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2011年6月 1日 (水)

薬通販問題 あなた任せは伝統的な国民性でしょうか?

以前から薬のネット販売拡大ということに関しては賛否両論で、もちろんどちらの立場にしてもそれぞれの論理は成立しているわけですけれども、自分一人で使う物なんだから誰の迷惑にもなるわけでもなし、自己責任で買うのは勝手じゃないかという風にはならないのが現代のこの国というものであるようです。
基本的にもう少し規制緩和の方向で話を進めるべきなのかなという世論の流れが続いてきた中で、いやいやそう簡単に好き放題されてもらっては困るとお上が立ち上がったというのがこちらのニュースなんですが、まずは記事から紹介してみましょう。

ネット通販の薬局経営者書類送検へ 薬事法の改正後全国初(2011年5月31日産経新聞)

店頭での対面販売を義務づけられた医薬品をインターネットで通信販売し、府の改善命令にも従わなかったとして、大阪府警は薬事法違反容疑で、大阪府枚方市東中振の「三牧ファミリー薬局」の社長(55)を31日にも書類送検する方針を固めた。厚生労働省によると、平成21年6月の改正薬事法施行で薬の通販が規制されて以降、立件されるのは全国で初めて

 薬事法では、一般用医薬品を副作用などのリスクが高い順に1~3類に分類。購入者へのリスク情報提供の必要性が高い1、2類は対面販売に限定している。

 捜査関係者によると、社長は21年6月以降、薬剤師などによる対面販売が必要な育毛剤やかぜ薬などをネットで販売。府が同年12月と昨年7月に改善命令を出したが、従わずに販売を続けた疑いが持たれている。府が今年4月に刑事告発していた。

 同社は平成7年にネット通販を開始。現在は約8千品目を販売し、売り上げは約8億円に上る。注文が多いのは育毛剤や妊娠検査薬などで、客が対面での購入を躊躇するためとみられる

 薬剤師でもある社長は取材に対し、「客とはネット上で情報のやりとりをしており、対面販売以上のことをしている」と説明。ネットでの注文の際は、画面に服用経験の有無や既往症などに関する質問が表れ、支障があれば購入できない仕組みだという。

 社長は「一般医薬品は消費者のための薬で、買い方に選択肢があってしかるべきだ」と主張。一方、府は「対面販売はより安全に薬を使ってもらうためのシステム。店頭での副作用に関する説明が必要だ」としている。

 対面販売の義務づけをめぐっては、今年3月の「規制仕分け」で、「対面販売の方が安全性が高いとする根拠は明らかにならなかった」などと指摘され、規制緩和へ向けて政府が検討を始めている。

規制緩和が進んだ中でも、未だに薬のネット販売に関しては根強い反対があるという状況ですが、今回の業者などは売りっぱなしというわけではなくそれなりにきちんとした販売システムを採用しているにも関わらず立件されているということで、こういうことは結局日本人にとって自己責任ということがどういう意味を持っているのかということなんでしょうね。
この四月以降にもいくらかの見直しが進んでいて、新たに182品目が追加され通信販売可能になりましたけれども、対面販売であれば正しい情報を聞き出せなかった、伝えていなかったと売る側の専門家の責任を問えるものを、通販であれば消費者側が自らそうした情報を開示する責任があるわけですが、果たしてこうした通販利用者が正しくそれを行うかどうか、そして何かあったときに自己責任だったと納得するかどうかですよね。
もちろん多くの利用者は真面目に情報を入力しているとしても、もう長年使っているのに毎回こんな沢山の入力をさせられたのではたまったものではないとついさぼってしまうとか、正確に入力したところ「それではこの薬はお売りできません」と言われて思わず嘘情報を入力してしまうとか、薬の購入に限らずよくありがちな事ではあるわけです。
そして既往歴を正しく申告しなかったとか、副作用情報を伝えていなかった、だから自己責任でしょ?となれば話は単純なのですが、現代日本ではそうした論法はとかく忌避されどこかの誰かが悪かったのだと犯人捜しが行われることになる、この場合は恐らく制度を認可した国が悪い!政府による人災だ!とマスコミ総出で吊し上げを食らうだろうことは目に見えていますから、それは国としても腰も重くなろうと言うものですよね。

話は変わりますけれども、書き捨て書き放題で有名だった某巨大掲示板で最近書き込みが非常に不便になったと大騒ぎになっていて、要するに自分はルールに則った正しい書き込みをしていますよという証明を続けなければ連続投稿したりスレを立てたり出来なくなってしまったのですが、ひと頃以来社会的無責任の象徴のように言われてきた場所にとっては程よい落としどころを探る試みになるんじゃないかなという気がします。
大多数であるだろうルールも社会常識・公序良俗も守った利用者にすれば面倒な手順は抜きに少しでも簡単、手軽に利用したいのは当然ですが、それは荒らしと言われるような反社会的な利用者にとっても好き放題やれるということにつながるわけで、それなら最初は利用規制が厳しいようでも、継続的にきちんとした利用を続けていれば普通に使えるようになっていく方が真面目な利用者の権利を守ることになりますよね。
ネットでは確かに不正確な情報が乱れ飛んでいて、リアル社会からいきなり入り込んできた人間には「いったいこれはなんだ!とんでもない流言飛語の山じゃないか!すぐに規制しなければ!」となりがちですけれども(苦笑)、「嘘を嘘と見抜けないと(略」の言葉にも象徴されるように、あくまでも自己責任で情報を取捨選択していくという姿勢を身につけるという点からすると良い学習機会にはなっていると思います。
もちろん何をやっても捨てハンによる書き捨て行為を完全に排除することは出来ませんが(それを行うにはひと頃のパソ通のように完全審査登録制にでもしなければならず、ネット文化の自己否定でしょう)、相対的にその影響を極小化していくことは可能であるかも知れないとすれば、これもまたネットの自浄作用が発揮された一例として後世に伝えられることになるのかも知れませんね。

脱線はそれとして、実社会では相変わらず国民総背番号制反対!などと言う声も根強く、個人情報を統合的に管理することには確かに流出などのデメリットも大きいわけですが、先の震災のような非常時にあって個人情報欠落に基づく色々な不都合が出てきたように、一人一人が持つ情報が多様化、多元化してきた時代だからこそそれをきちんと一元管理し全体を把握することのメリットもまた大きいはずですよね。
薬を買うにあたって各人の医療関連の情報が自動的に検索され販売者の知るところとなるとなれば、「知られたくもない情報まで知られてしまった!プライバシー侵害だ!」と憤慨する人も多いのでしょうが、そのあたりは金融機関で行っているように必要な情報だけをフィルタリングして抽出するような方法で対応できるでしょうし、その結果真面目な大多数の顧客にとっては簡単便利な世の中にはなるのかも知れません。
ただ通販に限らず利用する側の問題として、例えばすったもんだの末に導入された診療明細書も患者の2割は最初から不要と受け取らないだとか、患者の過半数は薬局の明細書は不要と考えているだとか情報開示に利用者自身が消極的な一面があって、自ら望んで知らないでいることが責任を取らなくていいことにつながるかのような風潮も見え隠れしているのが気になるところですよね。
誰しも簡単にさくさくと自由にやりたい気持ちはある一方で、その結果何かあった時には楽をした分はきっちりと自分自身で引き受けることになると承知をしておかなければならないわけですが、自分で自分の責任を負うくらいなら最初から他人任せにしておいた方がいいなんて考えが広まってくるようだと社会としてどうなのか、まあ為政者としては扱いやすい国民性ということにはなるのかも知れませんけれどもね。

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コメント

医師も加わって通信販売のための問診フローチャートを設定した上で、きちんと本人確認をしてログも保管しておくんなら何も問題ない話だと思うが、薬害だ賠償だと国をいじめすぎるからこういうことになるのかな

投稿: aaa | 2011年6月 1日 (水) 14時22分

薬局で買おうが、通販で買おうが、自己責任でやってくれるなら文句は言いません。
それで問題が起こったからと言って、病院に来ないでくれるなら結構です。
病院に来ても、医者に責任転嫁しないなら「自費」で診察はしてもいいです。
過去の経験から、こう思ってる医者は少なくないんではないでしょうか?

今の処方箋は、医者が変更不可の署名捺印をしてないと、薬局が勝手にゾロに変更できます。
もちろん選ぶのは患者本人ですけど。
それで副作用が起こったとか、効かなかったとか、誰が責任を取るのかさえはっきりしてませんからね。
何でもかんでも医者の責任にするのを止めて、自己責任を徹底してくれるなら文句は言いません。

投稿: 通りすがり | 2011年6月 2日 (木) 00時22分

まさにその点です。
通販と言うのはそういう観点で見ると非常によく出来ていて、口頭が一切なく全て文書で記録が残るしじっくり考える時間もあり、誰に押しつけられるわけでもなく全て自分の判断で買い使用することになるわけで、自己責任ということの非常によい学習機会だと思いますね。

酒を飲み過ぎて血を吐いた人が酒造会社を訴えたり、煙草を飲みすぎて肺癌になった人がJTを訴えたりすれば何だかなあと感じる程度の感覚は日本人も持っています。
明らかな有害成分が市場に普通に出回っているという状況は許容しているし、その結果困ったことになっても仕方ないと受け入れるくらいの素地はあるわけですよね。
だからこそ毒にも薬にもならないものばかり売っていないで、激辛唐辛子くらいは売っていいんじゃないかと思うわけですよ。
その結果「昨日激辛ハバネロ食ったらひどい目にあったよ」となれば「馬鹿かよおい(笑」と突っ込むのがまともな感覚というものでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2011年6月 2日 (木) 07時36分

薬に関しては、健康に関わるという観点から役所は責任問題がでてきますので自由化に逃げ腰になるのはしかたありません。今回の原発事故などを見ていると更に逃げ腰になると思います。

投稿: hiro | 2011年6月 2日 (木) 09時58分

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