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2011年5月16日 (月)

てんかん患者による事故がにわかに波紋を広げています

ニュースをちょっと検索してみると、あっさりこんな記事が出てきました。

ワゴン車が突っ込み男児と祖母死傷 岡山(2011年5月13日産経ニュース)

 13日午後2時50分ごろ、岡山県浅口市金光町佐方の国道2号で、ワゴン車が歩道に突っ込み、通りかかった同町佐方の無職、渡辺昌子さん(71)と孫の男児(3)をはねた

 渡辺さんは病院に運ばれたが、間もなく死亡した。男児は頭の骨を折る重傷。ワゴン車の同県里庄町新庄、無職、中尾彰夫さん(70)も意識不明の重体

 玉島署によると、現場は片側1車線の直線道路で、ワゴン車は縁石に乗り上げて歩道まで進入、2人をはねた。その後、道路脇の草むらを約30メートル走り止まった

 渡辺さんは三輪車に乗った男児と散歩中だった。同署が事故の原因や詳しい状況を調べている。

車自体は空走して止まったということですからもともとぶつかる前から意識障害があったのではないかとも思われる一方、70歳という年齢を考えるとてんかんよりは別の疾患じゃないかなという印象ですが、何にしろこうまで似たような話が続きますと意識障害で事故というパターンは案外多いのか?と思わされる話ですよね。
先日も福山でてんかん患者の運転する車が学童の列に突入するという事故があり、世間でもこの運転中の意識障害、とりわけてんかんの問題に対する興味と関心が急上昇しているところですが、その後の続報によって福山の場合もやはり医師から運転をやめるよう指示されながら持病を隠していたという問題があったようです。
そもそも2年前にも運転中に発作を起こしたというくらいですから免許を更新できないはずですが、それを知っていたからこそ隠していたとも思われ、このあたりは罰則もない自己申告に頼る現状について多くの人々が問題を感じ始めているようですが、現行のルールですと当然ながら個人情報保護などの問題もありますから、やはり最終的には本人が言うか言わないかが分かれ目になりそうですよね。

免許取得・更新で持病申告せず…福山4児重軽傷(2011年5月14日読売新聞)

 広島県福山市の県道で10日、集団登校中の児童に軽乗用車が突っ込み、4人が重軽傷を負った事故で、自動車運転過失傷害容疑で福山西署に逮捕されたアルバイト警備員村田真樹容疑者(38)が、意識障害を伴う持病のてんかんの治療中だったのに、運転免許の取得や更新の際、道路交通法で義務付けられた申告をしていなかったことがわかった。

 同署は申告があれば免許が取れなかった可能性があるとみて調べている。

 同署などによると、村田容疑者は免許の取得や更新の際、てんかんについて申告せず、診断書も提出していなかった。車を運転中に意識を失い、救急搬送された約2年前には、診察した医師に運転をしないよう注意されたこともあったという。

てんかん患者免許申請、病気申告を~警察庁(2011年5月24日日テレニュース24)

 栃木・鹿沼市で小学生6人がクレーン車にはねられて死亡した事故で、9日に起訴された運転手がてんかん患者だったことを受け、警察庁は、今後、てんかん患者が運転免許の取得や更新をする際に病気を申告するよう関係機関に協力を依頼した。

 鹿沼市で小学生の列にクレーン車が突っ込み、児童6人が死亡した事故で、9日に起訴された運転手にはてんかんの持病があったが、運転免許の更新の際に病気について正確に記入していなかった

 これを受け、警察庁は、今後、てんかん患者が運転免許の取得・更新の際に病気の申告をするよう、患者団体や専門医の団体に協力を依頼した。また、全国の運転免許センターに対しては、運転の適正相談を確実に実施するよう指示した。

クレーン車事故で日本てんかん協会「正しく免許取得を」(2011年5月9日産経ニュース)

 小学生6人が死亡した事故でクレーン車の元運転手が起訴されたことを受け、日本てんかん協会は9日、「行政などと連携し、運転免許を正しく取得・更新するよう患者に促す活動を強化したい」とコメントした。

 協会によると、多くの患者が薬を適切に服用するなどして症状の管理に努力を払い、道路交通法の手続きを守って免許を取得している。しかし、免許の取得・更新時に病気を申告する必要があることを知らない患者や、免許が取れないことを心配して持病を隠して手続きする患者もいるという。

先日の6人が死亡した栃木のクレーン車による事故については、高木文科相が「学校関係者に対して通学の安全確保を指導していきたい」といささかピント外れに思えるコメントを出して、「運転手が意識を失った車が突っ込んでくるなんて予測しようもないのに、いったいどうやって安全確保しろと言うのか」と失笑混じりの反応を買ってしまったようですが、では具体的にどうやったら事故が防げるのかですよね。
治療や申告を怠った者に対する罰則を厳しくしろ、あるいは更に進んでてんかん患者の免許取得はやはり禁止すべきだと言った意見も出ていますが、てんかん患者に限らず人間が社会のルールに従うためには「ルールを守った方が自分にとって得になる」という感覚も必要になってきます。
今現在不景気の中でようやく職を得ているてんかん患者がちょっとした発作を起こした時、「ああこれでは車を運転すべきではない、さっそく免許を返納しよう」と思うか、「免許がなくなればたちまち仕事にあぶれてしまう、ここは黙っていよう」と考えるかは、各人のモラルもありますがやはり損得勘定というものも大きな判断材料になるはずです。
社会にとってはもちろん管理の厳正化、ペナルティの厳罰化を行うことで管理逃れを防ぎたいわけですが、患者にとってメリットもないままデメリットばかりが増えていけば管理から逃れて潜在化してしまう患者数が増えるだけですし、そうした患者は当然疾患管理もあまり厳格ではないだろうと想像されますから、結局トータルとしての社会の安全性が高くなるのか低くなるのかですよね。

てんかん患者が事故を起こした場合に罪に問われるのかどうかも過去の裁判においても判断が分かれているところで、栃木の事件においても服薬を怠るなど自ら発作を招くような行為をしていたにも関わらず、危険運転致死の適用は難しいと断念され自動車運転過失致死で起訴された経緯があります。
同事故の場合は繰り返す発作が認められ、担当医からも運転をやめるように言われていたにも関わらず運転を続けたということで、少なくとも運転を始めた段階では危険を認識する判断力があったということが起訴の決め手となったようですが、今までずっと発作がなく安定していた人であっても突然発作を起こす可能性は否定できないわけですから、予見性ということが重要になってきますよね。
発作を確実に予見出来るのであれば運転を避ける責任は本人にありますが、確実に予見出来るというものでなければてんかんを持つということ自体が本質的に一定の運転リスクをもたらすということですし、社会的にもてんかん患者に運転をさせるべきではないという考え方がにわかに勃興しつつある事が危惧されます。

クレーン車事故特集(下)防げなかった事故、交通捜査の限界(2011年5月13日産経ニュース)

 《てんかんのうたがい本人なし》

 登校中の鹿沼市立北押原小の児童6人が死亡したクレーン車事故の捜査の過程で、元運転手の柴田将人被告(26)=自動車運転過失致死罪で起訴=に関する一枚の古い手書きのメモが見つかった。

 柴田被告は3年前の平成20年4月にも鹿沼市内で児童をはねて重傷を負わせる事故を起こしている。メモは、当時の鹿沼市消防が医師の診断をもとに「本人は言及していないが、事故原因はてんかんの発作の可能性がある」と警察に伝えた際のものだった。

 だが、捜査では「発作の可能性」を裏付けられなかった。裁判でも原因は「居眠り」と認定され、執行猶予付き有罪判決となった。

 宇都宮地検の高瀬一嘉次席検事は今月9日、クレーン車事故で柴田被告を起訴するにあたり、こう語った。

 「当時、そのことについて捜査がなされていれば、今回の事故は起こり得えなかった可能性が高い。非常に残念だ」

  ■交通捜査の限界

 日本てんかん協会県支部の鈴木勇二事務局長も同じような感情を抱いていた。

 「3年前に(柴田被告の)免許を取り消していれば、今回の事故は起こらなかったのではないか…

 平成14年の道路交通法改正で、発作が一定期間、起きていないことを示す医師の診断書があれば、てんかんを持つ人の免許取得も可能になった。一方、適切に免許を取得した場合でも、条件を満たさなくなれば取り消される可能性がある。

 しかし、県警は「当時としては適切な捜査だった」(上條正男交通指導課長)との立場だ。

 交通事故は当事者の供述をよりどころとする“自供型”捜査が主流だ。

 「本人や家族が否定すれば、それ以上は追及できない。プライバシーの壁もある…」。捜査関係者は、交通事故捜査の限界を指摘する。処罰の対象にならない物損事故であれば、なおさらだ。

 免許を取得する際に求められる診断書も「原則は自己申告。『病気はない』といわれれば信用するしかない」(県警幹部)という。柴田被告と母親は3年前、「病気はない」と口をそろえていた。そして、柴田被告は執行猶予中に免許を更新している。

  ■事故の余波

 クレーン車事故の直後、日本てんかん協会県支部に一本の電話が入った。

 「息子は医師の診断書を提出して免許をとったが、事故のあと職場の雰囲気が変わり、運転させてもらえなくなった

 県内の女性からの相談だった。女性の息子はてんかんの治療を続け、最近は発作も起きていない。医師から服薬の終了を勧められるが、万が一に備えて薬を飲み続けている。それでも事故をきっかけに周囲の態度は冷たくなったという。

 自治医科大脳神経外科の渡辺英寿教授は「今回の事故があったからといって、『てんかんの人は運転をやめさせよう』という議論になるのは危険だ」と指摘し、クレーン車事故で広がる余波を懸念する。

 渡辺教授のもとには、免許取得に関する相談が多数寄せられている。特に栃木では「車がないと生活できない」と訴える人が多い。「仕事をクビになるのではないか」と、病気を打ち明けられず悩む人もいる

 病気に対する周囲の正しい理解は必要だが、渡辺教授はこう語る。

 「てんかんの人が事故を起こしていいはずがない。患者本人にも危険性をもっと認識してもらいたい

 6人の幼い命が奪われた痛ましい事故は“車社会”栃木に何を伝えるのか。

飲酒運転厳罰化によって飲酒運転自体は減った(それも実際にはすぐに頭打ちになったなどと言いますが)一方で、厳罰を恐れてひき逃げが増加してきているなんて笑えない話もありますから、悲惨な事故の最小化という命題に対する効果に加えて、患者自身の社会的権利の最大化ともあわせて対処を考えていかなければならないとすれば、これはなかなか解決の難しい問題かなという気がします。
今後脳波など検査技術上の画期的な進歩が起こり、現在の視力検査のごとく免許取得希望者全員に簡便な方法でチェックが行われるようになれば一番話は判りやすいのかなと思うのですが、まだまだ当分そんな時代は来そうにないですかね?>専門家諸氏

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コメント

福山の事件も同情の余地なしか
こんな事件が相次ぐようじゃイメージ最悪だろうな

投稿: aaa | 2011年5月17日 (火) 00時40分

まじめに治療してて事故しても偏見にさらされそうなのに、どうしてこんないい加減なことするんでしょうね。

投稿: 通りすがりのただの人 | 2011年5月17日 (火) 11時45分

>>まじめに治療してて事故しても偏見にさらされそうなのに、どうしてこんないい加減なことするんでしょうね。

管理人様も言及されているように、正直に病気について申請する人へのインセンティブがないのが問題かと思います。
真面目に申請すると免許の更新が出来ず、片や虚偽の申告をして免許の更新をしてもペナルティがないならやったもん勝ちですね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2011年5月17日 (火) 14時37分

そうなんです。黙っていた方が得だというのが非常にやっかいな問題で、現状でてんかん患者の免許取得を再度禁止にしても問題の解決にはつながりません。
視力検査のように問答無用で全例チェックという形しかないのであれば、事故防止にかけるコストと事故によるコストとの比較も必要となるでしょうが、いずれにしても社会がてんかんに対してそこまで手間をかけるとも思えません。
なにか双方がwin-winの関係になれるような現実的でうまい手はないものでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2011年5月17日 (火) 16時31分

いまはてんかんが目の敵にされていますが、インスリン治療中の患者さんもナルコレプシーの患者さんも他人事ではありませんからね。
てんかんに限らず、運転手が意識障害を起こしたときに車を安全に自動停止させることができるシステムが出来ればいいなあ・・・居眠り防止装置の延長でなんとかならないものか?

投稿: クマ | 2011年5月17日 (火) 23時38分

いよいよ警察も本格的にやりはじめたようですね。
これでますます世間の注目も集まるかな。

てんかん申告せず免許更新 松江で2人死傷事故

 松江市で4月、軽自動車で歩道に乗り上げ2人を死傷させた事故を起こした女が、てんかんの持病を申告せず運転免許を更新し、事故当時に意識障害を起こしていたことが20日、捜査関係者への取材で分かった。

 松江地検は「運転を控えるべき注意義務を怠った」として、自動車運転過失致死傷の罪で女を既に起訴した。

 捜査関係者によると、女は松江市の会社員金崎光被告(22)。2007年3月に免許を取得し、持病を認識していたが、10年2月に免許を更新した際に必要な申告をしていなかったという。
2011/05/20 20:06 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011052001001035.html

投稿: kan | 2011年5月21日 (土) 18時18分

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