬会社が行って商売をしているわけです。
薬害問題などすぐに大騒ぎになるという時代ですから、いざというときのために当然ながら企業も保険に入るんですが、日本の製薬会社の場合はその保険の額がちょっとそれはどうなのよと言うほどに過少過ぎるというのですね。

以下は門外漢の理解出来る範囲での又聞きですが、例えば日本の医療業界でもおよそ知らない人間もいないだろうと言うほど名の知られた某大手などでも、日本の医師のかける個人の医療賠償保険でちょっと多めにかけた時の金額とそう大差ないレベルでしかないというのですから、桁を幾つか間違えているのではないかと思いますよね。
医療事故と言えば原則一人を相手にすればいい医賠責ですら今の一般的な医賠責の支払い額で足りるのか、割高なオプションをつけてでももっと高めでなければダメなんじゃないかと心配されるような時代に、ひとたび事が起これば最低でも数十、数百人、下手すれば万の単位の人間相手に賠償責任が生じる製薬会社がそんなレベルでいいはずがないんですが、現実はそんなものだと言うのですね。
もちろんアメリカのような訴訟社会で商売をやる以上、いやそれはまずいでしょうと保険屋としても指摘はするのですが、どうも現場担当者には「その時はとっとと支店たたんで帰りますから」みたいな気配すらあったとかなかったとか、もちろん実際に企業の上の方がそういう考えでいるわけではないのでしょう(と思いたい)けれども、別に自家保険をかけているわけでもないのにこんな調子では何かあったら一発で終わるだろうとは素人目に見ても判ることです。
そういう話を聞くとそもそもの保険というものの意味が理解されていないんじゃないかとも思うのですが、こういう話は別に製薬会社に限った話でもないんだそうで、例えばメーカー系でも昨今では国際的な企業買収や合併が盛んですけれども、外国人が入って来て驚くのは日本の企業とスタッフは人事には関心があるけれども、会社の資産を守るということには全く無関心に見えるそうですね。

会社が合併してアメリカから役員が来る、そして日本の誇る立派な工場を見学する、そうすると「ここで事故が起こった場合どうしますか?」なんてことを彼らが尋ねるんですが、それに対して日本のスタッフは決まって「いやこれこれの理由でここでは事故が起こらないようになっているんです」と説明するんだそうです。
そういう説明を聞くとアメリカの役員は「今あなたは起こらない理由を一生懸命説明してくれたけれども、私が聞いたのはそういうことじゃない。起こったときどういう対策を用意しているのかということを訊いているんだ」と納得しないんだそうで、これに対してまた日本側が満足に答えられないものですから怒って帰ってしまうこともあるんだとか。
日本の側からすると「そんなことは数学的にあり得ないほど小さいんだから、いちいち想定に入れるのがおかしい」ということなんだそうですが、保険屋の考え方からすると「いや、数学的というならそういう事が起こる確率はゼロじゃないですよね?その時どうやって会社の資産を守るか考えておかなくていいんですか?」と言うことになるわけで、世界的に見ると後者の考え方の方が普通で日本が普通ではないと言うことです。
まともな会社の人間が企業の資産を守ることに関心がないということはあり得ないというのは考えて見ると当たり前の話で、そもそも資産を守るというスタンス無しに株主にどうやって自分達の正当性を主張出来るのかという話になってしまいますから全くごもっともなのですが、では何故日本の企業では違うのかということですよね。

今回の原発事故などでもそうですが、これこれの事態が起こる確率は数学的に非常に小さい、だから無視していいというのが日本でごく普通に行われている考えだとして、ところが諸外国に行ったらこれは通用しないというのは、万一どころか億に一つの確率だろうがひとたび起こってしまえばそこに賠償責任というものが発生するという明確なルールがあり、契約書にも必ず責任範囲が明記されているからです。
日本の企業が外国に行って大きな契約を取ったと喜んでいる、その契約書の隅っこの方にさりげなく無限賠償責任云々なんて事が書かれてある、そういう契約書にサインしたからには何かあったらそれに対応しなければならないわけですから、その時になって責任が取れないような形ばかりの保険しかかけていないというのはあり得ない話でしょ?と突っ込んでも、サインをした当事者がいやそれは…としどろもどろで話にならないと言います。
もちろん金銭的補償ばかりでは「どうせ保険に入っているのだからなるようになれだ」なんて話にもなりかねませんから、そうした事態に至らないように何があっても最悪にいたる以前に対応出来るような事故対策チームを用意するとか、やり方は個々の状況に応じてそれぞれなんでしょうが、何しろ事が起こらないことを前提にスルーするというのは世界的に見るとあり得ない話だと聞けば「なるほど」と思えてきますよね。
今回の事故を通じて日本の原発にまつわる「安全神話」なるものが世界的にも知られるところとなり、米紙などでは「ファンタジー(夢想)」とまで嘲笑されるような事態に至ったというのも、諸氏の言うように日本には何かについて言及すればそれが実際に起こってしまうという「言霊信仰」が根付いているというだけでは済まされない、国際常識に疎すぎる日本人像を世界に向けて発信してしまう形になったのは残念なことだったと思いますね。

長々とした前振りはそれくらいにしてようやく本題に入りたいと思いますが、先日たまたま見かけて「なるほど!」と思わず持った湯飲みをバッタと落としてしまったと言うのがこちらのニュースです。

「ゾンビ対策はしていない」と回答した市に抗議する200体のゾンビが集結/英(2011年6圧20日GigaZiNE)

イングランドの中心部に位置するレスター市で、6月、情報公開請求が行われ「レスター市ではゾンビが発生した場合への対策を整えていますか?」という質問が市に提出されました。市からの回答は当然ながら「ありません」という回答でしたが、これに抗議するため、200人を越える人々がゾンビの格好で集結、市中心部の道を練り歩きました

BBC News - Leicester City Council 'not ready' for zombie attack

Leicester 'invaded' by zombie hordes for flashmob 'mass shamble' through city centre | Mail Online

市庁舎の前に集まったゾンビたち。
市を練り歩くゾンビ。
今回の発端となったレスターの市民からの質問状は以下のようなものでした。

    お伺いしたいのですが、ゾンビに対してどんな対策を講じていますか? いくつかの映画を見ると、こうした事態への対策が不十分なのは明らかだし、英国全土の地方自治体はゾンビの侵入に備えるべきだと思います。もし情報をお持ちであれば教えてください。 ―――憂慮する市民より

そもそもこのような質問に回答は得られないだろうと思われたのですが、質問者は市が「(そうした事態に対する)備えは無い」ことを認めた回答を受け取ったとのこと。
市の情報ガバナンス評議会のLynn Wyeth氏は「こうしたことは軽薄で時間の無駄に思えるかも知れませんが、別の人たちにとってはなにか意味のあることになるかも知れません。誰であれ、自分独自の興味を持っていて、特有の事情によって質問をするんです」と答えています。
この話がTwitterやFacebookによって広がり、今回のゾンビの行進が行われるに至ったとのことで、行進自体は市への抗議というようりも、くだらない質問にまじめに答えてくれた市への親愛の情を表したもののようです。

下のムービーはゾンビたちが実際に市街を練り歩く様子を撮影した映像です。ゾンビの群は市庁舎の前に集まりましたが、中に入ろうとはせず、窓ガラスに顔を押しつけたのち、市街のパブに繰り出していったとのことです。

YouTube - Leicester Zombie Attack 1

リンク先の写真や動画を見ているだけでも、いつものブリ一流のネタとしか思えないような話ですし、実際にも当事者の意識としてはその通りなんでしょうが、今回の震災においてもあちらこちらから聞かれてきたような「どうして○○に対する備えをしていなかったんだ!」といった話を聞いた後では、何やらこのレスター市の一市民の発した問いかけが意外に本質的な部分をついているような気がしてきませんでしょうか?
ゾンビが空想的過ぎるというなら別な問題に置き換えてみれば判りやすいかと思うのですが、例えば成田なり関空なりに着陸した国際便の乗客からエボラ出血熱のような強烈な伝染性と致死性を併せ持つ感染症患者が見つかった、しかも同乗の乗客達はすでに日本全国に散らばっていてあちこちで患者が集団発生し始めている状況というのはどうでしょう?
別にこんな話はあり得ないものでも何でもなくて、例えば先年大騒ぎになった新型インフルエンザが当初想定されていたようにもう少し強力なものであったらと考えるだけでもいいのですが、日本ではそうした事態にきちんと対応出来るような法体系も、社会的コンセンサスに基づいた強制力も未だにきちんと整備されておらず、関係者一同が自発的・積極的に協力してくれるという前提でなければまともな対策すら取れません。
どこか外国から攻撃を受けるとか言った場合に自衛隊が活動する根拠となる有事法制なども長年議論自体がタブーとして放置されてきた問題ですし(これなどもまさしく言霊信仰の最たるものですよね)、最近では南極海で日本の捕鯨船団がテロ攻撃を受けてもこれにまともに対応出来る法的根拠がないという理不尽な状況ですが、現に脅威が目前にある状況に対してすらまともな備えがないというのはどう考えても問題でしょう。

古来世界的に有名な沈没船ジョークというものがあって、船が沈みかけているのに海に飛び込もうとしない乗客達に向かって船長が何と言うべきかに国民性が表れているというのですが、そこには何にしろ決断が遅い、自分一人では何一つ肝心な決定ができない日本人という国際的な認識が現れているとも言えますよね。

アメリカ人には 「海に飛び込んだらヒーローになれますよ。」
イギリス人には 「紳士はこういうときにこそ飛び込むものです。」
ドイツ人には 「規則では海に飛び込むことになっています。」
イタリア人には 「さっき美女が飛び込みました。」
ロシア人には 「ウオッカのビンが流されてしまいました。今追えば間に合います。」
フランス人には 「海に飛び込まないで下さい。」
日本人には 「みなさんはもう飛び込みましたよ。」

「万一の事態に備えると言われても、いったいどこまで備えをするべきか判らない」という声がありますが、何が起こるか判らないからこそ何かが起こった時に動ける人間が妙な掣肘を受けないように平素から法的根拠なりを整備しておくだとか、それこそ今回大問題になっているように予想外のダメージを受けた場合に誰がどうその償いをするかのルール作りをしておくだとか、あらかじめ出来ることは幾らでもあるわけです。
いざ有事となれば緊急にやらなければならないことだけでも関係者には幾らでも仕事があって手が回らないというのは今回の震災でも判っていることなのですから、そんな多忙な最中に一から行動の根拠となるルール作りなんて悠長な作業までやらなければならない状況を放置しているのでは、いったい日本人の精神構造はどこまでファンタジーに染まっているのかと世界から失笑されるどころでは済まないでしょう。
こういう話になると決まって「そんなルールは少数派の権利を侵害するものだ!絶対反対!」なんて金切り声で叫ぶ人々もいますけれども、いざというとき多数派の権利を守ることすら出来ず後で国民総バッシングされるくらいなら、あらかじめ想定される少数派への被害を補償することも込みでルール作りを進めておく事の方が、よほどに国民の健康と福祉に貢献するだろうということです。

ま、今日のところはそんな感じで酒飲み話に絡めた雑感でしたが、しかしゾンビ対策に関してはすでに民間の手で多少なりとも整備が進んでいるという話ですけれども、まさかブリの連中も遠い極東の果てで自分達のネタがこんな風に取り上げられることになろうとは、さすがに想定外でしたでしょうか(苦笑)。

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