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2011年6月20日 (月)

医学部学生のレベル低下が深刻に!?

医学部定員を急に増やしすぎるというのもそれなりに弊害があるのは確かでしょうが、個人的には臨床医というものを増やすという多くの人々が望む目標のためにも、数の議論は別としてむしろ医学部はもっと難易度を下げてもいいんじゃないかと思っています。
往々にしてあまりに頭が良すぎる人間は臨床をやらず研究の方にいってしまう(もちろん、社会の利益のためにもそうすべきなのも当然ですが)ということもさることながら、年々上がり続ける患者側の要求水準というものに対して、より医療の質を引き上げていくという方向で対応するのはいずれ(あるいは、すでに)無理が来るんじゃないかと思うからです。
早い話が平均的医療水準なるものが公的に設定され(すれに司法の世界ではそうした現象が起きているようですけれども)、この水準に達しない低レベルの医者は功名心先生のような国手によって厳しく糾弾され排除されてしまうという究極的な状況を考えて見れば、これがどういうことなのか判ると思います。
排除されるようなレベルの低い側に入らないように日々努力すればよいというのは確かにその通りなんですが、皆がそう考えて努力を続けた結果平均的医療水準というものは日々上がり続けていくわけで、やがては限られた天才的な人々しか医療に関わることが出来ないということにもなりかねません。

ただでさえ医師不足と言われ、有能な熱心かつ勤勉な医師ほど酷使され続けた挙げ句に過労からつまらぬミスを犯し消えていくという状況がある中で、医療と言うものを限られた特殊な才能を持つ人々にしか担えないようなものにしてしまっては、永続的な供給体制など構築できるはずもありませんよね。
このあたりは少数精鋭で全員が教官レベルと言われるような高い技量を備えていた旧日本軍の航空隊が、やがて熟練搭乗員が消耗し尽くした結果戦闘に耐えない者ばかりになったのに対して、大量のルーキーをローテーションを組んで戦わせた米軍が結局は高いレベルの搭乗員多数を手に入れ、最後には日本軍を圧倒した歴史を思い出させます。
少なくとも今の日本では医学生の質がどうこうなどと小さいことは気にせず、やる気のある人材をしっかりと教育していくのが得策だと思うのですが、あまりにレベルの低下が急すぎると不安を感じている人々も近頃では少なからずいるというのがこちらの記事です。

医学部の86%が「学生の学力低下」と認識- 医学部長病院長会議調査(2011年6月16日CBニュース)

全国の医学部の86%で、「学生の学力が低下している」と医学部長らが認識していることが6月16日、全国医学部長病院長会議の「学生の学力低下問題に対するワーキンググループ(WG)」のアンケート調査で分かった。同会議が同日の定例記者会見で明らかにした。医学部の定員増が始まった2008年度から1年生の留年や休学が増加しており、同WGの吉村博邦座長(北里大名誉教授)は「これ以上の急激な定員増は、学生の学力低下を一段と加速させる」との懸念を示した。

 調査は、全国の国公私立大医学部80校の医学部長か教育担当責任者を対象に、昨年12月から今年1月にかけて実施した。

 調査結果によると、「教員から『学生の学力が低下している』という意見があったり、そのような傾向があったりするか」との設問に回答した79校のうち、86.1%に当たる68校が「ある」と答えた。根拠としては、「授業中の態度(私語や教員の指示への対応)の変化」「1年生の生物、物理、化学の成績低下」「進級試験不合格者の増加」などが多く挙げられた。

 実際に1年生の留年者数と休学者数を見ると、共に08年度以降に増加。留年者数について回答した53校の入学者に占める留年者の割合を見ると、05-07年度は2.6%前後で推移していたが、08年度は2.9%、09年度は3.2%と増加した。

 一方、学生の学力低下に何らかの対策を講じていると答えたのは、78校中70校(89.7%)。具体的な対策としては、「医学部全体の教務委員会で対策を講じている」「1年生に生物、物理、化学などの補習を行っている」「講義・実習の出席を厳しくチェックしている」などが多かった。

 こうした結果を踏まえ、文部科学省の「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会」の委員を務める黒岩義之会長は会見で、同会議は医学部の新設や定員増に反対する立場だと改めて強調した。

出席チェックを厳しくするなんて自分自身のために自ら望んで学ぼうとしているはずの大学生にあるまじき話で、むしろ医者稼業をそつなくこなす人材を育てるためには講義や実習など適当に手を抜いていてものらりくらりと進級していくような要領の良いタイプほど保護すべきなんじゃないかと思うのですが、穿った見方をすれば上司の言うことには絶対服従という姿勢をこの段階で植え付けているということなのでしょうか(苦笑)。
それはさておき、実際に学力が低下しているのかどうかですが、昨今の不景気もあって一流大卒業者でも就職が怪しいという時代に、医学部卒なら仕事にあぶれることもないと志願者は以前にも増して殺到しているということですから、入試の倍率はむしろ高くなっているんじゃないかという声もあるようです。
ただ実際問題として国立などでもあちらこちらの大学で大量留年が出ていて、結局大幅に入学定員を増やしてもその分は全部留年してるんじゃないかなんて話もあるようですが、この一因としてしばしば言われるのが昨今流行りの地域枠というもので、そう考えると医師不足著しい地方の医学部などでは地元優先の温情入試で入試ボーダーラインが大幅に変化している可能性がありますよね。
今年の1月に文科省で開かれた第二回の「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会」において、日本医師会から参考資料として「過去三年間の医学部入試偏差値の推移」というものが発表されているのですが、著しいところでは秋田大医、福島県立医大の67.5→62.5を筆頭に、確かに地方での下落が特に著しい印象もあります。
その一方で旧帝大系などのいわゆる伝統的な名門と呼ばれる医学部や首都圏の大学などは比較的下落が少ないようですが、そもそも全体的に横ばいや下落はあっても上がっているという大学はほとんどないわけですから、全体的に見ますとやはり医学部の入試難易度は下落傾向にある、とりわけ地方ではその傾向が顕著であるという言い方が出来るかも知れません。

そもそも通常の学科試験によらないAO入試などというものが増えてきたのが医学部に限らない最近の入試の特徴ですが、「AO入試は不正入学だ。多様な人材や意欲のある人を求めるなんて真っ赤なウソ」などと当の大学教授が言っているくらいに一部では評判が悪いようで、ゆとり教育だ、大学全入時代だなどと言われる世相と相まって学生の学力低下はどこの学部においても深刻になっているという声すらあります。
全国調査によれば大学教員の実に6割が学生の学力低下は深刻だと回答していて、漢字も読めない、計算も出来ないでは講義にもついてこれないと補習授業を開くような大学も出てくるくらいに問題視されているそうですから、医学部においても他学部と同様の傾向が見られ始めているだけだという考えでいいのでしょうかね。
ただ昨今の受験指導においては前述のような社会情勢から、偏差値の高い学生はとりあえず東大京大よりもまず医学部を目指していくのが無難といった指導をしているとも聞きますから、そうなると全学生中でも最精鋭とも言えるトップエリートが集まっているはずの医学部においてもこの調子では、これは日本の学生全体の学力が深刻な状態に陥っているのではないかとも危惧されますよね。
ゆとりなどと揶揄される世代の入学がこれからしばらくは続くわけですが、むしろそうしたあらゆる意味で鍛えられていない学生を正しく指導できる教官の不在こそ医学部教育の問題点で、このあたりは到底聞くに堪えないようなつまらない講義をしていても学生が勝手に自主学習で学んでくれていた古き良き時代に染まってしまっている教える側にこそ、早急に意識改革が求められるのかも知れません。

ついでに言えばいわゆる正規ルート以外の入試ということでは「受験勉強漬けで世間を知らない医者が多すぎる!」という声を反映した学士・社会人入学者の増加というのも昨今の医学部を取り巻く話題の一つで、確かにこういう人達はよく世間も知っているし頭もいいのですが、そうであるが故に一介の臨床医として奴隷労働に勤しむなど馬鹿馬鹿しいと考える傾向が強いようで、これはこれで実戦力を減らす要因だと言われています。
あるいは昨今大学によってはほとんど半数が女子学生ということになっていて、かつては男社会の典型と言われていた医者の世界にも女医さんがどんどん入って来ているというのは良いのですけれども、これまた「女医二人でやっと男医一人分に相当する」なんて失礼なことを言う人もいたりして、何にしろ学力云々以前に医学部入試はもう少し考えるべきなんじゃないかという声は定員増以前からあったわけですよね。
ただ今回の記事でおもしろいと思うのは、ネット上などで世間の人々の意見を見ていると「別に医者にそんな学力はいらないんじゃね?」という声が結構多いということで、確かに医者の仕事の大部分は単なるルーチン的な業務をやっているように見えるし、近頃ではナースプラクティショナーなど様々な名目で補助医を導入しようという動きもあるくらいですから、世間がそれでいいと受け入れてくれるのならむしろ喜ばしいことかも知れません。
実際問題仕事は幾らでもあって馬鹿馬鹿しい雑用は誰かに任せたいと考えている先生も多いだろうし、国としてもNP制度や医療秘書導入などそういう方向で進みたい気配が見えている状況なのですから、何かあった時に責任だけ押しつけられるなんてことがなければ構わないよという人間も結構いるんじゃないかと思うのですが、何にしろ日医などは医学部定員増にもこうした補助職導入にも反対ですよね(苦笑)。
そういう業界事情を聞きかじっている人ほど「それ見たことか!既得権益を守りたい医者の陰謀だ!別に医者ばかり高偏差値である必要はない!現に長年底辺私大卒の医者だって活動してきたじゃないか!」と言っているようにも見えるのですが、ただその発言の裏には「少々馬鹿でもいいよ。ただし医者として適性のない奴は俺を診るんじゃねえ」という暗黙の前提が隠されているように思えるのは自分だけでしょうか。

それは誰であっても自分の命を預ける立場ともなれば、超絶的な天才だがいっちゃってる医者よりは多少頭の切れは落ちようがまともな医者にかかりたいというのが本音でしょうが、問題はそうした能力を入試において推し量る方法というものが未だにはっきり確定していないということでしょう。
ひと頃は医学部でも後期試験は面接で人柄重視の人材を取れればいいよねなんて夢を語っていた時代もあったようですが、失礼ながら面接をする側の方がよほどいっちゃってるなんて受験生の方から言われてしまうというくらいですから、そういう人々がセレクションする学生がどれほどキャラ的にまともと考えてよいものやら判ったものではありませんよね。
このあたりは多少なりとも弁護するのなら、医学部に限らず大学などに残って出世していく人間は高度な研究能力とか特殊な専門的技量は要求されるかも知れませんが、人格的にまともだとか人当たりがどうとか言う部分は全く評価の対象にならずにきた人達であるわけですから、人間の能力に限りがある以上は特定方面に多大な労力を注いだ以上は他の方面が手薄になってもやむを得ないところがあるでしょう。
それならいっそ治療を受ける患者様の視点を入試の場にも取り入れようなんて話になった日には、今度は臨床の第一線で活躍する先生方の方から「おいおい、勘弁してくれよ」なんて大合唱が聞こえてきそうですから難しいものですが、いずれにしても人柄や適性といったものを評価する指標がないということであれば、とりあえずどんな環境に置かれてもそれなりに状況に対応できそうな奴を選んでおこうかというのも一つの考えですよね。
よく受験勉強なんて何の意味もないじゃないかということを言う人がいて、確かに実社会で役立ちそうにない無駄知識が多いという意味ではその通りかなとも思うんですけれども、その何の意味もないことでもきちんと長年我慢してやり通せた人材というのは忍耐心や環境適合能力といった医者に求められる適性があったとも言えそうで、そう考えると医学部学生に高い偏差値を求めるのはあれはあれで正解という側面もあったのでしょうか。

もっとも今の学生はレベルが下がったというより考え方が変わっているというべきなのかなという印象もあって、外から何をどう騒いだところで当の学生の方は案外シビアに物事を見ていたりするものですから、良い意味においても計算高い彼らが進んで臨床の第一線に乗り出していくような魅力ある職場環境を作っていくことが、現場に使える人材を集めるには一番確実なやり方ということになりそうな気もするのですけれどもね。
そのためにはより高いレベルの医者を大勢確保して…となると堂々巡りですけれども、そこで求められるだけの医療をという発想を転換して医療の供給水準を切り下げます、ただし公平性は確保しますから国民は今後はこのレベルで辛抱してくださいと言えるようになれば、医療の世界にも劇的な変化がやってきそうにも思えます。
しかし「医者は超絶高い偏差値を備えた優秀な人材揃いでなければ」なんて考えに凝り固まっているのは国民の側ではなく医者の側なのだとすれば、「国民は際限ない医療の質的・量的拡大を求めている」という考えも案外医療の供給側が抱く幻想なのかも知れないわけですかね。

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コメント

>平均的医療水準なるもの
これを言い出すと、おおむね半数は平均を満たしていないから、医療はできない、ということになっちゃうんですよね。

投稿: | 2011年6月20日 (月) 19時39分

学生のレベル、という点でいうなら、最近の学生は、授業中でも携帯メールをしてたり、ひどいのになるとPSPとかで遊んでますから。
演台から見えないと思ってるんでしょうねぇ。丸わかりですけど。
おまけに、電話がかかってきたら(音を消してさえいない)、その場で電話に出て、そのまま教室を出ていく、なんてのまでいます。
ええ、もちろん医学部ですよ。私学ですが。

少なくとも、通信スクランブラーを導入しなきゃだめだよねぇ、と心から思います。

投稿: | 2011年6月20日 (月) 19時42分

医学部の偏差値に関しては、特定の一予備校だけの数値というのは、どうなんでしょうか?
こういうのって、いくつかの予備校(大手3校くらい)のデータを合わせて解析しないと、まちがった解釈になるのでは?

理系全体で他の学部との比較もみてみないと、傾向はわかりませんよね。
それに、医学部と限らず少子化で受験生数が減ってきているので、一般的に大学自体が入りやすくなっているでしょう。

まぁ、例のごとく日医ですからね、臨床研究のデザインとか統計学手法は無知なんでしょう。

米国医科大学協会の専門誌Academic Medicineの2005年度のなかに、全米医学部入学共通テスト(MCAT)の物理科学テストと生物科学テストの成績と、アメリカ医師資格試験(USMLE)の成績に正の相関があるというリポートがありました。
また、そのリポートでは、入試学力と競争率の高いレジデントプログラムへの採用率とも相関があると報告されていました。


日本のって、ただなんとなく、受験学力とその後は関係ないとか、きちんとちたデータで検証をせずに主張している感じがします。

投稿: 鶴亀松五郎 | 2011年6月20日 (月) 20時39分

>最近の学生は、授業中でも携帯メールをしてたり、ひどいのになるとPSPとかで遊んでますから

どこぞの馬鹿は講義室にノートPC持ち込んでゲーム三昧の日々を…げふんげふん…

まあ日医あたりはもちろん政治的な意図もあってのためにする議論でしょうけれども、レベルが高い低いとは別の次元のこととしても、とにかく学生気質が昔とは違うということは確実に言えますよね。
ただ体育会系などで幹部をやったような連中であってさえまともに礼儀作法が出来ていないとか、そもそもそれ以前の常識レベルのことが備わっていない人間が多すぎるというのは、医学部に限らず最近の学生全般に共通する傾向なのかなという気もするのですね。
だから医学部だけがレベル低下していると捉えるのではなくて、そうした社会なり時代なりの変化を前提にした上でさてどうしましょうかということなんだと思います。

別に専門知識であれ社会常識であれ学生が無知でお馬鹿なのは昔から同じと言ってもいいわけですから、世に出た後にきっちり学んでもらえばいいだけの話なんですが、どうも学習能力自体が低いんじゃないかと思える人間も多いような気がして、ちょっとだけ不安ですが(苦笑)。
もっとも世間全般もそういう方向に変化していっているのだとすれば、案外年長者が思うほどには問題にならないで社会から受け入れられるようになっていくのかも知れませんし、現時点で学生気質の変化を理由に医学部定員を云々するのはかなり違和感のある議論です。

投稿: 管理人nobu | 2011年6月21日 (火) 11時49分

学科の点数だけだった頃と面接を取り入れた後とで、学生がどう変わったかと言った調査はないんですかね?
以前に年配受験者が合格点取ったのに落ちたと裁判がありましたが、面接が単なる恣意的な点数調節に使われるのなら意味がないような

投稿: 通りすがりのただの人 | 2011年6月21日 (火) 23時18分

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